医療法人友愛会豊見城中央病院
比嘉 盛丈
ワクワクと心躍らせながら、幸せいっぱいな 気持ちで毎日を過ごす方法について考えたこと はありますか。私は(普段はあまり楽しそうな表情をしていないかもしれませんが)、多くの 日をワクワクと過ごしています。どんな時にワ クワクしているのか、そのあたりを自分なりに 少し分析してみました。かなりレベルの低い考 察なので、お時間に余裕のある方だけ、寛大な お気持ちをもって読み進めていただけると幸い です。
さて、私は医学生の頃に一時期(?)よく麻 雀をしていました。上手い人からみると決して 理論的な打ち方ではなかったようですが、なぜ だか自分の欲しい牌を引き寄せることができた ので、勝率だけは非常に高かったのです。ある 日、プロ級といわれる先輩と打つことになりま したが、そのときも引きが強く、さらに裏ドラ がよくのって、勝つことができました。そのと き先輩が「お前はたかが麻雀にこんなに運を使 っていたら、近い将来に運を使い果たすだろ う」と予言され、その場が大爆笑になりまし た。その当時の私の運勢はかなり強く、エレベ ーターに近づけばエレベーターの扉が開き、信 号機に近づけば信号機は青に変わりました。私 の前にある道がどんどん開かれていくのを間近 に見ていた友人の一人は、私の本名であるもり たけを文字って「ひがモゼたけ」君と呼びまし た。そのモゼとは、旧約聖書に出てくる、海を 開いて道を作ったあのモーゼのことです。当時 はなすこと全てがまさに運だけで成功していた ので、友人にも「お前の人生は本当にこれでよ いのか」と(冗談まじりに)よく言われたもの でした。まーそうは言われても、心機一転して 運に頼らない実力を身につけるぞみたいな上向 きの発想を私は全く持ち合わせていませんでし た。ここから本題に入ってみたいと思います。 図1 をご覧ください。皆さんが一人だけの空の 旅をしているとすると、何番の空席を予約しま すか。私はゆったりと座りたかったので、迷わ ず2 番を予約しました。まあ5 番でもよかった のでしょうが、2 番の近くに3 番があることで、 視覚的に2 番の方がゆったり座れる可能性が高 いだろうと判断したのだと思います。ここで問 題にしたいのはその後です。実際に搭乗すると、修学旅行生もおり機内はごった返していま したが、なぜだか自分はゆったりと座れるよう な気がしてワクワクしていました。この状況か らどのような方法でゆったり座れるのか、まる でミステリーを読み進めているような感じでし た。予約した2 番の席に近づくと、隣の1 番に は外国人の男性が座っていました。あれあれ1 番は空席にならなかったのかと思っていると、 3 番に座っていた女性は1 番に座っている男性 の妻だったようで、2 番の場所と代わってもら えないかとお願いされました。了解して代わっ てみると、3 番のとなりに座っていたのは小柄 な日本人女性で、しかも窓側に座っている夫の 方に寄り添っており(新婚のようでした)、ゆ ったりと座ることができたのです。私はこの時 に自分はなんて運がいいのだとすごく幸せな気 持ちになることができました。もしも最初から 3 番を選んでいたら得られなかったであろう幸 せ感だと思いました。これこそが今回ここで御 紹介したいプチ奇跡です。(奇跡とは常識では 起こるとは考えられない不思議なできごと:国 語辞典、旺文社)。私の予想(期待)、すなわち 私の常識というべきものは、ほとんどが実に浅 はかなので、それらのほとんどを現実が軽がる と超えていくのです。このように幸運とは常に 私の力の及ばないところで起こります。まさに 裏ドラがのった時のような気持ちです。このよ うなワクワクした気持ちを存分に味わうには、 まずは期待するということが大切です。この場 合だと、2 番の席でゆったりと座れますように と祈るような気持ちをもって現実を待つこと (期待)がそれに該当します。さらに、与えら れた結果(現実)を感謝の気持ちをもって受け 入れることも大切だと思います。逆説的にいう と、5 番の席を選んでいたらどうなっていたの だろうというような気持ちをもって、すでに座 っている3 番の席から5 番の席を振り返らない ことも大切なのかもしれません。(ちなみにこの 話はついさっき機内であった実話なのです。話 のネタが与えられたことにも感謝です)。私は いつも色々なことに期待しています。私は、私 の浅はかな期待や予想なんて、簡単に(時に良 い形で)外れてしまうことを知っています。外 れてしまうことも含めて次の展開を楽しみにし ているのです。(多くのゲームは負けても楽しい ものです)。心配の場合も同様によく外れるの で、明日を思い煩うよりも、私なりに事を尽く したら天命を楽しみに待つことにしています。 自分の予想のあたる確率を過大評価すると不安 も大きくなるのではないでしょうか。大丈夫! 私たちの予想はだいたい外れるのです(笑)。
図1 :飛行機内空席状況