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第48回地区医師会連絡協議会

名嘉眞透

北部地区医師会会長 名嘉眞 透

今回の地区医師会連絡協議会は濃い霧の中、 やんばるの自然が満喫できる嵐山ゴルフ場のコ ンペルームで行われた。このように、各地区医 師会の理事の先生方が一堂に集まる機会は少な く貴重な協議会と思われる。今回の協議事項と して「現在の産婦人科の状況と産婦人科医師確 保に関して」「今後の沖縄における救急ヘリ搬送 について」の2題を取り上げた。いずれも大きな 題であり、活発な意見交換がなされ、50分間と 短い時間の設定では到底協議し尽くせないもの であった。最後に県医師会よりコメントがあり、 玉城副会長は離島僻地医師確保対策委員会の最 終答申が近々出されること、沖縄県における独 特の後期研修システムを作り上げる方針である ことを説明した。また、宮城会長より一生懸命 仕事をしても報われない産婦人科医療や、福島 県のような刑事事件扱いする現状がありやる気 をなくしており、全国的な問題であり国も真剣 に取り組む必要がある。また救急ヘリについて は保健医療協議会のなかでも協議するよう提案 している旨の説明があった。

協議会終了後は引き続き嵐山ゴルフ倶楽部で 親睦ゴルフコンペを開催した。霧も晴れ、雨に も悩まされずにみなさん楽しくプレーができた と思う。

以下、今回の協議会における各地区医師会の 回答(要旨)を報告する。

協議事項1)「現在の産婦人科の状況と産婦 人科医師確保に関して」

【北部地区医師会】

当医師会では2産婦人科施設が年間約1,000 例の分娩に携わっている。平成17年4月から県 立北部病院の産婦人科が休止し、平成17年度 は約100例近い妊婦が中南部の医療施設へ搬送 され、到着前分娩も散見され、また、開業医で管理困難な妊婦は中南部まで通院を余儀なくさ れている。当医師会病院では平成18年11月よ り婦人科を開始し、平成19年9月頃には産科の 開始に向けて準備中である。

【南部地区医師会】

産婦人科医不足問題で全国的に言われている ことは、

  • 1)医療訴訟の多い産婦人科医になり手がい ない。
  • 2)産婦人科であっても訴訟が多い産科を行 わない医師が増えてきている。
  • 3)女性医師の占める割合が増え、結婚、子 育てによる勤務時間の制約がある。
  • 4)卒後研修制度により大学から医師が減 り、人事権がなくなってしまった。

【那覇地区医師会】

全国的問題として

  • 1)産婦人科を希望する医師、特に男性が少 ない。
  • 2)会員の25%は60歳以上で占めている。
  • 3)働き盛りの30歳代(42人)の男女比は 14対28で女性が2倍である。

対策として

  • 1)女性医師の働きやすい職場環境造り。
  • 2)産婦人科医の負担を減らすためにも、助 産師を増やし、助産師が自信と生き甲斐 をもって働ける職場造り。
  • 3)助産師の負担を減らすため、週産期医療 に関わる専門の看護師を育てる。
  • 4)県立病院を含め公立病院のオープン化。
  • 5)臨床研修組織(琉大、県立病院、群星) は県民特に女性の理解を得ながら、魅力 ある産婦人科研修制度の確立につとめる。
  • 6)助産師養成所の増設を希望する。

【浦添市医師会】

浦添地区医師会では分娩を扱う施設が開業 医、病院合わせて3施設あり年間の分娩数は約 1,500と多く、基幹病院である浦添総合病院の 産科医の常勤は2人で、小児科医も含め負担が 大きく、ハイリスク妊婦、未熟児などへの対応 はNICUを持つ医療施設へ搬送している。常勤 の産科医は最低でも3人以上が必要である。

対策として1)全国規模のリクルート活動、2) 研修医の中から発掘していく、3)産婦人科専門 研修システムの確立、4)本土にいる県出身の若 い産婦人科医を説得し、条件をよくして沖縄に きてもらう。

【中部地区医師会】

当地区医師会で産婦人科を標榜している会員 へのアンケート調査結果。

  • 1)産婦人科は分娩を扱っている限り、過酷 な勤務状態が続き、産科医の待遇改善 (マンパワーの増加)なくしては現状か ら脱却できない。
  • 2)医事紛争に関して、もっと医師会が産婦 人科医の見方になって弁護してくれれ ば、心強く安心して医療に専念でき、産 婦人科医志願者も増えるだろう。
  • 3)2年前までは県立中部病院とは病診連携 が円滑で安心して診療できたが、県立北 部病院産婦人科閉鎖後、県立中部病院 へ紹介搬送が出来ず困惑している。
  • 4)琉球大学に全県的な産婦人科の短期、長 期計画を一任し、琉球大学の産婦人科の 研修医をふやすよう、医師会として努力 すべき。

【宮古地区医師会】

宮古地区においては、今のところ開業医と県 立宮古病院の計4施設でしっかりとした病診連 携による安全な週産期医療が提供されている。 産婦人科確保については、琉球大学、県立病 院、群星の3者での後期臨床研修システムをさ らに魅力あるものにし、また離島、僻地医師確 保対策検討委員会で提案された「ドクターバン ク等専門医師派遣事業」「専門医養成の拡充」 「離島医療セミナーの実施」「奨学金制度の導 入」等を絡めながら対策を進める。

協議事項2)「今後の沖縄における救急ヘリ搬 送について」

【北部地区医師会】

北部2 次医療圏は本島の約50 %の面積を占 め、医療僻地が広範囲に散在し、伊平屋、伊是 名、伊江島などの離島を抱えている。また、国頭地区では救急搬送時間が平均60 分である。 どうしても、救命には搬送時間の短縮が必要で あり、当医師会としては救急ヘリ搬送の実現に 向けて取り組んでおり、救急医の確保、ヘリ会 社との調整を進めており出来るなら4月から実 行する。北部地区の基幹病院である、医師会病 院、県立北部病院の2つであり、その特性を生 かして、北部地区の住民に納得される救急体制 を構築していく。

【南部地区医師会】

離島救急ヘリでの事務手続きの為、時間のロ スがあり、迅速に行うには防災、救急ヘリの導 入が望ましい。出来れば夜間飛行可能な機種が よい。県内では中南部、北部の2カ所へのヘリ の配置が望ましいと考える。

【那覇地区医師会】

自衛隊、海上保安本部のヘリコプターによる 搬送は昭和47年からあり、平成元年から17年 までに累計で4,447件あり、ヘリコプター救急 搬送は沖縄県における救急医療には欠くことの できない大きな役割を果たしている。故に、1) 県全体の救急医療のあり方を整備していく中で ドクターヘリの問題を考えるべきであり、2) 「ヘリコプター等搭乗医師確保事業運営会議」 が県保健福祉部の主導で開催されており、そこ で沖縄県におけるヘリ搬送について議論、調整 が必要である。

【浦添市医師会】

浦添総合病院が平成17年からU-pits救急ヘリ 搬送を実施しており、搬送件数は増えてきてい る。平成18年7月から平成19年2月までの搬送 件数は108件と大幅に増えており、久米島がも っとも多く、伊是名、伊平屋、座間味、与論な どの離島が主である。運営資金、運用面、ヘリ ポートなどの問題を解決するためには、沖縄県 と同じテーブルで問題解決に向け話し合わなけ ればならないと考える。本年4月からは本格的 なドクターヘリの機種を導入予定である。

【中部地区医師会】

救急ヘリ搬送は、今後も増えてくると思う が、年間2億円といわれる運行費用負担、病院 間の連携、十分な医師の確保、乗員の要請シス テム、ヘリポートの不足、運用時間が日中に限 られ、夜間発着が出来ないことなどといった問 題を今後、県や市町村と解決する必要がある。

【宮古地区医師会】

平成18年度7月から宮古島から沖縄本島への ヘリ救急搬送は31件中17件、とりわけ脳外科 疾患がほとんどである。以前はヘリ、固定翼に よる搬送で搭乗していくと、帰りは民間機で戻 るので、県立宮古病院の人手が足りなくなって いたが、最近では琉球大学救急部の医師が搭乗 してくるので、大変助かっている。