副会長 小渡 敬
去る3 月12 日(土)、指宿白水館において標記 連絡会議が開催され、九州ブロックから選出さ れている委員により日本医師会委員会報告並び に日本医師会横倉副会長から中央情勢報告が行 われたので、その概要を以下のとおり報告する。
司会の鹿児島県医師会池田徹常任理事より開 会が宣言された。
挨 拶
九州医師会連合会池田哉会長(鹿児島県 医師会長)から概ね次のとおり挨拶があった。
昨日起こった東北地方太平洋沖地震の災害状 況の全貌が未だ見えてきていないが、一刻も早 い復旧と生命が守られることを願ってやまない ところである。
第122 回日医代議員会の中で、日医を一つに まとめるためには全体選挙を検討すべきではな いかという話しが出て、そのことを受け原中会 長が会長選挙制度のあり方について諮問をさ れ、昨年6 月24 日に会長選挙制度に関する検 討委員会が開催された。私は当委員会に参加 し、全体選挙について検討してきたが、公益法 人への移行というのがあって、政府との話し合 いの中で全体選挙は難しいということになって きた。公益法人でいう16 万人の社員総会を開 催するのはなかなか出来ないわけで、どうして も代議員会の中での選挙をやらざるを得ないと いう方向になっている。代議員というのは、会 員500 人に1 人の代表が選出されているが、そ ういう意味では、これから代議員の重責が増し てくると思っているところである。今後諮問の 中で代議員の選出のあり方が問われると思う。 また、選挙管理委員会を設置して選挙を行うべ きとの意見も出されており、今後の課題となっ ている。
報 告
1)第1 回委員会(平成22 年10 月21 日開催)
<総論>
○介護療養病床について
・介護療養病床の廃止を停止するとしたが、 法律をかえる必要がある。平成30 年まで 延ばすと言っているがその根拠は分かって いない。
○財源・現金給付
・医療も介護も財源なしには改定できない。
○議論の進め方
医療と介護をリンクさせて、そのなかで施設 と在宅について議論してく。
・医療と介護からの切り口で療養病床、訪問 看護、施設における医療提供について受け る側、提供する側からの視点で議論する。
・施設と在宅からの切り口で必要な医療サー ビス、一般病床の慢性期の入院の整理、参 酌標準などを議論する。
<各論>
○療養病床について
・療養病床の医療型と介護型の施設基準の見 直しは可能である。
○介護施設について
・療養病床の患者は老健では受け入れられな い。老健における医療を自己完結型とする か、外部から提供するか。
・老健や特養の中の医療提供について、介護 報酬で行う医療、診療報酬で行う医療があ る。現場で混乱している。施設の介護の費 用、医療の費用がいくらかを調べることも 必要。
○医療と介護の境界領域の調整は複雑で厚労省 も手をつけられない。簡略化を図るため、日 医で原案を作ってみてはどうか。
1)第2 回委員会(平成23 年3 月3 日開催)
<議論>
○ 24 時間365 日定期巡回対応サービスについて
・モデル事業を行っているが、職員22.5 人が45 人の在宅療養者を看ている。施設介 護に近い資源が必要である。
・地域密着型で、包括によるシステムの評価 である。自治体の財源で行うのではないか。
・訪問看護と訪問介護が対応するが、必要に 応じて医師が絡むべきではないか。24 時 間、365 日は医療は常時ではなく、時々必 要となるだけであるので是非医師も関わっ て欲しい。医師個人の対応ではなく医師の 連携、医療機関の連携によりグループで対 応した方が良いのではないか。医師会対応 で、このシステムを活用してビジネスチャ ンスとして捉えて欲しい。
○訪問看護について:
・医療と介護では財源も違うが請求方法も違 う。訪看にはビジョンが必要である。
・看護大学卒業の20 %が訪看を希望してい るとしているが、実際には訪看には2 %し か来ていない。訪看教育が不足している。
○在宅療養支援診療所
・従来型の診療所と訪問診療・往診に特化し た診療所がある。特化した診療所は、この 頃厚労省やマスコミに持ち上げられてお り、従来型が何もしていない感じにとらえ られている。看取りの尺度で評価されてい る。従来型は看取りは少ないが、それは病 院との連携が取れており看取りを病院へお くっているからである。在宅医療は従来型 で8 〜 9 割を行っており、都市では夜間診 療も行っている。
・一般診療所と在宅診療支援診療所・病院 は連携してパッケージを作ることで地域医 療へ参画して欲しい。
・在宅療養支援病院は在宅療養支援診療所 と違った役割を持つべきである。
○在宅医療
・かかりつけ医が日常診療所で在宅医療でど んな事を行っているか。診療所、有床診療 所の役割を認識させる必要がある。
○老人保健施設
・医療ニーズが増えても移動で対応できず、内部の医療の充実・拡大をする必要がある。
・老健は在宅復帰が目標である。在宅の復帰 率を上げる必要がある。
○療養病床
・介護3 施設は内容に差がなくなっている。 医療型と介護型が差がなくなっている。 (医療区分1 のADL3 の評価)
・一緒にしてしまうと外付け、内付けの問題 がある。
○目標
・平成24 年の改定だけでなく、もう少し先 を考えて議論する。
質疑
□福岡県
1)診療報酬が高いということだけで往診に特化 する診療所が増えるのに非常に疑問に思う。 都会では特に福祉系の住宅やケアハウスなど と契約して根刮ぎ往診を行っている医師がい るが事実であるので注意願いたい。
2)一人無床診療所を行っている医師にとっては 24 時間365 日対応は基本的に無理である。 多くの期待をされてしまうと結局先生方は背 を向けてしまう。
3)超高齢者が亡くなることはある程度自然なこ とで、私たちは見守りということで医師とし てバックアップは出来るが、24 時間365 日 いつでも対応しないといけないという患者さ んは施設でみるべきである。
■嶋田委員
1)委員には診療所の先生方もいるので対応が出 来ると思う。
2)在宅療養支援診療所については、点数が取 れなかったら算定しなければいいだけで、先 生が出来ることまで一生懸命やることで、も う少しリラックスしてやっていただけたらと 思う。
3)皆さん先生と同じ意見である。
1)平成20 ・21 年度委員会
平成20 年度第1 回委員会では、唐澤会長よ り「有床診療所の適正な評価に向けた方策―発 展と安定経営に向けて」について検討するよう 諮問を受け議論が開始された。日医総研で有床 診の現状把握のための調査が行われ、有床診の 機能が以下の5 つにまとめられ、それぞれの有 床診が複数の機能を持つことが多いとの結果で あった。
(1)専門医療を担って病院の負荷を軽減し地域 医療の崩壊を防ぐ
(2)地域の病院からの早期退院患者を含めた患 者の受け皿となる
(3)地域の在宅医療の拠点診療所として在宅医 療の後方支援として病床を活用
(4)終末期医療などのニーズが高まる分野への 取り組み
(5)特に僻地、離島では唯一の入院施設として 機能
これを受けて、平成21 年度の委員会では 「診療所入院基本料の引き上げに向けた考え方 と具体的対応」がテーマとなった。今村定臣常 任理事の発案で福岡県、和歌山県、広島県、北 海道で厚労省保険局と日医、有床診療関係者の 合同で有床診療所現地視察が実施され、各地で 地域医療に多大な貢献をしているにも拘わら ず、その経営は極めて厳しいことが明らかにな った。この状況を受けて日医は初めて「都道府 県医師会有床診療所担当理事連絡協議会」を開 催し意見交換を行った。その後委員会で「診療 所入院基本料の引き上げに向けた具体的な提案 ―看護配置基準と入院基本料低減制の見直し」 について議論を行い、日医総研では、平成20 年度についての「有床診療所の経営実態調査」 を実施した。回答の中の3 割は、既に平成20 年1 月以前に休床か無床化しており、有効回答 分についての分析では、約30 %の施設が赤字 で、病床稼働率は70 %超とニーズがあるにも 拘わらず採算が取れない実態や、長期入院の多い施設では経営状態が悪い傾向が明らかになっ た。また、看護職員に関する補足調査では、19 人の入院患者がいる施設では、病床の15 対1 を上回る配置であることも判明した。
1)平成22 年度委員会
第1 回委員会では、原中会長より「次期同時 改定を見据え、有床診療所の安定経営と安心医 療のより一層の充実のために―次世代につなぐ 有床診療所―」の諮問を受けてフリートーキン グが行われた。第2 回委員会では、「固有な施 設体系、または医療単位としての有床診療所の 理念と、法制的な位置づけのあり方について」 を主たるテーマで議論が進められ、まず、「有 床診療所の施設体系としての理念」として
(1)かかりつけ医(自ら)が入院患者の診療を実践
(2)地域に密着して地域医療、地域ケアを支える患者主体の入院施設
(3)専門医療を提供するための小規模入施設
次に、「有床診療所の法制上の位置付けとあ り方」として
(1)「有床診療所」は19 床以下の外来医療を補完する小規模病床
(2)一人以上の医師と複数の看護職員を配置
(3)病床区分を設けず医療にも介護にも柔軟に対応
(4)小規模施設に相応しい独自の診療報酬体系
(5)地域連携における役割の明確化と基準病床数の柔軟な運用
が、今までの委員会での議論のもとに集約さ れた。
第4 回委員会では、折しも社会保障審議会や 医療計画の見直しの検討会での議論が進行中で あり、委員会で集約された「有床診療所のあり 方の理念」、「法制的な位置づけ」を、この場に 提案することを日医執行部へ要望した。また、 診療・介護同時改定に向けて、具体案を検討す るワーキンググループの設置が承認され、次年 度の事業として有床診の経営実態調査の実施と 都道県医師会有床診療所担当者会議の開催が決 定し本年度の委員会は終了した。
高度で専門的かつ多様な組織医療を提供する 病院と、かかりつけ医が主体の有床診では、そ の規模や患者に対する機能が大きく異なる。 『医療提供体制の中に「有床」を新たな独立し た医療単位として位置づけ、その上で固有の診 療報酬によって適正な評価をすることが合理的 な対応であり、次期医療法改正の課題』』が平 成18 年度以降の委員会の結論である。
質問
□福岡県
日医に努力していただいて診療報酬改定で少 し上がったが、喜ぶほどのものでもない。先程 言われたように有床診療所の閉鎖が続いてい る。なんとかやっていけるだけの診療報酬を確 保していただきたい。例えば将来10 万円上げ るよりも5 千円でも1 万円でも急いで上げてい ただきたい。
■鹿子委員
厚労省の医療官に言わせればどんどん有床診 療所が減っていくことが心配と言っているの で、次回改定ではやはり基本料の底上げをお願 いすると共に地域ケアに係わっているいろいろ な機能に対して点数をつけていただくよう要望 している。
講 演
横倉副会長より、講演に先立ち、昨日 (3/11)発生した東日本大震災発生に際し、日 本医師会にもまず情報収集を行うべく、災害対 策本部を設置した。今後、各都道府県医師会の 支援が必要となると思うので、その節はよろし くお願いしたいとの要請があった。
講演の概要は以下のとおり。
(1)最近の社会保障制度改革の動き
政府・与党による社会保障改革検討本部(本 部長:菅総理大臣)が立ち上げられ、「社会保 障改革に関する有識者検討会」「社会保障・税にかかわる番号制度に関する実務検討会が設置 された。
社会保障改革に関する有識者検討会
当検討会においては「安心と活力への社会 保障ビジョン」をテーマに、以下のことにつ いて検討されている。
1)現行社会保障制度改革の課題
グローバル化、非正規雇用の増大、家 族、地域の変容等の社会変化と、現役世代 の生活リスクに社会保障が対応できない、 高齢世代も社会保障が幸福感に結びつかな い等社会保障が機能不全に陥っていること が問題点として指摘している。
2)社会保障改革の3つの理念と5つの原則
3つの理念
・参加保障(国民の社会参加を保障し、社 会的な包摂を目指す)
・普遍主義(すべての国民対象、国、自治 体、NPO 等の多様な主体が協力)、
・安心に基づく活力(社会保障と経済成長 の好循環をめざす)
5 つの原則
・切れ目なく全世代を対象とした社会保障
・未来への投資とした社会保障
・地方自治体が担う支援型サービス給付とその分権的、多元的な供給体制
・縦割り制度を超えた、国民一人ひとりの事情に即しての包括的な支援
・次世代に先送りしない、安定的財源に基づく社会保障
3)社会保障制度改革の枠組
社会保障制度改革の枠組として、「社会 保障負担のあり方」、「信頼醸成への道」、 「社会保障強化と財政健全化の同時達成」 等について検討され、社会保障制度改革を 支える税制のあり方については、1)税の再 分配機能と所得・資産課税の重要性、2)人 口構造・雇用・経済環境の変容の中での消 費税の基幹性、3)消費税の使途明確化の必 要性、4)社会保障改革とそれを支える税制 改革の一体的実施、5)基礎年金国庫負担 1/2 確保のための安定的財源の確保等につ いて検討されている。
以上のような検討を踏まえ、社会保障改 革の当面の目標として、「中規模の高機能 な社会保障体制」を目指すことになった。 これは、自民党政権時代の麻生内閣が打ち 出したものと全く同じものである。
4)日本医師会が考える公的保険制度の基本 理念
日本医師会は、全ての国民が、公平な負 担の下で、同じ医療を受けられることが公 的医療保険制度の根幹であると考える。こ のようなことから、昨年10 月に、段階的 に公的医療保険を全国一本化に向けての筋 道を示した。
社会保障・税にかかわる番号制度に関する実務 検討会
1)検討会における検討内容
当検討会は、番号制度が複数の機関に存 在する個人の情報が同一人の情報であるこ との確認を行うための基盤。また、国や地 方公共団体当が国民一人ひとりの情報をよ り的確に把握し、国民が国や地方公共団体 等のサービスを利用するための必要不可欠 な手段となるとの基本方針を示している。
番号制にすることにより、年金、医療、 介護、各種手当てなどの社会保障に係わる サービスで用いる番号と給与所得や資産性 所得の把握に係わる税務行政に用いる番号 を一体化する。これにより、「給付付税額 控除」や「所得比例年金」などの制度が導 入できるとの認識である。
2)日医の主張
社会保障・税に関わる番号制度の問題点 として、プライバシーの問題として、多く の国民は、自己の関知しないところで自己 の情報(特に医療・健康に係わる情報)が 収集・分析されることに対して肯定的に捉 えない。また、現在の個人情報保護法では、 医療情報を保護するには不備がある。受診 抑制等管理医療の問題として、所得の把握、社会保障に関する徴収額の把握ができ れば、現物給付の抑制・制限も不可能では ないことから、日医としては容認できない。
(2)市場原理主義と規制改革
規制・制度改革に関する「中間とりまとめ(案)」 について
1)ライフイノベーションWG の改革の方向 性の問題
病床規制、医師不足解消等既に国の審議 会で審議されたものが規制緩和の対象とな っており、進め方に問題がある。また、ラ イフイノベーションWG は、医療を産業と して成長させ、公的保険の適用範囲を再定 義し、セルフメディケーションを推進する 必要があるとしている。しかし、そのよう なことをすれば、国民は医療を受けるため に私費負担が増加する。当WG は国民皆保 険制度を守ろうという姿勢は見られない。
2)病床規制の見直し
・地域に全面的に権限を移譲し、病床過剰 地域における許可においても厚生労働大 臣の同意を不要とする。
・地域に休眠病床が有る場合は基準病床か ら休眠病床を除いて判断する。
・国際医療交流を政策的に推進して行く際 には、特例病床として開設・増床申請を 許可する。
3)医療法人の再生支援・合併における諸規 制の見直し
・「持ち分の有る医療法人」について、再 生事例で一定の要件を満たせば、営利法 人の役職員が医療法人の役員として参画 することや、譲渡法人への剰余金配当等 を認める。
・医療法人が他の医療法人に融資または与 信を行うことを認める。
・医療法人が合併する場合、条件とされて いた医療審議会の意見聴取の撤廃。
以上のように、現在検討されている「規 制改革」の検討事項については、10 年前 に提起された内容と全く同じである。民主 党の議員に「あなた方のやっていること は、小泉氏のやっていることと全く同じ だ」と言ったらトーンダウンしてきた。
(3)平成22 年度診療情報改定
1)医療保険医療費の前年同期比
・改定率はネットプラス0.19 %と極めて 低かったが、病院・診療所別の医療保険 医療費の対前年同期比で見ると、病院は 全体でプラス5.7 %、診療所は全体でプ ラス1.2 %である。
・受診延べ日数及をみると、外来の受診日数 が減っている。医療費は病院が延びている が、伸び率が高いのは保険薬局である。
・医療機関種類別では、大学病院が7.9%、 公的病院が5.9 %、民間病院が5.0 %、 診療所が1.2 %のプラスとなっている。 理由としてはDPC や手術料のアップが 上げられる。
2)改定後の動き
・現在、中医協において前回改定の検証と して、救急医療等の充実・強化のための 見直しの影響調査、外来管理加算の要件 見直し、地域医療貢献加算創設の影響調 査、後発医薬品の影響調査、明細書発行 原則義務化後の状況調査を行っている。
・長妻厚生労働大臣が衆議院厚労委員会 で、介護療養病床を2011 年度末までに 廃止することは困難と表明した。
・中医協における優先審議事項として、医 療介護の同時改定、医療従事者関連(勤 務医の負担軽減)が認められ、現在審議 している。
(4)医師養成、医療の質の保障をどう作るのか
1)医学部入学定員の推移
・2007 年度を基準とすると、2008 年度 168 人、2008 年度861 人、2010 年度に は1,221 人の増である。新設医学部の定員を仮に100 人とすると、2010 年度ま でに既存医学部で増加した1,221 人は約 12 大学分に相当する。
2)初期臨床研修制度の功罪
・功の部分は、日本で遅れていた医学教 育・研修教育システムの飛躍的発展。
・罪の部分は、深刻な地域医療提供体制問 題を加速、危機的、使命感の欠如した医 師の増加。
3)日医の提案する医学教育改善のポイント
・知識教育偏重の改善。
・4 年次終了時に行われる共用試験後、学 生医師の資格を授与。
・5 年次・6 年次の見学研修化している BSL 改善。
・卒業時に行われる医師国家試験は臨床応 用問題にする。
・初期臨床研修を参加型研修へ。
4)現在の専門医制度の問題点について
・専門医制に混乱が生じている。
・学会によって会員数に対する専門医の比 重の差が大きい。
・学会によって専門医認定基準が異なる。
・専門診療科の区分が不適当である。
・真に必要な診療科別診療科別専門医数 が検証されていない。
・臨床研修修了後の研修と専門医制との関 係が曖昧である。
以上の問題点に鑑み、日本専門医制評 価・認定機構は「専門医制度の基本設計」 として、個別学会の専門医制度から診療領 域の専門医制度とする。専門医を認定する 団体は新たに組織する第三者機関とし、専 門医の名称は新たな第三者機関認定専門医 とするとの考えを示した。
(5)税制の問題・その他
1)事業性に係る特別措置について
・平成22 年度の社会保険診療報酬に対す る事業税非課税の存続措置は、当初、地 域医療の崩壊を防ぐため来年度も継続する。なお、今後特に経営的に厳しい環境 に置かれている歯科に配慮し検討すべき であると謳われていた。その後、我々も 努力をして、歯科をはじめとする医療機 関と修正して貰い、事業税非課税の存続 が認められた。4 段階税制もしかりであ る。
2)政治の現状
・税制の対応でもお分かりのとおり、政治 との関わりが重要であるとの認識を持つ 必要がある。
・小選挙区制度施行後、大衆受けをする政 治家が選挙に勝つようになり、衆愚化し ている。
・医療についても本質的に議論する力が弱 くなった。
・会員の先生方には政党支持はどこでも良 いので、是非政治への関心を持って欲し い。
3)日本医師会が主張する医療制度の原則
・国民皆保険制度と自由開業医制、現物 給付と従来から変わらない。しかしなが ら、諸問題が発生している。国民皆保険 制度に当たっては、現状の制度を維持す るために財源をどう確保するのか。自由 開業制の場合、地域や診療科の偏在をど う解決するか、現物給付の中で現金給付 も行われており、どう整理するか議論が 必要である
4)医療政策の構築
・日本医師会、日本医師連盟の政治的スタ ンスは、政党に左右されない医療政策提 言をすることであり、そのためには会員 が力を合わせる必要がある。
・今後、医療政策を構築に際しては、郡市 区医師会は各地域の保健、医療、介護に ついて、住民・自治体などから様々な問 題を把握し、自治体を交渉を行う。都道 府県医師会は郡市区医師会から解決すべ く政策につき意見を受け、行政と交渉を 行うと共に、日医への政策提言を行う。
日医は、各都道府県の要望を受け、国行 政や政治との交渉を行うと共に、将来のわ が国の医療政策・理念を提言する。従っ て、現場に立った政策と理念の調和が受容 である。
まとめ
・医学医術の恩恵は、社会生活と遊離しては 存在しない。そして、医師会の存立使命 は、社会生活と医師を繋ぐ帯紐であって、 これにより、医師のあり方や進み方が決め られるものと考える。
・すなわち、医師は進んで医師会に加入する ことで、社会に対する医師としての責務を 認識すると共に、医業の正当なる名誉と適 正なる対価を、医師会活動を通じて保持し ていかなければならない。
・そのためにも、医師会員の融和団結を強固 にしていくことは、団体の自立的使命であ ると考える。
質問
□長崎県
前回の日医代議員会において、勤務医が入会 したいが、入退会の手続きが煩雑でなかなか難 しいとの話しがあった。それを受けて日医は手 続きの簡素化をめざし、アンケート調査を実施 したが、調整が上手く行かず今回は見合わすと 言うことであった。どうしたら上手くいくのか。
■横倉副会長
まず、各都道府県の定款を変えて、勤務医が 郡市区医師会を異動するときに入会金を取らな いこと等配慮して貰う必要がある。
また、日医では新たな施策として、研修医は 会員ではなくても学術分野のサービスが受けら れるようにして、今後の入会促進を図りたいと 考えている。
印象記
副会長 小渡 敬
平成23 年3 月12 日、鹿児島県の指宿白水館において九州ブロック日医代議員連絡会議が開催 されました。前日に東日本大震災が起こりましたが、被災の状況も充分に分らず、九州ブロック の担当県である鹿児島は今年度最後の会議ということで無理をおして開催したものと思われます。 会議は委員会報告2 題と横倉副会長の「中央情勢・医療制度の変革期」という演題で特別講演が 行われました。委員会報告は介護保険の委員である嶋田丞先生によって行われましたが、次期介 護報酬改訂についての話は全く触れられませんでした。また有床診療所に関する検討委員会の鹿 子生健一先生から話がありました。前回の診療報酬改訂で有床診療所に多少配分したとされてい ますが、経営実態調査ではまだまだ厳しいと報告されていました。横倉副会長の話は有益な話で あったので会員のみなさんも本文を一読して頂きたいと思います。現政権の医療政策は過去の小 泉改革と同じ事をしていることが分ると思います。
今回は大震災のことがあって気分が沈み、2 次会は行われませんでした。東北地方の被災地の 早い復興を願っております。
印象記
常任理事 安里 哲好
九州ブロック日医代議員連絡会議は鹿児島県指宿の白水館で行われた。池田哉九州医師会連 合会長の挨拶のあと、例年のごとく、九州から選出された日医委員会の二人の委員からの報告が あった。今回は、嶋田丞委員(大分県)は「医療と介護の同時改定に向けたプロジェクト委員会」 の報告を、鹿子生健一委員(福岡県)は「有床診療所に関する検討委員会」の報告を、日本医師 会横倉義武副会長は「中央情勢報告」について述べていた。
横倉副会長の報告の中で印象に残った点を列記したい。1)各政党の医療政策が何故か似かよっ てきている。超党派議連で医療問題を議論した結果。医療費を上げないと地域医療が確保できな いことへの共通認識。財源のない中でどう解決するか。2)公的医療保険制度の基本理念(日医) として、すべての国民が同じ医療を受けられる制度、すべての国民が支払い能力に応じて公平な 負担をする制度、将来にわたって持続可能性のある制度。そして、2025 年以降に、高齢者医療制 度、国民健康保険そして被用者保険を全国一本化する道筋(概念図)を提示している。3)病床規 則の見直しに関しては、現行においては、増床は知事の許可を要し、基準病床を上回る地域では 原則許可されず、特別の許可も厚生労働大臣の同意が必要。規制改革で、地域に権限を全面的に 委譲し、病床過剰地域でも大臣の同意は不要と言う提案だが、日医は現行制度の廃止に明確に反 対を表明している。4)平成22 年度診療報酬改定は10 年ぶりのネットプラス改定率で、ネット+ 0.19 %、本体の改定率+ 1.55 %、医科+ 1.74 %、入院+ 3.03 %、外来+ 0.31 %。病院・診療 所別の医療保険医療費の対前年上半期は病院入院+ 6.7 %、病院入院外+ 2.9 %、診療所入院外+ 1.1 %と報告していた。5)2010 年度までに既存医学部で増加した定員数1,221 人は約12 大学分 に相当する。6)初期臨床研修制度の功罪と医学教育の見直し(共用試験・徹底した臨床実習、卒 後研修、専門研修、生涯研修)7)政治の現状については、選挙制度改革以降は政治が衆愚化し、 医療についても議論する力が弱くなっており、政党支持は何処でも良いので政治への関心を医師 は持って欲しい。8)日医の主張する医療制度の原則は国民皆保険制度、自由開業性、現物給付で あるが、制度の維持・財源等の問題、医師の偏在(地域・診療科)等の問題、現金給付等の諸問 題が伴う。9)現場に立った医療政策と理念の調和において、郡市医師会の役割、都道府県医師会 の役割、日医の役割について述べていた。10)終わりに、※医学医術の恩恵は、社会生活と遊離し ては存在し得ないものです。そして、医師会の存立使命は、社会生活と医師とを繋ぐ紐帯であっ て、これにより、医師のあり方や進み方が決められるものと考えます。※すなわち、医師は進ん で医師会に加入することで、社会に対する医師としての責務を認識するとともに、医業の正当な る名誉と適当なる対価を、医師会活動を通じて保持していかなければなりません。※そのために も、医師会員の融和団結を強固していくことは、団体の自立的使命であると考えと述べていた。
今年度5 回目の鹿児島での会議は薩摩半島の突端にある指宿の旅館白水館で開かれた。そこは 古く格式のある旅館のようで、庭に緋寒桜が咲いていた。隣接する薩摩伝承館は赤松に囲まれ人 工池の上にあり、水盤に浮かぶ宇治の平等院鳳凰を模した造りとなっており、幕末から明治にか けて、ひときわ輝いた薩摩の歴史と文化を伝えている。その中に、薩摩琉球国と記した展示物が あったのが印象に残った。次年度は佐賀県で、3 年後は沖縄県が担当県となる。