沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 10月号

台中市医師公会親善訪問

金城忠雄

理事 金城 忠雄

去る7 月16 日(土)から18 日(月)までの 3 日間の日程で、宮城会長をはじめとする18 名 が台湾を訪問し、姉妹会である台中市医師公会 との交流親善を図った。

台中市医師公会と本会は平成16 年の2 月に 姉妹会を締結し、以後相互に訪問し友好を深め ているところであり、本来は来年台中市醫師公 會を訪問する予定になっていたが、中華民国 100 年を迎える記念の年に合わせ本年の訪台と なった。

初日の意見交換会では、秀伝医療グループ趙 美珍主任より、「台湾における観光医療」につ いて、中国医薬大学医学部陳祖裕主任より「卒 業後の一般医学訓練計画」についてレクチャー を受けた。

その後、懇親会に移り、両医師会関係者全員 による記念撮影の後、台中市醫師公會の羅 倫理事長による歓迎のご挨拶、本会宮城信 雄会長の挨拶、台中市政府蔡炳坤副市長の挨 拶、台中市医師公会の巫永徳顧問による乾杯で 開宴となり、会場は大いに盛り上がった。

なお、意見交換会の講演の概要、懇親会にお ける羅理事長、宮城信雄会長の挨拶を以下のと おり掲載する。

T 意見交換会

「台湾における観光医療」
秀伝医療グループ主任 趙美珍

台湾では、1997 年より医療ツアーサービス の提供を開始し、非侵襲性の手術を行っていた が、2001 年から2006 年にかけては美容メディ カルが主流となっている。

Patients Beyond Borders 誌によると現在 のメディカルツーリズムの市場規模は200 億米 ドルとなっており、2011 年には400 億米ドル を上回ることが予想されている。

また、2010 年の統計では世界で300 〜 400 万人が海外で診察を受けており、米国では 2015 年にはメディカルツーリズムの利用者が 2,000 万人を上回ることが予想されている。

なぜ、自国ではなく海外で医療を受けるのか という点については、国際標準の医療品質、 WEB の積極的活用、専門医療の提供、費用の 透明化、観光を含むツアーパッケージの充実等 が上げられる。

アジア各国では医療ツアーサービスが盛ん で、タイにおいては今後更なる成長が見込まれ ている。

台湾においても2007 年より医療サービスの 国際化が推進され、馬総統も全面的に観光医療 を支援し、2009 年からは衛生署による「国際 医療サービス」プロジェクトが進められている。

このプロジェクトを進めるにあたって下記の 点を重要視している。

国際マーケティング、観光活用、航空会社等 異業種との提携、政府と連携(ビザの早期発行等)、より良い医療サービスの提供。

なお、台湾で行っている特殊な医療サービス は、関節置換術、心臓血管治療、がん治療、減 量手術、人工生殖技術、生体肝臓移植、頭蓋と 顔面の再建手術である。

台湾の医療品質は高く国際レベルに達してお り、医療価格では国際的にも低く抑えられている。

秀伝医療グループでは全島域に7 施設の医療機関があり、どの地域で手術をしても全島でケ アが行える体制が取れる。

また、グループではホテルと医療機関を組み 合わせた“Hospitel”としてサービスを提供し ている。なお、提供する医療は、最高水準の健 康診断、医学美容治療、ストレス解消サービ ス、睡眠治療、高圧酸素治療などの、非侵襲性 医療である。

サービスの手順としては、依頼者より連絡を受 けて24 時間以内に担当者から返答を行い、依頼 者の病状等を把握したうえで計画書を作成し、治 療費を含め納得した時点で契約が成立する。な お、航空券や宿泊など滞在中の全てのケアを行っ ており、帰国後の追跡サービスも行っている。

海外での展示会にも積極的に参加しPR を行っている。

「卒業後の一般医学訓練計画」
中国医薬大学医学部主任 陳祖裕

卒後医学教育には一般医学訓練と専門医訓練がある。台湾では1988 年から専門医訓練が始 まっている。一般医学訓練では、西洋医、漢方 医、歯科医が設けられており、中でも西洋医は 2003 年から開始されている。

この制度は医療保険と深く関わっており、卒 業後の専門訓練に極端に偏りすぎ、それとは逆 に医学的な論理、一般的な医療は重視されない 傾向にあった。コミュニティ医学教育も不足で あった。2003 年から卒後一般医学訓練が始ま ったが、それはSARS が発生したことにより、 それまでの医学教育の問題点が浮き彫りになっ たためであった。

台湾では医科大学が1 2 施設あり、毎年 1,400 名が卒業し、その卒業生が一般医学訓練 を受けている。その訓練を行う病院が100 施設 となっている。

卒後一般医学訓練カリキュラムは、2003 年 のスタート時点では3 ヶ月の期間であったが、 2006 年には6 ヶ月、2011 年からは1 年間の訓 練となっている。

これまでは専門科を選択した後に訓練を行っ ていたが、2011 年以後は一般訓練の修了後に 専門科の選択に移る。

なお、卒後一般医学訓練を行うにあたって は、当初は各病医に一般医学を訓練できる医師 並びに、教育に当てはまる症例が少ない等の難 点があった。また、教育と患者の安全を両立さ せなければならない苦労も発生した。更には経 費、準備、関心の無さの問題に加え、反対者も多数あり、多くの面で不利が生じている。

しかしながら、社会のニーズに応えるために 台湾の医療界は頑張っており、学生の満足度も 年々上がっている。

未来の展望としては、レジデント卒業後の PGY と専門医のトレーニングの推進、医学教 育を現行の7 年から6 年に短縮しPGY に合わ せる。専門医の訓練と医師の生涯学習の推進が 求められる。

U 台中市医師公会・沖縄県医師会懇親会

意見交換会の終了後行われた懇親会は、来賓 の台中市衛生署顧問、衛生局長、台中市議、台中市医師公会役員等80 人、本会から18 人の計 98 人が参加し、私どもは熱烈な歓迎を受けた。

台中市醫師公會羅倫理事長挨拶

沖縄県医師会宮城会 長ご夫妻始め関係者の 皆々様、今晩は。台中 市醫師公會一同を代表 して、皆様のご来訪を 心より歓迎いたします。 台湾と日本は歴史上深 い関係があり、地理的に隣国でもある上、民間 においても深い絆で結ばれているという事は言 うまでもありません。

思い起こせば12 年前の1999 年9 月21 日に 台湾中部大震災が発生した折は、日本の方々が 直ちに救いの手を差し伸べてくださったことに 対して深く感謝しております。今年3 月11 日 に日本東北地方にマグニチュード9.0 の大震災、 それにともなう津波・原発事故が起こりまし た。亡くなられた方々も多く、心からお悔み申 し上げます。台中市醫師公會代表は早速台湾元 100 万元の義援金を送らせていただきました。 (3 月末に兵庫県医師会を通して寄付致しまし た)一日も早く復興できることを私ども始め台 湾の方々は皆心よりお祈り致しております。

私ども台中市醫師公會と沖縄県医師会はお互 い訪問しあうことで、医療の向上に協力し、非 常に良い関係を築いてまいりました。今日「台 湾における観光医療」および「卒業後の一般医 学訓練計画」というテーマを用意しました。こ れを通じて、お互いの人文・品質・医学・医療 環境の理解を高められたと思います。現在、台湾の医師たちは医療報酬が点数総額という枠の もとで制限され、非常に難しい現状におかれて います。

これからも末永く相互に訪問し、更に深い友 情を築き、両国の医療健康品質を高められるこ とを望んでいます。最後にご来訪の皆様のご健 康とご多幸、ご活躍をお祈りし、私の歓迎の言 葉とさせていただきます。

沖縄県医師会宮城信雄会長挨拶

宮城信雄会長

皆様今晩は、中華民 国100 年の記念すべき 年に台湾を訪れ、台中 市医師公会の先生方並 びに、関係者の方々に お会いすることができま したことを大変嬉しく思 います。また、このような懇親会の場を設けて いただきましたことに心より感謝申しあげます。

ご承知のとおり、去る3 月11 日、日本の東 北・関東沖で国内観測史上最大となるマグニチ ュード9.0 の大地震が発生し、東北地方の沿岸 部は大津波に襲われ、原発事故も発生ました。 死者・行方不明者併せ、2 万8,500 人以上に上 り、未曾有の大震災となっています。

この度の大震災に際しましては、沖縄県医師 会でも発災直後に、医師、看護師、事務で構成 する医療支援班を編成し、3 月15 日から5 月 31 日まで2 ヶ月半にわたり、岩手県大槌町で医 療支援活動を行いました。被災地の医療機能は 徐々に回復しておりますが、全体的な復興には まだかなりの時間が要するものであり、現在、 国を挙げて取り組んでいるところです。

また、この度の大震災には、台湾国当局並び に国民の方から物心両面にわたる多大なご支援 を賜っています。台湾のみなさま方の国を超え た絶大なるご支援に、衷心より感謝申しあげる 次第であります。

さて、日本では、少子高齢化の進行をはじめ として社会経済状況が大きく変化する中、国民 生活の安心を確保すべく、現在、社会保障制度 改革と必要な財源を確保するための、「社会保 障と税の一体改革」について議論が進められて います。国民医療を担う日本医師会は、今後は 国民医療費を引き上げると共に、これまでの日 本の医療の在り方を尊重しつつ強化する必要が あるとして、財源は保険料の見直しと税制改革 で手当するべきと主張しています。

台湾においても医療費財源の問題でご苦労さ れていると思いますが、国民の医療を担う同じ 医師会の立場として、台中市医師公会の先生方 とその辺りの情報交換もお願いしたいと考えて います。

本日は、先程の意見交換会で、「医師養成 (研修)システム」について、また、「医療ツー リズム」について台湾の状況をご教示賜り、勉 強をさせていただきました。今後とも引き続 き、相互交流を通して、両国の医療事情に理解 を深め、これからの医師会活動の糧にしていき たいと考えています。

最後に、台中市医師公会の今後ますますのご 発展並びに、ご参会の皆様のご健勝を祈念して ご挨拶といたします。

印象記

理事 金城 忠雄

この度、中華民国建国100 年を記念して平成23 年7 月16 日(土)〜 18 日(月)海の日、連休 を利用して台中市医師公会との交流会を目的に総勢18 名で訪問することになった。

沖縄県医師会と台中市医師公会とは平成16(2004)年2 月20 日、稲冨洋明前会長時代に相互 の医療情報交換と親善発展のため姉妹会締結している。姉妹会締結の由来は、平成15 ・6 年当時 台中市の深刻なSARS 感染症発生と世界ウィルス学会が開かれたことと、台中市は稲冨前会長が 幼少の頃過ごしていたことなどのご縁のようである。

台北の空港には、台中市から2 時間もかけ医師会の方々がお迎えして下さりいたく恐縮した。 ホテル到着シャワーと着替えの後、早速意見交換と懇親会のスケジュールである。

懇談会のテーマに2 題が用意されていた。

まず「台湾における観光医療」について。

台湾医療サービスグローバル化計画があり、現在のところうまくいくよう努力していると。次い で「卒業後の一般医学訓練計画」の講演では、成果あり非難ありと試行錯誤の努力をしていると。 演者は「百年樹人」の格言を引き、人を育てるには長い年月が必要であると、指導医の充実など卒 後研修の困難さを述べていた。日本においては、決めてしまえば変更困難だが、台湾では、経験に より医学部教育年限を減らしたり、卒後研修の充実など試行錯誤改革をしているなど良い印象を持 った。

講演会の後、懇親会となり台中市医師公会主催の歓迎パーティーに移った。
歓迎パーティでは、医師総勢13 人の台中市医師会オーケストラの演奏と歌を披露された。沖縄民 謡と紹介された「喜納昌吉の花」には山城千秋先生が楽団に合わせて歌った。

台湾の方々は、非常にパワフルであり酒にも強い。ワインもウイスキーも紹興酒も次々と勧め られるので呑みすぎた。隣国なのに言葉が通じないのには、もどかしさ情けなさを感じた。私は、 少々呑み過ぎたため二次会に参加できず失礼をした。

2 日目の早朝、台中市の医師会の方々の見送りを受けて台北向けホテルを出発した。

台湾新幹線は、日本が全面的協力で完成したとのことで非常にすばらしい乗り心地である。異 国に来て日本の活躍を見るのは気持ちのいいものだ。

風光明媚な「九」をたずねる。ガイド嬢の案内では、昔は寒村だったらしい。当地は、一時 期はゴールドラッシュで沸き、そして現在は、本省人と外省人との大規模な抗争、台湾2 ・28 事 件を扱った映画「悲情城市」の影響で一大観光地になっている。発酵食品のブチクンしそうな強 烈な匂いと大勢の観光客で混雑した路地を経て、昼食は、景色の良いところで台湾郷土料理を堪 能した。

台北のホテルは、全体朱塗りの威容で豪華な圓山大飯店(グランドホテル)である。帰りの日 は、早朝の衛兵交代式と忠烈祠を拝観す。ガイド嬢の話では、台湾は徴兵制があり、青年は兵役 中の訓練で頼もしく成長し一人前の男になると語っていた。

故宮博物館見学、収蔵物の豊富さ展示物のすばらしさは、言葉に表現できない。戦争中の混乱 のなか、北京から大陸を移動運搬し、よくもこれだけの財宝を運んだものだと感心する。ルーブ ル、メトロポリタン、大英博物館にならぶ世界4 大博物館に名に恥じない芸術品のオンパレードである。ガイド嬢の説明も表現力も適切、幾度でも見学したい心残りの見学であった。

台湾は、漢字の国なので親近感があるが旧漢字なのでなんとなく違和感もある。たとえば、日 本字の台湾は「臺灣」と書く。子供たちは苦労するのではないかと同情してガイド嬢に確かめる と、生徒は順調にうまく書けるとの答えが返ってきた。

台湾にも元号があり、懇親会案内冊子に、民国100 年7 月16 日(星期六)と記してある。さし ずめ日本式に直すと平成23 年7 月16 日(土)となる。

案内のガイド嬢は、大陸中国との違いを力説、「臺灣」のアイデンティティーを言葉の端々から 感じ取れた。ガイド嬢の台湾に対する誇りある愛国心、愛着振りには感動する。

お互いに、医師会長が代わっても交流会の継続はすばらしい。この姉妹会交流がこれからも継 続していくことを望むものである。非常に有意義な台中医師公会訪問であった。

印象記
台中市医師公会・沖縄県医師会〜懇談会・懇親会
〜「おもてなしの心!」〜

照屋勉

理事 照屋 勉

中華民国建国100 年を記念して、平成23 年7 月16 日(土)〜 7 月18 日(月)に台中市医師公 会との交流会が執り行われました。訪問日程表には・・・、「【懇談会】(時間)100.7.16(土) PM4 : 30 〜 6 : 00、(場所)テンパスホテル台中C 館301 会議室・・・」と記されておりまし た。台湾では、建国年である1912 年を元年とする"中華民国暦"と"西暦"が併用されている事を初 めて知りました。(ちなみに、明治45 年・大正元年も1912 年!今年は、大正100 年、昭和86 年、 平成23 年ということになります!)

【懇談会】〈第1 部〉「台湾における観光医療!」:1)「医療の国際化サービスのニーズが高ま っている!」・・・という話、2)「Hospital + Hotel = Hospitel !」・・・という話、3)医療ツ アー=最高水準健康診断・美容医療センター・LOHAS ストレス解消センター・睡眠治療・高圧 酸素治療etc !(ちなみに、LOHAS = Lifestyles Of Health And Sustainability =健康と環 境・持続可能な社会生活を心がけるライフスタイル!)・・・などなど。

〈第2 部〉「卒業後の一般医学訓練計画!」:1)全人医療〜 bio-psycho-social(生理・心理・ 社会=バイオ・サイコ・ソシアル)・・・という話、2)医師は「社会の道具!」・医学教育は 「社会のニーズ」に対応しなければならない・・・という話、3)「十年樹木・百年樹人= 10 年か けて木を育て、100 年かけて人財(人材・人在・人罪ではない!)を育てよ!」・・・という話、 C「未来の展望!〜専門医の訓練と医師の継続教育!」・・・などなど。通訳を介しての【懇談 会】でしたので、時間的にギリギリ・いっぱいいっぱいのタイムスケジュールでしたが、本当に 素晴らしい内容のご講演で、勉強不足を痛感しつつ、とても参考になりました。

今回の「交流会」の超ウルトラスーパーなキーワードは、"おもてなしの心!"・・・。1)台北 空港まで、台中市医師公会理事長先生以下10 数名の方々による"熱烈歓迎"なお出迎え!、2)"お もてなしの心"を前面に出した素晴らしい内容(「医療ツーリズム」+「卒後研修プログラム」)の 講演会・懇談会!、3)懇親会を寿ぐ台中市医師公会理事の先生方による"オーケストラ・ミュージ ック・ショウタイム"!(かなり練習したそうです!衣装もバッチリでした!)、4)小さきグラス なれど、"オール乾杯"が続く懇親会!。〜そして、カラオケ大会のような大盛り上がりの2 次会! (ビール・ワイン・紹興酒・43 度のウイスキーetc、酒の種類は関係ありません!台湾の先生方、 本当にお酒も強いです!カラオケも大好きです!)、5)翌日、プチ観光出発直前に、二日酔いの素 振りも見せずホテルのロビーで"最後のお見送り!"〜お洒落なネクタイ・スカーフなどのお土産 まで頂きました。台中市医師公会の先生方・事務の方々、本当にお世話になりました!。ありが とうございました!。今後とも、宜しくお願い申し上げます。

【P.S.】数年後、沖縄県医師会が担当する「交流会」の際には、何はともあれ万難を排して、 「空港までお迎えに行くべし!」・・・と、改めて認識いたしました!。