沖縄県中部保健所 伊礼 壬紀夫
2014 年は午年とのことである。県医師会か ら原稿依頼が届くまで全く頭になかった。
思えば過去60 年間、いろいろなことがあっ た。大雑把に振り返ってみる。
・ 大した悩みもなく学校の勉強以外に熱中して いた10 代。この時に後の音楽の趣味の基礎ができあがったと思う。
・ 医師国家試験と臨床研修医採用試験の勉強に集中した医学部6 年生時代。
・ 無事に臨床研修医に採用され、毎日毎日、昼 も夜も臨床研修に明け暮れた中部病院の研修 医時代。この時に、その後の自分の仕事のス タイルや考え方の基礎ができあがったと思 う。また、人間は身体が資本であることを思い知らされた時期であった。
・ 臨床と研修医指導に明け暮れた指導医時代。 研修医時代からこの時期が最も勉強した時期であったと思う。
・ 公衆衛生と行政の狭間で悩みながら予防医学の実践を目指した公衆衛生医時代。
・ 県知事部局産業医として勤務した専属産業医 時代。この時に、30 年ぶりに国家試験なる ものを受けて労働衛生コンサルタント資格を 取得したが、この資格が今後の人生にどう役 立つかは今のところ不明。
・ そして、公衆衛生+管理者として組織管理と 業務管理に多くの時間を割かざるを得なくなり、現在にいたる。
幸いにも大きな病気をすることもなく、現在 までやってきた。特に秘訣はなく、健康的な生 活習慣を続けることを努力してきた。タバコを 吸わない、タバコの煙に近づかない、アルコー ルを飲み過ぎない、食べ過ぎない、と4 つの「な い」は比較的順調にやってこれた。しかし、適 度な運動については芳しくない。
仕事に関しては、自分自身で選びコントロー ルできたものとそうでなかったものがあるが、 その都度ベターと思える選択をしてきたつもり である。この歳になって振り返ると、その時々 で選択し努力してきたものは後の仕事にも繋が り、活かされていると感じる。寄り道だと思っ ていたものがそうではないことが後で分かった りすると、世の中結構無駄はないものだと思う。
さて、これからはどのように生きていこうか?
これまでとの決定的な違いは時間に限りがあることである。
公表されたデータによると、H22 年の沖縄 県男性平均寿命は79.41 歳で、健康寿命(日常 生活に制限のない期間)は70.81 歳である。つ まり、自由に動けて好きなことができる期間は 10 年しか残されていないことになる。そして、 その後には8.6 年間の介護期間が待っている。
今からやっておくことが何かあるだろうか?
とりあえず今の仕事には定年があるので、それまでは働いて老後の資金を溜めておく必要がある。その後にどうするかは未だ決めていないが…。
できるものなら、仕事かプライベートかにか かわらず、これまでやりたくてできなかったこ ともやっておきたい。そのためには、時間とお 金が必要かもしれないし、何より元気な体を維 持しなければならないだろう。さらに認知症の リスクも考慮すると、「心も体も健康を維持」 というべきかもしれない。
今から被介護者になることを想定して準備し ておくことを考えるのは、私の想像力の範囲を 超えている。実践できることとしては、日常生 活に制限のない期間を可能な限り伸ばす努力を することくらいしか思いつかない。それはとり もなおさず、健康的な生活習慣を続けるということになる。
結局のところ、これまでのように生きていくことになりそうである。