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平成22年度 学校保健講習会報告

宮里善次

理事 宮里 善次

平成23 年2 月19 日、日本医師会館において 平成22 年学校保健講習会が開催された。

初めに文部科学省の有賀玲子学校保健対策専 門官から『最近の学校健康教育行政の課題につ いて』と云う演題で発表があった。

学校における感染症流行の予防は児童生徒等 が健康な状態で教育を受けるためには重要であ る。特に平成21 年度のインフルエンザ(H1N1) 2009 の流行に際して、文部科学省は関係省庁 と連携しながら必要な対策を実施した。

また、平成19 年度における高校・大学を中心 とした麻疹流行を受け、平成20 年4 月から5 年間に限り、中学1 年生及び高校3 年生に相当 する年齢の者を定期予防接種の対象者とした。 さらに学校におけるアレルギー疾患への対応の 一環として、「学校のアレルギー疾患に対する 取り組みガイドライン」と「学校生活管理指導 表」を作成し、平成20 年4 月から各学校に配 布した事を述べられた。

次に日本産婦人科医会女性保健委員会委員 長の山本宝先生から『思春期の健康教育、産婦 人科の立場から』と題して発表があった。

思春期特有の無月経と性感染症について述べ られたが、子宮頚癌のHPV ワクチンにつなが る資料として、思春期女子の性交経験率の変化 を示された。日本性教育協会のデータによれば 2005 年度は中1 で約2 %、中2 :約4 %、中 3 :約8 %、高1 :約18 %、高2 :約25 %、 高3 :約42 %である。HPV ワクチンの公費負 担を中1 〜高1 にした参照データと思われる。

3 番目の講演として、日本産婦人科医会常務 理事の安達知子先生から『子宮頸ガンにおける HPV ワクチンの意義』と題して発表があった。

全女性の癌死亡では大腸癌が第1 位で、子宮 癌は5 位である。子宮頸癌にかぎって云えば、 この20 年で著明に減少しているが、20 歳代お よび30 歳代前半の若年層では増加しており、 死亡率も高い。しかしながら子宮頚癌の95 % はHPV 陽性で、唯一原因の分かっている癌、 すなわち予防できる癌である。HPV は約100 種類発見されているが、頸癌に関与するハイリ スクグループは15 種類、その中でもHPV16、 18 株は日本人の約60 %の陽性である。HPV 感染は性交時感染がほとんどで、性交経験者の 60 〜 70 %は少なくとも一度は感染したことが あり、健常女性の10 〜 20 %に検出される。し かし、感染があっても90 %の方は6 ヶ月〜 2 年 の間に陰性化し、残り10 %が持続感染し、そ の中から異型性や前癌病変、子宮頸癌に変化す るのはその一部の人である。HPV ワクチンで 予防できる癌なので、初交前のHPV ワクチン 接種と定期がん検診が理想である。

なお、ワクチンは初回筋注一ヶ月後に2 回 目、さらに2 回目から6 ヶ月後の3 回目を受け なければ効果は得られない。

以上3 演題の講演は学校における1)性教育 (語られなかったが)→A女生徒の年代別性交 経験率→B HPV ワクチンの意義に連なる講演 であったと理解している。

最後に“普通学校における高機能自閉症の子 どもをどのように考えるか”と題して、シンポ ジウムが開催された。

@医師の立場から、A臨床心理士の立場から、 B養護教諭の立場から、C保護者の立場から、 各々発表がなされ討議が行われた。

医師から自閉症スペクトラム障害について説明があった。

1.自閉症の3 障害

  • 1)社会性の障害
  • 2)コミュニケーションの障害
  • 3)想像力の障害

2.これらは知的障害を問わず、社会生活を送 る上での困難をもたらしている。

3.知的障害のない群を高機能自閉症とする。 特に社会で暮らしてゆくためは、

  • 1)我慢が必要な時は我慢する。
  • 2)交通ルールなど最低限必要な社会ルールは守る。
  • 3)挨拶など基本的な社会習慣は守る。
  • 4)パワーを発揮できる場所をつくる。

治癒するような疾患ではないので、結論めい たものは出されなかったが、自閉症であるが知 能は正常であることを認識し、接することが重 要であると強調された。