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第107回沖縄県医師会医学会総会

當銘正彦

理事 當銘 正彦

例年6 月と12 月の年2 回行われている県医 学会であるが、今回は新会館落成記念式典の開 催との兼ね合いで、12 月の定例が1 月にずれ込 む変則的なかたちで、1 月17、18 日の両日に 行われた。何はともあれ、新会館で行う最初の 県医学会である。

初日17 日は、医学会に先立って第64 回沖縄 県医師会定例総会が行われ、平成19 年度の会 務報告や県医師会・会計の収支決算等が報告さ れ、医師会館の移転に伴う定款の変更等が承認 された。

先ずは玉城信光医学会会長による開会宣言が 行われ、引き続き稲冨洋明先生から医学会会頭 の挨拶を頂いたが、本会の歴史的な経緯の概略 と今日的意義について触れられ、冒頭に相応し い印象的な話であった。

今回の特別講演は、「日本医師会の役割と広 報活動について」と題して日本医師会副会長の 竹嶋康弘氏が話された。講演は大きく2 つの構 成からなり、前半は日医の広範で精力的な広報 活動が紹介され、国民やマスコミに対し、日医 の考え方を如何に正しく流布するかの努力する 姿が浮き彫りとなった。後半は日医の医療政策 についての概説で、低医療費政策や医師不足か ら来る「医療崩壊」という深刻な事態の認識 が、最近では政界にも徐々に浸透して来ている 現況に触れられ、今後の改革の展望についての 期待が述べられた。

次いで医事功労者の表彰式が執り行われ、3 人の沖縄県知事表彰と39 人の沖縄県医師会長 表彰の方々が次々と登壇され、晴れやかな中に も厳かな雰囲気で進められた。最後は受賞者を 代表して、長年の中部地区医師会長としての功 績で県知事賞を受けられた金城進先生の謝辞で締めくくられた。

初日最後のプログラムは、臨床研修をテーマ としたシンポジウムである。「沖縄県における 初期臨床研修から後期(専門)研修および生涯 教育までの連携について」と題して、医学会会 長玉城信光先生と医学会副会長田名毅先生の司 会で進行した。

シンポジストは県立病院から遠藤和郎先生と 依光たみ枝先生、群星グループから仲程正哲先 生と比嘉盛丈先生、そして琉大から大屋祐輔先 生の5 人が登壇して基調報告を行った。様々な 論点から臨床研修に纏わる分析や報告が為され たが、今回の最大の関心事は、沖縄で成功裡に 進んでいる臨床研修の実績を、今後も持続させ るためには県立病院群、群星グループ、 RyuMIC の3 つの臨床研修プロジェクトが協力 し合い、相互乗り入れを視野に入れた交流を行 うことによって、より活性化する方向性が見え てくるのではないか、その為には県医師会の役 割が重要になるのではないか、との論議であ る。取り分け注目に値するのは、島嶼県である 沖縄の離島医療を、国のマグネットホスピタル 制度を駆使して、後期臨床研修の一環に組み入 れる可能性については、既に県立病院群では具 体的なプログラムが計画されているが、群星や RyuMIC についても十分に参加協力の可能性が あることが示唆され、今後の3 群の共同行動に 大きな期待を繋ぐことが出来た。

会頭挨拶

稲冨洋明

第107回沖縄県医師会医学会総会会頭
稲冨 洋明

第107 回沖縄県医師会医学会総会の開催にあ たり、一言ご挨拶を申し上げます。

始めに、会員待望の沖縄県医師会館が昨年竣 工し、去る12 月14 日に落成記念行事が挙行さ れ、本日第107 回医学会総会が新会館で開催で きますことを衷心よりお慶び申し上げます。

又、このような記念すべき新会館での医学会 総会開催に当り、私(稲冨)に栄えある医学会 総会会頭の機会を与えて下さいました宮城信雄 会長、玉城信光医学会長をはじめ会員の皆様に 厚く御礼申し上げる次第であります。

省みますと会館の建設は、比嘉国郎会長時代 に遡り平成9 年3 月に開催された代議員会で会 館建設の必要性が提唱され、比嘉会長諮問の検 討委員会から会館建設の必要性を認める答申が 出され、会館建設に向けて鋭意検討が進められ てきました。その後、会館の建設構想は比嘉会 長から私、更に宮城会長へと三代に亘り会長職 の重要な任務として引き継がれ、今般、晴れて 医師会員の拠点となる新会館で医学会総会が開 催できることに対し深く敬意を表する次第であ ります。

当医学会の歴史を振り返ってみますと、 1903 年(明治36 年)の沖縄県医会設立と同時 に行われた学術発表が沖縄医学会の前身となっ ており、1951 年(昭和26 年)には沖縄群島医 学会が設立され、第1 回沖縄群島医学会を開催 しております。

また、1952 年(昭和27 年)に発刊された沖 縄医学会雑誌第1 巻1 号も、現在では本日発刊 された第47 巻3 号となり、医学会の構成も20 分科会と多岐に亘り、当医学会が本県の医学・ 医術の発展・向上に果たす役割は、誠に多大な ものがあると認識しているところであります。

さて、我が国では出生率の低下と高齢者人口 の増加により、世界に類をみない速さで少子高 齢社会へと進展しております。出生率の低下 は、人口構造に大きな変化をもたらし、産業や 経済の発展を阻害し、医療分野における財政基 盤や介護の問題等様々な影響を与えておりま す。更に人口構造や現代の生活習慣の変化は疾 病構造をも変化させ、生活習慣病、癌、認知症 や多臓器障害など重症患者の増加をもたらせま した。このような超高齢社会においては、疾病 構造の変化に対応するのみならず、予防医学、 健康増進科学、慢性疾病を持った患者の社会復 帰、介護などの包括的な保健医療福祉の理論の 構築と実践が重要な課題となってきます。

また、国の長年に亘る医療費抑制策の結果、 医療提供体制は更に厳しさを増し、全国各地に おいて医師の絶対数の不足及び地域や科の偏在 が顕著となり、診療科や病院が相次いで閉鎖さ れ、地域医療は正に崩壊の危機に直面しており ます。

現在、沖縄県でも医師不足対策、医師の過重 労働問題、県立病院の改善等、諸課題の解決に 向けて急ピッチで対策が進められております が、安心・安全な医療を提供するためにも早期 の改善が求められるところであります。

幸いにも、わが沖縄県においては医師不足に 対する取り組みとして初期臨床研修体制は、大 学を中心としたRyuMIC や県立病院群、群星 沖縄の3 研修病院群の尽力により毎年150 名近 くの研修医を県内外より受け入れ地域医療の確 保に努められております。また、来春の研修先 を決めるマッチング結果でも、本県は84 %で 東京に次いで2 位となり、高いマッチング率を キープし、今後、若い医師が本県に根付いて行 くためにも、専門(後期)研修のレベルアップ や各研修病院群の情報共有が重要な課題となっ ております。

このような状況から、本日の特別講演は新会 館の落成を機に、新たな医師会活動を模索する ため、日本医師会副会長の竹嶋康弘先生から 「日本医師会の役割と広報活動について」を拝 聴し、シンポジウムでは「沖縄県における初期 臨床研修から後期(専門)研修及び生涯教育ま での連携」のテーマで開催することになってお ります。これを機会に本県の初期臨床研修体制 の更なる発展と後期(専門)研修の充実が図れ ることを期待しております。

最後に、本医学会総会が会員相互の学術向上 に寄与し、ひいては県民の保健・医療・福祉の 増進に貢献することを祈念し、併せて新会館が 医師の学術活動の拠点となり、宮城会長の提唱 する「地域に根ざした活力ある医師会」づくり が、更に推進されることを念じご挨拶とします。

特別講演

「日本医師会の役割と広報活動について」

日本医師会副会長 竹嶋康弘

日本医師会副会長
竹嶋 康弘





S39.3 九州大学医学部卒業
S40.5 医籍登録
S40.4 九州大学医学部 整形外科医員
S43.6 国立がんセンター病院厚生技官(医師)
S46.4 九州大学医学部文部教官助手
S48.10 福岡大学病院整形外科講師
S52.2 タケシマ整形外科医院院長
S56.6 タケシマ整形外科・外科医院院長
S62.10 医療法人タケシマ整形外科・外科医院理事長
H15.9 医療法人日の出会 タケシマ整形外科医院理事長
H8.4 〜H16.3 (社)日本医師会代議員
H10.4 〜H16.3 (社)福岡市医師会会長
H16.4 〜H18.4 (社)福岡県医師会会長
H16.4 〜H18.4 (社)日本医師会理事
H18.4 〜現在(社)日本医師会副会長

T.日本医師会の役割は多岐にわたるが、主な ものについて述べたい。

1.医の倫理の普及・啓発

日本医師会は、2000 年に新たな「医の倫 理綱領」を作成し、本年6 月には、具体的事 例についての「医師の職業倫理指針〔改訂 版〕」をとりまとめた。

日本医師会には、生命倫理に関わるものに ついて、対応を審議し、社会に対して意見表 明を行うため、その諮問機関として生命倫理 懇談会を設置している。

今期は、唐澤会長より「高度情報化社会に おける生命倫理」との諮問を受け、審議をは じめたところである。

2.医学・医療に関する知識や技術の発展へ の貢献と自己研鑽

日本医師会は、医学・医療に関する知識や 技術の発展への貢献と自己研鑽に組織として 取り組んでいる。

学術推進会議では、会長からの諮問「医師 の生涯教育と認定医制・専門医制」を受け、 審議をはじめたところである。

また、生涯教育推進委員会では「カリキュ ラム履修にあたっての具体的環境整備」の諮 問を受け、審議をはじめたところである。

3.会員の福祉と団結

約16 万5 千人の会員の医業経営や将来の 生活を守るべく、相互扶助の観点から様々な 施策を進め、会員の団結を図っている。

日本医師会は、医師賠償責任保険制度及び 医師年金を運営している。

4.医療政策

日本医師会は、国民のために安心で安全、 そして良質な医療の確保に向けて、地域医療 を担う医療提供者の立場から政策を立案する とともに、その実現に向けて政策決定の場で ある国政に働きかけている。

そのために、シンクタンクである日医総研 は、データの収集・分析を行い、エビデンス を構築する重要な機能を果たしている。

日本医師会は、政府・行政の審議会・検討 会等にエビデンスに基づくデータを提示しな がら、積極的に議論し、さらには、関係各省 庁及び国政の場において、日常的にロビイン グ活動を展開している。

5.医療現場からの情報収集及び集約

医政活動を行うには、医療現場から、常時、 情報を収集し、集約する努力が重要である。

「医政あっての医療、現場あっての医政」。 日本医師会は、その活動基盤である。

U.会内および会外広報の現況とあり方

日本医師会では、医師会活動として、月2 回 の「日医ニュース」の刊行、毎週の定例記者会 見、メーリングリスト「白クマ通信」等と共 に、テレビCM、新聞意見広告などのメディア を通じた広報活動を、積極的かつ効果的に実施 してきた。

1.紙媒体による広報

定例記者会見は、毎週水曜日に実施し、毎 回20 〜 30 社の一般紙誌、業界紙誌の記者に 担当役員が、国の医療制度に関連する政策や 施策に対し、日医総研によるデータ、分析資 料を基に、日医の施策、見解や提言を行って いる。

定例記者会見の内容は、報道を通じて広く 国民に届けられている。また、会員に向けて の直接の広報は、「白クマ通信」の他、「日医 ニュース」、「日医ホームページ」にも掲載 し、伝達している。

新聞の意見広告では、6 月に「高齢者(75 歳以上)のための医療制度」、7 月には、「社 会保障費の年2,200 億円の削減反対」を、メ ッセージ性の強い内容で、当時の福田首相に 対して、国民と共に訴えかける形で行った。 かなりの良い反響があった。

また、昨年12 月5 日に全国5 紙に掲載し た意見広告「私たちを診てくれるお医者さん がいない」は、読売広告大賞、広告電通賞を 受賞した。

2.テレビを媒体とした広報

テレビCM では、医療崩壊の危機を訴え る、幼い生命に対する「小児救急医療編」、 高齢者のための「長期療養病床編」が高い評 価を得、新聞の意見広告との相乗効果で、日 医の活動に対する関心度、期待度、信頼度が 高まっていることが調査を通じてわかった。 このCM では、全日本シーエム放送連盟の第 48 回CM フェスティバルでACC 賞のゴール ド賞を2 年連続で受賞するという快挙を成し 遂げた。

テレビ番組は、この4 月よりBS 朝日の提 供番組として「鳥越俊太郎 医療の現場!」 を放映している。毎週土曜日午後6 時からの 30 分番組で、日曜日の午前10 時に再放送さ れている。当番組は医療の現場で起っている 諸問題を取り上げ、鳥越氏が硬派の切り口 で、現場のVTR と出演医師との対話を重ね ながら、医療のあるべき姿や健康の大切さを 訴えていく内容である。地上波の視聴率に当 たる当番組への接触率も良い。

今後の課題として、医療の地域格差を止め ることがある。その為には、地域医師会か ら、生の医療・介護現場の情報を、どう日医 に集めてくるか、関係者で対応を図っていき たい。

シンポジウム

「沖縄県における初期臨床研修から後期(専門)
研修および生涯教育までの連携について」

1.沖縄県における初期臨床研修から後期研修、そしてより良い医療の提供に向けて
―県立中部病院内科から―
遠藤和郎

県立中部病院内科・感染症グループ
遠藤 和郎

1.はじめに

中部病院の医師臨床研修制度は1967 年に始 まり、採用した研修医数は800 名を超える。研 修修了者703 名の動向を調査したところ、県内 外出身者合計435 名(62.5 %)が沖縄県に勤務していた。その歴史の中で、沖縄県および日 本の医療の先駆けとなった活動は少なくない。 また研修王国と呼ばれるようになった沖縄の臨 床研修の根幹となっていることは誰もが認める 所であろう。長い歴史と伝統を踏まえつつ、常 に改善を続け、そのノウハウを広く公開してき た諸先輩方の功績として誇りたいところであ る。研修医教育は当院の最重要課題であり、生 命線である。日々の教育が指導医自身を成長さ せ、すべての職種の参加がチームワークを醸成 する。チームワークが病院全体を活性化させ、 より良質な医療の提供につながる。したがって 活動的な研修病院が増えることは、沖縄県の医 療の一層の充実に寄与することとなる。

2.沖縄県の抱える医療問題と強み 

当院の臨床研修が立ちあがった最大の理由 は、戦後の医師不足の解消である。戦後60 年 を経た今日でも沖縄の医師不足は、形を変えて どっしりと存在している。離島の医師不足は恒 常化し、県立病院と琉球大学からの派遣だけで は充足できていない。産婦人科医師不足は県立 北部病院の産婦人科の閉鎖をもたらした。社会 に目を転じると長寿県のブランドは失われ、今 や肥満度1 位が定着した。急性期医療の最後の 砦である県立病院の経営は悪化し、その機能維 持に深刻な影響を与え始めている。では沖縄県 の医療で他県にない強みは何であろうか。それ は以下の2 点に集約できよう。「たらい回し」 のない急性期医療の充実。そしてやる気にあふ れた優秀な研修医が全国から集まっていること である。

3.中部病院の研修の特徴

当院の教育方法は、先輩が後輩を教える「屋根瓦方式」を基本としている。教えることは学 ぶことである。教え続けることを身につけるこ とは、生涯にわたり学び続ける習慣を身につけ ることである。「屋根瓦方式」は生涯教育にも 不可欠である。当院の目標とする医師像は、離 島医療を担うことのできるジェネラリストの育 成である。そのためには、common diseases を より多く、より早く、より安く診断、治療し、 時に深く考察する土壌が必要となる。

4.後期研修医と病院機能維持

当院の後期研修では、初期研修では学べない より高度な知識と技術の習得、さらにはリーダ ーとしての資質が要求される。これらを身につ けた研修修了者には、実践の場である離島研修 が一年間義務づけられている。離島研修はジェ ネラリストとしての研修の総仕上げであるだけ でなく、離島への医師の重要な供給源となって いる。すなわち後期研修医の減少は、離島医療 の不安定化を引き起こし、さらに崩壊につなが ることを、医療者のみならず県民も知っておか なければならない。

5.これからの臨床研修

沖縄県には3 つの優れた研修システムが存在 する。現在各システムは独自に活動し、今のと ころ十分な連携が取られているとは言い難い。 これからはそれぞれの特徴を生かしつつ、共通 の研修目標を持ちたい。私は臨床研修の最終目 標は、自らを鍛え育ててくれた沖縄への貢献と 考えている。その一つとして離島医療への従事 をあげたい。たとえばすべての研修システムの 3 年次研修医が、県立宮古病院、県立八重山病 院、そして公立久米島病院で2 か月ずつ後期院 外研修を行う。力を付けた後期研修医は各病院 の戦力となり、常勤医の負担を軽減できる。さ らに複数の研修医が同時に研修を行うことによ り、研修医同士の親睦と良質な競い合いが生ま れ、新たなモチベーションの構築に役立つ。さ らには各研修システムを当事者の視点で比較 し、研修委員会などに報告することによりシス テムの標準化と底上げがはかられる。離島医療 の面白さを実感した研修医の一部は、後期研修 終了後に離島での勤務を希望するだろう。その 際、離島病院の院長は実力と性格を熟知した若 手医師を安心して雇用することが可能となる。

6.これからの沖縄の医療

新医師臨床研修制度の功罪はいろいろあるだ ろうが、沖縄県に優秀な研修医が大挙して訪れ たことは紛れもない事実である。この貴重な人 材を、次代を担う人間性豊かな医師に育てる。 そして彼らとともに、いつでもどこでも安心し て良質な医療を受けられる沖縄県を作る。これ が我々指導医の使命ではないだろうか。

2.群星沖縄より
仲程正哲

群星沖縄研修委員長会議副議長沖縄協同病院副院長
仲程 正哲



臨床研修病院群プロジェクト「群星むりぶし 沖縄」 は、「研修医中心の教育、患者・国民のための 研修」を教育理念に、宮城征四郎氏(元沖縄県 立中部病院院長)をプロジェクトリーダーに迎 え、2003 年4 月に14 医療機関で発足した。

現在は、29 医療機関(管理型病院7、協力型 病院11、協力施設11)で研修プログラム(一 学年募集定員69)を構築しており、117 名の初 期研修医が同プログラムで学んでいる。

発足6 年目の若いプロジェクトであるが、1 期生〜 5 期生まで273 名もの若者が日本全国 40 大学を超えて参加し、学外の研修プログラ ムとしては全国で最大規模と思われる。

研修修了者の約半数が沖縄で後期研修を行っ ている。

全体の7 割が本土出身者であることも特徴で、女性の占める割合は4 割と比較的高い。

プログラムの特色としては、多数の医療機関 が参加することで、より研修医本位の教育が可 能なこと、米国(ピッツバーグ大学。2009 年 〜スタンフォード大学に替わる)との交流が盛 んなことなどが挙げられる。

多彩な教育行事の中でも、全国よりあまたの 依頼が来るセンター長教育回診を定期的に受け られることは、研修医にとって大きな魅力の一 つになっている。

群星沖縄が臨床研修事業に参加した目的は、 「沖縄ひいては日本の明日の良き臨床家を育て る」(七つのコンセプト)ことにある。したが って、全人医療の担い手を数多く育てるため に、ジェネラルな教育にこれからも力を注いで 行きたいと考えている。

そのためにも、「離島・へき地へ行っても通用 する医師を目標に」をスローガンに、後期研修 医の中から希望を募って離島への派遣を始めた。

今後は、(社)地域医療振興協会「ゆいまー るプロジェクト」推進室と協力して、離島への 医師支援を積極的に取り組んで行きたい。

沖縄県における初期臨床研修〜後期(専門) 研修のレベル向上、そして離島の医師確保問題 など、県医師会・RyuMIC ・県立病院群・群 星がさらに交流を深め、諸課題の前進、解決の ために一致協力することが今こそ求められてい るのではないか。

3.豊見城中央病院における初期研修から後 期研修まで
比嘉盛丈

豊見城中央病院外科 比嘉 盛丈




豊見城中央病院における研修制度を紹介します。豊見城中央病院は、平成15 年に医師臨床 研修指定病院となり、平成16 年に新医師研修 制度が始まったときに、初めて研修医を受け入 れてきました。卒後すぐの新人を受け入れるか らには、一人の医師が一人前になるまでのプロ セスに責任を持って対応出来る様に体制を変え てきています。医師が大よそ一人前になるには 約10 年がかかると言われています。当院では、 それを3 つの時期に分けて、1)初期研修期(2 年)、2)後期研修期(3 年)、3)フェロー期(3 年)として位置付け制度を作ってきました。次 にその内容を解説します。

1)初期研修期(2 年):豊見城中央病院は群星 沖縄プロジェクト参加病院の一つとして初期研 修を行います。これについて詳しくは、群星沖 縄プロジェクトについて別シンポジストが報告 しますが、当院独自の姿勢としては、研修医は 広く県内外から募集し、出身がなるべく偏らな いように配慮しています。

2)後期研修期(3 年):各診療科毎に募集す る。募集診療科は内科、外科、産婦人科、整形 外科、麻酔科。募集の形態は3 年契約と単年度 契約がある。基本的にそれぞれの診療科の専門 医を取得するのに必要な経験を積むことが最低 限の条件である。診療科ごとに配属されるが、 身分は研修委員会に所属し、研修の進捗状況は 初期研修医同様後期研修医も研修委員会も把握 に努める。また、3 年の中で、院外研修も可能 で積極的に進めている。実際に院外研修の方法 としては、群星沖縄プロジェクト参加病院のア ライアンス、VHJ 病院間のアライアンス、また 病院独自の関係で交流している病院間での交流 となる。具体的な事例としては、外科研修医→ 飯塚病院(救急部、小児外科)、麻酔下研修医 →小倉記念病院(心臓外科麻酔)、整形外科研 修医→国立ガンセンター(腫瘍関係)、内科研 修医→小倉記念病院(循環器系)、また専門施 設だけでなく、内科研修医→伊江村立診療所と いう例もある。さらに院外から受け入れている 研修医として亀田総合病院(乳線外科)→外 科、また琉球大学からも後期研修医の身分で交流している。

3)フェロー期(3 年):単年度契約、最長3 年 間。当院の研修医も来年3 月で後期研修を終了 する医師がおり、後期研修を終了し、さらに専 門分野で経験を積みたい場合に対応するために この制度が制定された。当院のみならず院外研 修も可能にしており当院を足場により専門的な 施設での研修も可能になる。まだ来年からの制 度なので今後充実したものになるように取り組 みたい。

以上、豊見城中央病院の初期研修からその後 について述べたが、初期研修以後は基本的なプ ログラムはあるが、個々についてはオーダーメ イドで作り上げている。今年は離島診療を希望 する後期研修医がいたので、伊江診療所で勤務 となったが、豊見城中央病院としては地域医療 まで組み入れたプログラムを作成していきたい と考えている。

4.女性医師の立場から
依光たみ枝

沖縄県医師会女性医師部会長
県立中部病院医療部長・ICU 室長
依光 たみ枝


私が医師になった昭和50 年前後の女性医学 生の割合は、10 %前後であった。女性の社会 進出の増加に伴い、2000 年の国家試験合格者 の女性医師の割合が初めて30 %を超え、2008 年は34.5 %とさらに増加してきている。2006 年の医師総数277,927 人中17.2 %が女性医師 で占められている。出産・育児などで一時的に しろ休職せざるを得ない女性医師の具体的な支 援策が、沖縄県のみならずこれからの日本の医 療を左右すると言っても過言ではない。国もよ うやく事の重大性に気付き、厚労省は緊急医師 確保対策の要旨の一部に「出産や育児での医師の離職を防ぎ、復職を促すために院内保育所の 整備など女性が働きやすい職場環境を整備す る。」と提言した。

しかし、女性医師を取り巻く現実は厳しい。 2005 年12 月に行なった沖縄県公務員医師会の 女性医師に対するアンケート調査で、当直室な し、更衣室なし、シャワー室なし、もちろん搾 乳室なしと回答した施設はめずらしくない。大 学病院、6 県立病院で院内保育施設を有してい る病院はない。「結婚しても、絶対子供は作ら ない」と回答した研修医は、男性医師以上に女 性医師として働き続ける困難さを、実感した上 での苦渋の回答だったのだろうと思う。

【目的】

今回のシンポジウムのテーマ「沖縄県におけ る研修および生涯教育までの連携について」を 女性医師の立場から、沖縄県の女性医師の現状 を分析し、何が問題なのか、問題解決には何が 必要なのかを、男性医師を含む全ての医師の問 題として考えていきたいと思う。

【沖縄県の勤務医現況調査】

沖縄県医師会の行った勤務医現況調査による と、2007 年3 月現在沖縄県の勤務医1954 名中 回答のあった1,062 名中、研修医を含む女性医 師数は177 名で全体の16.7 %を占めていた。 休職・離職者は50 名以上と推測されているた め、女性医師の占める割合は全国並みと思われ る。結婚・出産・子育てが重なるであろう卒後 10 年以内の女性医師が66 %を占め、卒後5 年 目、10 年目までがそれぞれ55 名前後であった。 さらにこの時期は研修医として研鑽を積み、そ して1 人の医師として責任を負う非常に重要な 時期である。

専門領域では内科51/小児科18/精神神経科 14/産婦人科12/外科系12/麻酔科9/眼科9/皮 膚科8/放射線科5/耳鼻科4/泌尿器科3/その他 31 となっていた。

【問題点】

1.勤務上での負担な点:男女共に過重労働が最 多で、次いで患者の過剰な権利意識、患者・ 家族への説明で全体の64 %を占めていた。

2.妊娠・出産に伴う問題点:女性医師4 名、 男性医師12 名が産休・育児休暇の増加によ る同僚医師の負担を挙げていた。

3.育児と仕事の両立:アンケート結果による と女性医師の53 名(30 %)が育児経験者 で、そのうちの約25 %が育児と仕事の両立 困難・両立できなかったと回答していた。そ の理由として育児支援体制がないが最多で、 次いで育児休暇が取れない、勤務先の理解・ 家族の協力が得られないとなっていた。

4.長期離職後の職場復帰が困難:再教育が必 要と回答したのは、経験豊富と思われる50 代でも約30 %おり、20 〜 40 代では約80 % 前後となっていた。

【女性医師が求める支援とは】

1.育児支援体制―病児保育を含む院内24 時間保育、時間外勤務・当直の免除、ワークシェアリング

2.産休・育児休暇中の人員補充

3.復職に向けての再教育

4.ドクターバンク

5.上司・同僚・家族の理解

6.家事援助

【私達ができる事とは】

女性医師が仕事と育児の両立のためには1. 保育施設を含む同僚・家族のハード面、ソフト 面での育児支援体制、2.復職に向けての再教 育が大きな課題である事を再認識させられた。

2007 年8 月沖縄県医師会女性医師部会が発 足し、今年の10 月、日本医師会医師再就業支 援事業マネージャーの保坂シゲリ先生を招いて 第2 回女性医師フォーラムを開催した。最後の スライドで「国や自治体や医師会や他の誰かに 何かを求めるのではなく、それぞれがそれぞれ の役割を担っている事を自覚して、行動する必 要がある。壁は厚くても、いつか突き崩すか、 超えることができる。その日を信じて協力して いきましょう。」、私もそう思う。身近にロール モデルを見つけ、その時その時に何を優先させ るのかを決めるのは自分自身だからである。沖 縄県の女性医師のネットワーク作り、相談窓口 として女性医師部会が少しでも役に立てれば幸 いである。

5.琉大が変わる! 私たちが「多極連携型専 門医・臨床研究医育成事業」でめざすもの。
大屋祐輔

琉球大学医学部附属病院専門研修センター・
医学部循環系総合内科学
大屋 祐輔


大学病院は、従来、医療人を養成するための 教育機関、新しい医療を開発する研究機関、地 域との連携をとりながら高度な専門医療を提供 する医療機関としての役割を期待され、また、 その役割を担ってきました。しかし、人員や予 算を始めさまざまな制約や社会や制度の変化か ら、そのすべてを実現するには至っていません でした。文部科学省は、本年度より5 年間、大 学改革推進事業の一つとして「大学病院連携型 高度医療人養成推進事業」を開始しました。今 回、琉球大学医学部および医学部附属病院は、 質の高い専門医及び臨床研究者を養成する研修 プログラムとその支援を目的とした「多極連携 型専門医・臨床研究医育成事業」を応募し、採 択されました。具体的には、琉球大学に専門医 育成のためのセンターと専任教員を配置し、後 期研修医、初期研修医、学生にとって魅力的な 専門性を身につけるための研修コースを作成し て実施します。特に沖縄で初期研修を修了した 医師たちが、継続的に沖縄において、より専門 性の高い医療を学ぶための受け皿となるプログ ラムを目指します。この事業に含まれるコース の特徴は、あらかじめ明示されたプログラムに 沿った研修を行うこと、県内および県外の専門 病院や他大学病院をローテーションして、効率 よく専門医に必要な知識と技能を身につけ、実 際に専門医取得を行うことを目標とすることで す。また、優れた指導医や教員を育成するため のFaculty Development プログラムも行いま す。2)臨床研究を行うことができる専門医の 育成のため、教育プログラムの作成とその実施 のための支援部門を設置します。このプログラ ムの中では、研究計画や試験計画の作り方、医 療統計、医療倫理、医療情報の収集法や評価法 などの研究の基本となる事項を系統的に学ぶこ とができます。また、臨床の現場でそれらをon the job training の形で実施することで、自ら 実施できる能力を身につけていきます。これら の学びにおいて、社会人大学院生や臨床大学院 生として課程を修了することで、学位の取得も 可能となります。また、医学統計者、リサーチ コーディネーター、リサーチナースを配置し、 臨床研究のサポートを行います。3)医師の生 涯にわたるキャリア形成の過程で、学びを継続 できるように支援をしていきます。女性医師に は、出産、育児によりキャリアが中断しないよ うな、中断している場合は安心して復帰できる ようなサポートを行います。また、離島勤務へ の支援やそれ伴うキャリア形成における問題へ の取り組みも考えていきます。私たちは、これ らの計画を実施することで、現在沖縄県の医療 界全体で取り組んでいる『地域を理解し、地域 を愛し、地域に貢献する』医師を育てる活動 に、積極的に貢献して行きたいと思います。