SAKU 整形クリニック
佐久本 嗣夫
先日、H26 年度は私の生年とのことでこの寄 稿文を依頼された。それまで全く意識しなかっ たが、私は今年10 月で60 歳の還暦になるの だと再認識させられた。諸先輩方がおそらくそ うであったように私もまた月日が経つのは早い ものだと感じている。これまで私は人生設計を ほとんどしたことがないと言っていい。勤務医 時代にはいくつかの病院で勤務したがその職場 がかわる度、また50 歳になるころの整形外科 医院開業当初にはこれからどういう医療をして 行くか、医師としての仕事に対する目標はある 程度立てて来た。しかし。それは人生そのもの を考えた訳ではない。最近では県医師会理事の 職務も加わり人生の趣向は変化しているが、今 の仕事だけが私の人生の意義の大半を占めてい たということであり、それでは少し味気ない人 生かなと思ったりもする。しかし、仕事にこれといって不満はなくむしろ好きでやれることな のでそのことは達観しようと思っている。とは いいながらこの寄稿文依頼と還暦を迎えること をきっかけに妻に私のいくつか契約している生 命保険等について詳しい内容を説明した。妻は 私の保険内容についてはこれまでほとんど知ら ず縁起でもないといいながら聞いてはいたが、 しっかりと聞いてはいなかった気がする。
幸いにも私はこれまで命に直結するような大 病を患ったことがない。しかし体力の衰えは痛 感している。ロコモチェックの一つである片脚 立位での靴下履きがなんとかできはするが、不 安定で難しくなったため今ではしっかり座って 履く。風邪をひきやすくなった。ゴルフのあと は足がつりやすい。腰痛、肩こりがときどきある。 等々小さな故障が頻繁にある。また私は趣味で ボウリングを週1 回程度やっているが、以前な ら10 ゲームやっても特に問題はなかった。し かし、最近ではやや手足に筋肉痛がでて来るよ うになった。数ヶ月前は車のトランクからボウ リングのキャリーバッグ(ボール2 個入り)を 片手でひょいと取り出そうとしたら右手首の屈 筋腱を痛めてしまい2 週間プレイできなかった。 今では中腰にならないよう腰をしっかり構え手 首を痛めないよう両手で持ち上げている。以前 ならそういうことに用心はしなかったが、全く 情けないことである。また比較的大きなことと しては40 歳台半ばに頸椎椎間板ヘルニアを患 った。ハートライフ病院勤務中で約半年は辛い 思いをした。現在でもその後遺症があり左上腕 三頭筋を主に筋力低下や左手の知覚鈍麻が残存 している。当初の3 ヶ月間は左肩から上肢全体 にかけて耐え難い痛みがあり手術中に休憩せざ るを得ない状況になったこともあった。病院の 廊下を歩いていても常に左上肢を頭上に挙げて いたためよくすれ違う患者に後ろを振り返られ た。(頸椎椎間板ヘルニアの場合、患肢を挙上す ると神経根の圧迫がやや解除されるため楽にな ることが多い。)変な医者だと思われたに違いな い。あの頃の痛みは今でも忘れられない。
還暦を迎えるにあたり体力的には落ちて来て 大勢の患者の診察や、理事職としての日帰りの出張はきつくなってきたが、私自身が痛い思い をした分患者に対する優しさ、説得力、指導力 は増して来たと思う。整形外科の外来診療にお いては投薬、注射、リハビリ治療等重要ではあ る。しかしもっと大事なことは患者のその疾患 や障害に対しての心構えを指導し、早期から 生活指導することがもっと重要だと思う。今後 は落ちる体力に目一杯気張らずに自己管理しつ つ、気長に、優しい仕事を続けて行きたい。