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初期臨床研修印象記

久保田陽秋

琉球大学医学部附属病院卒後臨床研修センター 2年目研修医
 久保田 陽秋

早いもので、琉球大学の卒後臨床研修プログ ラム(Ryu-MIC)の研修医として働き始めてか ら、やがて1年3ヶ月が経とうとしています。

2年目研修医としての初期臨床研修の印象記 について寄稿依頼がありました。同時に1年目 研修医の先生にも同様の寄稿依頼があったよう でした。そこで、ようやく1クール目のローテ ーションが終わる1年目の先生と5クール目の ローテーション中の私とで印象記に書く内容と して求められるものは違うのだろうという勝手 な想像をして書くことにしました。つまり、最 初は印象深かったローテーション先の科にしぼ って印象記を書こうかとも考えましたが、それ は1年目研修医の先生にお任せします。私はど うすれば質の高い、自分の満足する臨床研修を することができるかを意識してきましたが、こ こに自分なりの工夫と成果を報告し、また、ロ ーテーション先の科で他科と比べて良かった例 を挙げてみようと思います。

(1)不慣れな環境では得意分野の診療グルー プから

臨床研修の1 クール目は第二内科研修でし た。第二内科には内分泌・代謝、循環器、血 液・腫瘍の3つの診療グループがあり、そのう ちから2 つを選択して6 週間ずつ研修します。 私は学生の時に得意だった循環器グループを最 初の研修先に選択しました。そうすることで、 まだろくに仕事もできないヒヨコながらも、よ り早く指導医の先生方の診療の役に立てるので はないか、と考えてのことでした。次に、学生 の時に苦手であった血液での研修をすることが 決まっていたので、循環器で研修中の最初の6 週間に、病棟や外来の業務に早く順応し、かた や血液グループでの平常業務の流れをつかむた めに、同内科をローテート中の研修医と情報交 換を行い準備していました。そのおかげか指導 医に恵まれたこともあり、血液グループでの研 修は実り多いものとなりました。特記事項とし て、同内科では看護師の写真つき名簿がナース ステーションにあったので、看護師の名前を早 く覚えることができ、病棟業務に慣れる手助け となりました。また、研修の始めにあたり看護 師長から病棟オリエンテーションや、他看護師 への紹介をして下さる配慮があり、指導医から の外来業務に関するオリエンテーションがしっ かりしていて、業務に早く慣れることができま した。

(2)苦手を克服、コンサルテーション能力 の養成

ローテーション先の科における診療グループ の選択では、前述のように得意な分野から手始 めに研修するということも一つの方法だと思い ますが、「苦手な分野でもせめて○○だけはで きるようにする」ために苦手分野あるいは将来 的に専攻を希望しない分野をあえて選択すると いうのも一つの工夫だと思いました。今後どの 分野を専攻するにしても、専門以外の領域の疾 患を診療することは現実的に不可避です。その 際に見逃してはいけない疾患や、早めに専門医 にコンサルトするべき疾患があるため、苦手な 分野でも最低限のことはわかっている必要があ ります。コンサルテーションについて視点を変 えて述べさせていただきますが、初期臨床研修 が義務化されたことのメリットの代表として、 いろんな診療科に人脈をつくることが可能であ り、適切なコンサルテーションをするために必 要な最低限の知識を獲得しやすくなったことが 挙げられます。この2年間の研修で得た知識と 人脈は、将来、私が自分の専攻する領域以外の 疾患に遭遇した際に、専門医にコンサルトする 手助けとなるでしょう。

小児科・産婦人科・精神神経科での必修研修 を終えようとしている同期の研修医はまだ少な いのですが、私はちょうど5クール目にこれらの 科で研修をしているので、大雑把ではあります が少し印象を述べたいと思います。「小児は小さ な大人ではない」、「女性器診察」、「面接」とい ったキーワードが端的ではありますが、これら の診療科の特徴をよく表していると思います。 各科一ヶ月という短い研修期間では目標をもっ て臨まないとあっという間に終わってしまい、 何かを得たという実感に乏しい研修になってし まいます。私にとって、研修医のために簡単・ 明瞭な到達目標を提示し、それを念頭において 指導してくださり助かったと一番感じたのは精 神神経科でした。また、これら一ヶ月しか研修 しない科で感じた問題点は、看護師スタッフの 名前を覚えることなどほとんどできないことで す。看護師の写真つき名簿があれば時間のある 時に名前を覚えられるので、短い研修を円滑に 行うために必要性を感じました。その他にも、 これら3つの科には全ての研修医がローテートし てくるという現実があるので、研修医指導のあ り方に改善の余地があるなら、是非ともより良 くしていただければいいなと感じました。

乱文ではありますが、同期や後輩の研修医が 今後の臨床研修を充実したものとできるよう に、また、指導してくださる各科諸先生方の参 考になればと思い、述べさせていただきまし た。私は今後いつまでも初心を忘れずに頑張り たいと思います。

お知らせ

第12回沖縄県医師会県民公開講座
「ゆらぐ健康長寿おきなわ」
脳卒中 〜大事な人が倒れたら〜
  •   日 時:平成18年7月22日(土)13:30〜15:30
  •   場 所:ロワジールホテルオキナワ(天妃の間)
  •   司 会:玉井 修(曙クリニック・沖縄県医師会ふれあい広報委員)

講 演

座長 県立南部医療センター・こども医療センター副院長 下地 武義

「脳卒中とは」

県立南部医療センター・こども医療センター副院長 下地 武義

「脳梗塞の治療」 琉球大学医学部高気圧治療部助手  伊佐 勝憲

「脳出血の現状」 浦添総合病院副院長  銘苅 晋

「クモ膜下出血の治療」 沖縄赤十字病院脳外科部長  笠井 直人