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平成25年度 都道府県医師会
検案担当理事連絡協議会

稲田隆司

常任理事 稲田 隆司

去る10 月9 日(水)、日本医師会館におい て標記協議会が開催されたので、その概要を報告する。

会長挨拶

日本医師会の横倉会長(代読 今村副会長) より、概ね以下のとおり挨拶があった。

計り知れない犠牲者を出した東日本大震災に おける絶望的な状況の中での検案活動、また昨 年成立を見た「死因究明等の推進に関する法 律」に基づき、国に設置された死因究明等推進 会議での議論等、昨今、死因究明、死体検案の 分野は社会全体の中において益々重要性を高め てきていると言える。亡くなられた方のご遺体 を正確に検査し、身元を特定し、その死因を正 確に診断することは、その個人に対する最後の 医療として決して疎かにしてはならない事柄で ある。この最後の医療をきちんと提供すること は、亡くなられた方の名誉と尊厳を守り、ひい ては残されたご遺族の尊厳をも守ることに繋がる。また一人のご遺体の死因をきちんと究明す ることは、それが社会全体の医学、公衆衛生の 向上、あるいは治安の維持等にも繋がる可能性 がある極めて重要な意味を持つことすらある。

死体検案が持つこうした深い意味合いに思い を致すとき、私達医師は現に生きている患者様 に対することと同様、亡くなられて言葉を発さ なくなったご遺体に対しても、今まで以上に厳 粛な態度で接すべきことを改めて自覚せずには いられない。

本日の連絡協議会の主題の一つは、日頃、警 察に協力し検死立会・検案等を担当されている 先生方の連絡調整のための組織を、平成26 年 度を目標に日本医師会内に設けることについ てお伝えし、各都道府県医師会において必要な 準備をしていただくようお願いすることにしている。

これまで熱心な活動を続けてこられた日本警 察医会は発展的に解散されることが去る9 月 22 日の日本警察医会総会で決定されている。 警察の検死に協力し、ご遺族の求めに応じて的 確な検案を行うことができる医師を養成し、ま た大規模広域な災害が発生した際には、警察と の連絡の下に、これらの医師を迅速に被災地の 検死検案業務に派遣する体制を整えることは今 や喫緊の課題である。こうした観点からも、来 年度から日本医師会が各都道府県医師会のご協 力の下に取り組もうとしている警察に協力する 医師の全国組織化の事業は、社会的に極めて意 義のあるものと自負している。

本日の協議会は、このように極めて実務的性 質を多く含む内容となっている。担当理事の先 生方におかれては、活発かつ忌憚のない意見交 換をいただき、医師会主導による検案業務の円 滑な実施にご尽力を賜るよう心よりお願いしたい。

内閣府死因究明等推進会議等における議論について

内閣府大臣官房審議官死因究明等推進会議事 務局長の安森智司氏より、概ね以下の通り説明 があった。

昨年9 月に、死因究明及び身元確認の実施に 係る体制の充実強化が喫緊の課題であるという 題目の下に死因究明等推進会議が作られた。

本会議は、官房長官がトップである。ところ が担当大臣は古谷大臣で国家公安委員長、事務 局長がなぜ警察かと言うと、元々は警察の犯罪 見逃しというものが火を吹き、死因究明を強化 するということからこの流れが始まった。死因 究明をもう一つの観点から見ると、死因を解明 していくことがひいては生きている人の為にな るのではないかという視点として、厚労省的な 仕事になる。ところが厚労省は主役ではない。 歪な形でこの会が始まっている。

現在、11 回の会合を重ねてきた。中身は、 死因究明に関与する人材をいかに育成するか。 そして施設等の整備をどう進めるか、最終的に は制度の整備をどうするか。今何とか2 つ目の ところへきたところであるが、根本的なところ で暗礁に乗り上げている。

人材の育成については、検案する医師等の能 力向上についてどうするかということがそのテ ーマとなっている。その中で、厚労省と医師会 が協力していただき、検案方針を強化していく ということと、検案される医師のネットワーク を強化するための取り組みを進めるということ が、少なくともスタートがきれたというところ だと考えている。施設等の整備の中でも、死体 を診る医師が死因を最後まで責任をもって見て いただく。その手段を整えていくということが できれば、警察はその情報をいただきながら安 全に捜査をしていける。現場では、警察の検視 官と先生方が情報交換をしていただければとい うことが一番大事だろうと考えている。最初に、 死体のところに能力のある先生方が行っていた だき、そこで警察と一緒になって情報交換をし ていただく。死因究明の本筋だろうと考えてい る。そのポイントを大事にしながら全体の流れ をどうするかということを検討していくべきと 考えている。その意味で、死体の検案等につい て、特に検案等を行う医師が、検査や解剖の必 要性について判断の上、実施していくシステム が一番大事である。ただそれを行うためには、 現場に来ていただける医師の死体に対する能力 がかなり高いことが要求されることになる。

各県において歴史が全く違う。先生方のシス テムや考え方も違う。それを日本全国である 程度統一していただくことは本当にありがた いことだと考えている。それをしていただき ながら、立ち会える検案、ここのところを本 当に力のある医師に診ていただくことにより、 日本の死因究明の制度は格段に上がる。それ をどうするかということに主眼をおいている。 その意味で、おそらくは今の監察医務院で行っ ているように、死体をかなり数多く診ていただ いたレベルの医師が、現場で死体を診ていただ くことがイメージとしてはベストだと考えて いる。しかし直ちには無理であり、どういう計 画を立てながらその方向に進めていくのかと いうことを具体的に検討していくことが推進 会議の仕事であると考えている。その意味で、先生方の使命感であり責任感であり、今持っ ている検案業務を制度的にしていくべきだと、 将来的には資格制等にし、検案される医師のス テータス、資格収入というものも有り得ると考 えている。できるだけその意向が具体的にまと まるように私どもとしては役割を果たしてい きたいと考えている。何とか年内に方向性を固 め、来年に入り推進計画を立て閣議決定を通し たいと考えている。

警察における死体取り扱い状況及び死因・身元 調査法の施行状況等について

警察庁刑事局捜査第一課検死指導室長の檜垣 重臣氏より、概ね以下の通り説明があった。

警察における死体取り扱い総数の推移につい て説明する。全国の警察で取り扱った交通関係 と東日本大震災による死者を除いた死体数の推 移は年々増加傾向にある。平成24 年の一年間 では、全国の警察で173,833 体のご遺体を取り 扱った。厚生労働省の人口動態調査による昨年 の死亡数と対比すると、全国の亡くなられた方 のうち概ね14%を警察が第一次的に取り扱っ ているという状況にある。この状況はここ数年 変わっていない。

警察が取り扱う死体については、なぜ死亡し たかがはっきりしないため犯罪かもしれないと 疑われる死体を、警察としてはその主の原因に 犯罪が関係しているのかどうかといったことを 中心に調べていくことにしている。業務の流れ としては、先ず警察が、死体があるということ を把握すると現場に警察官が行き死体を診るこ ととなる。一見してこれは犯罪が疑われるよう なものであれば直ちに事件として捜査が行われ ることになる。犯罪の恐れがある変死体と疑わ れる場合については、刑事訴訟法に基づき検死 が行われることとなる。犯罪死体、変死体、ど ちらとも直ちには判断できないというものにつ いては、今年の4 月からは「死因・身元調査法」 に基づき、死体発見時の調査とういことで死体 の外表調査やいろいろな周辺捜査等を実施して いくことになる。死体の外表調査である検死や、死体発見時の調査で、その死の原因がはっきり しないということになると、「死因・身元調査法」 に基づき、体内の状況を調べるための検査を実 施していく。具体的な内容は、尿等を採取し薬 物検査を行ったり、CT による画像検査等を行 う。これらを実施し、その死が犯罪に起因する ものかどうかを調べていく。さらに特に必要が あれば、「死因・身元調査法」の第6 条第1 項 に基づく解剖等を行ない、これが犯罪かどうか を確認していくことになる。

検死や死体発見時の調査、各種検査の過程で 犯罪だと判断されると、その段階から犯罪捜査 に移行していくということになる。最終的に、 犯罪によるものかどうかということの判断がで き、警察がそれ以上のそのご遺体を調べる必要 がないということになれば、ご遺族に引き渡し を行うことになる。「死因・身元調査法」では、 ご遺族にご遺体を引き渡す際に、その死の原因 等についてご説明するようにという規定があ る。このような流れで業務を行っている。

先ず、警察がどのように死体の存在を把握す るのかということだが、一つは自宅や屋外で亡 くなられていることが発見され、国民から110 番通報等で通報され、死体の存在を知るとい うものがある。他には、届け出が警察になさ れることもあるし、緊急搬送により搬送された 病院から通報を受けるということもある。この ような形で警察として把握していく。そうなる と、管轄する警察署から死体のある現場に警察 官を派遣して調べることになる。これに合わせ て警察本部にも連絡がある。いわゆる検視官に 死体が発見されたということが通報される。検 視官では、現場に行った警察官の話を聞き、検 視官として対応すべきものか、また他の扱い状 況から対応できるかどうかを判断し、検視官も 臨場できる場合は現場に赴くこととなる。この 検視官とは、捜査経験がある、また法医学の知 識を身につけた警察における死体取り扱い業務 の専門家となる警察官となる。検視官が、でき るだけ多くの現場に臨場できるよう、平成21 年度以降その体制強化に取り組んできた。検視官が実際に現場に行き死体を見た割合、臨場率 と呼ぶが、平成22 年には14.1%程度であった が、増員や検視官の努力により平成24 年には 49.7%にまで向上している。引き続きこの向上 に取り組みたいと考えている。

死体を認知した後は、その死体の死の原因等 を調べていくことになる。先ず、ご遺体が変死 の疑いがある死体、変死体だと判断されれば、 刑事訴訟法の第229 条の規定に基づき、検死 を実施することとなる。この検死については、 法律上は検察官が実施するということになって いるが、実際には第2 項の規定を用い警察官が 代行して行っているということがほとんどであ る。検察官が扱う死体については0.05%程度 となっている。また、警察官がこの規定に基づ き検死を代行する場合には、検死規則において 医師の立会を求めて行うことを規定している。 変死体ではない場合は、犯罪死体や変死体に該 当しないと判断された死体については、「死因・ 身元調査法」第4 条第2 項に基づき、死体の死 因や身元を明らかにするため外表の調査や、死 体の発見された場所の調査等を実施しなければ ならないと規定されている。これに基づき警察 官が作業を行う。さらに同条の第3 項において、 医師等に必要な協力を求めることができると規 定している。これに基づき、皆様方にいろいろ なご協力をお願いしているという現状にある。

現場で警察がお願いしたいことについてご説 明させていただく。

検死や死体調査等を行う場合、医師の方々に ご協力をお願いする主な事項として、大きく3 つある。1 つ目は検死や死体調査時等に立会を していただきたい。2 つ目は死者を診療された ことがあるのであれば診療情報の提供をお願い したい。3 つ目は立ち会っていただく医師にお 願いすることとなるが、「死因・身元調査法」 第5 条第1 項の検査、体内の状況を調べるため の検査、こういった検査をお願いするということがある。

1 つ目の立会については、死体調査等を実施 する場合、実際に死体をご覧になる医師から、その死因についての医学的な判断や、警察が犯 罪によって死亡したかどうかということを判断 する上で、いろいろな助言をいただくことが重 要となる。死体がある場所に既に医師がおられ るような場合には、その方からご意見をいただ くということになるが、その場に医師がおられ ないような場合には、予め協力していただいて いる医師に、現場や警察署に来ていただき立会 をお願いしているという状況がある。その助言 の中には、薬物検査やCT 検査、解剖等が必要 かどうかということについてもアドバイスをい ただくことになる。「死因・身元調査法」第6 条第1 項では、解剖にあたり法医学に関する専 門的知識、経験を有する方に意見を聞くと規定 されている。この規定については、警察におい て「死因・身元調査法」に基づく解剖が必要で あると判断した場合に、本当に解剖する必要が あるのか、解剖しなくても死因が判明するよう なものまで解剖するようなことがないよう、最 終的にその要否を法医学の知識がある方に確認 しようといった規定と解釈している。我々が、 死因を明らかにするための犯罪により死亡した のかどうかを確認するため、どのような検査や 解剖が必要なのかという点について、先ずは立 ち会っていただく医師のご意見を伺い、我々が 調べたことも勘案しながら判断していくことに なる。医師に診ていただく観点等について、警 察が検死を行うのか、死体調査を行うのかで求 めるものが変わってくるものではない。

2 つ目の診療状況の提供については、その死 の原因を判断する上で死者の診療情報は非常に 有効になる。死者が診療を受けていた病院等が 判明すると、その病院等に診療情報の提供をお 願いしていくことになる。

3 つ目については、立会医師の方にお願いし ていくことが中心となるが、「死因・身元調査 法」第5 条第1 項の検査を実施していただくも のである。法律上この検査については、医師に 実施していただくと規定されているので、どう しても現場で医師に実際にご協力をお願いして いるという状況になる。具体的に6 つの類型を規定している。「1. 体内から体液を採取して行 う出血状況、または当該体液の貯留量の確認」、 「2. 心臓内の複数の部分から血液を採取して行 うそれぞれの色の差異の確認」、「3. 体内から体 液、尿その他の物を採取して行う薬物、毒物、 病原体その他人の生命または身体を害するおそ れがある物に係る検査」、「4. 体内から血液ま たは尿を採取して行う身体の疾患に伴い血液中 または尿中の量が変化する性質を有する物質に 係る検査」、3、4 の違いは、3 は体外から入っ てきた物質についての検査、4 は体内で生成さ れたもしくは生じた物質等の検査、と法律上の 整備がされている。「5. 死亡時画像診断」、「6.5 に掲げるもののほか、内視鏡その他口から挿入 して体内を観察するための器具を用いて行う死 体の異常の確認」、法律上はこうした検査の中 で、簡易なものについては政令で定めて警察官 も実施できるということを規定している。従い、 現状では、政令では3 の体内から尿等を採取し て行なう薬毒物検査のうち、通常死体を傷つけ ることがない方法により体液、尿その他の物を 採取し、かつ簡易な器具を用いて薬物等を検出 するものについては、警察官も実施可能と規定 している。これについては、医師がいなくても、 現場で警察官が単独で実施できる検査となって いる。

「死因・身元調査法」は本年4 月1 日から施 行されている。4 月から6 月の間、「死因・身 元調査法」に基づく新しい制度の解剖を全国で 497 件実施している。497 件以外にも犯罪の恐 れありとされたものについては司法解剖が実施 されており、監察医制度があるところでは監察 医解剖等も実施されている状況にある。

今のところは、現場で何とか運用しているよ うであるが、本法が効果的に活用できるかどう かは医師のご協力にかかっており、引き続きご 理解ご協力をお願いしたい。

日本医師会による警察活動に協力する医師の全 国組織化について

日本医師会副会長の今村聡先生より、概ね以 下の通り説明があった。

警察活動に協力する医師を取り巻く環境は、 昨今大変厳しい状況にある。先ず、警察活動に 協力する医師、警察医の現状として、名称や業 務の内容が地域により様々である。当然、配遇 の面でも同様のことから、警察医のなり手も少 なく後継者不足になる地域も少なくない。この ような状況が続くと地域により検案の質も大き な差が出てきかねないという心配もある。また 大規模災害が起こった際にどのような体制を取 るのか、きちんと医師会として準備しておく必 要がある。検死や立会検案を担う医師の充実と いう問題は、日本医師会としても大変重要視し ている状況である。また、これまで警察医をま とめる組織として各県に警察医会等が存在して いたが、組織率が全国に広がることがなく、日 本医師会としてもその全国組織化を進める為の ご協力ご相談にも積極的に関わってきたところ である。こうした中、日本警察医会として警察 医の全国組織をしっかりと構築する為には、自 らは一旦解散し、日本医師会という組織の下で 新たな全国組織をつくる方向に協力するという 道を選択され、去る9 月22 日、宮崎県で開催 された日本警察医会総会においてこの方針が決 定された。

死因究明等推進計画検討会中間報告書の中 に、検案する医師の資質向上ということで、厚 生労働省及び日本医師会が連携して検案に携わ る医師の充実及び技術向上に務めることとする ことと、検案を行ない医師のネットワーク化を 強化するとともに、日本医師会において連携強 化を図るための組織化を行うこととする、とい うことが書かれている。日本医師会の役割を国 の中できちんと位置づけることが報告書の中に 記載されていることは、大変重いものだと考え ている。

日本医師会では、人材養成については、既に ここ2 年以上に渡り人材育成に取り組んでい る。その一つが死体検案研修会を平成25 年2 月28 日に開催させていただいている。死亡時 の画像診断についても、研修会を平成24 年2 月から既に2 回、学術シンポジウムを平成23 年、24 年に開催し、25 年12 月には3 回目を 予定しているところである。死体検案研修会の 今後の展開であるが、日本医師会でカリキュラ ムを作成し、法医学等とも連携し、実習会場の 確保としては東京都監察医務院にも協力を要請 しているところである。現在、厚生労働省の委 託事業として、一部を委託費として賄う予定で ある。都道府県医師会の協力をいただき、日医 会館以外でも開催をしたいと考えている。特に 基礎的な研修会はできるだけ多く開催し、全て の医師を対象として行いたいと考えている。基 礎的な研修会としては、全ての医師が質の高い 検案ができるようにしていただきたいというこ とで、国立保健医療科学院で現在2 日間研修 を行っているが、厚生労働省としてはこの研修 会を日本医師会に委託したいと考えている。こ れからは厚労省が行うのではなく、日本医師会 が国立保健医療科学院の研修会を行う。これに ついても、できれば同じカリキュラムのレベル を保った上で、ブロックの中で行っていただけ るところがあれば、日医からの再委託という形 になるが、全国の先生方が日本医師会まで来な くても地元に近いところで質の高い研修を受け ていただく機会をつくっていきたいと考えてい る。基礎研修会については、医師の基本技能と しての検案の一般知識を持っていただく、1 日 くらいの講義で修了できるような仕組みを考え ている。都道府県で当面8 箇所程度で開催して いただくということで、大規模災害が起こった 時の備えとして、こういうことが有効になろう と考えている。国の委託費、補助金等を活用し、 できるだけ多くの地域で開催できるよう取り組 みを進めていきたいと考えている。もう一つ、 国立保健医療科学院で行ってきた研修を上級の 研修と位置づけることを予定している。これは 解剖の見学という実習も含んでおり、東京都の 監察医務院の協力をいただき、新たに検死立会 の仕事を警察から引き受けられる先生には、こ のレベルの研修を受けていただければと考えて いる。

このような人材育成を基礎として、日本医師 会では今後の警察に協力する医師の全国組織化の取り組みをしていきたいと考えている。具体 的には、先ず、各都道府県医師会に部会を設け ていただく。これが従来の各県ごとの警察医会 にあたる機能を果たしていただく。今後、検死 の立ち会い等の仕事を警察から新たに委託され る場合には、基本的に、この県医師会の部会を 通じて医師の選任を行っていただくよう組織的 な対応を徹底してきたいと考えている。また警 察側についても、基本的には委嘱のルールに則 っていただくよう、警察庁に対してお願いして いきたいと考えている。さらに、日本医師会に はこれらをまとめる仕組みとして、全体の連絡 協議会を仕組みとして設置する。日本医師会の 事務局で日常的な事務を担当する。年1 回総会 を開くことと、学術大会、いわゆる検案等に関 わる様々な警察に協力する業務の中で発生する 学術的な問題について発表していただくという 大会も計画している。これはこれまで日本警察 医会が長年に亘り警察医会総会学術大会という ことで運営されてきたものを基本的には日本医 師会が責任をもって行うものである。一方で、 警察協力医師に係る様々な問題を恒常的に検討 し提言をまとめる機関として、日本医師会内に 委員会を設ける。これには警察庁、厚労省、法 医学会、歯科医師会、関係団体に委員の参加を お願いするところである。

各都道府県医師会にお願いしたいこととし て、各都道府県医師会内に部会を設けていた だく、これがいわゆる各県の警察医会に相当 するものとなる。医師会の外に警察医会が置 かれていたところでは、相互に連絡を取り合 っていただきご相談をいただければと考え る。既存の組織をできるだけ県医師会が有効 に活用していただく必要があると考える。こ の部会は医師会の組織を軸にしているが、対 象者は当該県内で実際に活動する医師であれ ば、会員、非会員を問わず、部会の構成員と なっていただくようお願いできればと考える。 名称は、「警察活動に協力する医師の部会」と いう仮の名前としていただく。会費は取らな いことを原則としていただき、原則として本日お集まりいただいた検案担当理事が代表者 になっていただきたいと考えている。警察医 会は現状として県警本部におかれているとこ ろもある。警察庁から県警本部には医師会の このような動きに円滑に協力いただけるよう 指示を出していただけると伺っている。この 部会の名簿となるが、日常的に検死立会をさ れている医師のリストを各県医師会で整備し ていただきたいと考えている。このリストは 実際に業務をされている医師のリストであり、 大規模災害時の場合に、このリストに基づき 被災地に派遣する検案担当医師の選定を行う ようなことも想定される。以上が都道府県医 師会へのお願いとなる。

今後のスケジュールについては、今年の年末 に向け、さらに詳細な事業の内容や予算規模を 詰め、来年度の日本医師会の事業計画、予算に 反映するよう検討を行う。来年4 月から日本医 師会の中に連絡協議会の事務局を開設する。先 ずは、都道府県医師会に作成いただくリストの 概要を集計し全国組織化の第一歩とする。同時 に会内委員会をスタートさせる。連絡協議会の詳細な部分については、会長諮問に答える形で 検討いただくことにしている。来年の秋に、全 国の先生方にお集まりいただく学術大会を兼ね た総会を日本医師会内で開催したいと考えてい る。その後、委員会の検討結果等を踏まえ、27 年度を目処に必要な改正を行っていきたいと考 えている。

大規模災害が発生した場合の対応について は、東日本大震災の教訓からも明らかなように、 大規模災害が突発的に発生した場合には現場レ ベルでの的確な行動が大変重要となる。そのよ うな観点から、一旦、警察庁から各県警に指示 が出れば検死検案を担当する医師は半ば自動的 に任務に入れるよう、予めそのような仕組みを 作っておくべきであると考えている。そのスキ ームの大枠については、先ずは日本医師会、警 察庁等の中央組織で合意を形成し、各地域では 警察、医師会等が直ぐに動き出せるチームを編 成しておくことが有効であると考えている。日 本医師会としては、今後、警察庁、日本歯科医 師会、日本法医学会等と綿密な協議を行いたい と考えている。

印象記

常任理事 稲田 隆司

全国の警察医の諸先生のこれまでの活動に敬意を表しつつ、災害時も含めた危機管理として、 日医と警察庁が連携して県毎に歴史も体制も異なる警察医活動を緩やかに統合し、円滑な指示系 統を育成したいとの思いが伝わる連絡協議会であった。

細かな確認、要望は出されたものの、全体として各県共に、この構築には前向きで建設的であった。

日医を核としてこのような全国会議で互いの実践や経験を持ち寄り、全国的に検案、留置、警 察職員の健康管理等の水準を上げていくことが、国民への公平な資源提供の観点からも大切であ ると感じた。

沖縄県医師会としても、警察嘱託医会や県警と密接な連携を取りつつ、体制の構築に努めなけ ればならないと気が引き締まる有意義な会であった。