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第35回 産業保健活動推進全国会議

金城忠雄

常任理事 金城 忠雄

平成25 年10 月10 日(木)日本医師会館に おいて、標記全国会議が開催された。本会議で は、宮城県医師会並びに、徳島産業保健推進連 絡事務所より県下での産業保健活動について報 告があった。また、日本医師会産業保健委員会 活動報告や厚生労動省労働基準局安全衛生部よ り、今後の産業保健事業の方向性等について報 告が行われた。この他、厚労省事務官等を交え、 産業保健に関する諸問題について協議を行った ので、その概要を報告する。

開会・挨拶

はじめに、宇佐美裕民 産業医学振興財団事 務局次長より開会の挨拶があり、続いて、主催 者を代表し佐藤茂樹 厚生労働副大臣(代読: 泉陽子厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛 生課長)から、「厚労省では、今年度から5 カ 年計画による第12 次労働災害防止計画をスタ ートさせた。計画では死亡災害や休業4 日以上 の支障災害を5 年後までに15%削減することを掲げている。また、格別の協力を得ている産 業保健3 事業については、その仕組み等に対す る意見を踏まえて、事業のあり方について見直 し、新たな産業保健事業として平成26 年度の 概算要求を行っている。産業保健の推進を図る 為には、今後とも医師会および産業医をはじめ とする産業保健関係者のご尽力とご協力が不可 欠である」と挨拶があった。

続いて、横倉義武日本医師会長(代読:今村 聡副会長)から、「産業委員会では、昨年12 月 に中間答申を取り纏め、現行の産業保健3 事業 が本来めざす機能をワンストップサービスとし て安定的かつ継続的に提供できることを提言し た。この中間答申をもとに、同月、厚生労働省 労働基準局長に3 事業の一括運営を要望した。 要望を受けた厚労省は、その後、産業保健を支 援する事業のあり方に関する検討会を設置し、 報告書を取り纏めている。産業保健事業におい ては、今後も各地域医師会の協力が不可欠であ り、医師会が主体的に関与できる仕組みを作っていくためには、より一層のご支援をお願いし たい」と挨拶があった。

この他、武谷雄二労働者健康福祉機構理事長、 櫻井治彦産業医学振興財団理事長よりそれぞれ 挨拶があった。

活動事例報告

活動事例報告では、宮城県医師会より震災の 影響による産業保健事業の現況について、徳島 産業保健推進連絡事務所より産業保健3 事業 (地域産業保健事業、産業保健事業、メンタル ヘルス対策支援事業)一括運営を踏まえて、次 のとおり報告があった。

(1)宮城県における産業保健事業の取り組みについて

宮城県(板橋 隆三宮城県医師会常任理事)は、 先の震災による産業保健事業への影響につい て、1)多くの事業所の喪失、2)失業者の増加、 3)多くの就業者の人命・住居が失われた、 4)仮設住宅住まい等、就業者の生活環境の悪化、 5)復興・復旧のための人の流入、6)早期の復興・ 復旧のため長時間労働の増加、7)環境の変化に よる被災者のメンタルヘルスの問題、8)支援者 のメンタルヘルスの問題がある。

こうした中、近年、短期間のうちに数度に わたる突然の政策変更が行われたことで、各種 支援事業に支障を来たしている。地域産業保健 事業は、地域に特色ある保健事業が行い難くな った。産業保健推進事業は、集約化に伴う業務 の煩雑化を招き、山形・福島両県連絡事務所へ の支援の限界。予算の大幅な削減(仕分け前の 42%減額)。メンタルヘルス対策支援事業は、支 援件数が急増している。この他、労働災害も右 肩上がりに増加し、有所見率も増え続けている。

(2)徳島県における産業保健推進事業について

徳島産業保健推進連絡事務所(斉藤 恵代表) は、平成22 年度より産業保健3 事業の一体化 に先駆けて、3 事業を運用してきた。3 事業連 携のメリットは、相談窓口が一本化されること で、相談員間の連携や専門分野の知識の共有が図られ、結果として関係者への「ワンストップ サービス」に繋がっている。しかし、ここ数年、 様々な制度の改編により種々の課題(予算縮減、 業務の煩雑化、登録産業医の減少等)が出てきた。

次年度予定される3 事業一体化に望むこと は、1)中小規模事業所への支援には行政との恒 常的な連携が不可欠であり、行政から副所長の 出向再開を強く望む。2)3 事業に精通したキー マンの存在が必要と考えられ、行政OB を含む 常勤嘱託の専門職の養成を望む。3)事業の有機 的な運用を図るには、確実に事業が実施できる 予算措置や会計部門と運営部門の緊密な連携が 必要である。4)周知広報が不十分なため、地域 保健所等も含めた関係機関との連携が重要であ る。5)3 事業運用には、行政や医師会との緊密 な連携が不可欠であり、充分なマンパワーが発 揮できるよう人員配置をお願いしたい。

その後行われたディスカッションでは、予算 の効果的な運用や人員の確保、産業保健関係機 関(地域・職域連携推進協議会等)との連携に ついて質疑応答が行われた。

説明・報告

(1)「日本医師会産業保健委員会活動報告」

道永麻里常任理事より、昨年12 月に中間答申 として取り纏めた「地域産業保健センター、産 業保健推進センター並びにメンタルヘルス対策 支援センター事業の一括運営」について説明が あり、今後の方向性について次のように述べた。

中間答申では、現在、3 事業が抱える多くの 課題を解決して、これからの事業が本来めざし ている機能をワンストップサービスとして、安 定的・継続的に発揮出来るようにするために、 次の提言を行った。

・ 3 事業を一元化して運営すべきである。

・ 一元化する事業については、経理処理や庶務 機能の効率化のために、労働者健康福祉機構 を設置主体とし、都道府県医師会及び郡市区 医師会が主体的に関与して事業を運営すべきである。

・ 産業保健支援事業に関する経理や庶務の業務 を集約して合理的に処理するため、全国8 ヵ所程度に産業保健支援事業経理事務所(仮称)でまとめて行う。

中間答申の提言を踏まえ、平成24 年12 月 25 日、厚生労働省の中野雅之労働基準局長に、 3 事業の一括運営について要望をし、中野労働 基準局長からは予算に盛り込めるよう前向きに 検討するとの回答を得た。また、本年6 月に開 催した都道府県医師会産業保健担当理事連絡協 議会では、中間答申で提案している3 事業一括 運営について、現況の説明を行った。一方、国 では、日医の要望を受け「産業保健を支援する 事業の在り方に関する検討会」が開かれ、報告 書が取り纏められた。

この検討会報告書を踏まえて、日本医師会産 業保健委員会では、6 月の都道府県医師会産業 保健担当理事連絡協議会で配布したQ&A(案) を見直し、産業保健3 事業の一括運営に関する Q&A(10 月案)として取り纏めた。

日本医師会としては、長年、地域産業保健事 業に取り組んでこられた先生方の意見が充分反 映できるよう厚生労働省に働きかけていく。特 に、産業保健事業の質を確保するためには、都 道府県医師会や郡市区医師会の協力が不可欠で あることから、専門家集団の医師会が積極的に活 動できる仕組みを作っていきたいと考えている。

(2)「今後の産業保健事業の方向性等について」

厚生労働省労働基準局安全衛生部泉陽子労働 衛生課長より、本年6 月に取り纏められた「産 業保健を支援する事業の在り方に関する検討会 報告書」について次のとおり解説した。

国や独立行政労働者健康福祉機構が行う産業 保健支援事業については、平成23 年に検討会 で効果的・効率的な実施について検討が行われ、 支援内容により支援を分けずに総合的に支援す ること、3 つの事業の統括的運営等の必要性に ついて報告書が取り纏められた。

今般、産業保健の実態を踏まえて更に検討を 行うべく、改めて「産業保健を支援する事業の 在り方に関する検討会」が設置され、計3 回に わたる検討の結果、報告書を纏めた。

現在、厚労省では現行の産業保健3 事業が「国の委託事業」と「労働者健康福祉機構の事業」 として実施されているため、予算を組み替え再 編し、一つの事業(労働者健康福祉機構)として、 財務省へ予算要求している。予算要求のスケジ ュールは、8 月下旬に各省庁から財務省へ予算 要求が行われる。その後、財務省と個別の折衝 (査定)を行い、最終的には、12 月下旬に政府 全体の原案として財務省が取り纏める。翌年1 月から始まる通常国会で審議され、順調に行け ば3 月までに予算案が認められ、4 月から事業 開始となる。

来年度予算要求については、三事業一元化の 予算要求と現行の地産保事業が確保できるプラ ンで要求を行っている。今回は予算の組み替えと いう大きな変更を伴い、行政改革の流れもある。 事業を出来る限り効率化させ、必要な事業を確 保すると共に、運営については効率化すること をどの様に実現できるか問われている。財務省 が政府原案で認めた段階にならないと、具体的 な説明ができない。早くても来年明けとなるた め、可能な限り厚労省が考えるプランを順次説 明していく考えである。都道府県労働局に対し ては、今月下旬に説明する予定である。その後、 都道府県毎に各県医師会へ説明に行くかと思う。 現時点では前述で述べたように進めていきたい としか説明できないことをご理解いただきたい。

報告書の主なポイント

(課題)

・ 労働者数50 人未満の小規模事業場の労働者 の健康管理は不十分。また、事業者の行うメ ンタルヘルス対策や化学物質等の有害要因へ の対策など総合的な支援が十分でない。

・ 3 事業のそれぞれの違いが利用者から見てわ かりにくい。各事業が独立し、総合的な支援 が提供できていない。

・ 地域産業保健事業及びメンタルヘルス対策支 援事業は単年度ごとに調達を行っているた め、事業運営が不安定であり、専門的な人材 の確保が困難となっている。

・ 産業保健推進センターの体制の縮小により、 事業実施機能が低下し、真に必要な研修・相談ができていないほか、医師会等関係機関と の連携に支障をきたしている。

(今後の方向性)

・ 3 事業を一元化し、心とからだの一元的相談 などを、ワンストップサービスとして支援を 提供すべきである。また、一元化後の事業は 独立行政法人労働者健康福祉機構が実施主体 となり、医師会が専門性を生かし積極的に関 与し、事業を実施する体制とすべきである。

・ 単年度の事業実施方式を改め、安定的・継続 的に実施し、必要な人材の確保ができる方式 にするべきである。

・ 事業の管理部門について効率化しつつ、各都 道府県に事業実施の拠点を設置し、必要な人 員・機能を確保すべきである。また、地域の 小規模事業場が利用しやすい事業とするた め、地域の区域ごとに活動拠点を設置し、ワ ンストップサービスを提供するべきである。

一元化後の新たな産業保健事業のイメージ

47 都道府県で労働者健康福祉機構が実施し、 医師会が専門性を生かし積極的に関与する。

(三事業の一元化及び実施体制等)

・ 三事業を一元化して運営し、心とからだの健 康対策の一元的相談等、ワンストップサービ スとして総合的な支援を提供する。

・ 単年度ごとの事業実施方式を改め、安定的・ 継続的な事業実施により、事業推進に必要な 人材を確保する。

・ 都道府県及び地域の区域ごとに活動の拠点を 設置し、地域の小規模事業場を支援する。
( 新たな事業における支援の対象、範囲、内容)

・ 都道府小規模事業場に対する支援は、総合的 な労働衛生対策を進めるための支援とし、可 能な限り実際に事業場を訪問して実施する。

・ 中小企業の小規模事業場を、大企業の事業場 より優先して支援の対象とするほか、継続し た支援を求める事業者に対しては、適切な団 体や専門家を紹介する。

・ 労働基準行政機関や事業者団体等とも連携し 事業の周知に努める。

(3)「医療機関の勤務環境改善に関する制度改 正等の動向について」

厚生労働省医政局総務課・看護課・労働基 準局中野孝浩労働条件政策課医療労働企画官 より、勤務環境の改善に自主的に取り組む医 療機関への支援に向けた医療勤務環境改善支 援センター(仮称)の創設について説明があった。

 厚労省では、医療機関の勤務環境改善に向け た取り組みを推進すべく、都道府県ごとに「医 療勤務環境改善支援センター(仮称)」を設置 するための経費を26 年度予算の概算要求に盛 り込んでおり、現時点での状況であることを理 解いただきたい。

事業概要

医師・看護師等の医療スタッフの離職防止や 医療安全の確保等を図るため、国における指針 の策定等、各医療機関がPDCA サイクルを活 用して計画的に勤務環境改善に向けた取り組み を行うための仕組み(勤務環境改善マネジメン トシステム)を創設する。

こうした取り組みを行う医療機関に対する総 合的な支援体制を構築するため、都道府県が地 域の医療関係団体と連携し、医療勤務環境改善 支援センター(仮称)を設置する。

本事業は、医政局と労働基準局が連携して実 施する事業となっており、医政局は「医業分野 アドバイザー事業(仮称)約400 万(うち約 200 万円都道府県負担)/ 箇所」として、診療 報酬や医療制度、組織マネジメント・経営管理 面などに関する専門家を医療機関に派遣する仕 組みを確保する。労働基準局は「労務管理支援 事業(仮称)400 万円/ 箇所」として、当該支 援センターに医療労働相談員1 名を配置するた めの体制を確保し、社会保険労務士会や医業経 営コンサルタント協会等と連携する。一箇所あ たり800 万円規模の事業を想定している。

なお、本事業は必置規制では無いため、都道 府県行政が理解を示し、事業化することが必要 である。厚労省からも各県医療担当部局を集め、 予算化に向けて理解を求めたところである。各都道府県医師会からも事業照会をかけていただ きたい。この他、現在、社会保障審議会・医療 部会においては、医療法改正の議論が始まって おり「医療勤務環境改善支援センター(仮称)」 についても、法律への位置づけを考えている。 仮に医療法が成立した場合については27 年度 以降、法律に基づく事業として位置づけられる ことになる。また、当医療部会では、抜本的な 看護職員確保対策を図っていくため、看護師等 免許保持者を対象に都道府県ナースセンターへ の届出制度の創設も考えている。

協議

産業保健に関する諸問題について、各都道府 県医師会より予め寄せられた質問や要望につい て、厚労省事務官等を交え、協議を行った。

問1【埼玉県大宮医師会】

地域産業保健センターにおける騒音性難聴担 当医の扱いについて

【厚生労働省からのコメント】

地産保事業における現行の規程では、メンタ ル相談以外については産業医の対応となる。今 後、3 事業が一元化の運営になった場合には、労 働者の騒音性難聴に専門的な知見を有する医師 については、都道府県産業保健推進センターの相 談員として登録いただき、ワンストップサービ スとしてご協力いただく形態が可能かと考える。

問2【千葉県医師会】

来年度から予定される産業保健3 事業の一括 運営について伺いたい。1)実際の活動単位とな る郡市区医師会への早期の説明実施について、 2)コーディネーターの契約条件等の提示につい て、3)平成25 年度事業は平成26 年3 月末日 を以って終了するが残務処理の対応について、 4)関連の法律(通達含む)改正について、 5)事業者への一定の負担を求める範囲について、 6)産業医への補償制度について、7)産業医研修単 位システム管理構築について。

【厚生労働省からのコメント】

1)説明時期については、今後、都道府県労働局 等を通じて各県医師会へ説明し、郡市区医師 会の集まる場も利用しながら説明及び協力の お願いをしていきたい。

2)コーディネーターの契約条件等については、 予算要求中であることから確定次第、速やか に示していきたい。なお、コーディネーター の雇用形態は、雇用契約は結ばず、委嘱契約 を結び業務量に併せて謝金が支払われる仕組 みを考えている。

3)25年度事業の処理については、従前同様、 委託契約書に示された期限3 月31 日までに 報告書を提出していただくことになる。国全 体の仕組みであることをご理解いただきた い。また、次年度に向けての引き継ぎは、労 働局や機構等と相談していただきたい。

4)法律改正については、特に法律改正を要する ところは無い。但し、事業実施に関する各種 の通知(運営方法等)は示していきたい。

5)事業者への一定の負担を求める範囲について は、3 事業一元化後の産業保健事業は100% 補助金事業であるため、利用料の徴収は想定 してはいないが、限られた予算枠であるため 優先順位を付けて対応することになると考えている。

【道永麻里常任理事からのコメント】

6)産業医への補償制度については、地域産業保 健センターに登録し、事業に従事する方を対 象とした団体傷害保険はある。損害賠償請求 訴訟等に対する補償ではない。日医としては、 損害賠償請求に対する補償は必要であると考 えている。制度創設等について国に働きかけ ていきたい。過去に日医医賠保険で対応した 例があり、産業医の行った内容が医療行為に あたると判断され保険が適用された。

7)産業医研修単位システム管理構築について は、当制度の他にスポーツ医、生涯教育制度 も実施しているところである。新システムの 構築にあたっては、これ等他の制度と連携し て行っていきたいと考えており、先ずは各都 道府県医師会に現状調査を行い、結果を踏ま え検討させていただきたい。

問3【東京都医師会】

1)小規模事業場への「恒久的な健康支援サービ ス」を行うべく、企業、国、自治体、組合な どで「基金を創設」しては如何か。

2)3 事業一括運営後、地区医師会の事務作業量 が増えるのではないかと危惧しているが、具 体的な作業内容をどの程度想定しているか。

3)この事業に従事した各職種の実績等を評価す るため、延べ人数の提示等が必要だと考えて いる。特に産業医の活動が具体的に分かるよ うにしていただきたい。

【厚生労働省からのコメント】

1)基金創設については貴重な提案であるが、地 域産業保健事業については、事業者が労働者 に産業保健サービスを提供することが困難な 小規模事業場に対して国が支援するものであ る。産業保健に取り組む主体は事業場であり、 それを支援するものである。今回、様々な検 討を重ね産業保健3 事業を一元化し、事業運 営主体を労福機構として、現在、概算要求を 行っているところである。

2)事務作業量については、スケールメリットを 活かすよう検討している。相談員の活動報告 や地区コーディネーターの取り纏め業務等の 事務についても簡素化・効率化できるよう検 討中である。郡市区医師会の事務負担が増え ることは想定していない。

3)小規模事業場の産業保健活動を支援する観点 から、特に訪問指導の推進に留意いただきた い。具体的な事業メニューや評価方法につい ては現在検討中である。

問4【滋賀県医師会】

1)地産保事業の効率化から対象を独立した小規 模事業場に絞り込むべきと考える。

2)地方自治体に対する産業保健事業への協力要 請をお願いしたい。

3)地域産業保健事業受託機関の変更に伴う移行措置について、契約上3 月末日を以って契約 が終了となるが、事務所賃貸の問題や引っ越 し費用、決算処理、これ等にかかる人件費を どこで精算するのか。

【厚生労働省からのコメント】

1)地域産業保健事業は、産業医の選任義務のな い財政基盤の脆弱な小規模事業場及び労働者 に対する産業保健の充実を主な目的としてい る。なお、50 人以上の事業場の関係者から 相談があった場合には、当該事業場で選任さ れている産業医に相談するよう促す。また、 大企業の支店や営業所等(50 人未満であっ ても)から相談があった場合には、本事業の 趣旨について理解を得た上で、本社や一定の 資本関係にある事業者が選任する産業医に協 力を要請するよう助言する。あるいは、特定 健康相談の実施可能な医療機関を紹介してい ただきたい。

2)地域保健と職域保健の連携を促し、効果的・ 効率的に労働者の健康を確保することが重要 であると考えている。また、厚労省としても 諸事業を通じて、産業保健事業について自治 体と地域保健関係者の理解が深まるよう周知 や協力依頼を引き続き行っていきたい。

3)先ほども説明したとおり、委託契約上、会計 年度終了日(3 月31 日)迄に清算していた だかなければならない。ご苦労をお掛けする ことになると思うが、会計法令で定められて いるためご理解とご協力をお願いしたい。

問5【岡山県医師会】

労働者数30 名以上の小規模事業場への産業 医選任義務化の拡大並びに大手企業関連の事業 場における地産保利用への行政指導について。

【厚生労働省からのコメント】

・基準内容の変更に関しては、貴重な提案であ るが、小規模事業場は、財政面・人員面でも 基盤が弱く、過重な負担をかけることは難し い。新たな義務を課すことについては直ちに は難しいと考える。

・大手企業関連の50 人未満の事業場(支店、 営業所、系列メーカー等)における地産保利 用については、本事業を利用せずとも支援が 受けられる面があると考えており、優先順位 として考えていくべきである。

問6【佐賀県医師会】

日医主催産業医前期研修の再開について日医 の方針を伺いたい。

【道永麻里常任理事からのコメント】

日医主催前期研修については、年々参加の減少傾向に伴い、生涯研修の実地研修を求める要 望があり、平成23 年度より当該実地研修を開 催している。昨年度前期研修の開催状況は21 都道府県医師会で43 回開催されている。この 様な現状と今回の要望を踏まえ、来年度前期研 修の開催について検討したい。なお、九州ブロ ックでは、福岡県が前期研修14 単位を取得で きる研修を開催しており、また、長崎、宮崎、 沖縄の3 県医師会でも前期研修の一部単位が取 得できる研修を実施しているので、今後、九州 ブロック内での輪番開催等も検討いただければ と考えている。

印象記

常任理事 金城 忠雄

政権交代による政策変更は、専門的に思慮深い判断で断行して欲しいものである。

平成21(2009)年9 月に発足した民主党政権は、行政刷新会議の事業仕分けの方法をテレビ ショウで派手に実況報道した。数々の事業仕分けのうち産業保健事業についても、もう少し思慮 深い改革をして欲しかった。今回の産業保健活動全国会議は、民主党政権の反省会の印象である。 医師会側は、民主党政権の単年度ごとの事業契約では、安定的・継続的な事業実施と人材確保が 困難であると、主張してきた。

日本医師会は、民主党政権発足当初から、1、産業保健推進センター廃止に対する反対要望、2、 メンタルヘルス対策支援センターの人員増等の要望、3、地域産業保健センター事業の活性化の3 点を要望してきた。

今回は、政権が自民党政権となり、労働衛生課長は予算編成中で明確には答えられないと断り ながらも、今後の産業保健事業の方向性についてその政策を述べた。労働者健康福祉機構を事業 主体としての産業保健推進センター事業、国の委託で労働者50 人未満の小規模事業場に対する 地域産業保健事業の充実、すべての事業場のメンタルヘルス対策支援、その三事業を一元化して 運営してはと提案している。厚生労働省は、日本医師会の主張している産業保健事業を考慮して いると思われ、国の計画に非常に期待が持てる。

尚、県医師会は、平成22 年度に沖縄労働局からの地域産業保健事業の委託を引き受け、産業医 の選任義務のない労働者50 人未満の小規模事業所の健康管理や産業保健サービス向上のための 事業を実施している。実施に当たっては、各地区医師会の強い要望のもとに那覇南部・中部・北部・ 宮古・八重山の5 地域産業保健センターにおいて健康・メンタルヘルス支援を行っている。

厚生労働省は、予算立案中としているが、来年度からどのような委託方式になるのか気になるところである。

そのほか、労働衛生の現状報告があり一般定期健康診査で有所見率の改善、自殺者対策や産業 医の選任状況など改善すべきことが多いと印象つけられた産業保健活動推進全国会議であった。