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沖縄伝統空手道から学ぶ「ケガをしない体づくり」
〜 Quality Of Life メソッド〜
(池原 英樹著 沖縄タイムス社出版)

石川清司

国立病院機構沖縄病院院長 石川 清司

2 本の脚で立ち上がる。歩く。手を使う。呼 吸を整え、精神の統一を図る。そして考える。 何気ない日常の動作の中に、健康を維持するた めの謎が隠されていたような気がする。沖縄空 手道剛柔流池原塾塾長の池原英樹著の「ケガを しない体づくり」の解説書である。分かりやす く、視覚に訴えた40 頁の図説に、日常生活へ の応用に止まらず、さらにその真髄を追求して みたいという思いに駆られる書である。

「池原式体づくり」に着目したのは、病院職 員の職業病対策にあった。病院、介護施設とい う職場では、体重50kg 以上の患者さんの移動 が頻繁に行われるため、職員の腰痛対策は重要 な課題である。工夫された種々の介護機器が市 販されているが、やはり人と人との関わりが医 療であり、看護であり、介護であるため、介護 機器では代用できない場面が多々ある。

西洋医学で組み立てられてきた理学療法から 視点を変えて、無理が無く、無駄が無く、日常 の動作におけるごく自然な基本姿勢、バランス 感覚、歩行、呼吸等の調和を重視する沖縄伝統 空手道から学ぶべきことが多々あるのではと考 え求めたのが「池原式体づくり」との出会いであった。

病院職員の腰痛対策にこの手法を取り入れ た。職員が「池原式QOL メソッド」を学び、 ケガをしない体づくりを意識し、セルフケアを 行うことにより腰痛、頸部痛、肩こり等の症状 が良くなったとの感想が多く聞かれ、着実に効 果が現れていると実感している。

知らず知らずのうちに身に付いてしまった癖 の矯正、日ごろ用いることの少ない筋肉の鍛錬、相手の力を利用するコツ、これらを波動の力学 を応用して調整を図っていく「池原式QOL メ ソッド」は、職業病対策だけではなく、日常生 活における健康管理にも役立つ手法である。

最近、名優、森光子さんの生涯を紹介したテ レビ番組があった。仕事にかける執念を目の当 たりにした。出演間近の舞台裏で、バランスボ ールで筋肉をほぐしている映像であった。終生、 舞台にかけた気力と体力の影に「池原式体づく り」が強調するバランスと波動の力学があった。

目で見る解説書の発行を契機に、長寿県沖縄 発のこの手法が多くの方々の健康管理に用いら れることを期待したい。