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年頭所感

横倉義武

日本医師会会長 横倉 義武

明けましておめでとうございます。会員の皆 様におかれましては、健やかに新年をお迎えに なられたこととお慶び申し上げます。

日本医師会は昨年、「公益社団法人」として 新たなスタートを切りました。そのスタートに 当たり、わが国の政治、経済、社会の大きな変 革と日進月歩の医療界において、時流に流され ることのない日本医師会の基本理念として、「日 本医師会綱領」が第129 回定例代議員会にお いて採択されました。

従来、日本医師会では医師個人のさまざまな 医療倫理に関わる綱領を作成しておりましたが、 これまで医師会が担ってきた地域医療への貢献 や健康福祉への地道な取り組みが、国民に正し く伝わっていなかったことから、組織として社 会に約束すべき内容を明確にすべきであると考 えたことが作成の理由であります。今後、これ を遵守することによって、国民の幸福の原点で ある健康を守るための公益的活動を、より一層 深化させてまいりたいと思います。そして、国 民や医師に医師会の理念として広く発信してい くことで、医師会が決して利益追求団体ではな く、『国民と共に歩む専門家集団としての医師会』 であると認識していただくとともに、医師会員 のみならず、医療界全体の大同団結に向けた大 きな拠り所になることを願っております。

また、第23 回参議院選挙において、羽生田 俊前副会長を国政の場に送り出すことが出来ま した。これもひとえに会員諸氏の多大なるご支 援の賜物であると厚く御礼申し上げます。

さて、人類は目覚ましい発展を遂げグローバ ル化する現在、わが国では、総務省が敬老の日 に合わせてまとめた人口推計によりますと、65 歳以上の高齢者が過去最高の3,186 万人となり、 初めて総人口の25%に達したことが明らかにな りました。世界が未だ経験したことのない少子高齢社会を迎え、これをどのようにして乗り越 えていくのか、世界中から注目が集まり、政治 も社会も模索を続けているところであります。 こうした中、安倍政権が一昨年12 月に誕生し、 昨年8 月6 日には、社会保障制度改革国民会議 の報告書が安倍晋三総理に提出され、今後の社 会保障の在り方に関する方向性が示されました。

今後、この報告書に沿って具体的な方策が議 論されていくこととなりますが、その具体化の 段階で、国の財政難を理由に更なる規制改革が 多くの政府の会議で叫ばれ、「日本経済の再生」 という看板の下に、再び市場原理主義が台頭し 始めております。我々としては、混合診療や民 間医療保険の拡大など、一段と医療の産業化へ 向けた動きが加速している状況に憂慮している ところであります。

国民は、生命と健康を犠牲にしてまで国の経 済発展を望んでいるわけではなく、これに対して、 我々は、社会保障と経済、その対立する軸の中で、 国民の健康、国民の医療を守る立場から政策を主 張していかなければならないと考えています。

今後、間近に迫ってきた超高齢社会における 国民の医療・介護に対する国民のニーズにど のように対応していくかも大きな課題であり、 我々に求められるものは誠に大きなものがある と思います。

日本医師会は医師を代表する唯一の団体であ ります。世界に冠たる国民皆保険の堅持を主軸 に、国民の視点に立った多角的な事業を展開し、 真に国民に求められる医療提供体制の実現に向 けて、執行部一丸となって対応してまいります ので、会員の皆様方の深いご理解と格段のご支 援を賜りますようお願い申し上げます。

新年が皆様にとりまして、希望に満ちた明る い年となりますことをご祈念申し上げ、年頭の ごあいさつといたします。