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カッパドキアの奔馬

良宏明

大浜第一病院・整形外科顧問 良 宏明

トルコの景勝地・カッパドキア地方を訪れた 時、ある土産店でふと目に留まった布絵があり ました。それは、カッパドキアをイメージした と思われる原野の僅かな水辺を2 頭の馬が疾走 しており、耳をピンと立て、鬣(たてがみ)を なびかせながら、川面を蹴散らして行く。カッ パドキアという地名の由来がペルシャ語の「美 しい馬の地」ということらしいのです。自分が 午年生まれであることから、その迫力にしばし 身動ぎもせずに眺めていました。「馬に関心の ある方には喜ばれそうなお土産ですね、しかし 値段がだいぶ張りますな〜。」とツアー仲間の 一人が後ろから声を掛けてくれた。ハッとして、 値札をみると、私の土産予算では買えそうにも ない数字が冷やかに並んでいたのである。つい つい落胆のようなため息を漏らしてしまった記 憶が、今でも甦ります。

どうしたもんかと、やや虚ろな気持ちで隣の 布絵に目を向けると、幸福の木とでも形容できそうな百花繚乱の1 本の木に、平和を表現し たような数羽の鳥があしらわれている絵柄でし た。この値段なら大丈夫なんだがな〜と思った 次の瞬間、そうだ、これを買うことで我慢しよう。 そして、カッパドキアの奔馬のほうは、記念の スナップ写真として、持ち帰ることにしよう。

その翌日は、宮殿の遺跡を見学した後に、王 侯貴族の集会所のような広場に案内されまし た。そして、トルコ軍楽隊の赤い礼装に身を包 んだ華やかな一団が演奏する、行進曲や日本の 歌曲等も楽しませていただいた。因みに、行進 曲が流れると、私の脳裏では、かのカッパドキ アの奔馬がそれに合わせて闊歩しているような 錯覚に囚われたりもしたのです。それだけ強烈 な印象があったのかと思い起こされます。

さて、医師免許を取得した昭和45 年頃の千 葉大学附属病院研修医時代に、健康志向と長時 間の手術にも耐えられる足腰にする為に、ジョ ギングを始めました。日曜日か土曜日の1、2 回は何とか実行して、それなりにストレス解消 にも役立ったと思っています。

昭和51 年4 月に帰沖して那覇市与儀にあっ た琉大病院勤務になってからの一時期は、勤務 の過重負担等から中断したこともありました。 平成2 年頃から末吉公園近くに定住することに なり、公園まで歩いて行き、園内のグランドを ジョギングするスタイルにしていました。平成 20 年3 月末日に定年になるまでは、時間の都 合がつく時だけ走る不定期ジョガーでした。定 年後は、非常勤勤務になったことも幸いして、 週3 回程度のジョギングをこなしてきています。しかしながら寄る年波には勝てず、最近で は奔馬のような疾走ジョギングを切り上げて、 専らウオーキングを楽しむことにして、公園事 務所で手に入れた地図をもとに園内を3 コース に区分けることを思いついたのです。そのコー スには、お気に入りのランドマークも設定され ており、週3 日で一通り園全体を周回できるよ うにしています。その3 コースとは、1)ヤシ並 木コース(主なランドマーク:滝見橋) 2)リ バーサイドコース(花見橋)3)ロータリーコー ス(自称・瞑想の広場)などであり、さり気な く呼称・指先確認もしつつ、一人悦に入っています。

因みに、今年も末吉公園の豊かな自然環境 に感謝しながら、小鳥のサエズリに耳を傾け、 安謝川の「青いセセラギ」を聴きながら、奔 馬ならず老馬の闊歩を楽しんでいくことにし ています。