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九州医師会連合会 第105回 定例委員総会

玉城信光

副会長 玉城 信光

去る5 月25 日(土)、沖縄県医師会担当の 下、ANA クラウンプラザホテル沖縄ハーバー ビューにおいて標記定例委員総会を開催し、九 州医師会連合会の平成24 度決算、平成25 年 度事業計画並びに予算等が審議され承認された ので、会議の概要を報告する。

はじめに、司会の安里委員(本会副会長)よ り開会が宣され、前年度九州医師会連合会担当 県の宮崎県稲倉会長より、平成24 年度の九州 医師会連合会諸事業への協力に対するお礼が述 べられた後、医療界には難問が山積し、7 月に は羽生田先生の参議院選挙も控えており、宮城 会長の下、九州医師会連合会が一致団結しあら ゆる困難に立ち向かっていくことをお願いする 旨の挨拶があった。

その後、宮城九州医師会連合会長より挨拶並 びに、横倉義武日本医師会長より来賓祝辞が、 概ね次のとおり述べられた。

○宮城九州医師会連合会会長

宮城九州医師会連合会会長

本日は、九州医師会 連合会第105 回定例委 員総会を開催したとこ ろ、皆様におかれては 時節柄ご多忙の中を、 遠路はるばるご来沖頂 き深く感謝申し上げる。

特に、日本医師会長の横倉義武先生には、公 務ご多端の折、枉げてご臨席賜り、当定例委員総 会に錦上花を添えて下さり厚く御礼申し上げる。

前九州医師会連合会長の宮崎県の稲倉会長よ りご挨拶いただいたが、宮崎県医師会におかれ ては、昨年度1 年間、九州医師会連合会の諸行 事について、役職員皆様方による綿密なご計画 と周到なご準備と運営で、大きな成果を収めら れた。この場をお借りして衷心より感謝の意と 敬意を表する。

昨今の医療を取りまく状況は、地域医療の再 生、医師不足や偏在、医療事故調査、社会保険診療報酬にかかる控除対象外消費税の解消、 TPP に関する問題等々、課題が山積している。

この様な状況の中で、昨年4 月に九州代表で ある横倉先生が、「継続と改革」「地域から国へ」 をスローガンとして、「国民と共に歩む専門家 集団としての医師会」を目指すことを掲げ、日 本医師会長にご就任された。「継続」の最大の 柱は、国民皆保険の堅持、「改革」は、医学・ 医術の進歩で得られる恩恵を国民が適切に享受 出来る仕組みを創ること。「地域から国へ」と いうスローガンの根底にあるのは、地域の声を 国の政策に反映させ、地域医療を再興すること であると理解している。

横倉会長の産みの親である私ども九州医師会 連合会は、横倉会長の目指す医師会を実現すべ く、責任を持って横倉会長をお支えしなければ ならないと考えている。

今年度も、「九州は一つ」を合い言葉に、担 当県として九州医師会連合会の諸事業の推進に 努めて参りたいと考えているので、九医連の副 会長である大分県の近藤会長をはじめ、各県医 師会長、各委員の先生方のご支援、ご協力をお 願い申し上げる。

来賓祝辞

○横倉義武日本医師会長

横倉義武日本医師会長

九州医師会連合会第 105 回定例委員総会の 開催にあたり、日本医 師会を代表して一言ご 挨拶申し上げる。

九州医師会連合会の 先生方には、執行部発 足以前から、多大なるご支援を賜り心から感謝 を申し上げる。

一年を振り返ると、問題が山積しており、特 に日本医学会の問題、更には専門医制度の問題、 医師の地域偏在、診療科偏在等、そういうもの が地域医療の再構に大きな壁になっている。そ ういう中で、安心して会員が診療に臨めるよう、 その体制をどのように構築するかが喫緊の課題 であると考えている。

日本医師会は4 月1 日に公益社団法人に移行 した。国民の健康を守る専門家集団としての日 本医師会を、より公益性を進化させて参る所存である。

昨日、記者クラブで、一年間を振り返ってと いうことで講演を行った。

その時に話した内容は、如何に国民皆保険体 制を堅持していくか、また、宮城会長からも話 があったが、医学・医療の進歩が非常に早く、 その中で、安全で有効な医療技術、薬も含めて、 国民の皆様にしっかりと提供できる体制の構築 等、様々な苦労をしている話をした。

また、地域医療の再生ということでは、地域 の中での医療連携の体制が出来ているところで あり、全国で約200 ヶ所の地域医療連携の仕 組みについて話をした。特に、長崎で行われて いる「あじさいネット」については、多くの記 者が関心を寄せていた。九州という地域が、そ れぞれ住民のための医療ということに重点を置 いた取り組みをしていただいていることに心か ら感謝申し上げる。

昨年の総選挙で政権交代が起こった。安倍政 権の下で、アベノミクスということで、経済再 生が急速に行われ、景気の部分で高揚している が、一昨日から株式市場で波乱が起きている。 また円や長期金利の変動が激しく、まだまだ落 ち着いた経済状況ではない。

経済の発展ということは、国民の生活のため には確かに必要なことである。また、我々が医 療を行う上での社会保障の財源ということを考 えると日本もしっかりと立ち直って貰わないと いけない。様々な政府の政策に対しては、是々 非々で本当に国民のためになるのであればとい うことで、主張を続けているところである。

このような政治状況の中で、我々はどういう 姿勢で政策判断をしていくかということについ て、今年の1 月に執行部に対して、二つのこと で政策判断すると話した。一つは、国民に対し て、安全な医療が提供できる政策であるか、も う一つは、公的医療保険による国民皆保険体制 が維持できる政策であるかどうか、その二つを いろいろな政策判断の基準に置いて、日本医師会としての主張を続けていくという話をしたと ころである。

そういう中で、大きな課題としては、TPP の問題を国がどうするかということが目前に迫 っている。報道によると7 月にペルーで開催さ れる会議に日本が参加するが、その交渉が出来 る日数が3 日間しかないこと、その中で本当に しっかりとした外交が出来るのかどうか、それ を見極めて、私どもの態度を判断していかなけ ればならないと考えているところである。この 厳しい環境の中で次の世代の国民医療を確保す るためにも私どもは一致団結をして、取り組ま なければならない。その一つの課程として、今 年の夏の参議院選挙は全力を上げて取り組まな ければならない。

この一年間、ご支援、ご指導いただくうようお願いして挨拶とさせていただきたい。

その後、座長に本会会長の宮城九州医師会連 合会会長が選出され、報告、議事が進められた。 報告(1)の第333 回常任委員会については宮 城会長から、(2)の平成24 年度九州医師会連 合会庶務並びに事業報告については、昨年度担 当された宮崎県医師会の河野雅行委員より、(3) 春の叙勲等受賞者への慶祝については宮城会長 より、それぞれ資料に基づいて報告を行った。

引き続き、行われた議事については、次の7 議案が上程され、それぞれ各担当委員より提案 理由の説明があり、協議した結果、全議案とも 全会一致で原案どおり承認された。

第1 号議案 平成24 年度九州医師会連合会歳入歳出決算に関する件

第2 号議案 平成25 年度九州医師会連合会事業計画に関する件

第3 号議案 平成25 年度九州医師会連合会負担金賦課に関する件
      ・会員一人 年額1,500 円とする。(但し、研修医一人 年額500 円)

第4 号議案 平成25 年度九州医師会連合会歳入歳出予算に関する件

第5 号議案 平成25 年度九州医師会連合会監事(2 名)の選定に関する件
      ・鹿児島県の野村秀洋委員、熊本県の前田利爲委員が選出された。

第6 号議案 平成25 年度第113 回九州医師会医学会事業計画に関する件
      ・平成25 年11 月15 日(金)前日諸会議、16 日(土)合同協議会、総会・医学会、17 日(日)分科会、記念行事が、ANA クラウンプラザホテル沖縄ハーバービューをメイン会場に開催することが決定された。

第7 号議案 平成24 年度第112 回九州医師会医学会会費賦課に関する件
      ・会員一人 年額2,500 円とする。(但し、研修医一人 年額1,500 円)

中央情勢報告

横倉義武日本医師会長

横倉義武日本医師会長から、日医の直面する 諸問題と日医の活動、中央の医療情勢等につい て説明があった。

1. 国民が安心できる持続可能な国民皆保険の堅持について

社会保障については、社会保障制度改革国民 会議で議論されている。当初、民主党へ医師会 の代表を参加させることを強く申し入れたが、 実現出来ず、現在、医師は永井自治医科大学学 長と大島国立長寿医療研究センター総長の2 名 が参加している。

当国民会議において医療提供体制について議 論があり、その際に、日本医師会から意見陳述 を行った。その中で、日本医師会は、医師個 人が加入している医師を代表する組織であり、 我々の役割というものは国民の健康を守るとい うこと、我々は国民の健康を守るために人生を捧げるということを覚悟して医師になったこと を理解していただきたい旨話した。その他、8 年後に団塊の世代が75 歳に到達し、有病率が 上がって来た時に、どういう医療を提供するか、 また、その財源をどう確保出来るかということ をしっかり議論をしようと申し入れた。

3 党合意で国民会議が行われているが、政治 の話し合いが一向に進んでいない。去る5 月 22 日に3 党の党首等に医療のことについてし っかり議論して欲しいということを話した。特 に、消費税を来年の春から3%上げる予定で計 画しているが、その上げた消費税を医療財源に 当てることを3 党合意で決定してもらいたいと 申し入れた。一旦財務省に自由に使える財源と して入った場合、医療費に回ってこないのでは ないかと懸念される。

2. 社会保障診療にかかる控除対象外消費税の解消について

8%の段階で、高額投資について基金を作っ てはどうかという案があるが、高額投資の基金 を作ることによって、通常の診療報酬の部分を 削って、そこに当てる財源を作らなければなら ないということになる。そうすると財源的に は診療所から病院へのシフトが起こることにな る。この方式では会員の先生方の納得は得られ ない、やはり診療報酬にしっかり手当して欲し いと話しているところである。

10%になった時にどうなるかは議論中であ るが、その時はきちんと課税対象にして、その 分については、患者さんの負担にならないよう に手当をしてもらうことを主張している。課税 対象にすることについて、国民の受け取り方は どうかということも考えておかなければならな い要素である。

消費税の償還払いが出来れば、国民にとって は、医療は非課税のままである。どちらが受け取 り易いかという議論を行っているところである。

3. 生涯保健事業の体系化について

現在、バラバラで行われている学校健診、乳 幼児健診等、各種健診を一つの柱にして、健康診断を受ける時に自分の健康を振り返って、10 年後、20 年後、自分がどういう状況になるか という予測をして、生活習慣を変えていくとい う提案をした。日本は、平均寿命は世界でトッ プレベルであるが、平均寿命と健康寿命の間に 約8 年の開きがある。平均寿命の最後の8 年間 というのは、何らかの医療、介護のサポートが 必要という状況である。平均寿命と健康寿命の 間を短くすることが、活力のある高齢社会に繋 がるのではないかと考えている。

4. 医療安全の確保に資する医療事故調査制度の創設について

一番危惧しているのは、訴訟率が非常に高い ということで、外科に入る医師が極めて減少し たことである。善意の医療行為を行ったことを 刑事罰に問わないという道を早く作らないと外 科を志す医師が減っていく。救急現場でも相当 多く刑事訴訟が行われているという状況である ので、救急医療の破綻に繋がっていくというこ とがある。そういう中で、解決する方策がない か議論しているが、その間に多くの医師が送検 されているという現実がある。

昨年6 月に「死因究明推進法案」が成立した。 当法案に医療を入れるという話があったが、医 療関連死を全て警察が取り扱うということにな るので、それは絶対に避けなければならない。 医療は除外してもらい、医療は、事故調査制度 をきちんと作り、医療界の中でやっていくとい うことを明らかにしていかないと、警察の介入 が止まらないという現状にある。

5 月末に厚労省の委員会が開催されるが、厚 労省から、事故調を院内中心に行い、そして県 内の医師会と医療関係団体、大学病院が院内事 故調をサポートする仕組みを作り、そして各都 道府県に中立的な第三者機関を必要に応じて作 っていくことを、国がやるのではなく、民間で やって欲しい。この第三者機関から警察への通 報はしないという提案があった。日本医師会が 議論している内容と非常に近い形での提案とな っており、昨日本会の担当常任理事が、会内の 関係委員会へ資料を送付したところである。警察が介入できない仕組み作りを考えているとこ ろである。

5. 医療分野における過度の規制緩和の問題点(TPP)

TPP については、国民皆保険が毀損される ことのないよう申し入れを行って来た。自民党 TPP 対策委員会は、国民皆保険制度などの聖 域の確保を最優先すること決議し、安部総理は、総理会見で、聖域なき関税撤廃を前提とする限 り、TPP 交渉参加に反対することを明確にし、 そのほかにも国民皆保険制度を守るなど5 つの 判断基準を掲げ、世界に誇る国民皆保険制度を 基礎とした社会保障制度を断固として守ると述べている。

今後も日本の医療が毀損される心配があれ ば、受けるべきではないということを強く申し 入れていかなければならないと考えている。

印象記

副会長 玉城 信光

今年の九州医師会連合の第1 回の会合である。沖縄県医師会の担当で5 月25 日にANA クラウ ンプラザホテル沖縄ハーバービューにおいて開催した。

最初に今年度の九州医師会連合会の会長である宮城会長から挨拶があった。

横倉日医会長のご出席もあり、横倉会長を支える九州医師会連合は日医とともに地域医療をま もり地域から国への提言をあげていきたいと話した。

今年度も、「九州は一つ」を合い言葉に、担当県として九州医師会連合会の諸事業を推進してい くので九州各県のご協力をお願いした。

横倉日本医師会長はご挨拶のなかで日本医師会が抱えている問題には日本医学会の問題、更に は専門医制度の問題、医師の地域偏在、診療科偏在等が地域医療の再構に大きな壁になっていると述べられた。

九州医師会連合会も各地域で同様の問題に取り組みながら日医と協力していきたいものである。

横倉会長のご挨拶後、宮城会長を座長に議事が進められた。(1)第333 回常任委員会報告を宮 城会長から、(2)平成24 年度九州医師会連合会庶務並びに事業報告については、昨年度担当さ れた宮崎県医師会の河野雅行委員より、(3)春の叙勲等受章者への慶祝については宮城会長より、 それぞれ資料に基づいて報告を行った。

第1 号議案から7 号議案まで全会一致で承認された。今年のすべての会議が承認されたのであ る。詳細は議事録を参照して頂きたい。

今年1 年多くの会議が沖縄県で開催される。どの会議も重要な課題を抱えており、会員の日常 に直結するものである。会員皆が関心を持って頂いて地区医師会で議論をし、県医師会にあげて 頂いて、九州全体でコンセンサスを得ていく必要がある。今年の沖縄は暑く(熱く)なりそうである。