沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 6月号

改めて薬物乱用防止について考える
「ダメ。ゼッタイ。」普及運動(6/20 〜 7/19)、
国際麻薬乱用撲滅デー(6/26)に寄せて

笠原大吾

一般社団法人 沖縄県薬剤師会
学校薬剤師部会副部会長 笠原 大吾

違法薬物の乱用については、第3 次乱用期に 入ってすでに久しいことは、ご承知のことと思 います。昨年は、沖縄県内でも“合法ハーブ”、“脱 法ドラッグ” などの名称で、違法薬物が販売さ れ、一般市民の生活圏にも広く存在する、まさ に年齢に関係なく誰もが手に入れることができ るような状況になっていることを想起させるさ まざまなニュースがマスコミをにぎわしていま した。しかし最近は、むしろ悪い意味でインパ クトが小さくなってしまった様にすら感じてい るのは、私だけでありましょうか。

去る3 月22 日から、幻覚や興奮作用などの あるこれらの「合成カンナビノイド類」の700 種類以上の化学物質を新たに「指定薬物」とす る厚生労働省令が公布されたことは耳新しいこ とであると思います。これは、成分が類似の複 数の化学物質をまとめて規制する「包括指定」 であり、薬事法に基づいて製造、販売および輸 入が禁止されます。確かに、規制される薬物の 種類が約10 倍に拡大するため、警察庁などは 「取締りは一歩前進」のコメントを出している ようですが、果たしてそうでしょうか。早くも 包括指定に含まれないように成分を変えた薬物 が売られ始めているともききます。そもそも、 薬物乱用をする者にとっては“何でもドラッグ” になることは、過去に、咳止め液への依存やカ セットコンロやライターのガスで遊ぶ者が後を 絶たないということからもすでにわかっていた はずです。この機会に、改めて薬物乱用防止に ついて考えてみたいと思います。

私は、日頃、学校薬剤師として、県内の小・中・ 高等学校等で、総合学習やロングホームルーム (LHR)の時間を利用した薬物乱用防止教室での講演を依頼される機会が多くあります。その 際には、薬物乱用とは医療目的のない化学物質 を不正に使用することという、狭義の薬物乱用 の内容を話す前に、必ず、医薬品を医療目的か ら外れて使用することも実はそうであると話す ようにしております。このように話をすると、 児童・生徒は意外そうな顔をするのですが、普 段使用する医薬品も正しく使用しないと、効果 的でないばかりか、例えば薬物乱用頭痛(MOH) を引き起こすこともあることが知られていま す。文部科学省の新学習指導要領により、平 成24 年度より中学校の保健体育で、本年度よ り高等学校の保健体育で、それぞれ薬の正しい 使い方を学習するようになったことは、正しい 薬の使い方を学ぶことで、違法薬物の乱用防止 につなげられると考えられます。この教科の授 業に、保健体育の先生と薬剤師がゲストティー チャーとして一緒に授業をするTeam Teaching (T.T.)が行われるように、われわれ学校薬剤 師部会も部会員に対して研修等を実施して研鑽 を積んでいただくようにしているところであります。

このような背景もある一方で、違法薬物等の 薬物乱用防止には、「包括指定」が実施されて 以降も、相変わらず脱法ドラッグのような取締 りを逃れるような化学物質が存在する可能性が あることから、次のように考えております。す なわち、薬物乱用に関しては、法律に違反して いるから使用をしないということよりも、むし ろ身体の健康に大いに害がある、あるいは薬物 乱用が自分たちの未来の夢を叶えるための妨げ となる“青少年の危険行動” の一つとして捉え て、だから使用をしないという視点での健康教育が大切です。その意味で、「ダメ。ゼッタイ。」 を普及していく必要があると考えます。(学校) 薬剤師は、このような視点で話ができる医療職 種の一つであることから、例年の薬物乱用防止 キャンペーンの街頭での普及活動に加えて、今 後も学校などで積極的に啓発活動にあたりたい と考えています。今後は、その担い手である学 校薬剤師の人数を増やすことがわれわれ学校薬 剤師部会役員の急務の一つであります。また、 学校医の先生方とも連携して行うことにより、普及活動も一層効果的となるのではないかとも 思っておりますので、よろしくご指導、ご鞭撻 の程お願い申し上げます。

最後に、このような内容を掲載していただく 機会を頂戴いたしました県医師会対内広報担当 理事の本竹秀光先生に深謝申し上げるととも に、日頃お世話になっております県医師会会長 の宮城信雄先生はじめ会員の先生方とともに、 広く本件に関わっていけますよう努めていきた く存じます。

小学校で「たばこの何がいけないの?」講演


薬物依存の講演を熱心に聞く生徒達