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第128回 日本医師会定例代議員会

玉城信光

副会長 玉城 信光

去る3 月31 日(日)日本医師会館において 第128 回日本医師会定例代議員会が開催され、 概要について報告する。

定刻になり、加藤議長より代議員会開催が宣され、挨拶があった。

本日は提出議案として第1 号議案から第5 号 議案が上程されておりますので、代議員各位に おかれましては、これら重要案件につき慎重に 審議いただき、且つ議事の能率の向上に格段の ご理解とご協力を賜りたい。

その後、受付された出席議員の確認が行われ、 定数357 名中4 名が欠席で、353 名の過半数以 上の出席により、会の成立が確認された。引き 続き、議長より議事録署名人として135 番小 松満代議員(茨城)、256 番松原謙二代議員(大 阪)が指名され、議事運営委員8 名の紹介を行 い議事が進行された。

会長挨拶

『継続と改革』

昨年4 月にご選出いただきましたわれわれ執 行部は、皆様方のご支援の下、1 年間に亘り会 務を運営してきた。会長職を拝命した当初、『継 続と改革』『地域から国へ』をスローガンとし て、『国民と共に歩む専門家集団としての医師 会』を目指すことを掲げた。

『継続』とは、医師会設立の本意である「医 師会は国民の生命と健康を守るために存在する 専門家集団として、実行し続けていくこと。す なわち、だれもが、いつでも、どこでも、良質 な医療を受けることのできる日本の医療制度を 堅持していくこと、そして、その裏付けとなっ ている国民皆保険の崩壊を招くような政策に対 しては、断固反対の姿勢を貫いていくという意 味である。そして、『改革』とは、非常に速い スピードで進行する医学・医療の進歩によって 得られる恩恵を、国民が適切に享受できるよう、 新たな仕組みを提案し、政府にその実現を求めていくことである。

先日、安倍晋三内閣総理大臣は、TPP 交渉 参加を表明した。日米首脳会談以降、安倍総 理は国会答弁において、「公的医療保険制度は TPP 交渉の議論の対象になっておらず、国民 皆保険を揺るがすことは絶対にない」と述べて いる。自民党の外交・経済連携調査会「TPP 交渉参加に関する決議」においても、「守り抜 くべき国益」として、国民皆保険制度と公的薬 価制度を決議している。

日本医師会としては、TPP 交渉参加にあた り、国民皆保険制度を守ることを大前提に、「公 的な医療給付範囲を将来にわたり維持するこ と」「混合診療を全面解禁しないこと」「営利企 業を医療機関経営に参入させないこと」の三条 件が守られるよう、安倍総理に対し直接、渡米 前及び決定直前に申し入れを行った。そのほか、 マスコミを通じて繰り返し主張を行っていると ころであり、TPP 参加により国益を損なう恐 れがある場合には交渉からの撤退を強く主張し ているところでもある。今後も注視し、政府与 党はじめ野党に対しても理解を求めていく考えである。

また、国が現在進めております「社会保障・ 税一体改革」や「日本再生戦略」についても、 国民皆保険制度の崩壊や保険給付範囲の縮小に 繋がらないよう、引き続き、その動向を注視し ていく。さらに、社会保険診療報酬等に対する 消費税が非課税であることにより、医療機関に 多大な負担が発生している、いわゆる控除対象 外消費税の問題については、今後10%までの 消費税増税にあわせて、抜本的解決に向け、仕 入税額控除が可能で、かつ患者負担が増大し ない制度設計に改めるよう、与党・政府税制調 査会に対し強く要望していく。日本医師会とし ては、「国民の安全な医療に資する政策か」「公 的医療保険による国民皆保険は堅持できる政策 か」を政策の判断基準として、国の医療政策が 誤った方向に進まないよう、引き続き『継続と 改革』を推進していきたい。

『地域から国へ』

厚生行政においては多くの部分で、しかも 細部に亘り国がその方針を決めている。しか し、医師・看護師の不足や偏在の問題など、そ の事情は地域毎に異なる。そのため、地域の医 療において何が必要で何が不要かを各地域で検 証し、それが政府の政策に反映され、各地域に フィードバックされる制度にしていくことが重 要。『地域から国へ』とは、こうした仕組み作 りを意図したものである。

『医療連携体制』

一昨年に発生した東日本大震災から二年が経 過したが、被災地における復旧・復興は、決し て順調ではない。日本医師会はJMAT を組織 し、被災地域を除く全都道府県医師会の先生方 のご協力により、強力な医療支援活動を展開し てきた。また、被災者健康支援連絡協議会等を 通じて、社会的インフラとしての医療機関の再 建支援を継続して行っているところである。こ れらの活動を通じて学んだ教訓は多岐に亘る が、最も大事なことは、地域社会の復興にとっ て地域医療の存在は不可欠であり、医療のない ところで人々が暮らしていくことは出来ないと いうことである。

すなわち、地域医療提供体制とは、地域毎に 必要とされる医療を適切に提供していく仕組み である。したがって、4 月からスタートする新 たな地域医療計画では、都市の大きさ、人ロの 大小にかかわらず、地域でつくり上げ、地域で 完結出来る、その特性を生かした地域医療計画 を尊重すべきである。そのためには、日本医師 会としても地域の現状を十分に把握できる仕組 みが必要になる。地域ごとの実情をくみ上げ、 日本医師会として支援すべき事項を政府・行政 に提示していく。それにより、患者・医療提供 者の双方に望ましい医療提供体制を、地域から つくり上げていくということを進めていかなけ ればならない。

また、地域における医療・介護の提供体制に ついては、これまでも会員各位のご尽力の下に、急性期から慢性期・回復期・地域の身近な通院 先・在宅医療と、切れ目のない医療が提供され、 国民の健康と安心を支えてきた。しかし、超高 齢社会に突入していくなかでは、「医療・介護 の連携」という視点が欠かせないものになって おり、その視点に立って、全体的な機能強化を 進めていく必要がある。このような状況の下で 医師会に期待される役割としては、医療現場の 意見を集約して行政との折衝に臨むことの他、 各医療職種団体並びに病院団体等との連携・協 力の確保、住民・患者への啓発、医師に対する 生涯教育かかりつけ医機能の充実などが考えら れる。各地域において、地域にあった連携体制 の構築ができるよう、日本医師会としても支援・ 協力していきたいと考える。

地域医療の核である、かかりつけ医機能の充 実についても、質の担保と向上は医師会が担う べき役割である。生涯教育制度や各種講習会を 通じた研修を推進し、国民が安心して頼れる「か かりつけ医」の地域への定着を一層図っていく。 医師不足と偏在解消につきましては、後ほど代 議員のご質問の時にお話するが、「都道府県地 域医療対策センター」を行政・大学・医師会の 協力により設置し、医師の生涯におけるキャリ ア形成支援を行っていく機関として位置付けて はと考えている。実現に向けて、全国医学部長 病院長会議等の関係団体と意見交換を行いなが ら、まずは都道府県ごとの整備を進めていきた いと考えている。

来年度も医師会屓の総力を挙げて、『継続と 改革』『地域から国へ』をスローガンに、多面 的な取り組を通じて、一日も早く「地域医療の 再興」を果たし、国民が安心して生活していけ る社会を取り戻せるよう、鋭意・努力していく。 一方、これまで医師会が担ってきた地域医療へ の貢献や、会員の先生方のご協力による健康福 祉への地道な取り組みについては、誠に残念な がら、国民の目には医師会の活動であるという ことが、なかなか見えていない状況である。そ の原因を考えたとき、医師会の理念として定款 に掲げられた、「医道の高揚、医学及び医術の 発達並びに公衆衛生の向上を図り、もって社会福祉を増進する」という概念が、国民、あるい は医師に対してもわかりにくく、具体的な活動 を想像し難いためではないかとの思いに至っ た。これを改善するためには、理念をわかりや すく捉えなおし、国民や医師に対して広く発信 していくことで、医師会が決して利益追求団体 ではなく、『国民と共に歩む専門家集団として の医師会』として、認識いただけるようになる のではないかと考えた。こうした思いから、日 本医師会の理念や活動目標等をわかりやすく 「綱領」のような形で策定することを目指して、 会内に検討の場を設け、このほどその成案を答 申いただいたところである。医師会員のみなら ず、医療界全体の大同団結に向けた大きな拠り 所になることを願い、次回の代議員会で採択を お諮りする予定でいるので、ご協力のほどよろ しくお願い申し上げる。

『結び』

日本医師会は、北里柴三郎博士を初代会長に 戴き、1916 年に設立された。以来、約100 年 もの長きに亘り、国民だれもが過不足なく、良 質な医療を受けられる社会づくりに貢献したい という想いを共有しながら、国民医療の向上に 誠心誠意尽くしてきた。その成果の現れとして、 創設後50 年を超えた国民皆保険制度の下、わ が国は世界最高の健康水準を享受していると、 国際的に高い評価を得るまでに至った。その陰 には、たゆまぬ熱意をもって、医師会活動に挺 身されてこられた多くの先達のご努力があった ことは言うまでもない。平成9 年に開催いたし ました「日本医師会設立50 周年記念式典」の なかで、天皇陛下より、地域医療の担い手であ る医師会会員の努力に対し「国民の医療のため に尽くしてきた努力を深く多とする」旨のお言 葉を賜った。そもそも医師は、医療の公共性を 重んじ、医療を通じて社会の発展に尽くさなけ ればならない。個々の患者に対する診療行為は もちろんのこと、地域住民全体の健康や、地域 における公衆衛生の向上・増進にも協力する責 任がある。この責任を果たすため、社会に対し て有機的な活動を行うには、多くの医師の協働をもって、地域の特性に配慮した包括的な取り 組みが必要であり、このことこそが、医師会の 存立使命であり、歩んできた歴史そのものであ ると考える。そして明日、日本医師会は公益社 団法人として、新たな歴史の一歩を踏み出す。 これを契機に、国民医療の向上を願ってきた先 達の想いを引き継ぎながら、「国民医療体制の 確立」、「安全な医療提供の推進」、「保健活動を 通じた国民の健康確保」、「会員医療機関の経営 の安定化」等を目的とした、様々な公益的活動 を深化させていく。そのうえで、『国民と共に 歩む専門家集団としての医師会』が、国民の生 命と健康を守り続ける希望として、広く国民の 信頼を得られるよう、国民が本当に必要とする 保健・医療・福祉の実現に向け、一層の努力を していく。代議員各位におかれましても、さら なるご理解とご支援を賜りますよう、切にお願 い申し上げ、挨拶とする。

会務報告

羽生田副会長からこの1 年間で1,519 名の会 員がご逝去されたので生前の御功績をたたえる ため黙祷を捧げたいと説明があり、黙祷が行わ れ、その後、平成24 年度の会務報告が行われた。

議 事

第1 号議案 平成24年度日本医師会会費減免申請の件

今村副会長より資料に基づいて提案理由の説明があり、賛成挙手多数により原案どおり承認された。

第2 号議案 平成25 年度日本医師会事業計画の件

第3 号議案 平成25 年度日本医師会予算の件

第4 号議案 日本医師会会費賦課徴収規程の一部改正の件

第5 号議案 日本医師会会費賦課徴収の件

上記2 号議案、3 号議案、4 号議案、5 号議 案については関連事項として一括上程され、羽 生田副会長、今村副会長より提案理由の説明が行われた。

また、今村副会長から予算書の説明前に平成 25 年4 月1 日より公益社団法人として新たな 法人としてスタートとなり、日本医師年金は特 定保険業として運営が始まる。予算書は医師年 金を連結して表示しているが、認可特定保険業 の実施に当たっては医師年金を区分して経理す ることが求められているので、医師年金は従来 と変わらず独立して運用されることになると説 明があった。

議案については昨日、財務委員会が開催され 細部にわたって審査されており、その結果報告 と、去る平成25 年1 月11 日に開催された結 果報告を併せて、代議員会議事規則第50 条の 規定により、滋賀県の笠原財務委員長から報告 があった。

昨日、開催された財務委員会に先立ち、1 月 11 日に委員会を開催し、15 名中13 名が出席 して、平成25 年度始業計画並びに予算の素案 について審議した。続いて昨日は第2 号議案か ら第5 号議案について理事者の説明を聴衆し質 疑応答を行った。その中で第2 号議案の事業計 画では日本医学会の法人化の設立について質問 があり、第3 号議案の予算については医療対話 仲介者養成推進という問題、認証局について、 医師年金について、Ai 研修会について意見や 質問が出され、理事者の答弁を求め慎重に審議 をさせていただいた。第4 と5 号議案について 質問はなかった。出席者全員が原案を適正と認 め承認した旨の報告があった。

以上の報告を受け、本会議における評決を諮 ったところ、賛成起立多数により、原案どおり 承認可決された。

なお、議席番号353 番村上博君の財務委員 辞任を受け、代議員会規則第45 条前段により、 議席番号346 番竹広晃君を新たに財務委員に指名された。

続いて各ブロックからの代表・個人質問が行われた。

執行部に対する各ブロックからの質問は、代表8 題、個人12 題であった。

◆地域医療再生基金の平成24 年度補正予算による積み増し分に係る在宅医療の整備推進について

各都道府県における地域医療再生計画におい て、在宅医療の整備推進がこれまでの基金事業 で計画に盛り込まれていない都道府県があるこ とから、行政に対し医師会から提案をしていく 必要があると九州ブロックから代表質問があ り、答弁に立った中川副会長より概ね下記のと おり回答があった。

24 年度補正予算並びに在宅医療の推進につ いては、24 年度補正予算で地域医療再生基金 は500 億円の積み増しが行われた。対象となる 事業には、介護と連携した在宅医療の体制整備 の支援が含まれている。実施期間は平成25 年 度までの事業から平成25 年度末までに開始す る事業に拡大されている。在宅医療では地域の 身近なかかりつけ医および地域医師会の役割が 大変重要である。そのため、地域医師会が積極 的に関与する在宅医療連携拠点の整備が求めら れる。24 年度の在宅医療連携拠点事業の採択 者105 個所だが、この内医師会が実施主体とな っているところも2 割近くある。なお、在宅医 療連携拠点事業については、平成25 年度から 従来の一般会計・復興特別会計では無く、地域 医療再生基金を財源とすることに変更されてい る。来年度も在宅医療連携拠点事業の継続を希 望される場合は5 月に各都道府県から厚労省に 提出される「地域医療再生計画」新たに織り込 む必要があることから早急にご確認頂きたい。 地域医療再生計画において在宅医療を織り込ん でいるのは平成21 年度、22 年度補正予算の合 算で29 都府県であり、在宅医療については今 後の課題というところもある。日本医師会とし ては地域医療における在宅医療のリーダーの育 成を支援することを目的の一つとして3 月11 日に在宅医療支援フォーラムを開催した。地域 の様々な事例を中心に活発なディスカッション が行われている。ホームページでDVD を公開 するのでご参考いただき、医師会主体の在宅医 療事業へと発展させて頂きたい。日本医師会として在宅医療を進める上で重要な事は地域の実 情を深く斟酌することと考える。地域医療再生 基金の活用如何に関わらず、在宅医療の課題や 先進事例お知らせ頂きたい。

地域医療再生基金は平成25 年度が一旦最終 年度となるが、引き続き強く財源の確保に努め る。被災地の医療を最優先課題とし、日本全国 の地域医療の再生、超高齢社会における在宅医 療の推進は極めて重要な課題である。当然、地 域医療を担う医師の育成・確保も重要である。 課題解決に向けてより良い方向に向けて改革が 進むよう政策提言を続けていく。

◆日本医学会の法人化への対応について

日本医師会の大きな要素である「日本医学会」 の法人化に向けた具体的な検討が行われている 事に対し、中国四国ブロックから代表質問があ り、今村副会長から概ね下記のとおり回答があった。

以前より、分科会の中から分科会の連合体で ある日本医学会の法人化を望む声が上がってい た。平成6 年に日本法医学会が医師法第21 条 の解釈を出したが、それにより今の医療現場が 苦労している現状があることは周知の事実であ る。日本法医学会は分科会の一つでありながら、 日本医学会が連合体であるに過ぎないために事 前にその内容を確認することや、他の分科会か らの意見の取りまとめ等は行われなかったと聞 いている。こうしたことを受けて、各分科会の 中には連合体である日本医学会を法人化するこ とで、他の分科会への発言力を強化するべきと の意見があがるようになった。このほかにも日 本専門医制評価認定機構や日本医療安全調査機 構との関係において法人格を持っていないと困 る等の意見があった。また、大変残念な事に日 本医師会の施策に同調できないために分離すべ きとする意見も一部の分科会にある。平成20 年に新公益法人制度が施行され、登記だけで誰 でも一般社団法人を創ることが可能となった。 これを一つの契機として一昨年の5 月に高久日 本医学会長より日本医学会の法人化についての意向が当時の日医執行部に寄せられた経緯があ る。日本医学会が法人化する場合、日本医師会 としては定款を改正して内部機関たる日本医学 会を廃止するのか、従来通り残すかを当代議員 会で最終的に判断して頂くことになる。分科会 が連合体として新たな法人を創ることを法律的 に止めることは出来ない。新たな法人に多くの 分科会が加盟した場合、日本医師会内部の機関 である日本医学会は形骸化することが予想され る。また、法人の中に別の法人を置くことは不 可能であるため、日本医学会が法人化した場合 日本医師会内部に置くことは出来なくなる。

最も懸念されることは、日本医師会の賛同を 得る事無く、日本医学会が法人化した場合、外 部からは両団体がケンカ別れしたとの印象を持 たれ、医療界を分断することに利用される事態 に陥ることである。そのような事態にならない よう今まで以上に相互の役割を明確化し、足ら ざるを補い合う関係であることを再認識しあっ た上で、法人化を望む日本医学会との対話を緊 密に行っていきたい。相互の定款の目的に両団 体の連携を謳い、あるいは人的交流を図ること を規程する等更なる連携強化に向けた方策を探 っていくことが望ましいと考えている。従って、 この度の日本医学会の法人化の意向について は、日本医師会からの分離・独立と捉えるので は無く、主たる役割の異なる日本医師会と日本 医学会が日進月歩する医学医療に即応する新た な体制づくりに向けた議論を行うきっかけとし て捉え、その視点で協議に臨むことが必要であ ると考えている。日本医師会は我が国の医師を 代表する唯一の団体である。定款の目的にある とおり医学分野の発展にも引き続き尽くして参 る。地域医療、保健、福祉等の公益的活動を数 多く行っており、その役割は医学会が担うこと は出来ない。医学医療と社会を結ぶ役目を医師 会が担い続ける限り、日本医学会の法人化とい う事態を受けてもそれが日本医師会の弱体化に 繋がるとは考えていない。現在、この問題につ いての日本医師会内での検討は、定款諸規程検 討委員会で行われており、次回委員会では高久 医学会長、門田医学会副会長等をお招きして意見交換を行う。これらの協議を経て、平成25 年度中には定款諸規程検討委員会より具体的な 連携に向けた方策が答申される予定である。当 該答申に基づき、法人化後の日本医学会と日本 医師会が言わば車の両輪となって我が国の医 学、医療を牽引していくということが外部から 見ても分かる関係を構築していくことが重要である。

◆医療事故調査委員会について

公平性や中立性が担保され、法側はもとより 社会全般に認知され合意された「医療事故調査 委員会」の制度の創設について中部ブロックか ら代表質問があり、羽生田副会長から概ね下記 のとおり回答があった。

医療事故調査問題の進捗状況については、昨 年9 月に全国の医師会からご意見を伺うための 「たたき台」として、「診療に関連した予期しな い死亡の調査機関設立の骨子(日医案)」を示 したところであるが、10 月の代議員会におい ても全国の会員のご意見を聞いた上で纏めるべ きであるとご指摘をいただいた。早速、会内に 医療事故調査に関する検討委員会を立ち上げ、 全国のブロック代表、勤務医、四病協団体、四 病院団体協議会、全国医学部長病院長会等の代 表を含む委員構成で12 月から検討を重ねてき た。その間、日本医療安全調査機構、四病協、 日病協、日本病院会等の第三者機関設立につい ての報告書あるいは意見が発表され、様々な形 で議論が複雑化してきている状況である。これ らの意見の一致点を見出し、国民にも納得して もらえる案へと取り纏めていくことが日本医師 会の責務である。昨年示した骨子案は、院内事 故調査委員会を中心に置き、その先に第三者機 関の設立、運営についても医療界自らによる取 組を全面に打ち出した提案である。この問題を 議論する上では、医療事故の調査に警察の介入 をいかに無くすことが出来るかが重要な論点と なる。そのためには国民が納得できる制度に仕 上げることが重要である。医療界による自立的 な取組をどこまで厳しく公正に行うことが出来るかということが社会に対する説得のカギとな るものと考えている。去る3 月22 日に開催さ れた厚生労働省の「医療調査の仕組み等のあり 方に関する検討部会」の議論においては、厚生 労働省事務局より第三者機関のあり方に対する 議論のたたき台が示された。日本医師会の基本 的な考え方としては院内調査に重点を置くこと は当然の前提としており、第三者機関の位置づ けについては結論を示せる状態では無い。今後、 会員をはじめ他の医療関係団体に対しても国民 に受け入れられる制度とすることの重要性を認 識し、具体的な方策を最終案に向けて議論を進 めていきたい。

会内のプロジェクト委員会は年度内の会議は 終えているが、来年度も引き続き委員間でのや りとりを続け、必要に応じて新年度も委員会を 立ち上げて議論することを検討している。

◆平成25 年度税制改正後の医療における消費税・事業税について

控除対象外消費税問題、事業税課税問題につ いて関東甲信越ブロックから代表質問があり、 今村副会長より概ね下記のとおり回答があった。

日本医師会をはじめとした医療関係団体は遅 くとも消費税率10%引き上げ時には抜本的な 解決としてゼロ税率か軽減税率により仕入れ消 費税が控除できる制度への転換を求めている。 これらの実現の可能性については、ゼロ税率あ るいは軽減税率かの論点は重要ではあるが、先 ずは課税制度への転換させることが最重要であ ると考えている。現行の制度は医療機関の負担 のみならず、非課税と言いながら患者、被保険 者をはじめ国民に対して目に見えない形の負担 をもたらしている仕組みである。このことを国 民に理解してもらうことが課税制度への転換に とって大変重要であると思っている。その先に、 税率の問題があると思っている。日本医師会が 主張している軽減税率とはあくまで患者負担を 増やさない税率であり、具体的には診療報酬に 消費税分として上乗せしたとされている1.53% がひとつの目安になると考えている。昨年6 月に設置された中医協消費税分科会では、現行の 非課税制度について、支払側委員も含めて非課 税制度は不透明且つ不合理な制度であるとの認 識が広く共有されるに至った。新たな局面を迎 え、日本医師会の従来からの主張である、患者 負担を増やさない課税制度へ改善することは本 来の非課税制度の趣旨である社会的政策配慮を 真に実現する解決策として国民の理解を得るこ とが可能であると考えている。

保険者をはじめ、国民の理解を得ることで、 ゼロ税率、軽減税率による課税制度の実現に繋 げたいと考えている。なお、消費税率8%の対応 については、消費税増税法において10%引き上 げまでの経過措置として医療保険制度の中で手 当されることとなったが、今までと同様の方法で 対応することを認めるものでは無い。消費税負 担の検証結果に基づき、今までと異なる、通常 の改定財源とは別立ての公費投入を含む適切な 水準と適切な方法による改善を強く求めていく。

事業税の特例措置に対する懸念については、 消費税は国税、事業税は都道府県税であり、税 の性格も全く異なる。消費税の問題が解決して いない現在でも、事業税の特例措置の見直しの 議論が続いている。社会保険診療が公共性、非 営利性の高い事業であり、低廉な公定価格であ るのは、事業税非課税を前提としているからで ある。医師は行政が行うべき公共性の高い多く のサービスを代行している事実がある。社会保 険診療を消費税課税とするよう要望しているこ とは、仕入額控除を可能とするための唯一の解 決策として考えているからであり、決して医療 の公共性を否定するものでは無い。従って事業 税については、そもそも消費税の問題とは別に 非課税措置を恒久措置となるよう強く要望して いく。消費税、事業税どちらの問題も最終的に は法改正になる。

◆医療基本法(仮称)の制定は慎重に

医療基本法の制定にあたって、会員への十分 な周知と、理解を得るための取組について日医 の見解が求められたことに対し、今村常任理事 から概ね下記のとおり回答があった。

医療基本法の問題は会内の医事法関係検討委 員会において「医師・患者関係」の法的検討を 重ねる中で提言されたものであり、具体的な条 文草案まで提示頂いた。これまで、日本医師会 代議員への周知方法が十分でなかったこともあ り医療基本法に対し、理解が進んでいない点に ついて遺憾の意を表明する。現段階の日本医師 会内の位置づけとしては一委員会の報告書に留 まっていることから、医師会、医療界内の問題 意識を高めて頂く必要があり、同時に患者国民 と共に考えるべき重要な問題であると捉え昨年 12 月の日本医師会館内におけるシンポジウム を皮切りに全国のブロックにも活動をお願いし ているところである。来たる4 月17 日には医 師会内部での議論を深めて頂くことを目的とし て、都道府県医師会担当理事に対する説明と意 見交換をさせて頂く。すでに九州医師会連合会 と北海道医師会でシンポジウムを開催している が、参加者からは総論的には医療基本法の制定 に前向きな意見を多くいただいていると理解し ている。一方で医事法関係検討委員会の報告書 に対し、「患者の権利に傾きすぎである」、「医 療提供者の権利に関する規程が足りない」、「介 護についてしっかり盛り込むべき」、といった 意見・要望を聞いており、改めて医事法関係検 討委員会で検討頂きその上で執行部としての方 針を立てていきたい。いずれにしても医療基本 法の問題は患者国民のみならず、医療提供者も 当事者として議論の中心であるべきであること から、全国の医師会会員のご意見を踏まえなが ら拙速となることなく、着実に進めていきたい。

◆現物給付型民間保険への対応について

金融庁の金融審議会において、医療に対する 「現物給付型民間保険」の認可に関する議論が 行われていることについて日医の見解が求めら れたことに対し、石川常任理事より概ね下記の とおり回答があった。

金融庁の金融審議会「保険商品サービスの提 供等のあり方に関するワーキンググループ」に おいて、平成24 年8 月と11 月の2 回、老後のライフプランを考えるにあたり入居施設等を 検討する現物給付に対するニーズがあるとして 現物給付型保険及び保険金の直接支払サービス について議論が行われている。金融庁の見解に よると現物給付型保険は保険会社が保険契約に おいて予め定められた特定の物品・サービスを 契約者に提供することを契約するもので、現行 法上生命保険では認められていない。一方直接 支払サービスは予め定められた保険金の支払い であり、付加的なサービスとして支払先を契約 者からサービス提供者に変更するものであり、 現行法の下でも禁じられていない。なお、損害 保険と第三分野保険については、保険業法上現 物給付が既に認められている。保険業法におい ては保険金の支払方法に関する規程は定められ ておらず、保険会社による保険金の直接支払を 禁じていないが、事前に保険契約者とサービス 提供者の同意が必要であることからハードルは 決して低くは無い。現物給付型保険については、 平成20 年の保険法改正時に金融審議会、金融 分科会第2 部会において保険法の対象とすべき か否かについて検討がなされた際、保険業法に おける対応についても議論がなされた。保険業 法において現物給付を認めないと理由として保 険契約者等の保護と保険会社に対する監督規制 の観点から様々な懸念、困難性が指摘されてい る。先進諸外国の保険制度においても生命保険 契約における現物給付制度は殆ど導入されてい ないことから、この難しさが伺える。これらの 点に鑑みれば、保険業法においては生命保険契 約における現物給付は認めず、現行規制を維持 することが適当であると結論され、保険法にお いてもこれを定めないこととされている。今回 の議論では保険給付として現物給付を提供する とした場合、サービスの質の監督がどうなるか と言う点も指摘されている。これらの経緯を見 る限り、今回のワーキンググループの議論を経 て、現物給付と保険金の支払を選択制にするこ とで生命保険契約における現物給付を容認する 流れにはなっていないが、厳重に注視する必要 がある。厚生労働省に確認したところ、金融庁 から相談を受けておらず、医療における商品としては成立しづらいのではないかとコメントを いただいている。しかしながら、保険契約にお ける現物給付が認められれば、混合診療によっ て民間保険で自由診療を行い、公的保険で保険 診療を受けるという流れを作りかねない危険性 がある。また、サービス内容の審査を保険会社 が行うことになることから不払いが発声する恐 れもある。更に保険会社が個別の医療機関と契 約を結ぶことになるため、選別が起こり米国の マネージドケアのようにフリーアクセスを阻害する可能性も否定できない。安倍首相がTPP への参加を表明した課程において、日本医師会 は国民皆保険の堅持を強く求めてきた。

民間保険から、公的保険である国民皆保険が浸 食されることがないように注意深く監視し、必要な 対応をしていかなければならないと認識している。

この他、「専門医制度」、「医学部新設問題」、 「地域産業保健センターの今後」「統合医療」等 についても活発な質疑が交わされた。

印象記

副会長 玉城 信光

年度末に開かれる会議で来年度の事業計画と予算の承認を得る会議である。今年は選挙が無く、 しかも例年になく議事の運営がスムーズに運んだ会議であった。最後の総会まで出席できたので ある。これまでは喧々諤々といつ終わるともしれない議論が続いていたのである。それでも札幌 の先生方は時間がないのであろう。最後には空席が目立つ日医の会議である。

横倉会長は就任1 年になり、安部総理とも話し合いをもちTPP 交渉の際にも国民皆保険を守 ることを確約して頂いたと話している。また平成25 年4 月1 日をもって日本医師会は公益社団 法人として第一歩を踏み出し、これを契機に安心、安全な国民医療を守る集団として活動してい くと述べられた。

まず平成24 年度の会務報告がなされた。東日本大震災への対応や災害支援、救急災害医療の 協議会開催、勤務医問題、有床診療所問題、女性医師支援など多くの事業が報告された。

日本全国で医師会の会費減免をお願いしている会員が11,358 名で会費総額は4 億8 千77 万円 になるようである。しかしながら日本医師会の会費収入は143 億6618 万円なのです。日医の総 予算は一般会計、医賠責特約保険事業、治験促進センター、女性医師支援、医師年金などの事業 を含めると577 億4479 万円になる大きな事業計画が報告された。

重点課題としては1. 東日本大震災への対応と今後の災害対策 2. 医療政策の提案と実現、その 他医業税制、医療事故調査制度、医療保険、介護保険制度の充実等おおくの事業が各県医師会と 連動し、また地区医師会と連動する形で行われるのである。各会員も日医の情報に多く接して頂 いて各地区の意見を沖縄県医師会に報告していただければ、日医に反映できるようにしてきたいと思う。

その後に各ブロックからの代表質問があり、医師の偏在の問題、地域医療再生基金と在宅医療 整備、医療事故調査委員会、総合診療医、医学部新設、重度心身障害児の在宅療養など多くの質 疑があったが、議論の中心になったのは日本医学会が日本医師会から分離独立し法人化をすすめ るということは日医にどのような影響がでるのか、今後の関係はどうなるのかとのことであった。 日医としては基本的には従来の関係でいきたいとのことであるが、日本医学会には多くの学会が 参加しており、その議論のなかで学会が一人歩きするのではないかとの疑問が多くなされたが、 日医の支援なくして日本医学会の開催もできないであろうし、日医の活動と学会の活動は車の両輪としてすすめる必要があるのできちんと整理をしていきたいと述べられた。

個人質問も多くでており、その詳細については「日本医師会雑誌 第142 巻 第2 号別冊」として会員に配布されているので参照して頂きたい。

日本医師会の代議員会は各ブロックで席順がきめられていて全357 席中、数年前は後ろの方で あったが毎回少しずつ前方に移動し、今回は前列が九州ブロックの席になった。福岡県の松田会 長が1 番で沖縄県は50 番の宮城会長から53 番までであった。横25 席あるので前から3 列目に なり集中した?代議員会であった。




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