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「午年に因んで」

當間敬

那覇市立病院 當間 敬

皆様明けましておめでとうございます。今年 も宜しくお願い致します。

午年に因んでの執筆依頼のご指名を頂き正直 困惑してしまいましたが、せっかくの機会と考 え直し、お話させて頂きます。

私は昭和四十一年のいわゆる丙午の生まれで あります。趣味が乗馬であるとか、馬を飼って いるだとか、馬が大好きであるとかであれば午年に因んで色々とお話することができると思う のですが、残念ながら特に思い当たる事もござ いません。いやそういえば午に因んだことわざ が色々ありました。個人的には「人間万事塞翁 が馬」ということわざに感慨深いものがござい ますので、今回はそれについてお話しさせて頂きます。

皆様よくご存知と思われますが「人間万事塞 翁が馬」とは、人生における幸不幸は予測しが たく、幸せが不幸に、不幸が幸せにいつ転じる かわからないのだから、安易に喜んだり悲しん だりするべきではない、という例えで使われて おります。自分に当てはめて考えてみました。 私は大学時代に一時期アメリカンフットボール 部に所属した事がありました。私はそれまでは ハンドボールしかやったことがなく、アメリカ ンフットボールは初めてでしたが、先輩後輩に 手取り足取り教えて頂きながらなんとか試合に までこぎつく事ができました。悲しいかな当時 のユニフォーム姿を見直してみるとどう見ても 相撲取り体型にしか見えませんでした(今はさ らにメタボ体型ですが…)。当時は県内の大学 ではアメリカンフットボールのクラブはなかっ たため、対戦相手はアメリカンハイスクールの 学生でありました。幸運な事に試合には最初か ら出場させてもらいましたが、競技自体にあま りなじみがないため、みんなについてゆくのが 精一杯の状態でした。後から聞いた話ではマー クする相手を間違えていたとのことでした。と にかく無我夢中で試合に臨んでおりました。前 半が終了し後半戦に突入した矢先(記憶があま り定かではございませんが…)、突然左膝に今 までに経験した事のない激痛を感じました。気 がつくと左足を相手にタックルされたと気づき ました。その後は痛みをこらえながらなんとか 試合に出場し途中交代となりました。試合の方 は残念ながら負けてしまいましたが、我がチー ムは得点もできたので(私ではありませんが) 自分としては比較的満足して試合を終える事が できました。膝の方はその後も痛みが引かず、 病院を受診し検査した結果、診断は左内側々副 靭帯断裂でした。靭帯縫合手術を受けギプスで固定し1 週間後に抜糸しました。そこまでは順 調でしたが問題はそれからでした。ギプス固定 であったため膝関節はガチガチに拘縮しており 全く曲がりませんでした。リハビリを開始しま したがそのあまりの激痛に大の大人であるにも かかわらず、人目もはばからず泣いてしまいま した。それから少しずつ少しずつ関節の可動域 を広げてゆき、やっとの事で正座が出来るよう になりました。それまでが非常に長く感じられ た事をつい昨日のように思い出します。その時 の痛みはまだ忘れることができません。人生最 悪の出来事のようにも思えましたが、リハビリ の苦しさを経験できたことは、私にとっては医 者として患者さんのつらさを伺い知る、非常に 幸運な経験であったと今では思っています。ま さに私にとっての「人間万事塞翁が馬」であり ました。以上拙い文章で恐縮ですがお読みいた だきまして誠にありがとうございます。若造の 戯言と御笑読頂ければ幸いです。皆様におかれ ましては今年も健康でよい年となりますよう心 よりお祈り申し上げます。