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琉球大学大学院医学研究科長 医学部長
松下 正之 先生

松下正之先生

沖縄県医師会の皆様と、琉球大学医学部の関係が実り多いものになるよう努めて参りますので、よろしくご指導お願い申し上げます。

質問1. 琉球大学医学部長ご就任おめでとうご ざいます。ご就任に当たってのご感想と今後の 抱負をお聞かせ下さい。

平成25 年4 月1 日付で須加原前医学部長を 引き継ぎ医学部長に就任しましたが、医学部は 大学改革の最中にあり、慎重な舵取りと非常に 重い責任を負っていると思っています。医学部 長の職を務めて日は浅いのですが、様々な問題 に直面し、その都度その対応に追われているの が現状です。しかしながら、諸問題への対応と 同時に希望ある医学部の将来ビジョンを実現化 すべく、産学官の多方面の方々とできるだけ多 くの話し合いの機会を持っています。皆様とお 話しする中で、琉球大学医学部は、南に開かれ た地政学的要因、個性豊かな教員、優れた学生 などにより発展の余地、潜在能力が高いことが 話題になります。私の役目は10 年先を見据え た改革を行い、琉球大学医学部医学科、大学院 医学研究科、附属病院の潜在能力を引出し、沖 縄の地域医療に貢献すると同時に、先端医療や 医学研究成果を世界に向け情報発信できるよう 取り組むことだと考えています。

質問2. 貴学部での、臨床、研究、人材育成につ いて今後の課題、方針などついてお聞かせ下さい。

昨年より文科省と「琉球大学医学部のミッ ション」について協議をしてきました。その中 で、医学部の果たすべき役割について、これまでの実績を踏まえて、研究(大学院)、医学教 育(人材育成)、附属病院(臨床)のそれぞれ について、我々の目標を定めました。

大学院医学研究科ですが、ミッションに基づ き沖縄の健康長寿の機序解明、亜熱帯特有の疾 患の病態解析などのプロジェクトに基づいた大 学院教育指導体制の確立を目指した改組への取 り組みが進行中です。大学院改組により、先端的 で特色ある研究を推進し、新たな医療技術の開 発や医療水準の向上、国際貢献等を目指すとと もに、次代を担う人材の育成を目指しています。

医学科については、医学の進歩やグローバル 化に対応した学部教育の改革を進めています。 これまでの講義中心の授業から、学生自ら学ぶ 授業への変革が迫られています。医学部は設置 されて30 年以上が経過し、沖縄県内の40%以 上の医師は琉球大学医学部医学科の卒業生です。 今後もその割合は増加し、卒業生の沖縄県の医 療に対する役割はますます大きくなります。医 学科では、倫理観を持ち生涯学び続ける心を持っ た医師を育てなければならないと考えています。

附属病院に関しましては、県内唯一の医育機 関及び特定機能病院としての取組や都道府県が ん診療連携拠点病院、第一種・第二種感染症指 定医療機関等としての取組を通じて、沖縄県に おける地域医療の中核的役割を担い、先進医療 や臨床研究に取り組む必要があります。さらに は、今後の医療の発展に対応した臨床機能を持たせることも必要であると考えています。

質問3. 新病院構想があると伺っておりますが、 どのような構想でしょうか、可能な範囲でお聞 かせ下さい。

新病院の建設に向かって基本構想を検討して います。琉球大学医学部の将来を左右する一大事 業になります。沖縄の先進医療を先導し、東南 アジアとの医療における懸け橋になる病院にで きればと考えています。医学の進歩は目覚ましく、 将来の移植・再生医療やゲノム医科学の発展に も対応できるよう検討を行っているところです。 西原の丘の上に、沖縄県民の健康福祉のシンボル となる病院の建設を目指していますので、医師会 の皆様のご協力とご支援をお願い申し上げます。

質問4. 昨年、おきなわクリニカルシミュレー ションセンターが開設されました。現在の利用 状況、どのようなトレーニングが行われている かお聞かせ下さい。

おきなわクリニカルシミュレーションセン ターの利用状況ですが、2012 年度の利用総数 約14,000 人で月平均1,150 人になっています。 その内訳ですが琉球大学医学部および附属病院 の利用が全体の66%で琉大以外の県内30%、 県外4%です。職種別の利用では、看護師、医 師、医学生の順となっています。現在のトレー ニングの内容は1)基本的手技、2)学生授業、 3)救急・災害、4)指導者養成、5)専門的手 技が主なトレーニングです。また、他職種での 急変対応トレーニング、安全・感染対策トレー ニング、医師および看護師の復職トレーニング、 診療所対象トレーニングなどを展開していま す。さらに、専門医のための、ICLS、ACLS、 JTEC、ALSO など、さまざまな既存コース開 催も当センターが支援していますので、ぜひご 利用ください。

質問5. 県医師会に対するご要望がございましたらお聞かせください。

沖縄県医師会の皆様には、日頃から医学教育 や卒後臨床研修で大変なご支援とご協力を頂い ています。この場を借りて、御礼を申し上げます。 診療や医学研究の分野でも、多方面でそれぞれの 得意な分野を生かした協力体制が構築できる機 運があると思いますので、ぜひお声をかけて頂き たいと思っていますし、今後は医学部のほうから も積極的に医師会の皆様に臨床研究などでアプ ローチをさせて頂きますのでご協力をお願い申 し上げます。沖縄県医師会員の皆様と琉球大学医 学部で有機的な連携体制を築き、沖縄を健康長寿 の島として復興させることを願っています。

質問6. 最後に日頃の健康法、ご趣味、座右の 銘等がございましたらお聞かせ下さい。

私はスポーツが好きで、学生時代も勉強して いたのかクラブ活動をしていたのか判然としな いような状態でした。沖縄でもサイクリングな どしていたのですが、半年ほど前にアキレス腱 を断裂しました。現在、リハビリ中で運動がで きないのが残念です。

座右の銘は「一期一会」でしょうか。私は国 内外の大学や企業を転々としてきましたが、その 時々でかけがえない人々と出会っています。その 出会いの中で、私の人生も大きく影響されている ことがこの年になると実感されます。人との出会 いは、なによりも貴重であり大切にしています。

この度はお忙しい中、ご回答頂きまして、誠に有難うございました。

インタビューアー:広報委員 金谷 文則