琉球大学医学部附属病院がんセンター
増田 昌人
毎年9 月は、日本対がん協会が定めた「がん 征圧月間」です。
同協会は、設立から2 年後の1960 年から毎 年9 月を「がん征圧月間」と定め、がんとその 予防についての正しい知識と、早期発見・早期 治療の普及に全国の組織をあげて取り組んでい ます。毎年9 月に「がん征圧全国大会」(厚生 労働省(以下、厚労省)が後援)が開催され、 この大会で採沢した大会宣言・決議に基づき、 がん対策の要望を国会と政府諸機関等に提出し ています。今年は、9 月12 日に札幌市で開催 予定です。
さて、我が国では、がん患者を始めとする多 くの関係者の血の滲むような努力により2006 年6 月23 日に『がん対策基本法』が成立し、 翌07 年4 月に施行されました。この法律によ り、専門家に加え、がん患者やその家族・遺族 が委員として選任された、厚労省の審議会であ る「がん対策推進協議会」が組織され、その答 申により第1 次「がん対策推進基本計画」が同 年6 月に閣議決定されました。欧米に遅れるこ と30 〜 40 年、ようやく日本もがん対策が国 家事業として行われるようになりました。
沖縄県においても、08 年3 月に第1 次「沖 縄県がん対策推進計画」が策定され、県の取り 組みが始まりました。その後12 年7 月、「沖 縄県がん対策基本条例」が制定され、今年2 月 には知事の諮問会議という形で「沖縄県がん対 策推進協議会」が発足し、第2 次「沖縄県がん 対策推進計画」が3 月に策定されました。
一方、全国どこでも質の高いがん医療を提供 することを目的とし、2001 年「がん診療拠点 病院制度」が制定され、二次医療圏に1 か所を 目安に地域がん診療拠点病院の整備が進められました。この制度は前述のがん対策基本法とが ん対策推進基本計画により拡充され、「がん診 療連携拠点病院(以下、拠点病院)制度」に発 展しました。沖縄県では、都道府県拠点病院に 琉球大学医学部附属病院(以下、琉大病院)が、 地域拠点病院に南部医療圏の那覇市立病院・中 部医療圏の県立中部病院が指定されています。 残念ですが、北部医療圏、宮古医療圏、八重山 医療圏の3 つの二次医療圏には指定を受けてい る拠点病院がないため、県独自にがん診療連携 支援病院制度を作り、それぞれ北部地区医師会 病院、県立宮古病院、県立八重山病院が指定さ れました。
これらの拠点病院を中心として、県内のがん 診療連携体制の強化とがん医療の均てん化を推 進することを目的に08 年9 月琉大病院内に沖 縄県がん診療連携協議会(以下、協議会)を設 置し、その下に6 つの専門部会(緩和ケア・が ん登録・研修・相談支援・地域ネットワーク・ 普及啓発、現在がん政策部会が加わり7 部会) が組織されました。(図1)
図1 沖縄県がん診療連携協議会組織図
協議会、幹事会、専門部会併せて現在200 名近くの委員が活動しています。県医師会長に は発足時より協議会委員を務めていただき、各 専門部会にも多くの県医師会会員の先生方にご 協力をいただいています。それぞれの専門部会 では、ロジックモデルを基盤とした年間計画を 立て、評価指標を意識した活動をしています。 その活動成果が、厚労省健康局や国立がん研究 センターがん対策情報センターを始め、全国的 に高く評価されています。その理由の一つに、 県医師会・地区医師会との良好な協力関係があ ります。この場を借りて、宮城会長始め県医師 会の役員の先生方に感謝いたします。なお、活動詳細は協議会ホームページ (http://www.okican.jp)をご覧ください。
また、沖縄県は新たに二つの先進的ながん対 策事業を予算化しました。
1. 沖縄県がん医療の質の向上センター
第2 次沖縄県地域医療再生基金を利用し、 2012 年4 月にセンター長(兼任)、非常勤事務 職員1 名で、琉大病院がんセンターに運営が 委託され、発足しました。幾つかの厚労科研費 の研究班や東京大学及び国立がん研究センタ ーと連携し、1)米国式のCollaborative Staging の日本への導入に向けたパイロット研究、2)Quality Indicator を用いたがん医療の質の評価 とその向上に関するパイロット研究、3)除痛率 の測定とその評価に関するパイロット研究を行っています。
2. 沖縄県地域統括相談支援センター
厚労省がん医療連携体制推進事業費を利用 し、2011 年10 月にセンター長(兼任)、非常 勤看護師1 名、非常勤事務職員1 名で、琉大病 院がんセンターに運営が委託され、琉大病院外 来棟3 階小児科外来隣に発足しました。同看護 師はがん経験者であり、いわゆるピアサポータ ーとしてがん患者さんに対するピアサポートを 行っています。他に、1)がんピアサポーター人 材育成、2)がん患者や患者会等との連携推進業 務、3)小児がんに対する情報提供と相談支援、 4)稀少がん・難治がんに対する情報提供と相談 支援等も行っています。
これらの事業も含め、沖縄県では医療者が中 心となって県内のがん対策を牽引しています。 地方自治体が積極的な対策を講じることが困難 な場合のがん対策の一つのモデルとして、全国 から注目されています。
今後とも引き続き沖縄県のがん対策に対しま して、県医師会会員の先生方のご協力をよろし くお願い申し上げます。