平安山 英盛
県民全体の健康と生命、元気で長生きする最 も重要なことに関して、偏った見解や方法が新 聞紙上で軽々しく報道され続けられているから である。
沖縄県では日本で唯一の地上戦が行われ、沖 縄県民を含む、日本兵、米軍兵士の20 万人余 が犠牲になり、鉄の暴風と言われた沖縄戦は6 月23 日牛島中将の自決により事実上終戦を迎 えたとされている。沖縄県民にはその後も苦難 の道が準備されていた。1952 年4 月28 日発効 のサンフランシスコ平和条約により、沖縄は日 本本土の引き換え商品として米国に生贄として ささげられた。27 年間にわたるアメリカの施 政権の下で、島の重要な土地は銃剣とブルドー ザーで強奪され、島全体が米軍の要塞と化して いった。米軍や米兵による事件・事故は後を絶 たず、県民の人権は蹂躙され続けた。その27 年間に沖縄県民の食生活習慣も大きく変わっ た。街にはA&W やケンタッキーができ、脂肪 分の多いハンバーガーやポテトチップ、ケンタ ッキーフライドチキン等が比較的に安く手に入 るようになった。デンマーク産のTULIP のポ ークランチョンミートは沖縄料理の定番になった。トーフチャンプルー、フーチャンプルー、 ソーミンチャンプルー、ゴーヤーチャンプルー に欠かせないものとなっている。健康長寿の 方々が容易に口にしえなかったものである。こ の食の欧米化こそが沖縄県民の健康を蝕み、沖 縄県を長寿県から脱落させた大きな原因の一つ と思っている。私の祖父、親父やお袋も90 歳 以上の長寿だったが、そんなもの食べていたの 見たことはない。私は小さいころから豚の脂は 大嫌いで、三枚肉も脂肪部分は残してマシサー 部分だけを食べていた。今も三枚肉は食べない、 家族にも食べさせないようにしている。家内が 好きで隠れて食べたりしているようだが…。豚 肉をまったく食べないわけではない。むしろ平 均してトンカツをよく食べているほうだろう。 だから養豚業の方々にもかなり貢献していると 自負している。家で食べる時は、脂(あぶら) を切り取っている。チキンでも皮とその下にあ る脂、筋肉の間にある脂を取り除いている。料 理中にも浮いてきた脂を除去する工夫をしてい る。外食の時は脂の少ないヒレカツだけを注文 している。
沖縄県の健康長寿脱落の原因は「食の欧米化 にあるのではなく食の和食化にある」とか「卵 焼きとポーク」、「ワーアンダ=ラード」は県民 の健康の元であるとか、豚の脂肪を高熱で処理 (酸化)して保存食とした「アンラカシー」こ そ健康に良い、というのである。本当にそうだ ろうか。食べるものがなくカロリー不足で痩せ こけていた戦後間もないころの私たちは、脂肪 分不足だったのはまちがいない。皮膚がカサカ サして「アカギレ」などと言って、足の皮膚な どが割れていた時期があった。あれは「アカギ レ」などというものではなく脂肪分不足のサイ ンだったのかもしれない。その頃に「アンラカ シー」の果たした役割は大きなものがあったの だろう。しかし今、沖縄県民は西を向いても東 を向いても南や北を向いても脂肪分に満たされ た食事に囲まれている。塩と脂は弁当の格好の 保存剤だからである。
食後の急激な血糖上昇を目の敵にして、炭水 化物の極端な制限食が流行っている。日本古来からの食の中心であった米や芋、ジャガイモな ど炭水化物が含まれる食物はすべてが悪者扱い されている。「炭水化物を極端に制限するかわ り、肉類や脂肪はいくらでもとってもいい」と いうのである。「肥満の元凶はインスリンによ る脂肪蓄積、脂肪を操るインスリンを、炭水化 物が操る」(ヒトはなぜ太るのか)。「肥満はカ ロリーを多く取る(過食)から太るのではな く、インスリンを操る炭水化物を摂るから太る のである」というのである。インスリン分泌を 操る炭水化物を多く摂るから脂肪が蓄積される というのである(カロリー神話説)。だから炭 水化物以外は肉類も脂肪分もいくらでも摂って もいいと主張し、ひもじさに負けそうな時は 脂肪を含めて肉類を多く食べればいいのだと 主張しているのだと思う。先ず第一に極端に 炭水化物を減らし動物性脂肪も含めた肉類を 多く摂る食事方法は世界の人口爆発を考えた 場合可能なことだろうか。現在の(2013 年5 月27 日午前10 時35 分日本時間)で世界の人 口は7,034,033,972(World Population Clock) で70 億人を超えている。牛や豚などの家畜は トウモロコシ等の多くの安価な飼料と水を必要 とする。アメリカ合衆国中部地方の大平原をト ウモロコシ畑に変えているのはオガララ帯水層 と呼ばれる地下水(数千年かけて溜まったいわ ゆる化石水を電力で汲み上げて灌漑用水として 利用)の灌漑によるものである。大量の汲み上 げによりその地下水も著減してきているとのこ と。砂漠地帯をトウモロコシ畑に変えているも う一つの水源はコロラド川のブラック峡谷を堰 きとめたフーバーダムからの灌漑用水である が、サンディエゴ市内の飲料水の需要が逼迫 し、また高値で売れるので、灌漑用としての供 給は減るばかりであるようだ。家畜の生産には 餌である安価な穀物と穀物を育てる大量の水が 必要なのである。精肉1Kg あたり必要な穀物 量は牛肉で25Kg、豚肉でも4.8Kg と言われて いる。100g の牛肉を食べるのに2.5Kg の穀物 を消費し、2 トンの水を飲んでいることになる。 8 億の民が飢えで苦しんでいる中で、肉食中心 の食生活をするということは、何も口に入れることのできない民をますます増やすことにな り、再生可能な食生活スタイルでないことは明 らかではないか。それに、肉食、脂肪の多い食 事を推し進めていくと長期的には各種の癌、特 に大腸がんが多発してくるだろうし、心血管系 疾患も増えてくると考える。それに、米国の肥 満率が高いのは、炭水化物を多く食べたからで あろうか?沖縄県が全国一の肥満県になってい るのは炭水化物を多く摂っているからであろう か?細かい理論的なことは別において、食の欧 米化(肉食、脂肪分の多い食事)が進んでいる 国や過食の地域ほど肥満が多いと感じるのは私 だけだろうか。現在の栄養学からはすべての栄 養素をバランスよく過食なく摂ることこそが推 奨されているのである。沖縄そして日本、ひい ては全世界の運命を左右するような偏った食事 法を推し進めるべきではないと断言する。炭水 化物、たとえば米にも玄米、胚芽米、白米とい ろんな種類があり、炭水化物の吸収速度にも差 がある。私などは、何十年も胚芽米、玄米を食 べている。玄米の中には種々の豆類が入ってい て白米よりはるかにおいしい。こういった玄米 食や野菜類を多くしかも、炭水化物の前に摂取 することで食直後の高血糖が平たん化するとい われている、ベイスン効果であろう。
何事にも中庸が大切だ。コレステロールでも 善玉とか、悪玉とか言っておるが、どちらも少 なすぎても多すぎてもよくない。
沖縄県の健康長寿を蝕む5C、それは1)Cholesterol のC、脂肪の摂りすぎ、高コレス テロールによる健康障害。2)Car(自動車)の C。歩くことを忘れたための健康障害だ。3)「三つ目のC」はCalorie(カロリー)のC で 過食、肥満による健康障害である。4)四つ目の C はCabaret(キャバレー)のC である。身近 に居酒屋が立ち並び、多量飲酒、脂肪の摂りす ぎ、過食、飲酒による交通事故等につながって いる可能性がある。D五つ目のC はCigarette (タバコ)のC である。喫煙による健康障害だ。 山口大学大学院医学系研究科消化器病内科学 寺井崇二准教授はメダカに高脂肪食を与えてメ タボメダカを作り、8 週間ほどの短期間で脂肪肝からNASH そして肝硬変、肝臓がんになる 経過を報告している。
私の提唱している5C を改善してこそ沖縄県 の健康・長寿は取り戻せるのだと思っている。
コレステロールが生命活動に重要な役割を果 たしているからと言って、なんの制限もなく高 脂肪食を推奨するのはいかがなものかと考える のは私だけだろうか?