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本当にあった話

敬愛会ちばなクリニック 仲里 聰

今までに見たり聞いたりした話で、細部はとも かく、本当にあった話を紹介したいと思います。

小話その1 ;坐薬

これはよくきく話である。20 年以上前のこ と。ある先生が70 歳代の男性の透析患者さん に坐薬を処方。後日「○○さん、この前だした 坐薬はどうでした?」ときくと、「いやー先生、 ちゃんと座って、正座して飲みましたけど、飲 みにくい薬ですね」と答えたそうだ。処方した 先生は目が点になったが、もちろん坐薬の正し い使い方を教えたとのこと。

小話その2 ;鼻出血

県立名護病院(現:県立北部病院)にいた頃 に耳鼻科のA 先生から聞いた話。やくざの親分 さんか幹部の人で、鼻血が止まらないので救急 室へ。止血処置したが、だいぶ出血したよう で、A 先生が「かなり出血していたけれども、 きつくなかったですか?」ときいた。「くらく らしていたが、子分達の前でそんなこといえる か」といったそうだ。幹部はつらい。

小話その3 ;シャント穿刺

やくざの方でも腎不全になり、透析を受けな いといけなくなることがある。透析のためにシ ャントを作成し、そのシャントを穿刺して透析 を行うが、ペンレステープ(術前や透析時の穿 刺痛に対するリドカイン含有の麻酔テープ)が ない頃の、ある透析施設でのこと。やくざの幹 部や親分さんになるとやはり面子があるのか、 穿刺の際、決して痛いとはいわない。スタッフ が穿刺に失敗して刺青の下に青痣をつくった り、血腫で刺青が歪んだりしても怒鳴ったり、 痛いとかいわないという。しかし、あるスタッ フが何度も穿刺に失敗すると、さすがにすごく 睨まれ、一瞬、「今日は無事に帰れるのかしら」 と思ったそうである。

小話その4 ;寄生虫

検便についての話である。便を提出しないと いけないが、便がでないので代わりに犬の便を 提出したら、人間に犬の寄生虫がでたと大騒ぎ になったという話をきいたことがある。それと は別の話で小学校5 年生の時のことである。一 般の検便の他にも、朝起きたら肛門にテープを 貼って、それをはがして提出するという、蟯虫 検査もあった。当時はプライバシーなどなく、 寄生虫がみつかったら、○○君、虫がいたから と駆虫薬を渡されていた。この時、同じクラス の男子2 名がひっかかった。喜瀬君と伊集君だ った。きせ君といじゅ君→きせいじゅ→きせい じゅう→きせいちゅう。きせいじゅうがきせい ちゅうとクラスで若干話題?になっていた。

小話その5 ;痰培養

中部病院でレジデントをやっていた時のこ と。咳がでる、少し黄色い痰がでて治りが悪 い。その頃は煙草も吸っていた。痰のスメアと 培養はインターン、レジデントには重要な検査 であった。痰の色がよくないので当然、痰培養 を提出した。1 週間位で培養結果が返ってきた が、なんと緑膿菌であった。しかも耐性菌。コ ロニーゼーション?、もうCOPD ?、ちょっ とまずいかなと思っていた。しばらくして同期 のI 君が痰培養どうだったときいてきた。何故痰培養を出したのを知っていたのかと思った ら、培養結果のレポートをたまたまみつけて、 菌と感受性を適当に書いて本物と差し替えた と。本当は菌などでてはいなかったのである。

小話その6 ;心マッサージ

これも中部病院時代のこと。シニアレジデン トとジュニアレジデントと一緒に回診をしてい た。ICU を回診していた時、近くのベッドで警 報がなった。心電図モニタをみるとフラットに なっているではないか。すばやくシニアレジデ ントが心臓マッサージを始めた。その瞬間、心 停止のはずの患者さんが「あ痛っ!」と声をあ げた。電極がはずれただけだったのだ。

小話その7 ;セロハンテープ

70 歳代の女性。慢性腎不全のため週3 回の 血液透析を行っている。ある日、左前腕シャン ト肢にセロハンテープを貼ってきていた。ナー スは特に気にせず、こんなところにセロハンテ ープを貼ってと思い、剥がしていつものように 穿刺をして透析をはじめた。次の透析の時もセ ロハンテープを貼ってきていた。前と同様にセ ロハンテープを剥がし、穿刺をして透析を始め た。その後も同様のことが続いたので、ナース が「○○さん、なんでいつもセロハンテープ貼 ってくるの?」。その患者さん曰く、「なんで、 みんなテープ貼っているさー。テープ貼ると痛 くないってよ」。他の患者さんが貼っていたの はペンレステープであったが、テープなら何で もいいと思っていたらしい。