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天体写真を撮ってみませんか?

足立源樹

那覇市立病院 足立 源樹

先日、釣りをするため伊是名へ行きました。 その日は台風2 号が接近中で天気は下り坂でし たが、晴れていたので昼間はルアー竿をふりま わし、夜にはビーチからタマン竿を出していま した。空を見上げるとさそり座と天の川がきれ いに見えていました。その天の川にカメラを向 けて何枚か写真を撮ってみると、結構きれいに 撮影出来ていました。タマンは釣れないし、台 風で帰りのフェリーが出なくなりそうで翌日 早々に本島に帰ってきたりと大変でしたが、き れいな星空を見て写真も撮れたので満足のいく 旅でした。

沖縄では別に離島に行かなくても、夜釣りを しなくても、ちょっと郊外に行けばきれいな星空 を見ることができます。この星空を写真に撮り たい!と思ったことはありませんか?“天体写 真”なんて難しいと思っているかも知れません が、まずは簡単なところから始めてみませんか?

では、何があればいいのでしょうか?カメラ がないと撮る事はできません。どんなカメラで もよいのかというとそういう訳ではなく、長時 間シャッターを開けておくことのできる機能 (バルブ機能という)が備わったカメラが必要 になります。一眼レフではおそらくどのカメラ でも大丈夫だと思いますが、コンパクトデジカ メではこのバルブ機能はついていないものが多 く、天体写真の撮影には適していないことにな ります。なぜこのバルブ機能が必要かという と、天体写真では暗い被写体を撮影するため長 時間シャッターを開けておかないと何も映らな いということになるからです。どのくらいシャ ッターを開けておくのかというと少なくとも30 秒程度は必要になります。当然、暗い星雲なん かを撮影しようと思えばさらに長く、30 分と か1 時間を超えるなんていうこともあります。 ということで、最もお手軽に天体写真を撮ろう と思っても、バルブ機能の備わったカメラ(普 通は一眼レフ)・三脚・レリーズの3 点は必要 ということになります。レリーズとはケーブル 状のシャッターで、カメラに取り付けることに よって本体のシャッターを遠隔で操作するため の道具です。なぜ必要なのかというと、本体の シャッターを押すことによる手ぶれを防ぐため です。

この3 点セットを持って晴れた夜にできるだ け町の明かりが届かない場所へ行ってみましょ う。安定した地面に三脚をセットし、レリーズ を付けたカメラを取り付けます。レンズは撮っ てみたい方角の空に向け、シャッタースピード はバルブにしてあることを確認し、レンズのピ ントは∞(無限大)にしておきます。デジカメ ではISO という光の感度を設定することができ ます。ISO の数字が高いと光の感度が高く、弱 い光でも写りますがノイズが増えてざらついた 写真になってしまいます。天体写真では弱い光 を相手にするのでできるだけISO は高くしてお きます。普通は1,600 とか3,200 くらいでしょ うか。あとはシャッターを切るだけです。30 秒 とか40 秒間の撮影で結構きれいな天体写真が 撮れます。もっと長くシャッターを開けておく とどうなるでしょう? 10 分くらいかけて写真 を撮ってみればわかる事ですが、全ての星が北 極星を中心に孤を描いている写真(小学生の 頃、理科の教科書に載っていましたよね?)が 撮れます。

上記の方法はものすごくシンプルなのです が、これだけで結構楽しめます。タイミングが 合えば流星が写っていたりすることもありま す。しかし、天の川なんかを撮っていると分か る事なのですが、なるべく長時間シャッターを 開けていた方がよりきれいに写る(暗い星まで 写るようになる、天の川も明るく写る)のに、 そうすると星が点ではなく線になってしまうの です。長時間シャッターを開けていても星がちゃんと点で写る方法はないのかしら・・・と必 ず思うようになります。そういう方法はちゃん とあるのですが、そのためには別の機材が必要 になってきます。“赤道儀(せきどうぎ)”とい うもので、三脚とカメラ(あるいは望遠鏡)の 間に存在するものです。

三脚とカメラ(あるいは望遠鏡)とつなぐ部 分を架台と言い、これには大きく2 種類あって “赤道儀”と“経緯台(けいいだい)”と呼ばれ ています。経緯台は縦・横に動かせるものです が、星の動きは地軸を中心に回転運動をしてい る為、これではきちんと動きを追うことはでき ません。一方の赤道儀ではその回転軸を地軸の 傾きに合わせることができ(これには慣れが必 要)、一度その軸をきちんと合わすことができ ればあとは何時間でも同じ星を追尾できるとい うものです。ですから長時間の撮影に際しては この赤道儀に望遠鏡なりカメラを乗せて、モー タードライブという星の動くスピードに合わせ て自動的に赤道儀を回転してくれる装置を動か しておけば、先のやり方とは比べ物にならない ようなすばらしい写真が撮れるようになります。

もっと欲が出てくると、今度は“星雲”とか “星団”といわれる物を写してみたくなります。 ウルトラマンの故郷でもある“M78 星雲”は有 名ですよね!星雲・星団には比較的明るく・大 きく観察しやすいものから小さく・暗く観察し にくいものまでたくさんあります。その中で “メシエ天体”と呼ばれる星雲・星団がありま す。これは18 世紀のフランスの天文学者が観 測しカタログに記したものなので、比較的安価 な小型望遠鏡でも見ることができるのです。 M1 からM110 までありますが、有名なのもの にはアンドロメダ大星雲M31、オリオン大星雲 M42、プレアデス星団(すばる)M45 などがあ ります。肉眼でも見ることができたり、双眼 鏡・小型望遠鏡でも観察が可能ですが、それだ けでは雑誌やインターネットで掲載されている ようには見えません。やはり写真撮影が必要な のです。しかもこれらを撮影するには天体望遠 鏡が必要です。望遠鏡にカメラを直接接続して 30 分とか1 時間とかシャッターを開けておくの ですが、長時間になればなるほど赤道儀の回転 軸の設定に正確さが求められます。最近のデジ カメでは撮影後、すぐにその写真が確認できま すが、かつて私が高校生だった頃にはまだデジ カメはなく、重い望遠鏡をかついで山に登った りして写真をとっても、現像に出すまではどん な写真が撮れているかわかりませんでした。現 像してみたら全部ピンボケだったり星が流れて 写っていたりしてがっかり・・・なんてことも よくありました。

今は結構お手軽に天体写真が撮れます。ご家 族でキャンプに行くなんていうときは絶好のチ ャンスです。ぜひトライしてみてください。

天の川(中央がいて座、右側がさそり座)