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恐怖心の研究

屋良勲

社会保険診療報酬支払基金
沖縄支部 屋良 勲

漫湖公園を歩きながら考えた。

植物には恐怖心は無いと思われるが、どうし て動物には恐怖心があるのだろう。

見定めなければならないダニにも恐怖心があ るように見受けられる。うっとうしい梅雨時に 知らずのうちに白い粉の集合体のカビが増殖し ている。その白い粉に混じって動く白い生き物 がいる。1mm 程のダニだ。早速つぶそうとす ると、素早く逃げ惑う。拡大鏡でないと体の各 部も識別出来ないやつなのに俺の意志に逆らう のだ。こういう奴もいる。アリにも色々いるが 小さいアリのくせに噛み付くのだ。畳やフロー リング上で忙しく働いている。見つけ次第足で つぶそうとすると、これ又素早い反応で逃げ、 畳の目やフローリングの隙間に逃げ込んでしま う。じつに手強い。蚊や蠅は日常遭遇する悪い 友達である。夜中に出てくる蚊は耳元でブンブ ンするので思い切り頬っぺたを叩くがこれが成 功する事はない。またしばらくするとやってく るのでとうとう家中の電気をつけて戦争状態に なることもしばしばである。翌朝は体のどこかに敗戦の赤いマークが付いている。蠅は利巧だ と思う。追っても追ってもやってくる。五月蝿 い奴だ。新聞紙や蠅たたきでねらってもあざ笑 うかのように逃げ去る。この時は蠅の前方から 狙うほうが確率は良い。

私の好きな尊敬する動物はトンボである。秋 の空の清々しい空気を満喫し、これ見よがしに 空中でホバリングしたり、急旋回して飛び去っ たり、頭をくるくる回して休息する。見飽きる 事は無い。自由奔放に生きている。トンボにな りたいが鳥に食べられるのは嫌だ。トンボを捕 るときは後ろからソット近づく。

どうしてこのような小動物にも恐怖心や逃走 行動があるのか。

最近、恐怖、不安、ストレスに関係する臓器、 組織が解ってきたという。それは脳内の扁桃体 である。上述した状況では扁桃体が活性化し、 ストレスホルモンが分泌されるが、これが持続 すると突起細胞が減少しうつ病等を惹起すると いうものである。ところで、魚類の誕生は5 億 2 千年前に始まり、ほ乳類は2 億2 千年前、類 人猿は2 億5 百年前、チンパンジーは370 万 年前、ホモサピエンスは20 万年前に誕生した というが、その昔の弱肉強食の時代から「恐怖 の記憶」が刷り込まれているという。それは扁 桃体と海馬とが結びつき「記憶」として存在す るらしい。さらに話を進めると、文明の発達か ら職業の違い、平等のくずれが起こり不安、ス トレスなどを発生させ「うつ病」などの現代病 が生じたとしている。これはNHK の「病の起源」 からの引用である。

さて、私のダニやアリの恐怖心と扁桃体の関 係はいかに。興味は尽きない。

還暦時にも年男の感想を求められたが、齢 70 歳を過ぎ残りの年を数えた方が早いと思う 事もある。気持ちは若いつもりである。昨今は 高齢者の手術も多いが医学では肉体年齢を参考 にする。話は変わるが、電子版毎日JP の「岩 見隆夫のコラム」に「三人せとぎは問答」が連 載されている。A は78 歳肝癌、B は75 歳肺がん、 C は71 歳心臓病の著名人であるが、それぞれ の人生に応じた色々の話題、顔、書評、花などを楽しく語っている。何時まで続くのか気にな るところではあるが人生を達観している知識人 の語らいは楽しい。

最後に、恐怖心は動物に限らない。住宅密集 地に飛来する問題機オスプレイは広い海上、山 林地でトンボのような特殊訓練をするがよい。 墜落しても迷惑をかけないし恐怖心も生じない。