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午年に因んで

横矢隆宏

沖縄協同病院 内科
横矢 隆宏

お題は干支に因んでとのこと、うまは午でも 丙午(ひのえうま)生まれにあたります。この 干支の女性は何やら激しい気性だとか好ましか らぬ人物になるとか、そんな話を聞かされてそ れなりに気分の悪い思いもしたのですが、習っ た人口ピラミッドでは小さな「くびれ」として 微かな存在感を醸し出している訳で、いつしか 出生数の少なさを「希少価値」と手前味噌に勘 違いすることにしました。

恋のため江戸の街に火を放った八百屋お七が 丙午生まれだったとか、古くは井原西鶴の好色 物や、先のNHKドラマでも「異聞」仕立ての 物語のネタでしたが、日本人の特殊な思いに通 ずるのでしょうか、女児を忌避して出生数が減 少してしまったのは干支文化圏の中でも(当然) 日本だけのことだそうです。おもしろいことに 沖縄県の人口ピラミッドでも丙午がそれとわか ります。ウチナンチュの中にもこの雰囲気が息 づいていたと思うと不思議を感じずにはいられ ません。もう一廻りするとまた丙午になります。 先のテレビドラマではありませんが、その頃に は悪女ではなく、恋の想いに屹立とした強い女 性のイメージを見るような気分に世の中は変わ っているかもしれません。

倍返しの半沢直樹が、都市銀行の青田刈り接 待を受けたのが1988 年夏のこと、ストレート の丙午が大学4 年生になった年です。丙午でも 早生まれでなので、同級生はその前の年の夏に 就職戦線に乗り出しました。ストレートでがん ばった連中よりも(遊んで)留年してバブル時 代に足を踏み入れた連中の方が就職に明るかっ たのを横目にみながら、世の不思議さ(という か多分不条理でしょうが)を感じたものです。 時に新人類という言葉に肩を押され、バブルを 作った世代にチヤホヤされていた訳ですが、旧人類のシンガリに過ぎなかったのは、終身雇 用から能力主義などという雇用形態の変化の中 で、氷河期世代と比べると「依存体質で自立心 がなく会社のお荷物である」と言われる始末で あることが示しているだろうと思う訳です。半 沢の同期の出世頭が9.11 の犠牲になったとい うくだりには慄然としてしまいましたが、その 日突然飛行機の中で足止めされ、降ろされた空 港で事態を知って足が震えたという話を留学経 験のある同世代の同僚から聞かされたことを思 い出します。

あと一廻りでとりあえず定年となります。最 近トピックの2025 年頃です(沖縄では少し遅 れて2040 年頃に高齢者人口のピークが来るら しいですが)。医療・介護システムを包括した 新しい社会制度を作り出していくというこの一 廻りにおいて、実戦部隊として知恵を絞ってい くことを期待された世代だろうとは思っていま す。また、堤未果氏の言う「医療人が命の尊厳 を擁護することを放棄せざるを得ない」どこか の国のような仕組みには絶対させない、社会保 障としての医療であり介護福祉でなければなら ないと言い続けなければ…、と思ったりもするのです。

私事で恥ずかしいのですが、この歳になり新 たに子供を授かることになりました。高齢出産 を自負する妻から子供が成人するまで「死ぬな」 という宿題をもらったため、あと二廻りを頑張 りぬくべく…どうしよう?運動?。最後に今年 の抱負。朝の通勤の20 分でちょうど日医雑誌 の論文一つを読むことができるのですが(良い 長さです)、生涯教育のクイズを今年こそ続け てみましょうか。以上、戯れ事・雑文を失礼い たしました。