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与論島二人旅

白井和美

白井クリニック 白井 和美

ゴールデンウィークに息子と二人で与論島に 旅行した。

ダイビングや、マリンスポーツなどが目的 で、往復はフェリーにした。那覇港から本部港 を経由して約5 時間。最新設備を備えたフェリ ーでの船旅は、快適そのものだった。

与論島は、かれこれ20 年位前には、若い女 性憧れのリゾートとして注目されたが、今もダ イバーの間では沈船スポットなど根強い人気が ある。

ホテルに着き、すぐにビーチへ向かった。マ スク、シュノーケル、フィンの3 点セットを着 けて早速海に入った。遠浅のビーチは透明度も よく、波も穏やかだが、寒い。例年になく水温 が低いようだ。泳ぎ始めたが、寒さに慣れるま でしばらくは水中で震えていた。沖縄に比し魚 は色彩的に地味に感じたが、リーフに集まる魚 影は豊富だった。本島では見られないような20 〜 30 センチはあるナンヨウブダイやもんがら かわはぎがすぐ近くに寄ってきた。チョウチョ ウウオも人を恐れる様子が無い。べらやおじさ んなどおなじみの魚達も私のマスクをつつきに 来た。1 時間くらい夢中になっていたが、寒さ に我に返り、海から上がった。本来なら、バナ ナボート、マリンジェット、カヌー、ウェイク ボードなどのマリンスポーツメニューがある が、寒さのせいかショップは開店休業だ。寒が りの私にはダイビングは無理という息子の一言 で、急遽全ての予定が変わってしまった。

そこで、島内観光をすることにした。島は小 さく、車を使うとあっという間に一周してしま う。高台になったところに、サザンクロスセン ターがあった。与論島の歴史、芸能、物産など を紹介する施設で、伏龍をかたどった面白い形 をしている。5 階の展望室からは、仰向けに寝 たメタボなお釈迦様のように沖縄本島が見える と案内係りの女性が教えてくれた。驚くほど近 くに沖縄本島が見える。先々で、親島からよう こそといって歓迎されるわけがわかった気がし た。この隣には、与論城石垣跡が残り、地主神社 とこぬしじんじゃ の境内には子供相撲の土俵が作られていた。子 供の日に試合があるという。我がメタボな息子 は、子供相撲の選手と間違われ困惑していた。

ドライブしていると、彼が島のほぼ中央に、与論焼きの窯元を発見した。ゆんぬ・あーどぅ る焼といって与論の赤土に椰子の葉、海水、珊 瑚、ソテツなどから作る自然素材の釉薬をかけ て焼いたもので、美しく温かみのある焼き物 だ。それぞれの釉薬が、椰子の葉が青色、海水 が褐色、珊瑚が乳白色、ソテツが緑色と独特の 色を発し興味深い。何組もの観光客が作品を作 っていた。各種体験の大好きな息子にせがま れ、私達もそれぞれ、丼、茶碗、杯と好みのも のに挑戦した。しっとりとした土の感覚が手の ひらに心地よい。晴れていれば、土が乾燥する ため時間との戦いになるとのことだったが、当 日は曇っていたので、時間をかけてゆっくり作 ることが出来た。土をこねているとあっという 間に時間がたち、作品にサインをし、後は仕上 げをお願いする。乾燥、焼き上げをし、約1 ヵ 月後には手元に作品が到着する予定だ。無事に 到着する日を楽しみに窯元を後にした。

次は、大島紬の織元を見学した。高級・高価 な織物として有名な大島紬だが、細かい織の見 事さは圧巻だ。ここでも機織体験が出来るとい う。息子は慣れた様子で好みの機織機を選び、 さっさと紬を織り始めた。いつもは隣で見学す るところだが、勧められるままに私もやってみ た。縦糸はすでに張ってあり、好みの横糸を選 んで織っていく。彼は、黒の縦糸にグレーの横 糸で、店の人に、「渋いのが好きだねえ」と言わ れながらもどんどん織っていく。私は、黒とベ ージュの縦縞に青の横糸で織り始めた。機織に は、手と足の動きにコンビネーションが必要だ が、若い人はすぐにマスターしてしまう。私は 初めのうち手と足がばらばらでぎこちなく、息 子にも、店の人にも笑われながら悪戦苦闘した が、慣れてくるとこれが大層面白い。元来、織 物に興味があったため、つい夢中になって、普 通の倍も織ってしまった。息子は、自分の作品 をブックカバーに仕立ててもらうようだ。結構 交渉上手で、相談しながら要領よく話を進めて いた。初めて見る彼の姿に少し驚いた。

体験後、お茶と手作りのお菓子を頂戴した。 コンビニもファストフード店も無い島の暮らし を聞き、お勧めのお土産情報なども教えてもら え大変参考になった。息子は早くも次回の訪問 を約束していた。よほど気に入ったようだが、 それは私も同感だった。

子供も中学生になると、親と一緒にいること は少なくなる。今回の旅は久しぶりの親子の時 間で、いろいろな話も出来たし、彼の新しい面 も発見でき、良い思い出となった。次の訪問が 待ち遠しい。