理事 宮里 善次
去る11 月27 日(土)、福岡県医師医会館にて標記会議が開催されたので報 告する。
福岡県医師会の野田副会長より、概ね以下の 通り挨拶があった。
「本専門委員会も早いもので25 回目の開催 を迎えることが出来た。これも各県の先生方や 関係者のご尽力の賜物であると感謝申し上げる と共に、これからも学校検診のより一層の充実 を図っていきたいと考えている。今回は、心臓 部門、腎臓部門、小児生活習慣病部門への提案 事項が合計10 題出されている。皆様方の十分 なご協議をお願いしたい」
挨拶の後、心臓部門、腎臓部門、小児生活習 慣病部門においてそれぞれ協議が行われた。
1)心臓部門
<提案理由>
福岡市立こども病院を受診される各県の事例 から、宮崎県が受診票(検査結果の報告書)を 福岡県に準じて改定されたことが確認できた。 他の地域から児童生徒が持参する書類は、地域 により様式のばらつきが大きい。用紙はなく口 頭で行っている地域、学校生活管理表の記載の みを診断書代わりとする地域、指定の様式がな く、内容を記載して使用している地域などが見 られる。いろいろな課題を乗り越えて、報告書 の統一にむけて前進したい。報告書の統一は、 情報の電子化に有用で、情報が共有しやすくな る。各県のご意見を伺いたい。
<提案理由>
昨年度の本委員会で、福岡県の様式を、九州 統一の心臓病調査票および精密検査受診票・ 成績表として採用していくことが決定された が、その様式について、いくつか要望事項をあげたい。
・心臓病調査票について
1)生年月日を入れる(今年度、宮崎市郡医師会では独自で入れた)
2)質問2 − 21 この1 〜 2 年の間に、突然倒 れ、気を失ったことがあるの詳細理由で「て んかんなどの神経系の病気」とあるが、心臓 病調査なのでこの項目は不要ではないのか
3)質問3 − 33 「父・母・兄弟姉妹に生活習 慣病の人、またはこれらの病気で亡くなった 人がいる」で、今の時代生活習慣病の人(特 に肥満の人)は大勢いるので、この質問は 「亡くなった人がいる」に限定してはどうか
・学校心臓精密検査受診票・成績表について
1)氏名にふりがなをつける
2)問診にある身長は単位がm ではなくてcm の ほうが良いのではないか
3)同じく問診の既往歴にCHD とあるが、日本 名の先天性心疾患にした方が保護者の方がわ かりやすいのではないか。
協議の結果、心臓部門においても、診断名、 重症度、管理方法を九州管内で統一していくこ ととし、精密検査受診票については、小児科の 専門医で作成していくことに決定した。
なお、各県で使用している問診票、学校心臓 精密検査受診票・成績表を参考までに提出して 頂くことになった。また、調査票、受診票につ いては、福岡県のものをベースに、九州管内で 統一という方向で検討していくこととした。
提案事項1 と提案事項2 は、一括して協議が 行われた。
<提案理由>
独立行政法人日本スポーツ振興センターは、 義務教育諸学校、高等学校、高等専門学校、幼 稚園及び保育所の管理下における災害に対し、 災害共済給付(医療費、障害見舞金又は死亡見 舞金)を行っており、このHP からの全国の事 例情報収集はきわめて有用である。一方、九州 ブロックとしては死亡例に限らずニアミス症例 も含めた、より細やかな情報収集が不幸な事例 予防に必要であろう。地域の情報(新聞など) を可能な限り、福岡県メディカルセンターに報 告いただくことをお願いしたい。
突然死・ニアミス事例として、熊本県医師 会及び大分県医師会より、以下の通り報告が あった。
熊本県
事例1 :高校生。サッカーの試合中に倒れ、無 呼吸(心肺停止)状態であった。AED 処置を 行い蘇生後、救急車で病院に搬送され、検査等 をするが特に異常もなく後日退院となった。
事例2 :小学生。バレーボールの試合中に倒れ た。その場にAED がなかったため、居合わせ た母(看護師)と他チームの監督(救急救命 士)が中心となり人工呼吸、心臓マッサージ等 を行った。5 分後にAED が到着し処置を行い、 心拍再開で病院に搬送された。精査の上心疾患 がみられ、後日手術施行し、後遺症もなく退院 となった。
大分県
事例1 : 7 歳男子。プールで溺れているところ を発見された。心臓マッサージやAED の使用 もするが戻らずに死亡となった。解剖の結果死 因は、溺死であった。
事例2 : 14 歳女子。校舎3 階の教室まで階段 で上がり、教室の入り口で失神発作を起こし た。意識等はあったがAED を10 分使用し、搬 送された。
2)腎臓部門
<提案理由>
同一検体を、試験紙法と定量とで検査する と、両者で乖離が見られることが往々にある。 この扱いについて御意見をお伺いしたい。
協議の結果、同一検体を試験紙法と定量とで検査すると、だいたい5 %弱位がポジティブに なっている為、今後他の検査紙との陽性率も含 め検討していくことになった。
<提案理由>
九州全体のスクリーニング陽性率と診断名の ウェブ登録の実施に向けた取り組みがなされて いる。
その基礎となる一次と二次の陽性の判定基準 の採用が九州学校検尿マニュアルに従ってなされ ているかを把握することが重要であると考える。
潜血、蛋白のカットオフ値(+)の採用につ いて、各県の状況をご教示いただきたい。
各県ともに、医師会が関与している部分で は、潜血、蛋白のカットオフ値(+)が採用さ れているが、関与していない部分では(±)を 採用しているところもあると報告があり、今後 引き続き(±)を(+)にしていくための検討 を行っていくことが重要であるとの見解が示さ れた。
<提案理由>
本マニュアルを改訂することについて今夏の 本協議会幹事会で承認して頂いており、その改 定内容について具体的協議をお願いしたい。
協議の結果、血清のIGA は必須項目として 取り扱うことに決定した。
<提案理由>
学校検尿の健診結果は毎年集計されている が、各郡市医師会の学校検尿担当者は役員改正 にて変わっていくため学校検尿の検診方法が十 分申し送りされないと学校検尿の診断基準が変 わる可能性がある。従って1 年間の検診結果を 集計する時にチェック項目を作ることにより診 断方法、診断基準の一貫性が保たれると考えら れる。
マニュアルの集計表に集計時のチェック項目 を追加することを検討していただきたい。
協議の結果、鹿児島県の二宮先生を中心にア ンケート用紙を作成して頂き、カットオフ値の 取扱いについて各県の状況を調査していくこと になった。
<提案理由>
CKD は日本慢性腎臓病対策協議会を中心に 具体的な行動を始めている。小児でも本年7 月 に第1 回の小児CKD 各都道府県担当者会議が 開催された。各県の現状をうかがいたい。
特に各県の報告はなく福岡県の伊藤先生よ り、本年7 月に第1 回小児CKD 各都道府県担 当者会議が開催され、今後様々なことに対して 検討していくことになっているとの情報提供が あった。
<提案理由>
本年度の精密検診後の暫定診断名の登録状況 をご報告する。
福岡県の伊藤先生より、来年の4 月以降は、 ウェブ上で暫定診断名の登録ができるようにな っているとの情報提供があった。
3)小児生活習慣病部門
<提案理由>
この小児生活習慣病部門が出来て15 年以上 経つが、なかなか先の見通しが立っていない。 何をどうすれば良いかを、もう一度考えてみて はと思い提案した。個人的なご意見、または各 県医師会としてのご意見でも結構なので、生活習慣病健診について皆さんの考えをお聞きかせ 頂きたい。
協議の結果、小児生活習慣病部門として、小 児生活習慣病のガイドラインを作成することが 決定し、作成の為の検討を早急に行っていくこ ととした。
次年度(平成23 年度)の日程について
幹事会、年次大会は、大分県において平成 23 年8 月6 日(土)、7 日(日)、専門委員会は 福岡県において平成23 年11 月26 日(土)に 開催したいとの報告があり、特に異議なく了承 された。また、8 月も各専門委員会を行って欲 しいとの追加意見があり、この後開催される九 州各県医師会学校保健担当理事者会で協議を行 っていただくこととした。