沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 2月号

平成22年度九州学校検診協議会専門委員会・
九州各県医師会学校保健担当理事者会

U.九州各県医師会学校保健担当理事者会

大分県医師会の嶋津義久会長より、概ね以下 の通り挨拶があった。

来年度の第55 回九州ブロック学校保健・学 校医大会並びに平成23 年度九州学校検診協議 会を、平成23 年8 月6 日(土)、7 日(日)大 分全日空ホテルオアシスタワーで開催する。大 会のメインテーマを「環境の変化とからだ−い ま、学校現場に何を求められているのか−」と し、年次大会では、教育講演3 題と、基調講 演、それにシンポジウムを開催する。また、分 科会の眼科部門では教育講演2 題、耳鼻咽喉科 部門ではパネルディスカッションと教育講演1 題に加え、第54 回大会において好評であった 運動器部門を引き続き開催する予定である。慎 重にご審議の上ご承認賜わりますようお願いし たい。

また、本日は沖縄県から2 題の協議事項を頂 いている。大変重要なご提案であり、これにつ いても活発にご議論を頂くようお願いを申し上 げ、簡単ではあるが開会挨拶とさせて頂く。よ ろしくお願いしたい。

続いて協議に移る前に、去る8 月に開催した 第54 回大会の担当県であった鹿児島県医師会 の江畑副会長より「8 月の大会については、各 県の先生方には大変ご協力を頂き、御礼を申し 上げる」とお礼の言葉があった。

大分県医師会嶋津義久会長を座長として協議 を開始した。提案議題は3 点で、提案要旨・各県回答の概要は次の通りである。

協 議

1.第55 回九州ブロック学校保健・学校医 大会並びに平成23 年度九州学校検診協議 会(年次大会)について(大分県)

大分県医師会常任理事の藤本保先生より提案 事項について説明があった。

開催日時、場所、開催内容については、先 に開催要項案を提示し、各県にご意見を伺っ たところ、大会全般については特にご意見がな かった。

なお、前日の諸会議については、16 時から九 州医師会連合会常任委員会を開催し、以後幹事 会、担当理事者会、懇親会まで例年通りの開催 を予定している。なお、先程の専門委員会で、 本大会においても専門委員会開催の提案があっ たので、先程会長との調整の結果、常任委員会 の時間と合わせて行ってはどうかと考えている。

次に、大会当日のプログラムについて説明 する。

午前中は、平成23 年度九州学校検診協議会 (年次大会)で心臓部門・腎臓部門・小児生活 習慣病部門の3 部門の教育講演を行う。分科会 として、例年の眼科部門・耳鼻咽喉科部門に加 え、運動器部門を実施する。

12 時から13 時の昼食時間を利用して、九州 医師会連合会学校医会評議員会を開催する。な お、議事については改めてご連絡させて頂く。

13 時からは九州医師会連合会学校医会総会 を開催し、13 時40 分から15 時30 分まで「学 校におけるアレルギー疾患対策」をテーマに、 基調講演・シンポジウムを開催する。

【各県回答】

協議の結果、各県とも特に異議なく承認さ れた。

2.食物アレルギーについて(沖縄県)

アレルギー疾患用学校指導表によれば、アナ フィラキシ―ショックを起こし自らエピペン注 射をできない児童に対して現場の学校教諭が注 射することが認められている。

本県教育委員会に問い合わせたところ、基本 的には上記のような児童に対し、養護教諭、又 は担任の先生等がエピペン注射を打つことにな っている。但し、そういう児童が在籍している 学校では、その児童の家族、養護教諭、担任の 先生等で、事前に話し合いを持っているとのこ とであった。

20 年度のデータでは、エピペン注射を必要 とする児童生徒が在籍しているのは、小学校 12 校、中学校3 校、高等学校2 校、全体19 校 であり、これまで学校現場でエピペン注射の使 用をしたことがある児童生徒がいるのは小学校 2 校、中学校3 校の全体5 校とのことであった。

各県の状況をご教示頂きたい。

【各県回答】

各県には事前に回答をいただいており、その 回答によると福岡県、宮崎県、熊本県において は、本県とほとんど同じ対応であった。その他 の県については、本県が行っていることに加 え、事前に消防署に連絡をするよう指導を行っ ているや養護教諭等を対象に研修会を行ってい るとの回答があった。

本件については、沖縄県の提案に併せ、熊本 県より学校生活管理指導表の料金について各県 の状況を伺いたいとの発言があり、協議が行わ れた。

熊本県:熊本県では学校生活管理指導表の内容 を教育庁が把握していない。料金については、 教育庁から料金を決めて頂きたいということが あり、小児科医会に照会し2,000 円ということ になっている。

長崎県:文書料の件については、長崎県の教育 委員会では出来れば無料ということになってい るが、各医療機関で様々となっている。アレル ギー疾患用学校指導表これは非常に作成が面倒 なようである。アレルギーの専門医でなければ しっかり本当のことは書けないと思う。小児科医会ではそういう話をしている。

エピペンについては、1 万円で1 年間の使用 期限しかない。長崎県では、大学病院と市民病 院の小児科に用意しているが、これを救急車に 積むというようなことを小児科医会からも申し 入れをしているが現在はまだ積んでいない。教 育委員会に確認したところ、21 年度では、小 学生1 名、中学生2 名のエピペン処方者を把握 している。

福岡県:福岡県は料金の統一はしていないが、 有料ということでやっている。エピペンの使用 例は今のところないが、研修をしっかりやって 養護教諭がやれるようにということに関しては 徹底はしている。

佐賀県:診断書に関しては、出来るだけ取らな いようにしてくれと伝えている。特に指定はし ていない。エピペンに関しては、十分に把握し ていない。

鹿児島県:診断書の料金に関しては把握してい ない。使用の事実も確認出来ていない。対象児 童が20 名弱いるということである。対象の児 童が入学してくると研修を受けるという対応を している。

大分県:管理表提出に係る費用については、そ んなに大きな金額になるわけでもないので教育 委員会の方で持ってくれと伝えると、教育委員 会もそれは良いですねと回答してくれたが、全 然進んでいない。早く実現したいと考えている。

3.小児肥満対策ガイドラインの作成(沖縄県)

Common disease で長期的管理を要する疾 患として、小児気管支喘息は最たる疾患であ る。その治療管理において抗アレルギー剤の進 歩と“小児喘息ガイドライン”が果たした役割 は大きい。特に一般医が専門医に近い治療管理 が行えたことが大きい。

小児肥満もCommon disease で長期的管理 を要する疾患であるが、現行では内分泌専門医 と一般医の治療管理の差は大きい。

米国では“2008 年版米国内分泌学会小児肥 満ガイドライン”が発表された。将来のメタボ リックシンドロームを予防する意味において も、小児科領域で小児肥満ガイドラインを作成 し、一般医が治療管理できるようにすべきと考 える。

【各県回答】

福岡県:先程の小児生活習慣病専門委員会で、 このガイドラインを是非作成しようということ になった。たたき台を作成し、それについてみ んなの意見を求めまとめていきたいが、その為 に、8 月の協議会の時に、是非専門委員会を開 催する時間を作って頂き、そこでさらに詰めた いと考えている。作成のために1 歩前進するそ ういう企画が提案された。

鹿児島:福岡県の吉永先生より、別添資料の 「高校生の生活習慣病の予防に対するガイドラ イン作成に向けて」というものが厚労省の確認 事業で示されているので、こういったものをた たき台にし、さらに検診項目を絞り、それに整 合するようなガイドラインを作成してはどうか と考えている。

沖縄県:おそらく小児の肥満というのは診断が 難しくないと思う。幼児レベルであれば、保育 園あるいは幼稚園で肥満度なりを出し、医療機 関に照会すれば必要な児については、血液検査 を保険で出来るようなシステムを作る。その時 に、管理をどうするかとなった場合に、専門委 員会で宮崎県の先生から提案があったが、大学 病院や専門医のところにばかり照会されると受 け皿が大変である為、一般医が見れるような治 療的なガイドラインを作成し、診断は簡単に し、血液検査等途中のチェックは病院でやり、 管理を一般医が行う。非常に困難な症例は専門 医に任せる。そういうガイドラインがあれば専 門医でなくても、治療管理が出来るのではない かと考える。

その他

福岡県より、8 月の専門委員会の開催につい ての提案があった。現在年に1 回11 月に専門委員会を開催しているが、いずれの委員会も十 分に検討しないといけない課題が多く、出来れ ば8 月の年次大会の時にも専門委員会を開催す る時間を取って頂けるとありがたい。

【各県回答】

特に異議なく承認。担当は、11 月同様福岡 県医師会が行う。

印象記

宮里善次

理事 宮里 善次

平成22 年11 月27 日、福岡県医師会において九州学校検診協議会専門委員会が行われ、続いて 九州各県医師会学校保健担当理事者会が開催された。

専門委員会は通常通り1)心臓部門、2)腎臓部門、3)生活習慣病部門に分かれて話し合いがもた れた。

担当理事者会において、沖縄県から“小児肥満のガイドライン作成について”の協議事項を提 出してあったため、筆者はB生活習慣病部門に参加した。生活習慣病部門の提案事項は佐賀県か ら一つだけ提出されていたが、これまでの活動を総括する内容であった。

提案は「この生活習慣病部門が出来て15 年以上経つが、なかなか先の見通しが立たない。何を どうすれば良いかを、もう一度考えてみてはと思い提案した。個人的なご意見、または各県医師 会としてのご意見でも結構なので、生活習慣病健診について皆さんの考えをお聞かせください」 と言う内容であった。

様々な意見が出されたが、要約すると1)費用対効果の問題(学校で血液検査が不可能)、2)他疾 患のように痛みや場合によっては死と隣り合ってないため、患児や保護者の意識が緊急性と問題 意識に欠ける。3)生活習慣病の指標が多い。例えば肥満は肥満度、BMI、カウプ指数、ローレル 指数、腹位などが使われている。また診断基準でもA 小児肥満度の診断基準、B 小児肥満度診断 スコアーなどが、それぞれの現場で使い分けされており、必ずしも統一されていない。4)生活習 慣病の診断がついた後、専門家の数が限られており、必ずしも満足のいく治療とフォローがされ ているとは限らない。5)今回、沖縄県から“小児肥満ガイドライン”作成が提案されているが、 各県の答えも同調する意見が多い。委員会としてはガイドライン作成に着手することで異論はな い。たたき台作りは沖縄県、琉大小児科の太田教授が担うと云う結論に達した。

さて、その後の担当理事者会議では沖縄県南部地区医師会から提出された“小児肥満ガイドラ イン作成”が協議された。なお協議前に沖縄県側の作成目的を説明するよう提案があった。

「小児気管支喘息はCommon disease で長期治療を要する疾患である。近年の抗アレルギー剤 の開発に加えて、治療ガイドラインが果たした役割は大きい。特に一般医の治療が専門医のそれ に近づいたことが大きい。同様に小児肥満もCommon disease で長期治療を要する疾患である。 ガイドラインがあれば、9 割ほどの症例は一般医で対応可能と思われるし、果たす役割は大きい。」

協議の結果、全会一致で小児肥満ガイドラインの作成に向けた方向性が決定された。

また、今回は沖縄県から学校現場におけるエピペンの使用状況も提案したが、沖縄県と同様、 注射は教師が行っており、事前に担当教師(または養護教諭)、学校医、保護者で話し合いや講習 会を行っているという県がほとんどであった。