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暦を還りてその雑感

比嘉康敏

牧港クリニック 比嘉 康敏

この原稿を書いているのは11 月霜月であり、 午年生まれの私は年が明ければ陰陽暦の一周を 終え、他人事のようですがいわゆる還暦となる そうです。生まれた日をもって一歳とする数え 年では当然であり、生まれた2 月で還暦ではな く年が明ければ還暦ということです。大晦日に 生まれて翌日の正月にはすでに2 歳となるの は、西洋暦に馴染んでしまった今の人には、損 なのか得なのかなんだか妙なことですが女性に とってはどんなもんでしょうね。

小さいころよく大人に「何年生まれ?」と聞 かれ、親に言われたとおり「ウマです」と答え ていたけれど本当のところ「ヒトです」と答え なければならないのではないかと考えたりしま した。なんともひねたこどもです。

【十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・ 癸の10 種類からなり、十二支は子・丑・寅・卯・ 辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12 種類か らなっており、これらを合わせて干支と呼ぶ。 10 と12 の最小公倍数は60 なので、干支は60回で一周する。】

などと言うことは還暦にならなければわから ないことではないけれどどうもそういうことら しいです。競馬でいえば一周したってことでし ょうね。(何周あるのか知りませんが)

馬の走る姿は好きでありウマがあうような気 がしますが、向こうはどうか聞いたことはない し馬券のことについて話し合ったことも今のと ころありません。

以前、怪我を負った競走馬が(確か栗東であ ったと思います)リハビリのためプールで泳ぐ 姿を水中から撮影した映像を見たことがありま す。まさしく天駆ける馬、天馬とは斯くなるモ ノかと未だに鮮明に記憶に残っています。私が 泳ぐ姿を同じように撮影しても何の感動も与えることはできませんが、その様子は何かしら健 気で胸をうつ映像でありました。

さて例年10 月第一日曜日に開催されるフラ ンスのロンシャン競馬場での凱旋門賞レースに 今年(2013 です)は日本の馬が二頭出走しま した。武豊騎乗のキズナ(平成25 年日本ダー ビー馬でお父さんはあのディープインパクトで す)とオルフェーブル(2011 年の3 冠馬にして、 日本競馬界の現役最強馬。池江泰寿調教師は武 豊の幼なじみ)でしたが結果は残念ながらそれ ぞれ2 着と4 着でした。別に馬券買ってるわけ ではないのですがどきどきしながらテレビ画面 に見入ってしまいました。

ちなみに凱旋門賞レースは距離2,400m の一 周で終わりで、還暦のようにまた走り続けるこ とはありません。とここまで書いて自分でちょ っと怖くなってしまいました。

馬の走りには速度によっていろいろあります。

常歩(なみあしウォーキング)?速歩(はや あしトロット)?駈歩(かけあしキャンター)? 襲歩(しゅうほギャロップ 襲われたときに全 力で逃げるときの走り方)のように。

これまでの来し方を振り返り、自分はどうい う走り方をしてきたのかとつらつら考えてみる と、よちよちに始まりとぼとぼであったような 何ともはやお馬さんに申し訳がたちません。並 足でもよいから落馬せずに(あまり馬は落馬し ないのでしょうが)やってみようかな、無事こ れ名馬という有り難い言葉もあることですし。

年の初めに落馬のお話をしてしまいました が、落馬するからには鞍の上に座する人がいる わけであり、人の場合戸籍上妻とか夫とか呼ば れているようです。

馬はハミ(轡くつわ)や首にはネックストラ ップ、足には蹄鉄、時には耳隠しや目隠しをさ れ鞍上の騎手に従いひたすらゴールに向かって 走ります。ここまで書いて他人事とは思えない 気がして(外野席より当事者でしょうの声)胸 が少し痛みます。

さて一周が済み、鞍の上の人から声がかかります。

「さあもう一周!」