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第113回 九州医師会総会・医学会及び関連行事

玉城信光

副会長 玉城 信光

去る11 月15(金)から17 日(日)の3 日間にわたり、沖縄県医師会担当の下、那覇市において 九州医師会総会・医学会関連諸行事を開催したので、その概要を報告する。

T. 九州医師会連合会第106 回臨時委員総会

  • 日 時:平成25 年11 月15 日(金)17:30 〜
  • 場 所:ANA クラウンプラザホテル沖縄ハーバービュー(白鳳の間)

開 会

定刻になり、沖縄県医師会安里副会長の司会 の下、会が進められた。

挨 拶

宮城信雄九州医師会連合会会長

第106 回臨時委員総会の開催に当たり、一言、 ご挨拶申し上げる。

先生方には、大変、ご多忙の中、そして、遠 路はるばる沖縄の地にお越しいただき、厚くお 礼申し上げる。

また、本日は日本医師会からご多忙の中、横 倉会長はじめ、今村常任理事、藤川常任理事にご臨席賜り、心から感謝申し上げる。

沖縄県医師会の担当により本日から3 日間、 九州医師会総会・医学会及び関連諸会議を開催 させていただく。昨年5 月の委員総会で担当が 決定し、以降、宮崎県医師会様の見事な運営を お手本にして、九州各県医師会のご支援を頂き ながら鋭意、準備を進めてきた。

本日、この日を無事迎えることができ、九州 各県医師会の先生方には、この場をお借りて改 めて感謝申し上げる。

担当県として遺漏の無いよう取り組んできたつ もりであるが、不行届きの点も多々あろうかと存 じる、その際はご容赦くださるようお願いしたい。

本日の臨時委員総会では九医連の現況報告に 加え、会則改正、また明日の総会に提出する宣 言・決議(案)についてご審議いただきたい。

宣言・決議(案)については沖縄県医師会で 原案を作成し、事前に各県医師会にご意見をお 伺いした上で、常任委員会でも2 回に亘って協 議・確認させていただいた。是非とも満場一致 でご承認賜るようお願い申し上げる。また、日 本医師会の横倉会長にはこの後ご挨拶を頂く が、出来るだけこの臨時委員総会を円滑に進め、 今村常任理事、藤川常任理事にも先生方のご活 躍を踏まえた上で中央情勢報告をお願いした い。この3 日間の諸行事を滞りなく、無事開催 できるよう先生方のご協力をお願い申し上げ、 ご挨拶に代えさせて頂く。

来賓挨拶

日本医師会横倉義武会長

九州医師会連合会第106 回臨時委員総会の 開催にあたり、ご挨拶申し上げる。はじめに、 台風26 号で被災された方々、そして、先日福 岡で発生した医療機関の火災によりお亡くなり になった方々に対して、謹んで哀悼の意を表したい。

特に医療に従事する私どもにとって今回の火 災事故は、人の命を救う医療機関において、火 災によって多くの命を失われるということは、 本当にあってはならない事故であり、二度とこ のような事故が起きないよう各医療機関におい て、設備の点検や防火管理体制の徹底を図って いただくことは言うまでもない。加えて、国民 の安全、患者さんの安全を守っていくためには、 様々な財政上の支援を含め、様々な施策を国に 提案し、それを実行していくよう求めていく必 要がある。患者さんの安全体制の強化に改めて 全力で取り組んでいく所存である。

また7 月に行われた第23 回参議院選挙におい て、日本医師会副会長であった羽生田たかし氏 を国政の場に送り出すことができた。これもひ とえに九州医師会の先生会をはじめ、全国の医 師会の先生方や関係者の皆様の多大なるご支援 の賜物であると、厚く御礼申し上げる。

去る10 月13 日に開催された羽生田副会長 辞任後の役員選挙において松原副会長をはじめ とする新しい執行体制をご承認頂いている。よ り強い日本医師会を目指し、全国の会員が国民 の安全、安心な医療に向けて力を合わせて努力 するという姿を示すことが必要な時期に来ていると思う。

さて安倍政権の発足とともに日本経済は少し ずつ元気を取り戻しつつあるが、私たち医療を 取り巻く環境は本格的な超高齢社会を目前に迫 る中にあって、国の財政難を理由にさらに規制 改革が叫ばれ、混合診療や民間医療保険の拡大 など一段と医療の産業化へ向けた動きが加速し ている状況である。特に懸念しているのは民間 議員が入った国の経済財政諮問会議が開催され ており、今回の診療報酬の改定についても厳し い意見が述べられていることが予測されている ものと思うが、その他、規制改革会議、さらに 産業競争力会議などにおいて、再び市場原理主 義の意見が台頭してきている。

明日の講演で詳細に各県医師会からの質問に 対して述べさせていただくが、産業界から様々 な規制改革を望む意見があるが、私は国民の健 康を守ることに関する規制については、一歩た りとも許してはならないと思う。

新しい薬の創薬や医療機器に関する規制等、 医療周辺に係る規制についてはやむを得ないと 思うが、多くの医療体制に関する規制は、国民 の安全を考えて私ども長年主張し、引き継がれ てきたものであるから、厳しく対応してまいる。

また、社会保障と経済、その対立する軸の中 で、国民の健康と国民の医療を守るという立場 から政策主張をしなければならない。国民は命 と健康を犠牲にしてまで国の経済発展を望んで いるわけではない。こうした現実を踏まえると 医師の大同団結に向けた指標として、本年6 月 に採択された日本医師会綱領の理念のもとに、 今まさに会員の団結が求められる時である。国 民医療の向上に向けた医療政策を政府や国民に 訴えていく一方、今まで以上に日々の活動を通 じて医療と政治の関係を会員一人ひとりに理解していただく必要がある。今回の参議院選挙は 強い組織作りに向けたその第一歩であると確信している。

現在、医療関係40 団体で構成される国民医 療推進協議会では、国民の生命と健康を犠牲に する、「行き過ぎた規制緩和」に歯止めをかけ、 国民皆保険の恒久的な堅持と、医療に関する消 費税問題の抜本的解決を政府に求めるため、「国 民医療を守るための国民運動」を展開し、都道 府県医師会にもさまざまな活動をお願いしてい るところである。また、来る12 月6 日に日比 谷公会堂で決起集会を計画しているので多くの 先生方にも参加していただくようお願いする。

また、先週、「国民医療を守る議員連盟」を立 ち上げ、全国の先生方のご努力で270 名を超す 衆参自民党国会議員にご参加していただくこと ができた。会の会長には高村副自民党総裁にお 願いし、会合を来週火曜日朝8 時に開催予定な ので各都道府県医師連盟の委員長にもご出席を お願いしている。そういう活動を通じて様々な 医療に対する問題の解決のために、これだけ多 くの国民を代表する国会議員が集まっているこ とをしっかりと理解していただく必要がある。

来年度の診療報酬改正に向けて議論が活発 化すると思う。我々は適切な国民医療を提供す るためにコストとしての診療報酬という位置 づけで取り組んでいきたいのでよろしくお願いしたい。

結びに、本日の総会開催にあたりご尽力いた だいた九州医師会連合会会長宮城信雄先生はじ め、役職員、関係者の皆様に心より御礼申し上 げるとともに、本日ご参集の皆様方のご健勝と、 九州医師会連合会の今後ますますのご発展を祈 念して挨拶とする。

司会の安里委員から本日ご出席予定だった羽 生田たかし参議院議員は急遽公務のため、当臨 時委員総会は欠席となった旨説明があり、ご来 賓の紹介を行った。

座長選出

引き続き、慣例により、座長に九州医師会連 合会会長の宮城会長が選出された。

報 告

1)第337 回常任委員会について

座長の宮城会長から、当臨時委員総会に先立 って開催された標記常任委員会について報告があった。

2)九州医師会連合会事業現況について

沖縄の玉城委員より資料に基づいて、平成 25 年10 月31 日までに行われた九州医師会連 合会事業(常任委員会、委員総会、各種協議会) 及び関連行事について報告が行われた。

3)九州医師会連合会歳入歳出現計について

真栄田委員より資料に基づいて、平成25 年 10 月31 日現在の九州医師会連合会の歳入歳出 現計について報告があった。

なお、歳入歳出合計並びに差引残高について は下記のとおり。

4)第113 回九州医師会医学会及び関連行事について

玉城委員より資料に基づいて、11 月15 日(金) の前日諸会議、16 日(土)の合同会議、総会・ 医学会、17 日(日)の分科会、記念行事につ いて報告があった。

議 事

第1号議案 九州医師会連合会会則改正の件

座長の宮城会長から提案理由の説明があり、 原案通り承認された。

第2号議案 九州医師会連合会(九州医師会) 医学会施行細則改正の件

座長の宮城会長から提案理由の説明があり、 原案通り承認された。

第3号議案 第113 回九州医師会連合会総会 の宣言・決議(案)に関する件

座長の宮城会長から提案理由の説明が行われ た後、真栄田委員より宣言・決議(案)の朗読 があり、審議した結果、原案通り承認され、翌 16 日の総会に上程することが決まった。

以上の議事終了後、来賓である日本医師会の 今村常任理事、藤川常任理事から担当職務の現 況について報告があった。

今村定臣日本医師会常任理事

今回の役員の一部交代に伴い、職務文書も一 部見直しが行われ、私は庶務担当の追加を横倉 会長から命ぜられた。

◎先端医療の分野

日本版NIH コースが具体化している。医療 分野の研究開発の総合戦略策定と関連予算の一 元的な予算要求配分の調整を行う司令塔機能の 役割を担う健康医療戦略推進本部日本版NIH が設置されて、本部長に内閣総理大臣、副本部 長に内閣官房長官、本部委員にはそのほかの国 務大臣が充てられている。これに政策的助言を 与えるきわめて重要な任務を持つ健康医療戦略 参与というものが産業界医療関係の有識者から 選任されることになっているが、当然日本医師 会も参画して、専門的な助言を与えるはずが、 日本医師会は構成員になっていなかったことか ら、横倉会長が総理に申し上げその場で日医も 参画が認められた。

◎母子保健

改正母体保護法の理念に則り新規指定、更新 指定の際は母体保護法指定研修会の受講が必須 条件となる。来る12 月7 日に母体保護法指導 者講習会において詳細について説明する。

◎小児保健

成育基本法制定に向けての活動が本格化して いる。日医の周産期乳幼児検討委員会では成 育基本法を制定すべきとの答申を去る10 月16 日に横倉会長に答申した。今後は法案成立を目 指してロビー活動を展開する議連を立ち上げ る予定である。羽生田参議院議員に事務局長にお願いし、会長には元官房長官河村建夫氏を考 えている。また子供虐待関連では、平成23 年 度から始めた市民公開講座を現在まで10 回開 催した。今年は11 月30 日に大分、来年2 月8 日には松山で開催予定である。また、ゼロ歳児 の虐待防止や望まれない妊娠に対する対応のた めに特別養子縁組と産科医療機関において取り 組んでいただくため、ネットワークづくりを行 っている。熊本の福田先生にも中心になってご 参画いただいている。

◎医事法制

医事法の制定が主要なテーマである。各ブロ ックから頂いた意見、要望書等を持ち帰って、 医療法検討委員会で加筆・修正を行い医療関係 団体、日本医学会、患者団体と意見を調整して いる。その後修正した委員会素案を日医案とし て承認頂いたら医連設置を含め、ロビー活動を行う。

藤川謙二日本医師会常任理事

◎医療秘書関係

埼玉県医師会では医療秘書の学校を委託事業 で来年以降に開始する動きをされている。日本 医師会としても大病院の医療秘書の活動だけで なく、診療所においても医療秘書に活動してい ただいて、医師の事務的な作業を医療秘書関係 にしていただくことによって、医師の業務戦力 アップに繋がるので、ぜひとも各県で検討して いただければと思う。

◎有床診療所に関する関連

1)管理栄養士問題

  • 委員会では答申がまとまり、来週には横倉会長へ答申予定である。
  • 入院基本料の算定要件からははずす、加算方式に戻す。

2)診療報酬改定に向けた検討状況

  • 次期診療報酬改定に対する要望書、日医有床診療所に関する検討委員の答申(案)。

3)防火・防災体制のあり方

  • 消防庁で「有床診療所火災対策検討部会」 を立ち上げて頂いて、私も日本医師会担当 理事として参加している。主な項目は本件火災における被害拡大の状況を踏まえた、 現行規制の総合的な点検、有床診療所にお けるソフト、ハード両面での防火対策のあ り方である。

◎チーム医療の推進

○看護師の特定行為に係る研修制度案につい て、日医としても看護職員をはじめとして 様々な職種がそれぞれの職務について資質 の向上を図り、協働してチーム医療を進め ていくことは必要と考えている。

○行為そのものに「技術的な難易度または判 断の難易度」があることに加えて、予め対 象となる病態の変化に応じた行為の内容が 明確に示された、特定行為に係るプロトコ ールに基づき、看護師が患者の病態の確認 を行ったうえで実施することがあると定義。

○特定行為(案)を区分ごとに分け、必要な 部分のみ研修を受けることが想定されてい る。法案成立後に設置される審議会におい て改めて検討する予定。

U. 九州医師会連合会委員・九州各県医師会役員合同協議会

  • 日 時:平成25 年11 月16 日(土)10:00 〜
  • 場 所:ANA クラウンプラザホテル沖縄ハーバービュー(彩海の間)

開 会

司会より開会が宣された後、宮城信雄九州医 師会連合会会長(沖縄県医師会長)より、概ね 次のとおり挨拶があった。

挨 拶

宮城信雄九州医師会連合会長

本協議会では、横倉会長から中央情勢をお伺 いするが、例年、予め、日医に対する意見、要 望を、九州各県にご照会し、それらに対する日 医の見解も含めて、お話をお伺いしてきた。

今年度も、九州各県から、「大病院外来の軽症患者の受診問題」「有床診療所における設備 の補助並びに診療報酬の改正」「日医、県医、 郡市医師会の連携」「国の規制改革に対する日 医の対応策」「病床機能報告制度」「消費税」「医 療圏で考える初診料・再診料」について、以上 8 題の広範多岐に亘るご質問・ご要望を頂いた。

いくつか日医の見解が示されたものもある が、本日は、一歩踏み込んだ形での、日医の考 え方や医療情勢の行方など、本音の部分もお聞 きできるのでは、と期待している。

先の日医役員補欠選挙を踏まえ、今後より一 層日医の強化が図られるものと期待しているが、医療界に山積する多くの問題を、我々の代 表である横倉会長がどのように考え、日医がど のように対応・対処していくのか、また、各地 域の医師会にどのような事を求め、期待しているのか。

これらの課題に対する日医の戦略、戦術の一 端なりも含めて、お話をお聞かせ頂ければ幸いである。

座長選出

慣例により、九州医師会連合会宮城信雄会長 が選出された。

講 演

「中央情勢について」

横倉義武日本医師会長

1. 日本医師会綱領について

日本医師会は様々な国の審議会、委員会等へ 役員を派遣しているが、その役員の基本的な判 断基準を明確にしておかなければならないと考 え2 つの項目を判断基準としてお願いしている。

1)国民の安全な医療に資する政策か

2)公的医療保険による国民皆保険は堅持できる政策か

昨年、会長選挙に立候補した際に、団体とし ての基礎的な考えが日本医師会定款に書いてあ るが、もっと分かり易い形で示してはどうかと いうご指摘をいただき、検討委員会を設置し、 日本医師会綱領を作成して代議員会でご承認い ただいた。

○綱領前文について

人間の一番生命に直結する医療を扱わせていただくためには、高い倫理観を持つべきである。 また、取り纏める医師会として理念を高く持ち ながら主張していかなければならないと考えている。

○綱領1 について

健康寿命を延伸するためには、地域住民との 信頼関係を構築し、地域における医療を取り巻 く社会的活動、行政活動に積極的に参加すると いう社会的機能をもつ「かかりつけ医」の役割 が非常に重要である。

「かかりつけ医」の定義が明確ではなかった が、「なんでも相談できる上、最新の医療情報 を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機 関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保 健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と させていただいた。

○綱領2 について

国民に寄り添う形で「かかりつけ医」がいて、 「かかりつけ医」を中心として、地域の身近な 通院先、急性期、慢性期、在宅医療まで「切れ 目のない医療・介護」を提供し、国民の健康と 安心を支えていかなければならない。

○綱領3 について

わが国の医学・医療を発展させ、質の向上を 図るためには、日本医師会と日本医学会が車の 両輪となって牽引していくことが重要である。

日本医学会の法人化の問題があるが、日本医 学会と話しをして、日本医学会は日本医師会に 置くという定款はそのままにする。但し、日本 医学会がその活動の中で法人格を求められる場 合は、別の名称で法人化することとして、その 活動は日本医師会にある日本医学会として一体 として動かしてもらうということを同意をしている。

○綱領4 について

半世紀にわたり国民の生命と健康を守り続け てきた国民皆保険を、今後とも持続可能な社会 保障体制として確立していくことは、国家が負 う当然の責務である。

自由主義的な考えの方が、医療の中にもあっ てもいいのではないかと言われるが、医療にお ける競争は、医学の研磨と医術の研修において行われるべきで、よりよい医療を提供するため、 医師として切磋琢磨すべきである。社会保障の 大きな柱である医療は、価格に基づく競争をす べきではない。

2. 有床診療所について

○地域医療における中小医療機関、特に有床診 療所の重要性と防火対策の強化について

入院患者の火災による死亡事故は、我々とし て厳しく受け止めて置かなければならない。有 床診療所の重要性がやっと認識された矢先の事 故である。何故この様なことが起こったのかよ く考えなければならない。平成の初めに当初の 厚生省の幹部及び政治家の中に有床診療所の使 命は終わったということを強く言われた時代が あった。その事に対して有床診療所協議会を作 られた先生方が、その重要性を訴え続けてこら れたが、長年に亘って、有床診療所の経営基盤 である入院基本料が低く押さえられてきたのは 事実である。そういうことで、存続が危ぶまれ る弱い立場になっている。

もう一つは、十分な手当がされない中で、開 設者の負担が過大なものになっている。

今後の高齢化社会を地域で支えていくには、 有床診療所の役割は極めて大きい。

○防火・防災体制のあり方について

患者の安全体制については真摯に検討しなけ ればならないが、スプリンクラー等の設置基準 の強化等については、補助金等による財政支援 も併せて検討する必要がある。

日本医師会として、厚生労働省やその他の関 係省庁に対して、今年度補正予算や来年度予算 での対応を求めている。また、有床診療所の活 性化を目指す議員連盟野田会長(衆議院議員) へ、1)地域包括システムにおける有床診療所の 活用、2)有床診療所の経営基盤の強化(入院基 本料の引き上げ)、3)有床診療所の新規開設お よび増床にかかる適切な運用、以上3 点を要望した。

○有床診療所の経営基盤強化のために

11 月6 日に開催された中医協で、医療経済 実態調査の結果が報告され、有床診療所の損益差額を見ると前々年度から前年度にかけ、悪化 しているとの結論が出ており、有床診療所にと っては厳しい状況が続いていることが伺える。 次期診療報酬改定においては、有床診療所の経 営基盤の強化となるような改定が行えるよう、 日本医師会としても全力で対応していくととも に、様々な働きかけをしている。

3. 病床機能報告制度について

医療法等改正法案が、来年の通常国会に提出 されるようになった。一つの大きな目玉が、病 院・病床機能の分化・連携ということにある。 昨日の経済財政諮問会議中でも、地域における 医療機能の分化・連携を進めることが強く主張 されている。これは我々が先手を取ってやって いかなければならない。その他にも在宅医療、 特定機能病院の承認の更新制の導入というよう な議論がされる。

人材確保・チーム医療の推進については、医 師確保対策ということで、各県に地域医療支援 センター(仮称)の設置が広がってきた。これ をしっかりと位置付けて、行政、医師会、大学、 地域住民で協議し、出来れば医師会がイニシア チブを取っていくことが重要であると考える。

看護職員確保対策については、看護師の復帰 支援としてナーズバンクが看護協会に委託され ている。その機能強化が重要である。

医療機関における勤務環境の改善について は、医療機関の運営にあたる人達の意識改革と 同時に、その財政支援をどうするかということ を考えながら行っていく必要がある。

医療事故に係る調査の仕組み等の整備につい ては、日本医師会から様々な提案をした。原則 院内調査をベースにし、第三者機関については 県医師会が中心となってサポートしていただく ということでやっていただきたい。善意の医療 行為が刑事罰に問われないように、しっかり医 師の医療行為を守るということが大きな役割である。

病床の機能分化については、やはり先手を打 つべきだということで、日本医師会と四病院団 体で協議を続けてもらい、合同で提言を出した。

4. 組織力の強化について

従来、日本医師会から都道府県医師会を経由 して様々な文書をお送りしており、タイムラグ が生じていたが、昨年からネットを活用して都 道府県医師会と郡市区医師会で同時に見れるよ うなシステムに変え、出来るだけ情報の共有化 を図るようにしている。

現在、約16 万5 千人が日本医師会の会員である。 会員数が少ないという意見が非常に多く、増やし ていく努力をしていかなければならない。郡市区 医師会の会員数は、約19 万人ということで、約2 万5 千人の差がある。出来るだけ多く加入してい ただくと同時に医師免許を持つ全ての医師は医師 会に結集していくということが重要である。

昨年から医学生にドクタラーゼという雑誌を 無料で配布している。

入会者が少ないということになると段々発言 力が低下し、影響力も低下していく。

具体的な方策として、新規会員獲得に向けた 勧誘活動の実施、郡市区等医師会員への都道府 県医師会、日本医師会への入会の徹底、研修医 会員の会費無料化等を各都道府県医師会でやっ ていただいている。

現在、入退会・異動手続きに時間が掛かって いる。郡市区医師会と都道府県医師会、日本医 師会が情報を共有して簡素化できないか検討い るところである。

5. 過度な規制緩和の問題点

去る10 月31 日、安倍総理大臣に会って、 1)かかりつけ医を持ちましょう、 2)医学部新設への反対、3)次期診療報酬改定、 4)保険外併用療養の拡大への懸念、 5)健康医療政策への立案への参画、以上5 項目について要望した。

現在、国家戦略特区における規制改革事項等 の検討方針(案)として、国際医療拠点におけ る外国人医師の診療・外国人看護師の業務解禁、 病床規制の特例による病床の新設・増床の容認、 保険外併用療養の拡充、医学部の新設に関する 検討が上げられている。

1)外国人医師等について

日本人医師と外国人医師のクロスライセンス (お互いの国の医師免許を認めること)によっ て外国人医師を受け入れるのは難しいと主張し ている。医療水準の違いから、日本の医療水準 が低下する危険がある。現在も特例で英語によ る日本の医師国家試験を実施出来ており、出来 ればそのルートを使っていただければどうかと いう話しをしている。

国家戦略特別区域の病床規制を外すことにつ いては、現在でも特定病床の設置については、 各都道府県の医療審議会に上げてもらっている ところで、敢えて特区まで全て認める必要はな いのではないかと話している。

医学部新設の問題については、教員確保のた め、医療現場から300 人の教員(医師)を引き 揚げざるを得ず、地域医療の崩壊を加速するので、 これをどのように解決するのかを考えてもらわ ないとならない。また、人口減少など社会が変化 していく中、医師数が今後増えていく現状を十分 把握したうえで判断してはどうかと話している。

保険外併用療養については、先進医療は、安全性・有効性の確認が重要であるため、一定の 安全性・有効性が確認されれば、「評価療養」 となり、「保険診療の一部負担+先進医療の全 額自費」が既に認められている。規制改革会議 では、保険外併用療養について全く理解されて いない状況である。拙速な保険外併用療養の活 用については、1)安全性の問題(薬害、健康被害)、 2)国の財政的な問題(公的医療費の増大)、 3)公的医療保険の給付範囲の縮小(患者負担の 増加)が危惧されることを話している。

6. 次期診療報酬改定について

来年の改定の基本方針については、医療機関 の機能分化、強化と連携、在宅医療の充実が重 点課題となっている。これをどのような視点で 診療報酬改定に望むかということについては、 充実が求められる分野として、がん対策、精神、 認知症、救急、リハビリ、技術の評価、患者視 線の医療の重視。医療安全対策、明細書や点数 表の簡素化、医療従事者の負担軽減ということ で、救急外来の機能分化をそれぞれの地域で検 討、チーム医療の問題、後発医薬品の使用促進、 在院日数の適正化等が、社会保障審議会の医療 部会と医療保険部会で基本方針として認められ ている。このような中、自民党の中に診療報酬 改定に係るプロジェクトチームが設置され、羽 生田俊議員が参画することが出来たので、方針 の決定については議論をして欲しいと話した。

診療報酬改定率は予算編成過程で内閣が決定 する。その後の厚生労働大臣諮問、社会保障審 議会の基本方針を受けて、中医協で具体的な診 療報酬点数を審議する。11 月に財政審にて「社 会保障分野に係る予算編成の課題について」と りまとめ、12 月に内閣が診療報酬改定率を決 定する予定である。去る10 月21 日の財政審 においては、厳しい財政の中、マイナス改定に すべきという意見が出たところである。

自民党の中に「国民医療を守る議員連盟」を 設置してもらった。九州各県医師会の働きかけで、 殆どの九州選出の国会議員に参加していただい ている。来る11 月19 日に総会が行われるが具 体的に日医として要望を出す予定にしている。診療行為・体制、薬剤等や医療材料本来の医療の評 価と医療機関の仕入れに係る消費税が上がるこ とに対する手当をして欲しいと要望している。

次期診療報酬改定については、社会保障・税 一体改革においては、消費税増収による財源を 社会保障の充実に充てることは国民との約束事 項である。医療提供体制の将来像を作成するま で診療報酬を増額しないということはあり得な い。政府は、医療関連産業を成長産業と位置付 けている。また保険外併用療養の拡充を目指し ているが、そのためには保険診療も充実されな ければならず、このことからも診療報酬マイナ ス改定はあり得ないと主張している。

大病院外来の問題是正については、世界に冠 たる国民皆保険制度を持続可能なものとするた めに、まず日本の医療がよいということを国民 に理解していただいたうえで、必要な医療が過 不足なく受けられることが大切である。例えば 大病院にいきなり行くということを是正すると いったゆるやかなフリーアクセスの制限につい ても、患者にとって受診が1 日がかりになる のは望ましくなく、まず、かかりつけ医を受診 することが望ましいと考えている。一方で、多 数の外来を受けることは、病院側、特に勤務 医にとって相当の負担になると言われている。 2025 年に向けて、徐々にどのような対応をし ていくか検討していく。

長崎県からご提案のある、医療圏で考える初診 料・再診料「一地域・一疾患・一回初診」については、 ご提案の二次医療圏の中で全ての医療機関をまと めて「一病院とみなす」と“一医療圏では初診は 一回” と考えるについては、医療資源も充実し、 病床の機能分化が進んだ医療圏における理想の姿 と考えられる。現実的な問題として、連携と称し た紹介のみを行う診療所、一疾患の捉え方やその 医療機関ごとの診療報酬の設定をどうするかなど 解決すべき問題が存在すると理解している。

7. 控除対象外消費税について

1. 焦点となる協議・検討の場と解決への道筋

1)消費税率8%引き揚げの対応

○中医協(消費税分科会)において医療機関の消費税負担を検証。

○医療機関の消費税負担を検証し、深刻な実 態を明らかにすることが必要。

○改正法において、消費税率8%引き揚げ時に、 医療保険制度の中で手当てすることとされて いる。この手当は、消費税負担の検証結果に 基づき、通常の診療報酬改定とは別立てで消 費税増収による財源で行い、従前とは異なる 適切な上乗せ方法による改善を図る。予算確 保が必要であり政治的課題である。

○現行制度は、非課税といいながら、税率引き 上げにより、患者負担・国民負担が自動的に増 える「不透明・不合理」な制度であることを 明らかにすることが必要であり、このことに より自民党税調での要望実現を側面から支援。

2)消費税率10%引き揚げ時の対応

○自民党税調(医療と税制に関するPT)に おいて、社会保険診療等に係る消費税の課 税のあり方について検討。

○患者負担・国民負担を増やすことなく仕入 税額控除が可能となるゼロ税率などによる 課税制度の実現を要望。法律改正が必要で あり政治的課題である。

2. 非課税還付案について

○「患者負担・国民負担・保険者負担を増やす ことなく、仕入れにかかった消費税負担をな くす」との目的は、日医要望と一致しており、 日医として、選択肢のひとつと考えている。

○日医要望は、課税化が目的ではなく、仕入 れ税額控除を可能とするための手段として 課税化を選択したのであり、非課税制度の 趣旨である「社会政策的配慮」を否定する ものではない。

○消費税は多くの利害関係者が関わる制度で あり、どのような方向で解決が図られても よいように、あらゆる選択肢を排除するこ となく、病院団体や日本歯科医師会をはじ め各団体と連携し要望活動を進めていく。

意見交換

□質問

消費税問題については代議員会でも話があったように、国民を騙して課税をしていることになっ ていることについてどのように考えているか。ま た、某新聞社のネット配信で、消費税が上がるこ とに乗じて診療報酬を上げるという記事が出てい たがその事にについてどのように考えているか。

■横倉会長

日本医師会としては消費税10%の段階で課 税、そしてゼロ税率を含む軽減税率という主張 を続けていく。ただし非課税還付という方法も 検討しておかなければならない。また、消費税 を上げる時に診療報酬を上げるということにつ いては、消費税引き上げは社会保障充実のため に行うと三党合意で国民に説明している。当時 の総理大臣は首を懸けたわけである。その本質 はしっかり守ってもらわないといけない。

先生からは、日医と意見交換が十分では無い とのお手紙を頂いたが、できるだけ今日のよう な機会を通じて意見交換を行いたい。

□質問

有床診療所における入院基本料の増額につい ては、有床診療所の協議会でいつも議論されて いるところであるが、今回の診療報酬改定にお ける見通しはいかがか。

沖縄県でも会員が減る一方である。

■横倉会長

当初、保険局医療課は診療報酬をあまり触り たがらず、防災については補助金だけで決着を付 けたいとしていた。しかしながら現状を見ると 結局は入院基本料が低すぎるために対応出来ず、 あのような災害も起きてしまった。また、開設 者の年齢構成が上がっていることから承継の問 題も出ている。そのためには自分のお子さんにバ トンタッチできる状況であればそれが出来るよ うな財政支援(診療報酬上の支援)を行う。また、 他人への譲渡でも、地域のために有床診療所をや ってよかったと自覚できるような環境を創って いかなければならない。そうしない限り、有床診 療所は減っていく。そのためにも今回の診療報酬 改定では手当をするよう強く申しあげている。

□質問

有床診療所におけるスプリンクラーの問題は 是非対処しなければならない。介護保健施設、グループホーム、小規模多機能施設等において、 平米当たりの単価を有床診療所の場合は上げる べきなのか考えると共に、中小医療機関に対す るスプリンクラーの手当の交渉を日本医師会は 考えているのか伺いたい。

■横倉会長

スプリンクラーの補助については、中小病院 を含めて欲しいと要望している。

各都道府県医師会、郡市区医師会で地域の調 査を行い、実態を把握して欲しい。

□質問

医師法21 条の死体検案については、検案し て異状を認めた場合は所轄警察署に届け出るこ とになっているが、2004 年の最高裁判決にお いて異状とは外表異状であると言っている。と ころが外表異状も瘢痕から大きな異状まで様々 である。そのため届け出る範囲を明確にするこ とは不可能だと思うが、日医で議論を深めて頂 きその方策をお示し頂きたい。

■横倉会長

異状死体検案についてはあくまでも検案した 医師が判断できる自主性を握っていたほうが良 いと思っている。届け出るべき境界のある程度 の線引きを示すことは可能かと思うので検討さ せていただきたい。

□質問

大病院に患者が集中する問題であるが、選定療 養では必ず一部自己負担金を取らないといけない 等、例えば紹介状無しの初診の場合は保険が効か ない等大胆な政策をとらないと中々病院への患者 集中が止まらないと思うが見解を伺いたい。

■横倉会長

初診と再診の問題を特に大学病院を含めた大 病院の場合は切り分けて考える必要がある。救急 の場合は別だが、初診の場合はできるだけ、かか りつけ医の紹介をもって行うべきである。また、 大学病院の外来の一割は初診で9 割が再診の患者 である。症状の安定した患者の再診を大学病院で どこまでやるのかという点についてしっかりと検 討する必要がある。現在、選定療養における初診、 再診の料金の上乗せについての議論は起きている し、その金額も大きく設定してはどうかとの議論がされているのでその方向に向かうと思う。しか しながら、東京の現状を見ていると、大病院が一 つのブランドと化しており、再診を1 万円上乗せ しても大病院に流れることが考えられる。ただ地 方ではそれほど余裕のある方は少ないと思う。福 岡でも調査をしていただければと思う。

□質問

横倉会長はこれまでに無い程、超過密なスケ ジュールで各地を訪問されており、会員として 感謝申しあげる。テレビの討論等を拝見してお 願いであるが、医師会会長として発言が非常に 難しいと思うが、国民や医政者の前で医師会は 国民の命を平等に守っているという基本的な考 えを一言お願いしたい。

また、消費税問題については今後もゼロ税率を求めていくのか。

■横倉会長

我々は、医師会として理念をしっかりと述べ て、我々の主張をしていかなければならない。 その中で我々の経済的な主張をせよとの声もあ ろうかと思うが、副会長と役割を分担しながら 意識して行動していきたい。

また、消費税については、日本医師会は課税 としてゼロ税率を求めていく主張は変えていな い。ただ、別の方法も検討せざるを得ない状況にある。

□質問

有床診療所で頑張っておられる先生方が大勢 いるが、中には入院が困難になって閉鎖する医 療機関もある。そのような中で大病院がベッド 数を増やすために診療所のベッドを買い取る動 きがあるがそれについて日医の見解を伺いたい。

■横倉会長

そのような事は本来あってはならないと思っ ている。ただ、診療所を運営されている先生方 の権利があるため、その整合をどのように考え るかという点と、有床診療所の48 時間規定の 問題から、現在医療法で有床診療所の病床もカ ウントするようになっていることから、新たな 問題が発生している。本来、有床診療所の病床 を買って病院の病床へ転換することは望ましく ないという認識を持っている。

V. 第113回 九州医師会総会・医学会

  • 日 時:平成25 年11 月16 日(土)13:00 〜
  • 場 所:ANA クラウンプラザホテル沖縄ハーバービュー(彩海の間)

第113回 九州医師会連合会総会

はじめに石底マキアナウンサーの司会進行の もと、玉城信光沖縄県医師会副会長より、開会 の辞が述べられ、続いて国歌斉唱が行われた。

その後平成、24 年11 月1 日より平成25 年 10 月31 日までの1 年間にご逝去された九州医 師会連合会会員287 名の御霊に対し黙祷が捧げられた。

続いて、九州医師会連合会宮城信雄会長(本 会会長)より、下記のとおり挨拶があった。

本日、九州各県より多数の会員の先生方にご 参加頂き、総会・医学会をこのように盛大に開 催できますことを、先ずもって厚く御礼申し上 げます。

又、日本医師会会長 横倉義武先生、沖縄県 副知事、川上好久様をはじめ、多数のご来賓の 皆様方には、大変、ご多忙の中、ご臨席賜りま したことに、心より御礼申し上げます。

九州医師会医学会は、古くは明治25 年より 開催され、以来今日に至るまで実に120 年以 上に亘り、我が国における医学の向上発展に寄 与しております。今日に於ける九州医師会医学会の発展があるのも、九州各県先人の並々なら ぬご尽力と結束力の賜であり、本日、ここに第 113 回目の歴史ある大会を無事、迎えることが できましたことに対し、九州各県医師会の諸先 輩方並びに関係各位へ、改めて敬意と感謝の意 を表する次第であります。

さて、現在、政府が進める経済のみに力点を おいた、TPP、国家戦略特区構想などは、医療 に市場経済主義を導入し、世界に冠たるわが国 の国民皆保険制度は形骸化する恐れがあります。

また、消費税は来年4 月に8%へ引き上げる ことが決定し、平成27 年10 月には、10%へ アップすることが予定されております。現在、 患者さんが負担すべき消費税を医療機関が負担 しています。この問題が解決しない場合、医療 経営にも大きな影響を及ぼし、地域医療は崩壊 の道へと歩んで行くことになりかねません。

かかる状況の中、私どもは、国民の健康を担う 専門家集団として、日本医師会の綱領に則り、医 師としての高い倫理観と使命感を礎に、人間の尊 厳が大切にされる社会の実現を目指し、邁進しな ければならないと思料するところであります。

後程、その実現に向け、宣言・決議案を上程 致しますので、会員各位の絶大なるご理解とご 支援をお願い申し上げます。

本日は、この後、医学会特別講演として2 題 のお話しを予定しております。

特別講演Tでは、東京都健康長寿医療センタ ー健康長寿ゲノム探索研究部長の田中雅嗣先生 に「ミトコンドリアと長寿―核ゲノムとミトコ ンドリアゲノムの関わり―」と題してご講演い ただきます。田中先生は、医師・医学博士であ り、ミトコンドリア遺伝子型と成人発症性疾患 の関連を研究されており、糖尿病における動脈 硬化の進展や腎臓の機能障害、心筋梗塞や脳梗 塞の発症などに、ミトコンドリア遺伝子型が影 響を及ぼしていることを明かにしております。

また、特別講演Uでは、琉球大学名誉教授の 木村政昭先生に、「沖縄の海底遺跡について」 と題してお話をお伺いすることになっていま す。先生は日本の海洋地質学者並びに地震学者 であり、与那国島海底遺跡の研究で広く知られ ている方です。

皆様方には、両先生のお話を大いにご期待頂 き、最後までご静聴下さいますようお願い申し 上げます。

又、先に開催させていただいた行事もござい ますが、本日から明日にかけて、9 つの分科会 と7 つの記念行事を開催致しますので、併せて 多数ご参加下さいますようお願い致します。

最後になりましたが、本総会・医学会の開催 にあたり、多大のご支援とご協力を賜りました ご来賓各位、九州各県の会員各位に対し、重ね て御礼を申し上げ、ご挨拶とさせて頂きます。

続いて、ご来賓を代表して横倉義武日本医師 会長、仲井眞弘多沖縄県知事(代読:川上好久 副知事)より下記のとおり祝辞が述べられた。

横倉義武日本医師会長祝辞

第113 回 九州医師会連合会総会の開催にあ たり、日本医師会を代表して一言お祝いのご挨 拶を申し上げます。

はじめに、本総会が今年も盛大に挙行されますことに対し、ご担当されました九州医師会連 合会長の宮城信雄沖縄県医師会会長をはじめ、 役職員、関係者の皆様のご尽力に深く敬意を表 しますとともに、心よりお祝いを申し上げます。

さて、総務省が敬老の日に合わせてまとめ た人口推計によると、65 歳以上の高齢者が過 去最高の3,186 万人となり、初めて総人口の 25%に達したことが明らかになりました。世 界が未だ経験したことのない少子高齢社会を迎 え、これをどのようにして乗り切るのか、世界 中から注目される中で、政治も社会も模索を続 けているところであります。

去る8 月6 日には、社会保障制度改革国民会議 の報告書が安倍総理に提出され、今後の社会保障 のあり方に関する方向性が示されました。今後、 この報告書に添って具体的な方策が議論されてい くことと思いますが、我々にとって最も大きな課 題は、超高齢社会における国民の医療・介護に対 するニーズにどのように対応するかであります。

厚生労働省では、団塊の世代が75 歳以上とな る2025 年を目途に、重度な要介護状態となって も、住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生 の最後まで続けることができるよう、医療・介護・ 予防・住まい・生活支援が一体的に提供される「地 域包括ケアシステムの構築」を掲げております。

そもそも医師は、医療の公共性を重んじ、医 療を通じて社会の発展に尽くさなければなりませ ん。個々の患者さんに対する診療行為はもちろん のこと、地域住民の健康や、地域における公衆衛 生の向上・増進にも協力する責任があります。「地 域包括ケアシステムの構築」には、こうした多く の医師の協働による、地域の特性に配慮した包括 的な取り組みが不可欠であります。そして、医療 現場の意見の集約や行政との折衝、各医療職種団 体や病院団体等との連携・協力、さらには住民や 患者さんへの啓発のほか、医師に対する生涯教育 やかかりつけ医機能の充実に至るまで、多くの役 割がとても重要になりますが、これらは、まさに 医師会が担っていかなければなりません。

そして、「かかりつけ医」が中心となって、 地域の身近な通院先、急性期から慢性期、回復 期、在宅医療と、切れ目のない医療・介護を提供することで、国民の健康と安心を支え、そし て、各地域における人口構成や有病率等の現状 と将来予測から医療ニーズを導きだし、それに 則した地域連携を、全国約900 の地域医師会が 中心となって構築していくことで、地域医療の 再興に結びついていくものと思っております。

このほかにも、来年4 月の消費税引き上げ時 の医療への対応や、2 年に一度の診療報酬改定 への対応など、喫緊の課題が山積しております。 診療報酬については、先週、各医療機関の経済 実態調査が発表され、その解釈をめぐって、行 政、支払い側と日本医師会とで、少し食い違い が見受けられるところであります。日本医師会 といたしましては、「診療報酬は我々が診療し ていくうえでの必要なコストである」という観 点から、しっかりと評価をしていただくよう主 張してまいります。九州医師会連合会の先生方 におかれましては、今後ともご指導、ご協力の ほど何卒よろしくお願い申し上げます。

結びに、本日ご参集の皆様方のご健勝と、九 州医師会連合会の今後ますますのご発展を心よ り祈念いたしまして、お祝いの言葉とさせてい ただきます。

仲井眞弘多沖縄県知事祝辞(代読:川上好久副知事)

本日、第113 回九州医師会連合会総会が、盛 大に開催されますことをお喜び申し上げますと ともに、日本医師会横倉義武会長はじめ役員の 皆様及び九州各県から御来県下さいました皆様 を心から歓迎申し上げます。

九州医師会連合会の皆様には、日頃から地域 の保健・医療の向上に御尽力いただいているこ とに、感謝を申し上げます。

医療を巡っては、社会の高齢化、医療の高度化、 医療に対するニーズの多様化等を受けて、医療制 度改革の議論が進められている状況にあります。

沖縄県では、今後の県勢発展の方向性を示し た「沖縄21 世紀ビジョン基本計画」において、 県民ニーズに即した保健医療サービスの推進を 掲げ、医療提供体制の整備、医師・看護師の育 成及び確保等に取り組んでおります。

そのような中、九州各県から医療に取り組ま れる皆様が一堂に会し、講演や分科会での議論 を通じて見識を深められることは、大変意義深 いことであり、本総会の成果が医療現場に生か されるものと期待しております。

また、御来県いただきました皆様には、この 機会に、本県の亜熱帯特有の自然や独特の伝統 文化に直接触れていただければ幸いに存じます。

結びに、本日の総会の開催に当たり、御尽力 いただきました九州医師会連合会宮城信雄会長 をはじめ役職員の皆様に深く敬意を表するとと もに、九州医師会連合会の益々の御発展と、お 集まりの皆様の御健勝と御活躍を祈念しまし て、祝辞といたします。

宣言・決議

引き続き、九州医師会連合会委員総会におい て了承を得た宣言決議が真栄田常任理事より朗 読され、協議した結果満場一致で原案どおり承認された。

次期開催県会長挨拶 近藤稔大分県医師会長

最後に、次回開催担当県医師会長挨拶として、 大分県医師会近藤稔会長より次のとおり挨拶が あった。

来年の第114 回九州医師会総会・医学会を 大分県医師会が担当することになりました。会 期は平成26 年11 月22 日(土)、23(日)大 分オアシスタワーホテルにて、その他分科会、 記念行事等を開催する予定にしております。九 州各県にご相談、ご協力を得ながら役職員一同 精一杯努力いたします。皆様ご存じのように湯 出量が日本一である別府温泉があります。ま た、ちょうど11 月20 日前後になりますと久 住高原は紅葉と雄大な景色が見られます。日頃 からお忙しくされている先生方、どうぞこの際 ご夫婦で大分を楽しんで頂ければと思っており ます。幸い11 月23 日は勤労感謝の日の振り 替え休日で連休となっておりますので、多数の ご参加をお待ちしております。

総会終了後、九州医師会医学会テーマ講演と して、下記のとおり特別講演2 題が行われ、盛 況のうちに終了した。


第113回 九州医師会医学会

去る11 月16 日(土)14:00 より、ANA ク ラウンプラザホテル沖縄ハーバービュー2 階 「彩海の間」において第113 回九州医師会医学 会を開催したので、その概要を報告する。

特別講演Tは、沖縄県医師会 石川清和理事 の座長のもと、東京都健康長寿医療センター健 康長寿ゲノム探索研究部長 田中雅嗣先生より 「ミトコンドリアと長寿―核ゲノムとミトコン ドリアゲノムの関わり―」と題して概ね次のと おり講演があった。

ミトコンドリアは、我々が生きていくために 必要なエネルギーを作り出す細胞内小器官で、 そのDNA は母から子へと伝えられる。加齢に 伴い体細胞においてミトコンドリアDNA の酸 化的損傷が蓄積するとミトコンドリア機能が低 下する。ミトコンドリアの融合・分裂・監視による品質管理機構が破綻すると、細胞死、幹細 胞供給の途絶、免疫異常などが生じる。我々は、 加齢に伴う身体機能等の低下に大きな個人差が あることに注目し、環境要因だけでなく遺伝的 要因が長寿に影響を与えていると考えて研究を 進めてきた。

ミトコンドリアDNA の多型5178C > A (ND2:Leu237Met)によって代表される【ハ プログループD】が日本の百寿者において頻度 が高く、これが多様な加齢性疾患に抵抗性を賦 与することを報告した。また、ハプログループ (N9a)がメタボリックシンドローム、2 型糖尿 病に対する抵抗性を賦与することを大規模関連 解析から明らかにした。さらに、超百寿者の多 型を正常3 群(百寿者・若年非肥満者・若年肥 満者、各96 人)と疾患4 群(一般糖尿病・血 管病変を伴う糖尿病・アルツハイマー病・パーキンソン病の患者、各96 人)の多型と比較し、 ハプログループ(D4a)が百寿者と超百寿者に おいて頻度が高いことを見出した。これらのハ プログループ(D4a)に特有の多型が酸化的ス トレスに抵抗性を賦与しているのか、あるいは 加齢に伴うミトコンドリアDNA 欠失の蓄積を 抑制しているのか、さらなる検討が必要である。 このように、特定のミトコンドリアDNA の型 が長寿あるいはメタボリック症候群・糖尿病・ 心筋梗塞・脳梗塞に関連があることを示した。

最近、高齢者剖検2,305 例において24 万個 のアミノ酸置換を伴う遺伝子多型を解析し、肺 癌・膵臓癌・脳梗塞・パーキンソン病・アルツ ハイマー病等に罹り易い体質を規定する遺伝子 多型が同定された。超百寿者は癌・動脈硬化・ 認知症に罹り難い遺伝的体質を有すると考えられる。

我々の研究所は、医療と研究を融合して健康 長寿のために働いている。今後は、生活の指導 を体質に基づいてアドバイスを行うことが重要 になると考えており、また、市民参加のゲノム 研究というのをやっていきたい。ご支援のほど よろしくお願いしたい。

特別講演Uは、沖縄県医師会 宮城信雄会長 の座長のもと、琉球大学名誉教授 木村政昭先 生より「沖縄の海底遺跡について」と題して概 ね次のとおり講演があった。

沖縄県与那国島、沖縄本島北谷沖に海底遺跡の存在が明らかになってきた。

地形調査、潜水調査等を行った結果、与那国 島の海底遺跡周辺は、固い砂岩や頁(けつ)岩 が削られてできた階段ピラミッド様の城郭が発 見された。それを取り巻くように多くの石造建造物が明らかになった。そこは、今から3,000- 2,000 年前(縄文- 弥生時代相当期)の古代都 市が形成されていた可能性がある。

一方、北谷沖の海底遺跡は、与那国島のもの より新しい発見である。その中心となる構造物 は、与那国島の「黒色の堆積岩」とは異なり、「サ ンゴ石灰岩」が加工されてできているため、岩 石内部は銀白色や白黄色である。城郭祉の長径 は、与那国島のものより3 倍の大きさとなり九 州佐賀県の吉野ヶ里遺跡の城郭の大きさに近い。

北谷海底城の城壁内部はへこんでいて、4 つ ほどの平坦なスペース(郭)が認められ、近世 の沖縄の「グスク(城)」の構造に類似している。 その中央のスペースに、サンゴ石灰岩が削られ てできた、舎殿(正殿)と思われる縦横40m で高さ15m ほどの、階段ピラミッド様の巨石 構造物が存在する。構成する石灰岩の炭素年代 等より、その構造物は、今から2,000 年ほど前 に造られ、600 年ほど前には水没していたこと が推定された。

この北谷海底城郭内には、巨大な王墓とみら れる支石墓様構造物が設えられている、この中 に箱式石棺墓と思われる構造物が確認された。 石棺墓中のサンゴの炭素年代から、その王は、 今から800 年前頃に埋葬されたと推定される。 そこからは、外国からの移入品と推定されるグ リーン・アンバー(緑色琥珀)のビーズが発見された。

現在、日本最古とされている九州の吉野ヶ里 遺跡の城は、弥生時代後期の主要な城として注 目されている。琉球列島にも、縄文- 弥生時代 の巨大な城郭が、少なくとも二つは存在してい たということになる。古代琉球と九州との関連 性が見えてくる。

印象記

副会長 玉城 信光

平成25 年11 月15 日から17 日にかけてハーバービューホテルなどで開催された。

15 日には臨時委員総会があった。平成25 年4 月以降の事業の報告がなされた。また11 月まで の歳入歳出の報告があった。法人化により日医、各県の事業年度が変更になったことにより、「九 州医師会連合会会則」の改正が了承された。

来賓として横倉日医会長、今村常任理事、藤川常任理事より各々の担当する課題の進捗状況の 報告がなされた。

16 日は合同協議会が開催された。

横倉日医会長から「中央情勢報告」の講演があった。

あらかじめ九州各県からの要望をあげているのでそれらを中心に話された。

まず日本医師会の活動の基本は1)国民の安全な医療に資する政策か2)公的医療保険による国民 皆保険は堅持できる政策かを中心において政策をすすめていること。

日本医師会の綱領が策定されたので医師会員はその基本に従って活動してほしいと話された。 綱領は平成26 年の医師会報、1 月号からの表紙裏に掲載している。

有床診療所については福岡の有床診療所の火災で48 年ぶりに死者がでたことを残念に思い、消 防庁でも有床診療所の防火などの議論が進められている。スプリンクラーの設置に関しては公的 な補助が出るような仕組みにしたい。またソフト面での防火訓練なども必要になる。しかし何よ りも有床診療所の入院基本料を含め診療報酬上の措置がなければ有床診療所の継承なども不可能 になる。有床診療所の医療法上の位置づけをはっきりしてほしいと思う。

日本医師会の組織力強化については大変重要な課題としている。昨年から医学生にドクタラー ゼという雑誌を無料で配布し医師会を広報している。進学校などからの引き合いもあるらしい。

医師会入会者が少ないと国に対しての発言力が低下し、影響力も低下していく。具体的な方策 として、新規会員獲得に向けた勧誘活動の実施を行い、郡市区等医師会、都道府県医師会、日本 医師会への入会の徹底を行っている。研修医会員の会費無料化等を各都道府県医師会でやってい ただいている。

現在、入退会・異動手続きの簡素化を検討いるところである。組織強化は勤務医の組織強化も 含めしっかりしないといけない。

次期診療報酬改定や消費税についても話された。

その後昼食を挟み午後からは九州医師会連合会の総会が行われた。

宮城信雄沖縄県医師会長の司会ですすめられ「宣言・決議」が決定した。次期担当県大分県の 近藤会長の挨拶があった。

九州医師会医学会の特別講演は「ミトコンドリアと長寿 ―核ゲノムとミトコンドリアゲノムの 関わり―」と題して東京都健康長寿医療センターの田中先生のご講演があった。多くの先生方が 会場にかけつけて頂いて大盛況であった。石川理事の推薦があったおかげである。私は1 日1 万 歩歩くことを心がけていたが、8,000 歩が良いらしいとの話であった。

講演2 は「沖縄の海底遺跡について」琉大名誉教授の木村先生のご講演であった。与那国の海 底遺跡は人工物なのかまた北谷沖にも同様の遺跡があること。沖縄を中心にロマンが広がる講演であった。

多くの会員、九州の先生方に満足して頂いたと思う。医師会職員もご苦労様でした。翌日は分 科会なので分科会の役員と記念行事の担当者の出番である。

17 日9 時から外科学会に参加した。従来行われている沖縄外科会と共同で行って頂いた。豊見 城中央病院副院長の城間会長、浦添総合病院消化器病センター長の伊佐当番世話人のもとで開催 された。多くの先生方の発表と特別講演があった。「悲劇を奇跡に?震災復興における福島モデル ー」福島県立医大・竹之下先生、「膵癌・胆道癌の進展度診断と治療戦略」三重大学・伊佐地先生 の講演があった。久しぶりに乳癌以外の講演を聴く機会があり、医療の進歩が感じられた。

昼休み時間に驚いたことに西島先生、前参議院議員がハーバーに来られた。事務局をお探しで あったが日曜日は事務局はないので私がお話をさせて頂いた。後ほど事務局より連絡をお願いしておいた。

前日の会議以降、合計3 日の長丁場であったが、事務局員の奮闘で無事乗り切ることが出来た。 沖縄県医師会事務局はたいしたものである。




お知らせ

会員にかかる弔事に関する医師会への連絡について(お願い)

本会では、会員および会員の親族(配偶者、直系尊属・卑属一親等)が亡くなられた場合は、沖縄県医師会表彰弔慰規則に基づいて、弔電、香典および供花を供すると共に、日刊紙に弔慰広告を掲載し弔意を表することになっております。

会員に関する訃報の連絡を受けた場合は、地区医師会、出身大学同窓会等と連絡を取って規則に沿って対応をしておりますが、日曜・祝祭日等に当該会員やご家族からの連絡がなく、本会並びに地区医師会等からの弔意を表せないことがあります。

本会の緊急連絡体制については、平日は本会事務局が対応し、日曜・祝祭日については、緊急電話で受付して担当職員へ取り次ぐことにしておりますので、ご連絡下さいますようお願い申し上げます。

平日連絡先:沖縄県医師会事務局
        TEL 098-888-0087

日曜・祝祭日連絡先:090-6861-1855
○担当者 庶務課:國吉栄人 知念さわ子 山城政