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九州医師会連合会平成25年度 第1回 各種協議会

2.地域医療対策協議会

副会長 玉城 信光
常任理事 稲田 隆司
理事 本竹 秀光
理事 玉井  修
理事 石川 清和

挨 拶

○日本医師会 中川俊男 副会長

中央は緊迫している。安倍政権が、昨年総選 挙で圧勝して、参議院選挙でも圧勝し、独裁政 権になったのではないかという言い方をするマ スコミもある。更に、東京オリンピック招致が 決定したということで、長期政権を見据えて、 我々にいろいろな問題がある。規制緩和、新自 由主義政策的な政策をどんどん進めていくとい う流れがある。民主党政権時代の比ではない。 来週の火曜日に経済政策パッケージというもの が閣議決定される。その中で国家戦略特区とい うものを作り、医学部創設や病床規制の例外を 認める、混合診療を更に拡大する、外国人医師 の診療を可能とする、我々がTPP の関係で心 配したことをどんどん進めようとしている。横 倉会長以下全力でなんとか阻止しようと思い頑 張っている。そういう中で、地域医療も含め医 療提供体制を医師会主導でつくっていく、我々 も地域医療提供体制の構築は全国一律のことは ありえない、47 都道府県あれば47 通り、かつ県内でも何通りもあるということも含め、ぜひ 日本医師会、都道府県医師会、郡市区医師会が 主導的な立場にたち、地域医療提供体制を構築 していただきたいと考えている。

年末の予算編成では、次期診療報酬改定の改 定率が決まる。そこで消費税の8%引き上げも ほぼ決まっているが、その消費税を上げた分を 財務省筋は、医療の機能分化やいわゆる効率化、 改革が進まないと8%分やらないというとんで もないことを言っている。消費税を上げるとい う目的は、社会保障給付費の国庫負担のために 上げるということであったが、それを使わせな いということを言っている。そういう意味で緊 迫したと申し上げた。

協 議

(1)各県の医療紛争への取り組みの現状(長崎県)

〔提案要旨〕

日医、厚労省ともに医療事故調査制度の創設 をめざしており、今後の成り行きが注目される。

日医案、厚労省案ともに、まず院内調査委員会で検討、日医案では独自の取組みが困難な医 療機関に対しては、地域の医師会や大学、大規 模病院、その他医療関連団体等が支援を行うと 記載されている。細部ははっきりしないが今後 医師会として対応せざるを得ない。

ここで現状認識として現在各県医師会が行っ ている医療紛争処理の実態をご教示いただきた い。又、各県で第三者機関を創設する場合に予 想される問題点等について、各県のご意見及び 日医の見解をお伺いしたい。

なお、1)〜 3)の回答について冊子掲載が難 しい場合は、別途配布頂く形で御教示頂きたい。

1)県医師会内または郡市医師会に医療紛争に 対処する委員会はあるか?

2)委員会のメンバー、委員会開催数

3)最近3 年間の医療紛争処理委員会にかけら れた件数・診療科・日医付託件数・紛争結果等。

4)県レベルでの第三者機関創設する場合の予 想される問題点

(2)医療事故調査制度における診療所・中 小病院支援体制に関する各県の考え方について(熊本県)

〔提案要旨〕

医療事故調査制度の具体的方策として

T . 全ての医療機関に「院内医療事故調査委員会」を設置・運営

U . Tの体制を支援するため、地域に連携組 織(「地域医療安全機構(仮称)」、「地域医 療事故調査委員会(仮称)」を設置・運営

V . T・Uに加えて更なる医学的調査や再発 防止策の策定に向けた活動を行うため、第三者組織(「中央医療安全機構(仮称)」、「中 央医療事故調査委員会(仮称)」)を設置・運営

三段階方式が提案されている。

Tにおける医療機関内の体制は、施設、人員、 専門性等の面から独自での取り組みが困難な医 療機関においても適切に機能させるため、都道 府県及び地域の医師会組織を中心に、近隣の大 学病院、特定機能病院、地域医療支援病院、そ の他の大規模病院、病院・医療団体が参画する連携組織(「地域医療安全調査機構(仮称)」) を常設し、適宜支援を行うとされている。

診療所、中小病院に対す支援体制に関する各県の考え方をご教示下さい。

(3)医療事故調査制度の創設について
〜制度の実施に向けた支援体制の構築のために〜(福岡県)

〔提案要旨〕

医療事故調査制度創設についてはこれまでに 様々なところで議論が行われてきましたが、今 般、厚生労働省の「医療事故に係る調査の仕組 み等の在り方に関する検討部会」ならびに日本 医師会の「医療事故調査に関する検討委員会」 においてそれぞれ議論がまとめられた。

厚生労働省の内容は第三者機関を全国でただ 一つとして設置し、これに全国の地域の医師会 や大学病院などが中心となって、院内事故調査 委員会への支援や院内調査報告書の内容の精査 などを行うとしている。

一方で日本医師会の内容は、第三者機関を、 都道府県ごとに、それぞれの地域の医師会、大 学病院、医療関係団体などが連携した組織「地 域医療安全調査機構(仮称)」として構築し、 この組織が各医療機関の院内事故調査等の支援 や第三者機関としての独自の調査を行うとしている。

どちらの案においても各都道府県医師会が主 体となって、院内調査の支援、報告書の作成支 援・精査を行っていかなければならない。

福岡県医師会としては、全ての医療機関に院 内事故調査委員会の設置義務の議論が生じたと 同時に、院内事故調査委員会を設置することが 難しい医療機関への支援をどの様に行うか議論 を進めてきた。

その形が、診療行為に関連した死亡の福岡県 医師会調査分析事業であり、福岡方式である。 事業内容としては、まさに、日本医師会が示し ている案と同様で、院内事故調査委員会の設置、 報告書の作成支援である。原則、日本医療安全 調査機構「診療行為に関連した死亡の調査分析 モデル事業」(以下、「モデル事業」)が受付ける事例、もしくは臨床的所見から死因が明らか でない事例を受付けることとしている。

現在4 事例を受付けて、院内事故調査委員会 を開催し、報告書の作成を行った。第1 事例は 周産期母体死亡事例で、審議で羊水塞栓と結論 した。第2 事例は、剖検を実施した肝臓がん死 亡の他県事例で、報告書を当該県医師会を介し て当該病院に届けた。第3 事例は肺炎と心筋梗 塞の事例で入院当日急死した。第4 事例は肺塞 栓死事例である。また、3 事例ほど問い合わせ があったが、剖検ができず、受付に至っていな い。剖検を実施した第2 事例はモデル事業に登 録した。課題として、中小病院で剖検の取得が 特に難しく、県医師会は剖検の取得支援も表明 しているが、うまく機能していない。剖検未実 施(モデル事業に登録していない)の事例で、 民事訴訟に移行した際の報告書の取り扱い、家 族への報告書の交付手順等を、調査分析事業運 営委員会で協議を進めている。

本会では福岡県方式を持って、厚生労働省・ 日本医師会の報告書に対応していこうと考えて いるが、各県において、厚生労働省・日本医師 会の報告書に対する各県のご意見、また、実際 に各県医師会が主体となって支援を行うことと なった際の問題点や障害となる点についてご意 見をお聞かせ願いたい。

○提案事項(1)(2)(3)は一括協議。

<各県回答>

各県ともに、医療事故調査制度の創設につい ては概ね理解を示す旨の回答であったが、県医 師会としてどのように関与するのか、また既存 の医事紛争処理委員会等との整合性をどう考え るのか等の意見が示され、日本医師会の見解や、 福岡県医師会が先進事例として取り組んでいる 「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事 業」の取り組み内容を確認したいと提起された。

<日本医師会コメント>

日医が9 月に出した医療事故調査に関する 検討委員会の報告書は、福岡方式にならって構想したものである。診療所、中小病院だけでな く大病院も大変だということを私も実感してい る。少なくとも拙速だけは避けたいと考えてい る。先生方におかれても遠慮なく厳しいことも 含めご意見いただきたい。納得のいく形でつく らないと、なんとなく字面だけで進んでしまう と大変だと考えている。現在でも年間80 件が 刑事訴追に向けた立件や送致がある。その流れ をどう食い止めるかということもあり急ぐ必要 もある。その辺のバランスを含めなんとかやっ ていきたいと考えている。ご助言アドバイスを お願いしたい。

○追加発言

<長崎県医師会>

第三次試案の際に反対した。反対理由は2 点。 1 点目、医師会への反対意見としては、会員へ の周知がなかったということ。これは今十分に なされている。2 点目は、医療事故調が医療懲 罰のような形になっていた。9 月に高杉常任理 事をお呼びして、県医師会主催で医療事故調の お話をしていただいた。その中で会員から質問 が上がったのが、調査報告書の扱いをどうする のか。それを患者側に渡すということは訴訟の 資料に使われるのではないかという意見があっ た。公平性も良いが、それ以上に会員をちゃん と保護していただかないといけないということ がある。この点を福岡にお伺いしたい。もう1 点、第三者を担保するということは医師会がつ くった場合に、本当に第三者担保ということになるのか。

<福岡県医師会>

刑事訴追の80 例の中に、医療行為に何ら問 題はなくても、私が間違ったと警察や検察に言 った事例が含まれているのではないかと、それ が心配でならない。とにかく早く作っていただ きたい。ただし東京の体制をつくるのと、我々 がきちんとそれに繋ぐ作業を続けるということ は別に考える仕事ではないかと考えている。

長崎県の質問については、今まさに県医師会で一生懸命考えているところである。私達は、 少しでも救おうという気持ちで出発した。最初 の福岡県の方針は、モデル事業に繋ぐという ことで、5 例のうち1 例は解剖があったのでモ デル事業に繋げている。我々の報告書はモデル 事業への参画の支援であり、報告書を当該病院 にお渡しし、おそらく当該病院からそれを報告 書という形でモデル事業に登録され、今モデル 事業の審議を待っている段階ではないかと考え る。我々が出発したときは、モデル事業の参加 ということであったが、実際に相談を受けると、 剖検がない事例の方が極めて深刻である。我々 の審議がお役に立てるならということで残り4 例を引き受けたという形である。

どんな形で報告書をお渡しするか、これにつ いても多種多様であり。最初は当該院長に交付し、 当該院長に後の手筈はお願いするということで 始めたが、その後いろいろなことを相談された。 直ぐに民事事例になった例もあった。意見書の中 に、事故防止策ということも含めていたが、それ を民事に交付するということはおかしいという ことで、いろいろ議論し、我々の方に過誤が考え られるときは、第三者性や透明性等を考え事故防 止策を残すべきではないかと、過誤がない例に ついては、事故防止策を載せるのはおかしいと いう議論をして、今議論中である。専門医の名前、 これも今最終決定ではないが、我々が参加するの は医師会員として参加するのではなく、それぞれ の病院として参加する方が病院への支援効果が あるのではないかということで、ただそれに関し ては、参加していただいている専門医のご承認を いただかないといけない。今審議を続けていると ころである。また意見書については、医師会から 直接渡してほしいという意見もある。

もう一つは、医療機関にクレームがある際に、 県医師会で中立性を持ち審議している、その結 果を待ってくれということを言うと、病院に対 するプレッシャーが減るようである。

医療事故調は医学的に解明する、医事紛争処 理委員会はもめたものを解決する。大切なこと は隠すということは絶対にいけない。報告書は出ても良いと考える。医学的に究明するという ことは大切なこと。第三者の担保性といっても 誰がこの仕事を始めるのか、やはり医師しかい ない。究明制度は医師しか作れない。

<熊本県>

実際の構成員はどのような形か。

<福岡県>

数名の委員が登録されており事例ごとに招聘 している。事務局は福岡県医師会においている。 主なメンバーは学術的な裏打ちが必ず必要とな るので、福岡県には4 大学あるので、その中か ら主だった先生方を中心に入っていただいてい る。中小の病院、一般開業医、事例ごとに集ま っていただいている。

<熊本県>

実際に福岡県が取り組まれていることをモデ ルにしてやっていかなければいけないと考える。 これから講習会等を是非よろしくお願いしたい。

<宮崎県>

患者満足度80%ということであるが、逆に 20%は満足していないということであるが訴訟 にはいっていない。その不満はどのような点か。

<福岡県>

先程の委員構成の回答は調停委員会の内容で あり、事故調査委員会の委員は学問的な調査と いうことで医師と看護師に限っている。弁護士 を入れるという話が最初はあったが、弁護士を 入れると防御的な感じもするため、最初は医師 と看護師ということで今やっている。

宮崎の質問については、多額の和解金を出して も不満が残るということが私の実感である。80% は素晴らしいことだと考える。福岡方式の一番の 狙いは、少なくとも先ず我々医療従事者があらぬ 刑事告訴の被害を受けないように、これだけを先 ず最初に考えている。警察や検察の取り調べを受 け、職を辞される看護師や、鬱になられる医師等 を垣間見るときの気持ちは非常に残念である。

<沖縄県>

非常に大事なことだと考える。この議題に絞 り、一度福岡のモデル事業を皆で勉強する機会 が必要と考える。その機会を九医連としてつく っていくことを検討しても良いと考える。

<長崎県>

報告書を出した方が良いという考えがあった が、事案が起こった瞬間に患者様が警察に駆け 込むケースがあると考える。先に刑事事件にな り司法解剖になった際に、県医師会は何を対応 したら良いか。もう一つは報告書の説明。報告 書を説明する際に、患者様と医療機関、同時に 説明することがあっても良いと考える。

<福岡県>

制度を変えないといけない。現状では、患者 様が警察に駆け込む体裁が整っていると事件と して警察が着手する。途端に捜査を受ける側と する側に別れる。調書を取られたり、重要参考 人等、あたかも罪人のような雰囲気が出てくる。 なんとしても排除しないといけない。体制を変 えないといけない。また民事事件でやっている のに刑事告訴する場合がある。解決金を釣り上 げるために。こんなことが許されてはいけない。 ここはなんとしても、科学的に解明された事実 を提示するためにモデル事業を進めなければな らないと考えている。

警察に駆け込まれたり、送検されることを防 ぐことが一番である。その試みの一つとして、 患者様が亡くなられる前に福岡県医師会に出し てくれと、非常に緊迫した関係の中で剖検する ことは難しい。医師会が間に入り取り持つとい うことをお話している。患者様はいつでも警察 に駆け込む心配がある。その時にこそ、そうい う心配は分かりますと、きちんとした第三者機 関、福岡県医師会にそういう機関、診療行為に 関連した死亡事例の調査分析事業があると、そ こに医師が5 〜 6 人、看護師1 名、事務方を 入れて調査している。その中の構成員は、公的 病院の医師やかかりつけ医に入っていただく、必要に応じて大学の医師、九州大学、福岡大学 も積極的な参加を表明していただいている。そ こで調査を行うということが警察に駆け込む際 の予防策になる。警察も本当は困っている。き ちんとしたところが、きちんとした筋の通った 話を出すと、それなりに対処してくれるような 感じがある。

福岡県では、警察もこういう事業があるとい うことを患者さんに言っている。

報告書の説明は、当事者と家族、説明会のよ うな形で行い、最終的な報告書を渡している。

<沖縄県>

福岡モデルを九州モデルにできたらと考え る。是非とも集中した会議を持ちたいと考える。

(4)「地域医療支援病院の承認要件見直し」 に関する問題点について(大分)

【提案要旨】

厚生労働省が「特定機能病院及び地域医療支 援病院のあり方に関する検討会」において、地 域医療支援病院の承認要件見直しを行ってい る。その中で、従来紹介率算定の中で評価して いた救急搬送患者受け入れ数を独立で評価する ことにし、2 次医療圏の搬送件数の5%程度以 上を担うことを要件に追加しようとしている。 都市部の地域医療支援病院の多くはそれをクリ ア出来ると思われるが、同じ2 次医療圏にあっ て都市周辺市町村の(医師会立)地域医療支援 病院はその点が難しくなっている(大分県にお いても2 医師会立病院が4%程度である)。各 県の状況と、日医の取り組み及び見通しについ てお伺いしたい。

【九州各県回答】

書面回答のみ

【中川副会長よりコメント】

本件は、私が委員を務めている厚労省医政局 の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり 方に関する検討会」において見直しが行われて いるものである。

特定機能病院は殆どが、大学病院本院やナシ ョナルセンター、がん研有明、静岡県立がんセ ンター等の病院が指定されている。

特定機能病院、地域医療支援病院ともに、経 済的なインセンティブが非常に強く、特定機能 病院は概形基準のままでいくと増え続ける可能 性がある。

ご存知のとおり、医療費が特定機能病院に偏 在しつつあり、そこに歯止めを掛けようと見直 しが行われ、日本医師会としては、大学病院本 院に限定すべきだと主張している。

地域医療支援病院については、医療審議会等 で審議されることになるが、要件を満たしてい れば承認せざるを得ない現状にあり、多くの県 医師会より見直しの要望があがっている。この ままだと県内に地域医療支援病院が増え続け、 特定機能病院と同様に県内の医療費が当該病院 に偏在してしまうことを非常に危惧している状 況である。

以上のようなことから、日医は、特定機能病 院と地域医療支援病院の承認要件の見直しを進 めている。

地域医療支援病院は、当初、かかりつけ医の 支援を目的とし、紹介率や逆紹介率の基準を設 定していた。本来は医師会病院のみを指定する 事であったが、国公立病院や民間病院が手上げ し承認されてきた経緯がある。指定されるとさ れないのでは1 億円以上の利益の差が生じる場 合もある。

救急の評価については、二次医療圏、救急医 療圏どちらでも都合の良い方で算定しても構わ ないことになっている。また、万が一新基準で 対応できない場合のことを考慮し、なお書きを 加えていただくこととしており、「新しい要件 で基準を満たすことが出来ない場合、都道府県 知事が救急搬送患者の受入数の基準値が止むを 得ない範囲にあると認めた時は地域医療支援病 院の承認を行うことが出来る」等、県知事の裁 量により承認できる仕組みを付け加えたいと考えている。

(5)各県の救急救命センターや特定機能病 院の前方・後方支援に関する医師会としての取り組みについて(宮崎)

【提案要旨】

宮崎県では救命救急センターや特定機能病院 である宮崎大学医学部附属病院へ患者が集中 し、医学部附属病院の病床の有効利用に支障が みられる。

今年度、大学から前方・後方支援システムを 県医師会と共に構築したいとの申し入れがある が有効なシステム構築には至っていない。各県 の取り組みについて伺いたい。

【各県回答の概況】

・ 県医師会独自の取り組みを紹介したのが、福 岡と鹿児島の2 県で、福岡県では県民への啓 発活動(救急の日のつどい、県民公開講座、 メディペチャ等)に努めており、鹿児島県で は救急医療のアンケート調査結果をもとに、 各郡市区医師会単位で医療体制の検討を図 り、後に消防法における搬送基準リストや4 疾病5 事業における医療連携のリストづくり に貢献したと回答した。

・ 一方、県医師会での取り組みはないものの、 地区レベルでの取り組み状況を報告したのが 3 県あり、熊本県が一次救急は極力会員施設 での対応を心がけ地域連携室中心の運用を図 っていると紹介した。また、佐賀県は小児時 間外の受入は医師会が中心に実施し、沖縄は 救命救急センターから講師を招聘しての講演 会や意見交換会を催していると回答した。

・ また、医師会以外の組織(福岡救急医学会や 鹿児島臨床救急研究会、佐賀病院協会)も独 自に取り組みを図る動きがあると回答した。

・ その他、大分県から県レベルでの情報統制は 物理的に難しいが、医療圏単位の内容なら、 ある程度情報統制できるのではないかと意見があった。

【中川日医副会長からのコメント】

医療機関の病床機能情報報告制度が来年度よ り少しずつ運用が開始される。その報告制度に基づき、各県が地域の実情を詳細に把握し、ど の様な医療提供体制が必要か、地域医療ビジョ ンを作成することになる。同ビジョン作成のガ イドライン作りの為の情報収集となる。

その結果として、地域医療ビジョンが作られ、 各県の医療提供体制における「高度急性期」「急 性期」「回復期」「慢性期」といった病床がどの 様にあるべきなのか、地域医療計画に書き込む ことになるので、是非、県医師会として県行政 に早くから接触し連携いただきたい。

(6)特定看護師の養成に関して(長崎)

【提案要旨】

特定看護師については、現在、まだその資格 および責任が明らかになっていない中、本県で は、某病院の広報誌に医師の業と看護師の技術 を持つ特定看護師の養成を実施しているとの記 事が掲載され、多くの会員から反発があった。 他県でも類似のケースがあるか伺いたい。

【各県回答の概況】

・ 提案県の宮崎県を含め、4 県(大分・熊本・ 福岡・宮崎)で養成があると回答した。養成 はいずれも国の試行事業によるもので、実施 指定施設は大学院や研修機関での「看護師特 定能力養成調査試行事業」と、同事業の実施 課程を修了した看護師が従事する施設(病院 や老健、訪問看護ステーション等)での「看 護師特定行為・業務試行事業」であった。

その他(本事業に対する厚労省の考え方)

・本事業は、特定行為の範囲や能力認証を受け る看護師の要件等を検討する際に必要となる 情報や実証的なデータを収集することを目的 として実施されている事業で、また本事業の 対象となる看護師についても、今後、能力認 証を保証するものではなく、併せて、対象と なる業務・行為についても、特定行為として 整理されることが確定したものではないとしている。

【中川日医副会長からのコメント】

現在は、特定看護師という名称は止めさせた。 看護師が特定行為を実施する場合、研修を受け ることを制度化する旨明記させた。この問題 は、慢性的な看護師不足に悩む外科領域の悲痛 な施設の声にも反映し対応した面もあるが、タ スクシフト、時間的・場所的に限定された一次 的なものだと認識している。本来医師の仕事を 看護師が肩代わりすることについては間違って いる。適正に、包括的指示ではなく具体的指示 のもとに進めて行くものである。

(7)(8)については、関連議題につき一括協議が行われた。

(7)県と県医師会との災害時における医療救 護に関する協定の進捗状況について(宮崎)
(8)「災害医療に関する県と県医師会との協 定締結交渉」について(大分)

【提案要旨】

県外派遣への追認条項を含め、県との災害時 における医療救護協定の進捗状況を伺いたい。 また、JMAT は日医からの派遣要請で動くのに 対し、県がなぜ県外への事後追認を行わなけれ ばならないのか問われ対応に苦慮している。県 知事も共に命令を下すような運用ができればと 考える。また、来年の九州各県合同会議におい て、「九州・山口9 県災害時相互応援協定」の 見直しを協議するにあたり、何か良いご意見が あれば伺いたい。

【各県回答】

・ これまで同様、全ての県で「県外派遣の追認 条項」は認められておらず、未だ進展してい ない状況が続いている。また、この件について、 殆どの県が行政と協議中であると回答した。

・ 「九州・山口9 県災害時相互応援協定」につ いては、ほぼ全ての県で継続協議を求める回 答があった他、今後の方向性については「継 続協議の場を求める意見(長崎、熊本、大分、 鹿児島、佐賀)」があり、福岡県や沖縄から「ブ ロック内派遣の実現」や「九医連としての働き掛け」「九州知事会へのアピール」等の意 見があった。

・ 医療救護班の件については、概ね殆どの県で 県行政との協定がある以上、県側からの派遣 要請が原則との認識であった。

・ また、この件については、鹿児島県から「被 災県医師会からの出動要請で追認が受けられ る」運用を求める意見や佐賀県や宮崎県から 「医師会の判断による出動を可能とする」意 見も挙がった。

・ この問題が進展しない理由として、各県とも 「県外派遣=追認条項の補償を担保してもら うことが必須条件」である一方、行政側は、 一貫して国レベルでの協議が必要であるとの 姿勢を崩しておらず、くわえて、JMAT の明 確な活動内容、指揮命令系統等の位置付けを 求めているため、日医から国への積極的な働 き掛けをお願いしたいとの意見もあった。

・ さらに、周りに理解して貰うためには、 JMAT の定期的な研修会の開催が必要であ り、質的担保を図ることが求められるとの意 見が相次いだ。

【中川日医副会長からのコメント】

・ 本年5 月、各都道府県医師会と各県行政との 医療救護協定における状況についてアンケー ト調査を実施した。その結果、全ての県にお いて行政との間で協定が締結されており、そ の内、行政が経費や二次災害時の補償責任を 負担するケースが大部分を占めているが、「県 外派遣規程」の条文が盛り込まれているのは 10 医師会に留まった。この部分が問題であ ると認識している。

・ 国によるJMAT の位置づけについては、東 日本大震災を受けて設置された厚生労働省の 災害医療等のあり方に関する検討会報告書に おいて、震災でのJMAT 活動は非常に高く 評価されている。今後の災害対策の箇所にお いても、医療チームの派遣元関係団体として、 日本医師会が明記されている。

・ さらに、5 疾病5 事業に関する指針(厚生労 働省医政局指導課長通知)における災害医療分野でDMAT 等医療従事者を派遣する機能 の項目においても「災害急性期を脱した後 も住民が継続的に必要な医療を受けられるよ う、JMAT や日本赤十字社、医療関係団体等 を中心とした医療チームと連携を図る」こと が明記されている。

・ くわえて、東日本大震災の際には、医政局長 から日本医師会あてに被災地への医師等の医 療従事者の派遣についての協力依頼があった 事実もある。更には、JMAT 活動をもとに、 災害救助法の適用を要求し認められた実績も ある。国におけるJMAT の認識・位置付け については、飛躍的に高まって行くものと考 えている。これからも努力を続けていきたい。

一括協議の後、中川副会長のコメントを踏ま え、玉城副会長より「今の話だと国で決まれば 各県に通知が出て、締結の兆しがあると解釈し て良いか」質問したところ、中川副会長より「県 行政は国の意向に弱いため、是非それを使って いただき、良いタイミングで県と交渉いただき たい」と返答があった。

また、長崎県から各県における平時からの災 害医療連携体制の整備構築について、各県の取 り組み状況を共有する場を求める意見があり、 玉城副会長から中央の動向も踏まえ、九州でど の様に纏めていくか九医連を通じて会議を持ち たいと返答した。

(9)地域医療再生基金(一次、二次、三次)の使い勝手について(沖縄)

【提案要旨】

地域医療再生基金の一次事業を推進する中 で、もう一押し資金の後押しにより、事業の完 成度が高くなると思われたが、二次、三次の追 加基金の使途が指定されることが多く、事業の 連携や未完成部分の補充をすることに大変苦労 するように思われる。

各県の事業内容と進捗状況について、お伺いしたい。

本県としては、本来、各地域により重点的に取り組むべき事業内容が異なると思われるの で、各地域の実情に応じた事業の完成が図れる ような資金にして頂きたいと思う。

【九州各県回答】

主な意見

・ 計画当初、県より意見聴取があり、県医師会と しても各部署や代表者等を集め、かなり議論し 意見書も提出したが、出来上がった計画が県の 方で既に御膳立てされたものだった。県の計画 のみで決まるものではないということを明確 に示し、現場の議論の中から補助金が活用され るようにしていただきたい(熊本県)。

・ 研修医育成等を目的としたクリニカルシミュ レーションセンターを設立し、寄付講座も設 置した。今後、継続的に運用可能となる寄附 が必要である(沖縄県)。

・ 行政と医師会とで議論し比較的よい方向に進 んでいる。しかし、地域の実情に応じたとい いながら、事業を査定することがおかしい(宮崎県)。

・ 当初15 億要請したが、9.6 億減額され内示 された。医師会には2.6 億内示があった。不 満な部分は、一括して単年度2.6 億円使って よいとされていたが、県の意向で3 年に亘っ て利用することになった。また、多職種連携 事業は当初、別事業で実施されていたが、再 生基金に盛り込まれている。本県では各地域 の実情があるので、2.6 億円を30 郡市医師 会で均等に配分し、使途は一任することにしている(福岡県)。

・ 一括して補助していただき、後程、計画を出 していくことができないか(佐賀県)。

・ 30 郡市医師会で均等に分けて協定書を締結 している。計画は単年度ごとに提出いただき、 使えなかった金額は相互の医師会で流用可能にしている(福岡県)。

・ 折角、県行政と一緒になってやるので、より 国民・市民に伝わるような啓発活動を展開し ていただきたい(宮崎県)。

・ 県民公開講座やマスコミとの懇談会を実施している(沖縄県)。

【中川副会長よりコメント】

本件については、厚労省医政局と何度も交渉してきた。

2009 年度から始まった補正予算であるが、 2010 年度に厚労省より、地域医療再生計画の 作成、推進、変更などにあたり、医師会等の地 域の関係者の意見を聴くよう、厚労省通知に明記させた。

特に東日本大震災後に被災3 県に対し、720 億円の積み増し基金をいただいた。しかし、県 庁の計画そのものが、発災前と変わらない計画 となっており、公立病院の建て替えが目立った。

一方、県医師会と郡市医師会が中心となって 地域医療連携を推進してきた実績もあるなど、 各地で温度差があり、現状を打破することとし て日本医師会としては、次年度の政府の概算要 求の中で地域医療再興基金の創設を要望してい る。それは、地域の自由度をより高めた新たな 基金で、特に地域医療を担う民間医療機関に十 分配慮し、地域の実情を反映した計画に基づい た中長期的な資金を確保して地域医療の再興を 図ることを要望している。

政府与党や厚労省としても自由に使って欲し いとする一方で、県庁が抵抗するという、変わった図式になっている。

印象記

玉城信光

副会長 玉城 信光

9 月28 日に開催された。私の担当は「地域医療対策協議会」である。いつもたくさんの協議題 が提出される。今回も9 題の提出があり、110 分でまとめなければならない。座長の任務は大きい。

医事紛争に関わる議題が3 題あり、まとめて協議を行った。各県とも多くの紛争事例があり、 担当役員のご苦労が思いやられた。その解決策のひとつに福岡県においてすすめられている「診 療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」がある。4 例の事例を受けて調査を行い、たいへ ん有意義な報告がなされているようである。医療事故に関してはこれで十分ということはないの で、施行しながら改良を重ねていくことが重要であると思われる。九医連としては福岡モデルを 九州モデルにしたいと思い、関係者の協議会をもつように提案した。

地域医療支援病院の承認要件見直しに関しての議題について、日医の中川副会長から、この制 度は本来、医師会病院と地域医師会の施設間の連携をスムーズにすすめる為の制度であるが、多 くの病院が手をあげることにより、診療報酬がこれらの病院に厚くなるような制度になってしま っている。今後厚労省との会議で本来の姿にもどしたいとの話があった。

県と県医師会との災害時における協定は各県で締結されているが、他県への派遣に関しては行 政側が締結に難色を示していることが多いと話された。中川副会長は国で決定し通知が出される と解決される問題であると述べられたので、早急にはっきりと通知を出して頂きたいものである。

地域医療再生基金により地域医療の充実にかなり効果をあげているが、もう一押し各県の実情 に応じて使い道を決定させて頂くような資金をお願いしたいと提案した。中川副会長からは日医 として行政に対し、「地域医療再興基金」という自由度の高い基金をお願いしているとの話があっ た。これらの基金ができると津梁ネットワークや在宅医療の連携や沖縄版医療データーベース化 がすすむと考えられる。

沖縄県が担当県なのでとりまとめに忙しかった協議会であった。

印象記

玉井修

理事 玉井 修

平成25 年9 月28 日(土曜日)にハーバービューホテルにおいて行われました。沖縄県はホス ト県として、お揃いのかりゆしウエアでの参加という事になりました。沖縄県医師会のユニフォ ームである浦添織のかりゆしウエアは少々高級なかりゆしウエアとの事で、普通に洗濯機では洗 えないらしい。カミさんから絶対汚さないようにという厳重注意を受けて、やや緊張しながらの 会場入りとなりました。丁度良いタイミングで当院で研修中のRyumic 研修医、山城貴之先生を お供に参加出来た事は研修医にとっても医師会というものを理解して貰うために良い機会となっ たはずです。

地域医療対策協議会は進行を玉城信光先生が担当され、日本医師会の中川俊男副会長が日医の 見解を述べるといった流れで議事進行がなされました。僕の担当は救急医療に関する部門で、救 命救急センターと前方後方支援病院との連携に関する事、またJMAT の公的位置付けと、そのプ ロフェッショナル・オートノミーのあり方に関する議論でありました。様々な医療政策は、医師 会のみで達成出来るものではなく、行政との綿密な連携が無ければならないのは自明の理ではあ りますが、それを強力に厚生労働省に働きかける日本医師会のリーダーシップに期待する意見が 多数寄せられました。中川副会長もこの事に関しては既に日本医師会としても具体的なアクショ ンを起こしているとのご回答をいただき大変心強く思いました。しかし、現場では行政との折衝 事に関して常にのらりくらりとはぐらかされる現状に苛立を感じている県もあるようです。日本 国政府と都道府県行政とのタイムラグがこの様な事態を生じさせているのか。あるいは意図的に 医師会の要望をはぐらかしているのかは解りませんが、各県医師会の感じている苛立の構図は沖 縄県でも同じです。今後しっかり行政との折衝にあたるべきとの覚悟を新たにした会議でした。