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「沖縄糖尿病週間」に寄せて
〜これからの糖尿病チーム医療と医療連携に期待〜

仲地健

翔南病院(中部地区医師会 糖尿病標準治療推進委員会 委員)
仲地 健

今年も糖尿病週間(11 月11 日〜 17 日)を 迎えるにあたり、この1 年を振り返り、今後へ の期待について述べてみたい。

まず、全国的な出来事としては「HbA1c 国 際標準化」の作業が最終段階に入ったことと、 日本糖尿病学会から「新しい血糖コントロール の目標」が示されたことがあげられる。

ご承知のように、長年血糖コントロールの指 標として用いられてきたHbA1c は、JDS 値(日 本)からNGSP 値(国際標準値)に段階的に 移行作業が進められてきた。そしていよいよ、 来年2014 年4 月1 日までに完全にNGSP 値 へ統一されることになった。

この新しいHbA1c(NGSP 値)は、糖尿病 の診断面から言うと、6.0%以上で「糖尿病が 否定できない」、6.5%以上で「糖尿病が強く疑 われる」ということになる。また治療面からは、 「治療強化が困難な際の目標」が8.0%未満、「合 併症予防のための目標」が7.0%未満、「血糖 正常化を目指す際の目標」が6.0%未満となる。 まだ馴染めないという医療関係者や患者さんも 多いと思われるが、今後はこの新しいHbA1c で血糖コントロールを評価することになる。今 年5 月の第56 回日本糖尿病学会年次学術集会 (熊本)では「熊本宣言2013」が発表され(図1)、 学会としての新しい意気込みが感じ取れた。

図1

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沖縄でもいろいろな事があった。厚労省発表 による「沖縄県民の平均寿命」が、男性30 位、 女性3 位に低下した。予想されていたこととは いえ、やはり大きな問題を感じた。

肥満、メタボ、糖尿病のどれをとっても沖縄 の現状は厳しい。本県の糖尿病専門医は今年8月現在50 人。専門医だけで糖尿病診療を行う ことは極めて困難であり、専門医以外の医師や 医療スタッフとの協力・連携が重要となる。

中部地区医師会では、平成19 年10 月「糖尿 病標準治療推進委員会」(砂川博司委員長)が活 動を開始し、中部地区での糖尿病医療連携に取り 組んできた(図2)。この活動に賛同された多く の医師・医療スタッフが、定期的に勉強会を重ね てきた。活動6 年目となった今年、これまで砂 川委員長が御尽力された中部地区糖尿病医療連 携の取り組みと、県の地域医療連携システム「お きなわ津梁ネットワーク」が「糖尿病パスシステ ム」の部分でタイアップして運用開始されること となっており(図3)、これまでの取り組みがひ とつの形になろうとしていることは感慨深い。今 後、ますます多くの施設がこの取り組みに参加し、 実効ある連携が実現することを期待する。

図2

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図3

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更に今年の話題としては「沖縄県地域糖尿病 療養指導士(OLCDE)」が始動したこともあ げられよう。先述の通り、糖尿病診療は医師の みでは成り立たず、メディカルスタッフの関わ りによる「チーム医療」が不可欠と考える。今 年、当院が中心となり、厚労省より委託された 「チーム医療推進普及事業」の一環として「糖 尿病チーム医療ワークショップin 沖縄」を2 月と3 月にそれぞれ開催した。多くの参加者が あり、活発なディスカッションが行われた。ア ンケート調査では、多くの参加者がチーム医療 の必要性について認識はしているものの、その 実践は不十分であることが判明。チーム医療推 進のためには、多くの医療機関が抱える「時間 確保」や「職種間連携」などの課題に対して「組 織的に取り組むこと」が重要と思われた。これ まで、糖尿病チーム医療を支える医療スタッフ の全国的な資格としては「日本糖尿病療養指導 士(CDEJ)」があり、県内では「沖縄県糖尿 病療養指導士会」(仲里幸康会長)が活躍して きた。CDEJ を取得可能な職種は、看護師、管 理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士 のみである(今年6 月現在、本県のCDEJ 有 資格者数は241 名)。しかし、実際の糖尿病診 療には、健康運動指導士、臨床心理士、事務系 職員など他の多くの職種も関わるようになっている。そこで今年「沖縄県地域糖尿病療養指導 士育成会」(湧上民雄会長)が発足し、これら 職種の方々にもOLCDE の資格を取得してい ただき、本県の糖尿病診療のすそ野を拡げ、チ ーム医療をより充実させていく動きが始まっ た。7 月に第1 回講習会および試験が行われ、 144 名のOLCDE が誕生した。今後のCDEJ およびOLCDE の活躍に期待したい。

最後に、今年11 月8 日(金)〜 9 日(土)、 第51 回日本糖尿病学会九州地方会(会長 益 崎裕章 琉球大学第二内科教授)が沖縄コンベ ンションセンターを中心に開催される(図4)。 12 年ぶりに沖縄で開催される同会は「半世紀 スタートに向けて〜新たな一歩を踏み出した糖 尿病診療〜」をテーマとしており、同会として 過去最大の演題数になるという。昨今、めざま しい変化を遂げている糖尿病診療について、肥 満・メタボ・糖尿病の先進県である沖縄からさ まざまな新しい知見が発信される。多くの医師・ 医療スタッフの皆さんの参加をお願いしたい。

<参考>
CDEJ:Certified Diabetes Educator of Japan
OLCDE:Okinawa Local Certified Diabetes Educator

図4

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