沖縄県医師会女性医師部会部会長
依光 たみ枝
去る12 月3 日(金)日本医師会に於いて、 標記連絡協議会が開催された。
協議会では、女性医師等相談事業の取り組み を行なっている9 県医師会(1)福岡県、2)徳島 県、3)山口県、4)岡山県、5)兵庫県、6)福井 県、7)千葉県、8)茨城県、9)青森県)より各種 支援状況などについて事例発表が行われたの で、以下に会議の模様を報告する。
挨 拶
○女性医師支援センター センター長
羽生田 俊
本会では厚労省の委託事業として、女性医師 支援センター事業を実施しており、就業継続の 支援をはじめとする多角的な支援を行っている。
なかでも、この事業の中核である日本医師会 女性医師バンクは、平成19 年1 月に開設し、 来年4 周年を迎える。本事業は、これまでコー ディネーターによる点と線を結ぶ形での運営を 行ってきたが、これからは各県のより一層のご 協力を得て、面として拡げていくことが必要で ある。
本会では昨年9 月「女性医師等相談事業連絡 協議会」を開催し、各都道府県医師会等におけ る相談窓口の設置・運営について要請を行っ た。また、本年5 月には「女性医師支援担当理 事連絡協議会」を開催し、平成22 年度政府予 算における変更点等の説明を行った。現在、相 談窓口事業に取り組まれている医師会は、徐々 に増加しつつある。今後更に普及されることを 期待し、本日協議会の開催となった。
協議会では、相談事業を行なっている9 つの 県医師会に事例発表をお願いしている。これら の事例を参考にしていただき、地元行政への働 き掛けをはじめ、女性医師等相談窓口事業の実 施と更なる充実をお願い申し上げる。
女性医師の活躍は医療の望ましい発展に欠 かせない重要な問題である。日医としてその実 現のために真摯に取り組みを進めていく所存で ある。
○厚生労働省医政局医事課長 村田 善則
我々、医事課の任務は医師不足対策であり、 その中で女性医師の就労支援は大きなウェイト を占めている。優れた資質を持つ女性医師が臨 床の現場を離れてしまうことはある意味、社会 全体にとっても大きな損失である。引き続き、 臨床の現場で活躍いただけるよういろいろな施 策を講じていく必要がある。
厚労省は、国の事業として、日本医師会へ女 性医師支援センター事業を委託している。ま た、都道府県に対しても、相談窓口事業や就労 環境改善事業を実施して頂いている。
女性医師問題は医療界のみならず、政界やマ スコミ等からも関心事となっている。本日は、 都道府県毎に様々な工夫を凝らした優れた取り 組みについて紹介頂き、私共勉強させて頂きた いと考えている。先ほど、羽生田センター長か ら説明のあったように、点から線へ、線から面 へ拡げていきたい。
都道府県医師会事例発表
本会では、平成21 年11 月福岡県の委託を受 け、福岡県医師会で相談窓口事業を開始した。 その後の主な活動としては、県下4 大学病院医 局並びに32 研修指定病院を対象に女性医師に 関する実態調査を行った。
平成22 年度相談窓口事業は、女性医師等就 労支援事業として継続しているが11 月迄の相 談件数はゼロである。
主な広報活動としては、1)チラシの作成(集 会時に配布、県医報、勤務医会報等に掲載)、2) 県医師会ホームページへの掲載。従来行ってい る広報活動では問題となっている年齢層に、情 報が行き渡らないため、別途ポスターを作成し 医療機関へ配布した。その他、学生交流会や医 学部の講義を利用して周知活動にあたっている。
先に行った実態調査から、育児を行いながら 勤務する女性医師のうち、産前休暇を取得せず 一旦退職するが20 %(17/84)、育児休暇を取 得せず一旦退職するが21 %(19/90)、相談で きる先輩がいないが45 %(33/73)と結果が出 た。こう言う方々の声を拾い上げることが出来 れば相談窓口としての機能が果たせるかと思う。
育児に関しては、従来の社会通念や価値観に 縛られている(育児は(母)親、家族が行なう ものである)感が否めず、助言のみでなく、具 体的なメリット(ベビーシッター補助金助成 等)を示す必要があると感じている。また、先 輩女性医師の援助や意識改革も求められるかと 思う。この様な背景から相談窓口事業は継続し ていきたい。
本会では、子育てなどの保育支援や就業支援、 再就職に向けての研修に関することなど、医師 をサポートするための相談窓口を設けている。
平成20 年10 月より「会員」を対象とした保 育支援事業を行っており、徳島市内2 ヶ所の私 立託児所において、延長保育や2 重保育等への 支援を行っている。保育料金は通常の25 %引 きで利用できる。また、徳島県医師会主催の講 演会や研修会でマミールーム(会員:無料、非 会員: 1 名につき500 円)を設置している。
更に、徳島市医師会の女性医師プロジェクト 委員会と連携し、徳島女性医師ネットワーク (NetJoy)を活用した情報提供や親睦を深めて いる。
この様な支援が充実したことにより、20 〜 30 代の若い女性医師会員が2 年前に比べ21 名 も増加した。
今後の課題として、1)徳島市以外の地域での 保育支援、2)病児病後保育支援、3)年長児への 保育支援、4)女性医師の結婚支援、5)女性医師 復職支援等を充実させたい。
徳島では、結婚支援活動のための登録活動を 行っており、昨年1 月18 日、第1 回「親の集 い」を開催したところである。
本会では、出産や育児に不安を抱える女性医 師等に対して、保育サポーターの情報提供や紹 介を行っている。また、育児と仕事の両立を支 援するべく、保育相談員1 名を県医師会内に配 置し、県内女性医師の定着と離職防止に努めて いる。
主な取り組みは、1)保育サポーターの増員努 力、2)女性医師への広報活動、3)具体的な相談 対応、4)サポーター研修会の開催、5)「保育サ ポーター通信」の発行等を行っている。平成 22 年11 月1 日現在、保育サポーター登録者は 96 名となっている。
広報活動については、マスコミによる広報、 山口大学医学部教授会でのアナウンス、臨床講 座へのチラシ配り、県医師会報へのチラシ掲載 (毎月)、その他の研修会等でのチラシ配りを行 っている。
保育サポーターの支援事例としては、週3 日、女性医師宅で子ども(小学生)の帰りを待 ち受け、一緒に留守番。家族の食事の支度。掃 除、洗濯物の取り入れ。毎日、女性医師の勤務 先の病院の一室での乳児の保育(3 人で交代) 等を行った実績がある。
サポーター業務遂行中の保険については、活 動時に「施設賠償責任保険」「生産物賠償責任 保険」に加入し、手続きや保険料負担(1 名あ たり年間4 千円)は県医師会が行っている。
ファミリーサポートセンターとの違いについ ては、(1)医師会独自の女性医師就労支援組織 である。(2)相談員が直接女性医師やサポータ ーと接触し、きめ細かい対応を行う。電話やメ ールを活用して、多忙な医師への配慮を最大限 行う。(3)手当額は双方が話し合いで決める。
今後の課題は、1)サポーターの質とモチベー ションの維持をどう図るか、2)更なるニーズの 掘り起こしを如何するか。3)「緊急」スポット への対応等が挙げられる。
また、相談窓口事業とは別に、女性医師参画 推進部会の主な活動として、@)勤務環境改善 に向けた「女性勤務医ネットワーク網の構築 (各病院に連絡係りを配置)」、A)女子医学生 のキャリアデザイン支援としての「インターン シップ(女医が勤務する施設での1 日程度の研 修)の実施」、B)地域連携充実のための「郡 市医師会女性医師部会設立の呼びかけ」を行っ ている。
本会における女性医師支援の主な事業は、1) 女性医師等就労支援相談事業(岡山県女性医 師バンク、保育相談事業)、2)託児サービス (岡山市内で行われる県医師会主催の講演会等 に限り託児室を臨時で設置)、3)他の女性医師 支援活動との連携(岡山県女性医師等支援委員 会設立等)である。
岡山県女性医師バンクは、岡山県医師会ドク ターバンク(厚労省認可無料職業相談所)内に 女性医師専門の部署を設け、平成22 年11 月 18 日現在、求人登録医療機関は106 施設、求 職登録者は延べ21 名、成立数は1 件である。
保育相談事業では、紹介用保育関係施設デー ターベースの構築を図るべく、県下約470 施設 に保育関係施設概要調査を実施した。主な調査 項目は、保育理念、保育内容(保育時間、延 長、夜間、病児保育等)、関連サービス(稽古 事、学童保育への対応等保護者固有の要望事項 への対応の有無)等であり、蓄積したデータを 活用して紹介を行っている。
相談窓口の広報活動は、支援事業を広く周知 していくため、ポスターやチラシ、ポケットテ ィッシュ用カードを作成し配布している。
その他岡山県では、女性医師支援に取り組む 各団体(県医師会、医療対策協議会県保健福祉 部、県病院協会、大学病院キャリアセンター) が定期的に会議を開催し、それぞれの強みを生 かした相互連携を図っている。
平成23 年度は、(1)保育相談の充実、(2) 託児サービスの拡大、(3)県医師会館内に託児 専用ルームを設置、(4)ベビーシッター派遣業者との委託契約、(5)夏休みの学童保育等に取 り組んでいく予定である。
本県では、平成19 年9 月兵庫県の委託を受 け、結婚や出産で離・退職した女性医師が再び 県内で働くことを支援する「兵庫県女性医師再 就業支援センター」を県医師会館内に設置した。 主な事業内容は、1)再就業に向けた研修の実 践、2)保育、再就業に関する相談への対応、3) 再就業先の調整(ドクターバンク事業による就 職あっせん等)を行いながら、スムーズな現場 復帰ができるよう努めている。再就業に向けた 研修内容は、座学及び臨床研修計80 時間(約1 ヶ月)、研修人数は全科5 人を予定している。
これまでの運営実績は、平成19 年から22 年 までに5 人が研修を受け、研修終了後に就職 (内1 名は現在研修中であるが就職予定)して いる。現在、1 名が研修受け入れ先調整のため 待機中である。研修を受け就職したものの中に は、離職期間が14 年を超える医師もいた。研 修人数は少ないが着実に成果を上げている。
今後の課題として、利用者の多くがクチコミ やホームページ等を見て応募していることか ら、更に支援事業を広く周知していくための PR 方法を検討中している。
本会では、みだし事業を運営するにあたり、 復職研修のコーディネーターが4 名おり、医師 会の事務局の担当者が、復職支援の相談窓口と なり、県地域医療課、地区医師会との連携を図 りながら事業を進めている。
また、今年度は県の地域医療再生計画事業に 対し、医師会主導の24 時間保育所の開設を提 案した。その他の取り組みとして、出産・育児 中の女性医師を対象に保育所に関するアンケー ト調査を行った。調査結果から「土日及び午後 10 時までの夜間保育の実現」、「学童も含めた 一時預かりが出来る託児室の設置」、「ベビーシ ッターへの取り次ぎ」、「学会・勉強会での託児 室の設置」などの支援方法が挙がっている。
また、女性医師支援復職研修については、平 成20 年度から本日までに12 名から相談があっ た。復職研修では、コーディネーターが研修を 希望する医師と病院とのマッチングを行い、研 修終了後、復職となっている。研修期間中、コ ーディネーターは復職研修の様子を見るため、 施設訪問を数回行っている。これまで取り扱っ たいずれのケースにおいても、復職研修がテス ト走行としての役目を果たし、常勤勤務への復 帰を果たしたものと考えている。
平成22 年度の相談実績件数は1 名である が、年明けの3 月までに数件の相談予定が入っ ている。
本会では、平成22 年11 月、育児支援や職場 復帰サポート等を目的とした女性医師等就業支 援相談窓口を新たに開設した。
相談窓口事業の内容は、1)保育支援を行って いる施設や育児支援制度に関する情報の提供、 2)県行政が実施していた千葉県メディカルサポ ート事業を引継ぎ、男女を問わず職場復帰を考 える医師に対して、知識、技能、態度を習得す ることを目的に研修事業を実施。研修終了後の 再就職については、千葉県が実施している千葉 県ドクターバンクとの連携を図り、情報提供や 紹介、就業に関する支援を行う、3)その他一般 的な相談及び様々な悩みなどに対応する。相談 受付は、平日の月曜から金曜、午前9 時から午 後5 時、電話やファックス、ホームページ等を 活用して対応している。
相談者への対応は、基本的には事務局窓口で 受付し、事務局で対応できる相談については事 務局で処理し、専門的な相談内容は、女性医師 部会役員メーリングリストを活用し、対応可能 な役員が対処する。また48 時間以内に返信を するということを心がけている。
広報活動として、本年11 月に女性医師等就 業支援相談窓口ホームページを開設、公開した。
本会では、平成21 年10 月より保育に関する 相談を受け入れるべく、女性医師就業支援相談 窓口を開設した。相談窓口の運営体制は、茨城 医師会館の一部に相談窓口を開設し、専任職員1 名、アドバイザー(女性医師)3 名を配置してい る。相談の受付は、水曜日を除き、午前9 時から 午後4 時の間、窓口への来訪や電話、出張、イン ターネット等によってアドバイスを行っている。
広報活動については、相談窓口の周知を図る チラシやポスターを配布し、行政機関広報誌へ の記事掲載、新聞等への広告を行っている。ま た、医療機関、保育施設等への資料配付も行っ ている。
今後の活動として、ホームページの開設、テ レビ等での放映、県内紙へのカラー一面広告の 掲載、マスコミに対する広報活動も実施する。 これまでにも女性医師が多く勤務する総合病院 等を個別訪問し、相談窓口設置の趣旨説明や女 性医師の勤務状況の把握等を行うなどのPR 活 動を行い、情報提供の協力要請を行った。
問い合せの状況は、平成21 年度は7 件で、 就業支援以外にも、いろいろな相談が寄せられ た。平成22 年度は10 件で、就業及び育児に関 する相談の他、自治体からの医師派遣相談や病 院からの要請等もあるが、マッチングには至っ ていない。
今後は、相談窓口の周知と利用促進が図られ るように、広報やマスコミを利用し、茨城県、 茨城県医師会、筑波大学病院との連携で進めて いきたい。
本会では、女性医師活躍推進委員会の計画の もと各種事業を展開している。主な事業は、相 談窓口、講演会・研修会における託児室設置の 補助、女性勤務医研修医懇談会(病院訪問)、 女性医師専用メーリングリストの運用等である。
相談体制については、医師2 名と主として保 育相談担当の事務局員2 名があたり、電話やフ ァックス、メールなどで相談を受付けている。 また、毎月1 回相談員連絡会を行い、当該月の 相談ケースについて情報共有を図っている。
相談の流れは、1)事務局員(保育相談員)が 対応する。2)相談内容を聞き受付票を作成す る。3)保育相談の場合は、引き続き保育相談員 が対応し、保育施設やベビーシッター等、ニー ズに応じた情報を提供している。4)保育相談以 外の場合は、その週の当番医師が専用の携帯電 話で直接相談者に連絡を取る。5)終了後のフォ ローとして、相談者の問題が解決したかどうか、 また対応が適切だったのかどうかについて、相 談完了後に相談者へアンケートを実施している。
相談件数は、平成21 年7 月の開設から平成 22 年10 月までに11 件(保育相談7 件、その他 4 件)である。その内訳として医師本人からの 相談は9 件、母親からの相談が2 件である。窓 口利用者への事後アンケート調査では「とても 役に立った」等の意見があり、一定の評価を得 ている。
また、本年12 月より本医師会館内に「女性 医師支援室」専用のスペースを設けた。
本年度は相談窓口事業のアピール活動とし て、県内の研修医受け入れ医療機関に役員が出 向き、研修医のみならず管理者や指導者にも参 加いただき、県医師会の役割や女性医師に関す る短時間勤務制度、育児休業法等について説明 を行っている。
最後に、本年6 月以降の相談件数はゼロであ るが、それはニーズの変化なのか、まだ充分に 認知されていないのか、すべての体制の方向性 を考えながら、来年度の課題として情報提供体 制の整備を図っていきたい。
その後、事例発表を行った県とフロアーを交 え活発な質疑応答が行われ、保坂シゲリ常任理 事より閉会の挨拶があり協議会を終了した。
印象記
沖縄県医師会女性医師部会部会長
依光 たみ枝天候不良、突風ということで羽田行き全ての飛行機が始発便から大幅に遅れた。14 時の会議開 始に間に合うかやきもきしながら那覇を出発、降り立った東京は風は強かったが(台風に慣れて いるせいなのか)、どうして遅れたのか?と思うほどの快晴であった。
先に到着していた事務局の崎原さん、山城さんとメールで状況報告しながら無事、定刻前に日 本医師会館に到着、47 都道府県から2 〜 3 人の役員、事務員で130 人前後の参加者が会場を埋め 尽くしていた。
女性医師等相談事業の取り組みを行なっている9 県医師会(1)福岡県、2)徳島県、3)山口県、 4)岡山県、5)兵庫県、6)福井県、7)千葉県、8)茨城県、9)青森県)の代表から支援状況の報告が あった。ほとんどの医師会が女性医師支援のホームページなどを立ち上げて積極的に行っていた。 しかし、それを特に研修医、離職者、休職者にいかにアピールするか?という大きな難問を抱え ている事が、沖縄県と同様だなという事を感じた。福岡県医師会の女性医師相談窓ロ事業は、1 年 経った今でも相談件数は「0」という報告、育児をしながら勤務する女性医師のうち、45 %に相 談できる先輩がいないというアンケート結果は衝撃的だったが、ある意味それが現実なのかなと 思った次第である。
特に印象に残った山口県と徳島県医師会の報告に、質疑応答が集中した。山口県では女性医師 宅で保育サポーターの支援事例の実績報告があった。そういう夢のような事業が浸透すれば、子 育てしながら休職せずに仕事にも専念できる女性医師が増え、医師不足の解消の大きな一歩にな るのではと思ったのは私1 人ではなかったと思う。徳島県からの報告はユニーク?というより、 とうとうそこまできたかという思いであった。結婚支援活動のための登録活動を行っており、「親 の集い」を開催したとの報告に質問が殺到していた。
女性医師部会役員が各病院に出かけて行って、女性医師の現状と未来について語り合う当県の 「出張プチフォーラム」の報告は時間がなくできなかったのが残念であった。ほとんどの医師会が あの手この手で女性医師支援事業を行っているが、当事者である女性医師の仕事を続けたいとい う意思・意識・情熱がなければ「笛吹けど踊らず」で終わってしまうのではという危機感を抱い た。しかし国を挙げての女性医師支援プロジェクトの熱意を感じとれた、貴重で有意義な会議で あった。