常任理事 真栄田 篤彦
去る2 月24 日(木)、日本医師会館におい て、標記シンポジウムが開催されたので、概要 を以下のとおり報告する。
当シンポジウムは、都道府県医師会における 会員の倫理・資質向上に向けた取り組み、特に 患者からの苦情や相談に対する対応や苦慮した 事例などについての情報交換、問題の検討を行 い、さらなる医療倫理の向上を図ることを目的 に開催されたものである。
1.挨 拶
原中会長から概ね次のとおり挨拶があった。
倫理というものは職業的倫理、生命倫理、 経済的倫理が合わされて初めて私たちの倫理感 となる。昨日医道審議会に出席したが、残念 ながら59 人の対象者が出ており、その中で医 師免許取消が複数出ている。その内容には医 師の業務でなく、人格的に疑問を感じる例もあ る。また、診療報酬の不正請求が大きな問題 となっており、診療報酬請求にはグレーゾーン の部分があり、それが黒として判定された場 合、返還金によって医業停止が生じてしまう。 日本医師会としては、先ずそのグレーゾーンを 明確にして先生方が正々堂々と信念を持った 請求が出来るようなシステムを作らなければな らないと考える。
非会員の犯罪が非常に多くなっている。医師 会に入ることは大学でいえば医局に入ることで ある。この医の倫理ということから、いろいろ な医師会活動が広がっている。是非若い先生方 の入会を勧めると同時に、医師会の入会が何の メリットになるかということではなく、医師と してお互いの話し合う場所(医局)であるとい うことを説得されて入会率を高めていただけれ ば、それが世の中の人々の医師に対する信頼度 を増すことになるだろうと思う。
2.「会員の倫理・資質向上委員会」活動報告
日本医師会会員の倫理・資質向上委員会森 岡委員長から資料に基づいて次のとおり報告が あった。
平成10 年2 月に「会員の倫理向上に関する 検討委員会」を発足し、最初に昭和26 年に制 定した「医の倫理」を改定し、「医の倫理綱領」 として平成12 年4 月に第102 回定例代議員会 で採択された。その後いろいろな問題について の具体的な医師会の見解が必要とういうこと で、平成16 年2 月に「医師の職業倫理指針」 を作成し、倫理の実践について検討を重ねてき た。その中で都道府県医師会が倫理の実践に関 して重要な役割を担っているということを答申 し、それを基に自浄作用活性化委員会が発足さ れた。当委員会の答申には、自浄の啓発、報道 に対する対応、会員の除名処分および再入会、 非会員に関する諸問題等について具体的方針が 述べられている。
これまで様々な活動を行ってきて、本当に会 員の倫理、資質が向上するのかという疑問も 時々あったが、日医が作成した「医師の職業倫 理指針」は医学部の学生や研修医が結構利用し ており、少しは評価していただけたのかと思う。
また、医事関係訴訟事件の新受件数(年次推 移)をみると、右肩上がりにどんどん増えてい た訴訟件数が、平成16 年頃から減少に転じて いる。この原因についていろいろなことが言わ れているが、我々が努力してやってきたとこが 一つの原因ではないかと考える。
3.都道府県医師会における患者の苦情情報に 基づく倫理問題への取り組み
藤川常任理事から資料に基づいて次のとおり 報告があった。
○診療に関する相談窓口について
「設置している」と回答したのは46 医師会。
「設置していない」と回答した1 医師会も、「苦情相談が多数寄せられるので総務課を中 心に対応している」とのことであった。
○行政機関等との情報交換の頻度とその交換先 について
「情報交換あり」が37 医師会(78.7 %)、「情 報交換なし」が10 医師会(21.3 %)であっ た。「情報交換あり」と回答したなかで、交 換頻度については、「1 年に1 回程度」が18 医師会ともっとも多く、次いで「随時」が9 医師会であった。情報交換を行っている相手 先については、最も多かったのは県の担当課 で23 医師会、次いで医療安全支援センター が21 医師会であった。
○過去3 年間(H19 〜 21 年度)の苦情相談について
全国の都道府県医師会で受付した苦情相談件 数は、H19 年度3,545 件、H20 年度3,444 件、 H21 年度3,610 件、全体で10,599 件となっ ている。なお、件数を記録していない医師会 もあることから、大都市圏を中心に結果より も多い件数が寄せられていると考えられる。
○過去3 年間の苦情相談の受付方法
電話が最も多く9,244 件(87.2 %)、その他 医師会に来館334 件(3.2 %)、手紙・FAX など280 件(2.6 %)と文書で相談するケー スもあった。
○過去3 年間の苦情相談相手別件数について
患者本人が最も多く6,389 件(60.3 %)、次 いで患者の家族などが2,732 件(25.8 %)、 その他医師からの苦情相談もあった。
○過去3 年間における苦情相談内容
「医師・職員の対応」が2,742 件(25.9 %)、 次いで「治療内容」が2,706 件(25.5 %)。 その他「精神科・心療内科領域」1,061 件 (10.0 %)、「医療費(診療報酬など)」1,043 件、「医師の説明」1,026 件などがあり、「カ ルテ開示」については313 件(3.0 %)であ った。
○苦情相談において対応に苦慮した事例について
24 医師会から58 件の事例報告が寄せられ た。内容別に見ると、「医師・医療機関の対 応や診断・治療に対する不信」15件(31.9 %)と最も多く、次いで「悪質なクレ ーマー・モンスターペイシェント」が13 件 (27.7 %)、「被害妄想・精神疾患患者・認知 症の高齢者」が12 件(25.5 %)であった。
○会員の倫理・資質向上(自浄作用活性化)に むけての委員会設置状況
「委員会あり」と回答したのは3 1 医師会 ( 6 6 . 0 % )、「委員会なし」が1 6 医師会 (34.0 %)であった。
○会員の倫理・資質向上に向けた取組み
具体的な取組みの内容については、「委員会 を開催し、意見交換」が19 医師会(40.4 %) と最も多く、その他「倫理に関する講演会開 催」7 医師会、「啓発文を会報に掲載」5 医師 会、「事例集作成による情報提供」3 医師会 等があった。
○その他、行政処分を受けた日医会員に対する 再研修の実施状況及び各都道府県医師会から 寄せられた会員の倫理・資質向上を図るため の日医への要望事項等について報告があった。
1)東京都医師会
江本秀斗理事(会員の倫理・資質向上委員会 委員)から、東京都医師会の診療に関する相談 事業の流れについて、患者さんからの苦情・相 談を相談窓口で受付して事務局が初期対応を行 っているが、そこで苦情を当該医療機関へ伝え る等して半数がそこで治まっている。初期対応 で終結できない苦情相談は、学識経験者、弁護 士、一般の都民、医師会員で構成された「診療 情報提供推進委員会」でそれぞれの案件につい て方針を立てて、各委員が担当して実際に医師 に連絡をして苦情を伝え、その結果を患者さん へ報告する等して対応しているが、中には長期 に亘って遣り取りするケースや医事紛争に発展 するケースもある旨説明があり、引き続き東京 都医師会の相談窓口に寄せられた苦情相談事例 の紹介とその事例を項目ごとに分析した結果に ついて次のとおり報告があった。
○医師及び職員の対応
苦情はやはり職員の患者さんに対する接遇に 関わるものが多い。プロフェッショナリズム に関しては自分の置かれた状況が医業である ことを認識する必要がある。
○医師の説明
医師の言葉遣いや態度が患者さんへ不快を与 えたり、説明が分からないといった苦情が 大多数であった。医師が説明をおこなう際、 とりわけプロフェッショナリズムを欠いた言 葉遣いと態度は全ての医療行為において問題 となる可能性がある。
○カルテ開示
カルテ開示に応じないとういう苦情の背景に は、開示に関する書類の記載そのこと自体を 面倒くさがる様子や、診療・検査・投薬等の 不備を指摘されるのではないかとの疑念から 生じる隠匿性を含むもの等が上げられる。事 例から医療側がはじめから患者さん側に対し 拒否反応を示していることが特徴で、これは プロフェッショナリズム、コア技術・知識、 コア能力のいずれかの欠如にあてはまるので はないかと考える。
○精神科・心療内科領域
相談者の怒り、不満、あせり、悩みを受け止 めて、場合によっては共感していくような カウンセリング的技法が対応原則となる。そ のためには、相談を受ける側に一定の専門 性が要求されるが、これは精神科・心療内科 領域から寄せられる相談の対応に限っての 話しではない。このようにカウンセリング的 技法の質を保証するためには、専門職の確 保または相談担当者への研修などが望まれる。
2)愛知県医師会
大輪芳裕理事から愛知県医師会の医療安全へ の取り組みについて紹介があった。
○愛知県医師会の医療安全対策
3 本立てで行っており、1)患者側からの医療 に関する苦情相談に対応し、医師である専門 委員が問題解決に向け仲介する「医療安全支援センター」、2)医事紛争のなかで金銭に関 わるものに対応する「医療安全対策委員会」、 3)モンスターペイシェントに対する対応やカ ルテ開示に関する対応等会員からの相談が非 常に増えてきたため、会員の福祉に寄与する ことを目的として、昨年新設した「会員相談 窓口」となっている。
○医療安全相談センターの相談方法
専任の相談職員(専任2 名・兼任2 名)を配 置し、相談業務に従事。医学的な専門知識を 要する相談については、各医会から推薦され た専門の医師が相談に対応している。
当支援センターの構成は、各医会から推薦さ れた医師、医師会役員、弁護士、学識経験 者、愛知県女性団体連盟から推薦された市民 となっている。また、県の委託事業であるの で、オブザーバーとして行政機関担当者が出 席している。
○医療安全への取り組みについて
・苦情相談の対象となった医師について、「苦 情相談関係医師等事例検討会」を開催し、 出席を要請。
・医療安全に関する講習会の開催。
・事例集・講習会報告書を作成し、医療側への啓発を実施。
・県民向けにパンフレットを作成し、情報提供。
3)滋賀県医師会
折田雄一参与(会員の倫理・資質向上委員会 委員)から、滋賀県医師会の自浄作用活性化に 向けた取組事例について、猥せつ罪で逮捕され た医師本人から任意の退会届けが提出され、地 区医師会から県医師会に相談があり、県医師会 で聞き取りを行ったところ、医師は犯行を素直 に認めたので、裁判・判決以前に除名を行っ た。また、出産直後に子どもが死亡、当産科医 は基本技術が出来ていなかったため、県医師会 理事会の承認を得て、産婦人科医会経由で地域 大学での再教育を受けてもらった旨紹介があ り、倫理に違反した医師に対して医師会が懲 戒、更生を行う前に、対象の医師が退会してし まう問題があると指摘。原則として自由退会を 認める一般社団、財団法人法の改正を働きかけ るよう日医に求めた。
4)福岡県医師会
山岡春夫常任理事から福岡県医師会におけ る倫理・資質向上の取り組みについて紹介が あった。
○「医道五省」の設置
昭和55 年4 月に医道倫理委員会を設立。そ の際に日常の診療に携わるうえでの医師の倫 理綱領として、1.生命を尊重し医療の公共性 に基づき社会に奉仕しているか、2.誠実と愛 情をもって診療を行い患者の信頼を得ている か、等「医道五省」を設置した。
○「医療よろず電話相談」
昭和61 年8 月より、県民の医療に対する疑 問、不安などに答えるために「医療よろ電話 相談」を開始し、毎週木曜日の午後5 時から 7 時までの2 時間、理事が輪番で対応してい る。相談内容は、殆どが医療に関する苦情で ある。
○診療情報共有福岡宣言
インフォームド・コンセントの在り方、会員 の倫理意識の向上、医療過誤の再発防止など を目指して、また、平成11 年1 月の横浜市 立大学附属病院患者取り違え、2 月の都立広 尾病院取り違え事件など医療不信を払拭する ため福岡宣言を発信した。これを受けて「診 療情報総合相談窓口」を開設し、平日午前9 時から午後5 時まで、土曜日午前9 時から正 午まで受付して職員が対応している。
○その他、対外的方策として、1)県民公開講 座、2)医療モニター会議(県内4 ブロックそ れぞれ10 名の県民を募集し医療に関して意見 を聞く)、対内的方策として、1)ハートフル研 修会(患者側弁護士、県行政が講師となって 行政によせられた苦情、訴訟事例等をもとに 研修)、2)安全管理研修会等を行っている。
会員の倫理・資質向上委員会樋口範雄副委 員長並びに羽生田副会長の座長の下、4 名のコ メンテーターから、会員の倫理・資質向上につ いて次のとおりコメントがあり、引き続き質疑 応答に移った。
1)石川育成(元自浄作用活性化委員会委員 長・岩手県医師会長)
昨日行政処分対象者が発表された。医師免許 取消(医科)3 名のうち2 名が強制猥せつ、準 強制猥せつとなっており、最近猥せつによる行 政処分がうなぎ上りに増えている。
平成14 年に坪井会長が近年の医師の不正行 為、反社会的行為が報道される度に日本医師会 に対する国民の声が厳しくなり、医師の自浄作 用活性化の必要性を強調して日本医師会に自浄 作用活性化委員会を立ち上げた。発足当初は会 員から今何故唐突に自浄作用活性化なのかとい う意見があったが、次第に重要性が認知される ようになってきた。その後植松会長、唐澤会長 が本事業を継続してきた。当委員会は、会員の 倫理・資質向上委員会と車の両輪の関係にある。
当委員会に残された作業は自浄作用活性化が 都道府県医師会、郡市区医師会にどの程度浸透 しているか、これを検証する責任があると思っ ている。本日のシンポジウムも検証の一助にな ると思う。
2)畔柳達雄(日本医師会参与、弁護士)
石川先生が猥せつが非常に多いと話された が、猥せつという括り方には問題があり、今回 医師免許取消になったのは刑法犯だと思う。猥 せつで一番多いのは条例違反で、刑法犯は少な い。どういう年齢かというと大学を出て間もな い医師が圧倒的に多い。私はどちらかというと 悪い人は排除するという考え方である。
3)行天良雄(会員の倫理・資質向上委員会委 員、医事評論家)
世界を回って一番感じたのは日本の皆保険制 度というのは空前絶後の制度であって人類史上 こんなにいいものはないということである。殆 どの医療機関は、往診等特殊なケースを除い て、経済行為で言えばお客さんがやってきてく れる仕事である。しかも支払いに関しては特殊 なケースを除いてレセプトが戻ってくることは ない。皆保険がもたらした最大のプラスは一般 国民の安心と同時に医業の安定性であるが、残 念ながら国民はこれを権利として捕らえ多少の 問題も出てきている。医師側はその実態を殆ど 理解されていない。昨今であると朝から晩まで 非常に忙しいと言うが、どんな商売でも忙しく て時間が取れないというのは殆どない。これを どういうふうに評価し考えていただけるかが問 題である。皆保険制度の中で日本の医療が動い ており、基本的にここでの違反者に対しては毅 然たる態度をとらなければならないと考える。 また、医師であれば日本医師会に入らなければ ならないと強く思う。
4)北村聖(会員の倫理・資質向上委員会委員、 東京大学医学教育国際協力研究センター教授)
東京都医師会の江本先生の話しにもあった が、いろいろな問題があってもプロフェショナ リズムの問題或いはコア能力・知識の問題に帰 することが多い。本シンポジウムは苦情情報か ら始まり、言ってみれば医師の平均より下の人 或いは法律を犯した人の話が中心となったが、 実は教育の方は平均より上にあがろうという話 をしている。どういうことかと言うと、製薬メ ーカーから弁当をもらって話を聞いて薬を買っ ていいのか、製薬メーカーからもらったボール ペンでその薬を処方していいのかというような ことを学生達に問いかけている。法律違反では ないが、医師たるもの自分の信念でやりたいと いうならばそういうことは止めようというよう な教育をしている。畔柳先生が話されたよう に、悪い医師を排除し、いい医者を高める。そ のためには医師としての集団がしっかりしない といけないと思う。
質疑応答
○質問:クレームは医療の世界の話だけではな い。社会全体の中で起こっている。位置づけ をきちんとしないと医療だけが特化した形になる。
●回答:日本全体で考えていかなければならな い問題だと思う。どこでもクレームの窓口を 全部事務員に下ろしてしまっている。それが 一つの大きな問題である。イオンという会社 は、クレーム相談の人のために精神科医をつ けて、何ヶ月かに1 回診断をしてもらうとい う配慮をしている。
○質問:医師会の先生が専門委員として医師に 注意すると医師すらもキレてしまうというの が現実である。そういった医師自身現代の世 相の中で動いてきている。現代の世相の問題 としか言えない。
●回答:教育の中では、倫理観に悖る安全でな い医師の問題或いはお金が大好きな医師の問 題、このような問題をどうするのかというの を問いかけている。落ち着くところは、患者 の不利益にならないように個人を追及する前 に、語弊があるかもしれないが医局の問題と して取り上げて更正させる或いは場合によっ ては排除する。見て見ぬふりをせず、危ない と思ったら医局長などに相談すること。医局 全体で考えることを教えている。
○質問:患者の倫理の問題もある。患者さんの クレームにはバカバカしい内容が随分ある。 病院で患者さんのクレームが評価にあたるか どうか判断する部署が必要ではないか。
●回答:クレームには、モンスターペーション トみたいなとんでもないクレームと理不尽な クレーム、良いクレームの三段階に分けられ る。クレームを言う人の影には10 人位同じ ことを思っている人がいる。良いクレームの 場合、それを真摯に対応してくれることによ って、残り9 人が、ここの病院は直してくれ たんだと患者さんが去らない。ためになるク レームは拾い出さないといけないので、クレ ームを一括りにしなければいいのではないか と考える。
○質問:人間としての倫理と医師の倫理という のでは少し違うのではないか。少しだけ悪い 心を持った人間は教育や指導で良くなると思 うが、たくさん悪い心を持った人間もいるの で、その人を更正させるのは難しい。そこを 分けて考えなければならないのではないか。
●回答:患者さんからの苦情を集めるだけでは なく、愛知県医師会のように会員からの苦情 相談を集めて上手く対処した事例等を紹介し て、全体で共有して学んでいけたらと考える。
印象記
常任理事 真栄田 篤彦
シンポジウム「会員の倫理・資質向上をめざして」に参加してきたが、平成22 年度も医道審議 会で59 名の医療人が審議され、一部医師免許取り消しが複数出たとのこと。そこでは診療報酬の 不正請求が大きな問題となったとのことで、診療報酬請求にはグレーゾーンの部分に関して日医と しては、先生方が正々堂々と請求できるようなシステムを作らなければならないと強調していた。
都道府県医師会における患者苦情情報に関しては、その苦情内容で最も多かったのは「医師・ 職員の対応」が一番(25.9 %)でその次が「治療内容」(25.5 %)、その他「精神科・心療内科領 域」(10 %)「医療費(診療報酬など)」「医師の説明」とのこと。「カルテ開示」に関しては3 % 程度とのこと。
都道府県医師会の取り組みの紹介として、東京都医師会では、初期対応が難しい苦情相談に関 して学識経験者・弁護士・一般の都民・医師会員で構成した『診療情報提供推進委員会』を立ち 上げて対応しているとのこと。
沖縄県医師会では県民からの苦情に対して、会員の先生方に年間の苦情情報データとして具体 的事例を送付報告しているが、当県も全国的な苦情と同じく、インフォームドコンセント不足か らくる苦情が多いので、日常診療のなかでもこれら事例を参考にして、スタッフ一同で苦情が起 こらないようディスカッションしていただきたい。倫理向上に関する取り組みに関しては種々報 告があったが、県医師会でも継続して勉強会等を検討していきたいと思う。
常任理事 稲田 隆司
倫理、道徳を語る事は自らを振り返りウチアタイするが、一方で医師会が自らの倫理・資質向 上を目指して身を律していく事は専門家集団として当然の責務と考える。
改めて日本医師会の医の倫理綱領を記してみる。
1.医師は生涯学習の精神を保ち、つねに医学の知識と技術の習得に努めるとともに、その進歩・発展に尽くす。
2.医師はこの職業の尊厳と責任を自覚し、教養を深め、人格を高めるように心掛ける。
3.医師は医療を受ける人びとの人格を尊重し、やさしい心で接するとともに、医療内容についてよく説明し、信頼を得るように努める。
4.医師は互いに尊敬し、医療関係者と協力して医療に尽くす。
5.医師は医療の公共性を重んじ、医療を通じて社会の発展に尽くすとともに、法規範の遵守および法秩序の形成に努める。
6.医師は医業にあたって営利を目的としない。
ヒポクラテスの誓いから始まり、この倫理に照らして自らは如何であろうか。我々に日々問わ れる課題であろう。
今回の日医シンポジウムは全国の状況、具体的な取り組みが学べて有意義であった。
クレームにも様々な性質があり、受けとめるべきは受けとめ、改善に繋げていく、しかし、理 不尽なクレームには断固とした組織対応をためらわない。この複雑でデリケートな作業を特に愛 知県医師会は丁寧に行っており、県医師会業務にも取り入れたいと感じた。