那覇市立病院 放射線科
足立 源樹
みなさんは“食虫植物” を育てたことがあり ますか?メイクマンなどの園芸コーナーに時々 食虫植物の鉢が並んでいたりするので、ご存じ の方も多いかもしれません。あれ、育ててみる と結構かわいい花が咲いたりするんですよ。
食虫植物には結構たくさんの種類があります が、代表選手は “ウツボカズラ” “モウセンゴ ケ” “ハエトリソウ” あたりでしょう。育てるのが一番簡単なのはウツボカズラだと思いま す。ただし、ウツボカズラは野生種で70 を超 える種類が知られており、そのうちキナバル山 (マレーシア、ボルネオ島)など高地産の種類 は栽培が非常に難しいといわれています。これ らの種は低温かつ高湿という環境を好むので、 冷房設備と高湿を保つための噴霧装置まで完備 してやらないと育てることはできません。まあ メイクマンなどで一般的に売られているのはそ んなに特殊なものではありません。ヒョウタン ウツボカズラと言われている交配種が一般的 で、これはかなり丈夫なウツボカズラです。私 もアパートのベランダで育てていた頃は、水を やる以外はこれといった手入れをしたことがな いのにどんどん大株になっていくし、枝を折っ て挿し木してやると株が増えるし…といった感 じで、これはかなり初心者向けなのです。基本 的な構造としては、細長い舟形の葉の先端が細 長くのびて、その先に“ツボ(捕虫器)” がつ いているのですが、そのツボにはなんと蓋まで ちゃんとついています。栄養源である昆虫はそ のツボのなかに落ちて、ツボの中の消化液によ って徐々に消化されていくということになりま す。ウツボカズラの花は決してかわいいもので はありませんので、かわいい花を見たい方には あまりお勧めできませんが、種類によってツボ のサイズ・形状が大きく異なるので、花ではな くツボを楽しむ植物だと思えばよいのではない でしょうか。海洋博公園の植物園(熱帯ドリー ムランド)に何種類か栽培されていますので、 ぜひ見に行ってください。
一方、モウセンゴケには白やピンクのかわい い花が咲きます。葉(種類によって様々な形状 があります)に長い毛がたくさん生え、その先 端にネバネバする粘液が玉のようについていま す。モウセンゴケの仲間は日本にも自生してお り、沖縄でも自生しているようです。育てると きにはミズゴケでの栽培が一般的なようで、私 もそれでやっていました。乾燥に弱いので、腰 水をしてやればほぼ完成です。あとは、明るい ところに鉢を置くのですが、直射日光には(時 に沖縄では)あまり当てないようにしていれば、肥料を与えなくても育ってくれます。食虫植物 はもともと栄養分に乏しい場所に育つ植物で、 栄養を捕えた虫から得るため肥料は必要ないと いうわけです。面白がって虫を与えすぎると枯 れてしまうことが多いようです。モウセンゴケ は挿し木ではなく、種を採取して蒔くことによ って増やすのが一般的です。私のところでは、 種なんて蒔いてもいないのに勝手に小さなモウ センゴケが出現していたりすることがあり、そ れもまたかわいいものでした。
さて、ハエトリソウなのですが…実は私はハ エトリソウの栽培がヘタクソでして、これまで 枯らしてばかりで困っています。私がハエトリ ソウを初めて知ったのは、小さいころ読んだ本 “エルマーのぼうけん” の挿絵に描かれている のをみて、変な植物だなと感じた時でした。こ の絵本にはもう一種類食虫植物が描かれていま して、それはあたかも地面からヘビが首を持ち 上げているかのような植物でした。その後、図 鑑か何かでそういう植物が実際にあり、虫を捕 えて栄養としているのを知って大きな衝撃を受 けたことを覚えています。私が実際に食虫植物 を育ててみたのは大人になり沖縄に来てからな のですが、特にハエトリソウに関してはいつも しばらくすると枯れてしまい、食虫植物の栽培 は難しいと思っていました。おそらく失敗の原 因は沖縄の夏の暑さなのでしょう。また、冬は 球根の形で越冬するらしいのですが、この時に は5°前後の環境が良いらしく、これもなかな か沖縄では難しそうです。もし、ハエトリソウ を購入しようと思うのであれば、環境を整えな いと長期栽培は結構難しいということを覚えて おいてください。ちなみに、花はモウセンゴケ に似たかわいい花が咲きます。
以上の3 種は食虫植物の代表選手みたいなも のです。先ほどちょっと書いたヘビのような植 物はダーリングトニアという聞きなれない名前 の食虫植物です。他には、ヘリアンフォラ・ム シトリスミレ・セファロタスなどなど。また、 水草にもムジナモという食虫植物がいますし、 ギアナ高地(南米)にはブロッキニアという食 虫植物が自生していまして、これはなんとパイナップルの仲間なんですよ!沖縄のパイナップ ルは昆虫を捕えたりはしません。
映画に出てくるような、ヒトを食べちゃうほど大きな食虫植物はいないので安心して栽培してみてください。