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平成18年度都道府県医師会
広報担当理事連絡協議会

理事 玉井 修

去る3月15日(水)、日本医師会館で行われ た標記協議会について次のとおり報告する。

中川俊男常任理事の司会進行のもと、冒頭唐 澤人会長より下記のとおり挨拶があった。

執行部では基本的な方針として広報活動の充 実を最重要課題に据えているため、今後とも先 生方のご協力をお願いしたい。

私ども執行部が誕生して1年が経とうとして いるが、昨年4月の診療報酬マイナス3.16%改 定、療養病床再編問題、リハビリテーション実 数制限、7対1入院基本料問題等、矢継ぎ早に 出される様々な医療費抑制策に対峙していると ころである。その中で私どもが申し上げた、医 療難民2万人、あるいは介護難民4万人という 言葉がマスコミにも大きく報道されていること は先生方もご存知のとおりであるが、更に7対 1の入院基本料による看護師の地域病床規模に よる偏在不足問題に対する調査と問題提起によ り、中医協では10年ぶりとなる建議が行われ た。これらの活動と同時に進めたことは、日医 ニュースや白クマ通信等を通じて問題点を明ら かにしたこと、また、広報担当の中川常任理事 が中心となり、毎週水曜日に定例記者会見を開 いてきた。そこでは報道関係者に対して我々の 主張を伝えるだけでなく、国や厚生労働省が発 表する基礎的なデータについても、例えば医療 費の推計の誤り、財政赤字と社会保障費の伸び は無関係であることを指摘する等政略的な広報 活動を展開している。本日のような情報社会で は、情報の正確性のみならずスピード感も求め られており、その点に力を入れてきたところで ある。

日本医師会はマイナスのイメージばかり押し つけられてきた経緯があるが、私どもがいくら正しい政策を打ち出しても国民の皆さんからは 正当な評価も支持も得られない状況である。そ こで昨年の秋からテレビコマーシャルを用いて 日本医師会のイメージアップ戦略を展開してい るところである。

まだまだ端緒的段階ではあるが、いつの日か ボディブローのように効き目を発揮してくれる はずだと確信している。

先生方には今後とも高い見識のもと知恵をお 貸し頂くと共に、力を結集して国民から信頼さ れる日本医師会のイメージづくりと、会員に向 けた正確で素早い情報発信のための広報活動に 対して絶大なご支援ご指導をお願いしたい。

続いて、日本医師会広報委員会委員の紹介が あると共に、長瀬清広報委員会委員長より広報 委員会審議報告について概ね下記のとおり報告 があった。

昨年7月20日に第1回広報委員会を開催して から、本日第5回目の委員会を開催した。広報 委員会の中の小委員会においては日医ニュース 等の会内広報の部分を検討しているが、広報委 員会としては唐澤会長より諮問を受けた「日本 医師会の組織強化に向けた広報のあり方」につ いて検討を行ってきた。第1回目においては、 ホームページのリニューアルについて検討を行 うと共に、ホームページに対するモニター(30 名)を設け意見を伺っている。また、イメージ アップ作戦としてテレビコマーシャルについて 議論を行った。更に組織強化において一番の問 題にあげられるのが勤務医対策であるが、日医 が勤務医に対して何をできるか広報委員会の立 場からフリーディスカッションを行っている。

報 告

「日本医師会の広報活動について」
日本医師会常任理事 中川俊男

中川俊男日医常任理事よりこれまでの日医の広 報活動について説明があった。

長年日医は広報が下手だと言われ続けてきた ことを受け、昨年の6月に実施した日医に対する意識調査について報告があった。調査では 「日本医師会のことを好きでも嫌いでもない= 関心がない人」が6割をしめており、その対策 の重要性が述べられた。更に医師会への関心と は裏腹に医療制度改革について関心がある人が 5割を超えており、このギャップが解決しなけ ればならない問題点であると述べた。

また、医師会の広報活動においては日医と地 域医師会が同様の活動を行うのではなく役割を 分担することが望ましいとして、日本医師会は 医師会のイメージアップ戦略と中長期的広報戦 略を、地域医師会は医療制度・疾病に関する啓 発活動を行うことが重要と述べた。その中で、 イメージアップ戦略として日本医師会が昨年10 月7日(土)より放送しているテレビCMにつ いて説明があると共にCMに対する一般生活者 の評価結果が述べられ、女性の評価が高い反 面、男性の評価は低いとの報告があった。

「広島県医師会における広報の取り組み−HMA-netを中心として」
広島県医師会常任理事 温泉川梅代

温泉川広島県医師会常任理事より同医師会の 会内広報について説明があった。

広島県医師会では、HMA-net(イントラネ ット:組織内ネットワーク)を構築し、文書・ 資料等のペーパレス化、速報デジタル化を図る と共に、理事会をペーパレス化にしているとの 報告があった。

なお、HMA-netの構築にあたっては6,000万 円の構築費が掛かると共に、年間1,700万円の 維持費が掛かっていたが、セキュリティーの関 係上利用者を100名に限定していたことから問 題点を改善し、全ての会員が利用できるよう改 めて会員を募集することになり、現在では850 名弱(会員の1割強)が利用しているとのこと であった。

現在は広島県医師会のホームページを対外と 会内用に独立させ、対内用ホームページは専用 のソフト(デスクネッツ:グループウエアとし ての基本的な機能であるスケジュールや掲示板機能はもとより、便利な20の機能が標準で利用 可能)を使用し、相互情報交換を充実させてい るとのことであった。

「福岡県医師会広報活動報告〜医療モニター 制度「メディペチャ」について〜」
福岡県医師会理事 堤 康博

堤理事より同医師会が行っている医療モニタ ー制度「メディペチャ」について説明があった。

同制度の目的として、双方向性を重要視し、 医療・医師会・医療機関・医師等に対する意見 や要望等について意見交換を行って「身近な医 師会」を確立すると共に、マスコミ・行政に公 開し開かれた医師会を印象づけているとのこと。

意見交換に重点を置くため、人数は10人程 度に絞っているとのことであった。

運営については、医師会主導色を出さないた めに司会、企画、発言録のまとめは電通九州が 行い、実施場所も医師会を避け、公共施設を利 用している。

モニターについては、ホームページ、新聞、 市民情報誌等において募集を行っているが、そ の際に医師会や医療全般について感じているこ とを記載してもらい、特に意見の厳しい人を採 用するようにしている。

会合は3回開催するが、第1回目は医師会は 同じ席(ロの字)につかず、モニターに出来る だけ意見を言ってもらっている。医師会側は一 切コメントしない。

主に医師と患者のコミュニケーション問題が 話題となる。

(その際の意見が次回の会合の参考資料とな るとのこと)

第2回目から同じ席につき、疑問、問題点、 医療の限界等について話をすると共に、医師会 活動やホームページ等の資料を配付して説明を 行っている。

第3回目には、2回目の取り残したテーマに ついて話し合いを持つと共に、モニターから医 師会への提言をしてもらっている。

最終的には、モニター制度の集大成として、 モニターの代表者2名とマスコミ関係者その他著名人を交えて、県民公開講座を開催している。

なお、第1回目で医師会のイメージとして圧 力団体(悪いイメージ)であるとの意見を述べ ていたモニターが、第3回目には良い医療のた めにやはり圧力団体(良いイメージ)であるべ きだとする意見に変わったとのことであった。

意見をよく聴き、丁寧に応えていく姿勢を取 ることが医師会を理解してもらう大事なポイン トであり、ひいてはそのモニターが医師会を広 報してくれることになるとの説明であった。

「対外広報での山口県医師会の取り組み〜地 元報道機関との連携について〜」
山口県医師会理事 加藤欣士郎

同会ではこれまで、ホームページ、県民向け 公開講座、電話相談、医療情報案内等を行って きたが、その情報が十分に行き渡っているのか 疑問が感じられたことから、県民の最大の情報 源である“テレビ”、“新聞”に着目し、テレビ の6時台のニュース番組において医療問題をシ リーズ化し、月に1〜2回放送しているとのこ と。これまで、小児救急、小児科医不足問題、 療養病床削減問題を取り上げたとのこと。

医師会が主催する行事については、県政記者 クラブに取材要請していると共に、医師会の主 張を訴えるべく記者会見を行っている。

なお、取材については、医療機関が取材班を 門前払いすることがあるが、医療者と報道の連 携を強化するために、会員の報道取材に対する 柔軟な対応を求めていきたいとのことであった。

協 議

各県の広報活動について

以上の各県の活動報告の後、広報に関する件 について質疑が行われた。

Q佐賀県藤川常任理事

各都道府県においては、まだまだ医師会に対 する偏見や勉強不足もあって中央の情報を曲解 する記者が多いため、各都道府県医師会でも日 本医師会同様に会長と担当理事が記者会見を行 い詳しいデータを提供して記事にしてもらうこ とが重要ではないか。

※当意見を受けて中川俊男常任理事から各県に おける記者会見の開催状況の確認が行われ下 記のとおり回答が得られた。

・定例記者会見を行っている→3県

  • 福岡県:2ヶ月に1回(奇数月)開催 緊急記者会見も随時開催
  • 福島県:地元2紙に対して交互に会見を開催。年1回役員とマスコミ関係者との会食を持っている。
  • 愛知県:1ヶ月に1回記者懇談会を開催

・記者会見を不定期に行っている→15県

  • 広島県:問題があった場合には会長及び担当理事が会見を開催。
         年1回、記者と会長、副会長、広報担当理事と月見会を開催。
         誤った記事についてはその都度訂正記事を載せるよう対応。
  • 岩手県:年3〜4回開催。誤った記事についてはその都度対応を行っている。
  • 茨城県:訴えたい事がある場合に行っている。記者との懇談会も開催している。

中川俊男常任理事より、日本医師会が各都道 府県において地元医師会、テレビ局と共同で30 分番組「ふれあい健康ネットワーク」を放送し ており、日医の予算2,300万円と更にツムラの スポンサーもつき、来年度も8回の開催を予定 しているが、いずれはこの番組をライブラリに してホームページ上で全国の先生方がいつでも 利用できるようなシステムを作りたいとの提案 があった。

日医のCMについて

日医のCMについて下記のとおり質問・意見 があった。

神奈川県熊谷理事

本会の理事会において、テレビCMは音楽も 画面も暗いのではないか?あまり良い印象を国 民に与えないのではないか?との意見があった。

また、このCMにいくら掛かったのか教えて もらいたい。

宮城県小田常任理事

本会では、いじめについてのCMは非常に良 いとの意見であった。やはり男性の評価は悪く 声優の声が通らないとの意見もあった。

佐賀県藤川常任理事

男性会員は暗いのではないかとの意見であっ た。女性会員は訴えたいイメージが伝わってく るとの意見であった。

診療に限らず医療制度等で悩んでいる患者さ んがドクターと話をしている場面をドラマティ ックに演出して、最終的に国民の誤解を解くよ うなCMづくりをしてほしい。(自己負担割合 が増えて医療機関の収入が上がっているような 誤解等)

また、明るいイメージにしてほしい。

宮城県橋本常任理事

十分討議をした上での制作であっただろうと 思うが、なぜあのようなトーンにしたのか、ま た、最後の白地に薄い明朝体で日本医師会と表 示したのはなぜか。

中川俊男常任理事

あのCMは考えに考え抜いた。対象は一般国 民の女性である。男性からは受けないと思って いた。全国医師会の先生方の大半も男性であ る。グループインタビューではマジックミラー の後ろで伺っていたが、男性には非常に不評で あった。全国医師会の男性の先生方も多分同様 の意見だろうと思っていた。逆にグループイン タビューで女性には大変好評であった。医師会 員にはうけようとは思っていない。開き直りで はなく、イメージアップの力点を何処に置くか を考えた。トーンについては、他のCMが明る い陽気なイメージであるため、その間に静かな CMが入ることによって逆に印象に残るような 狙いとしている。最後の日本医師会の文字表示 についてはやはり薄いと思うので直そうと思う。

一般国民には非常に評判が良いと思ってい る。逆に会員には非常に評判が悪い。

ただ、段々となじんでくるのではないかと思 っている。

BS朝日で「be MEDICAL:(医療にまつわ る疑問、不安、不満などを受付け、専門家が答 える番組)」という番組をやっており、3月まで は5分間番組であったが、4月からは30分番組 に変更する。薬品メーカーから協賛も頂いてい る。日医の広告費については、CM、テレビ番 組等全て併せて1.5億円である。メーカーから の協賛についてはそれ以上に頂いている。

イメージアップには非常に有効であり、土曜 日だけの放送でこれだけの効果が得られてい る。一般の企業においては50〜60億円の広告 費が使われている。先生方からもっとCMを流 せとの強いご要望があれば予算も増えるものと 期待しているので是非お願いしたい。

昨年の6月頃からNHKをはじめとするマスメ ディアの論調が急に変わっている。医師が悪い、 医師会が悪いという事ばかりだけを言っていた らとんでもないことになるとの反省からである。 そのスタート時点として唐澤会長がNHKの生番 組に出演している。当初は厚生労働大臣と唐澤 会長が真ん中に座る予定であったが大臣の都合 がつかなかった。もう少し発言すべきだったとの 意見もあったが、まずは国民の声を聴く姿勢を 見せようとの考えからであった。

一般国民の唐澤会長に対する評価は低くない。 感じが良く、地元のお医者さん的イメージと捉 えられている。最初の出演としてはあれで良か ったのではないかと思っている。今後は服装、 表情、態度等も十分に気をつけていきたい。

蛇足だが、スピーチのコンサルタント会社に 教育を依頼すると1人2時間で40〜50万円掛か るとのことである。

佐賀県藤川常任理事

最終的なゴールは日本の医療を良くするため に日本医師会の政策を法に反映させていくこと だと思うが、選挙においては過去の選挙を見て も福岡県の集票率が非常に高い。それは先ほど の市民参加型の「メディペチャ」の効果が効い ているのではないかと思う。各県も医師会主導 で県民を巻き込んで医療・福祉・社会保障問題 に取り組むべきである。

日医ニュースについて

中川常任理事より日医ニュースについて改善 点等について意見を伺いたいとの話があり下記 のとおり意見が出された。

山口県加藤常任理事

各県の活動状況を載せてほしい。各県の大き なイベントについては日医から取材員を派遣し てほしい。

日医中川常任理事

取材については十分対応は可能である。

長崎県赤司常任理事

日医ニュースの「オピニオン−各界有識者か らの提言−」という欄があるが、その中の梶本 朝日新聞論説委員の「日医 ピンチはチャン ス」における“欲張り村の村長さん”記述につ いて本会ではかなり反響があり、日医はなぜこ のような文を載せたのかとの意見があった。や はりそういう目で見られている面もあるという 点からも、今後も外からの批判を載せていって もらいたい。

日医中川常任理事

その件については非常に厳しい意見が多数寄 せられた。この欄はマスメディアの論説員中心 に執筆してもらっているが、重大な事実誤認が ない限りはあえてそのまま掲載するようにし、 我々は聴く耳を持っているという姿勢を示すよ うにしている。

最後に宝住副会長より参加へのお礼が述べら れ会が閉じられた。

印象記

玉井修

理事 玉井 修

日本医師会のイメージは、『どちらとも言えない』+『あまり好きではない』+『嫌い』の合計 で実に96.6%です。このデータを信用すれば、医師会は国民のほとんどからどうでも良いか又は 嫌われているという事になります。嫌っている理由としては『閉鎖的』『解りにくい』『頭が固い』 『庶民とは遠い世界』などの辛辣な言葉が続き、そこまで嫌わなくても良いじゃないの、という気 が致します。しかし、これらのイメージは診療報酬改定をマイナス改定に差し向けるため、世論 を医師側から遠ざけるために意識的に行った様々な間違った医師像植え付けの結果だと思われま す。医師年収の誤った解釈、医療ミスと医療事故との誤った報道など、医師や医療をゆがめた形 で報道し世論を誘導してきた結果が医師会を世の嫌われ者にしてきたのだと思います。嫌われて いるのは理解して嫌われているのではなく、誤解されて嫌われているのです。昨今の産婦人科や 小児科不足に代表される医療の崩壊にはさすがに行政も慌てているようです。日本医師会も正し い医師のイメージを持って貰うために様々なイメージ戦略を展開していく様です。日本医師会の イメージ戦略の一端を見れたのは、CM広告でした。やや控えめなイメージのCMに会場の先生 方からはインパクトが弱すぎるのではという疑問の声があがりましたが、それに対する日本医師 会執行部の回答は明快でした。「イメージ戦略のターゲットは先生方ではなく、主に国民の女性層 であります。万人受けを狙っているのではなく、まして先生方に受けようとは思っておりません。」 との回答に私などは感心しきりでした。

また各県の対外広報に対する取り組みに関して報告があり、その中では福岡県医師会から出さ れていたメディペチャ(医療モニタリング制度)の取り組みが注目されていました。事前に医療 に関する意見募集を行い、その中でやや批判的な意見を寄せた方々にモニター参加をお願いして 10名程度の意見交換の場を設けるというやり方です。最初はかなり厳しい意見を言っていた方も、 実際に医療現場の話を聞いて理解を深める事によって医師会のイメージが良い方向へ変わってい くようです。理解をして貰うための草の根運動を根気強くやって行き、メディペチャの参加者が 更に医師会の理解者を広げていくという地道な事をやっています。沖縄県医師会でも県民との懇 談会や、マスコミとの懇談会を開催していますが、今後の発展に非常に参考になるお話でした。