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平成24年度都道府県医師会
生涯教育担当理事連絡協議会

宮里善次

常任理事 宮里 善次

去る3 月14 日(木)、日本医師会館におい て標記協議会が開催されたので、その概要について報告する。

開 会

定刻となり、小森貴日本医師会常任理事より開会が宣言された。

挨 拶

横倉義武日本医師会長が公務により欠席のた め、中川俊男日本医師副会長より概ね次のとおり挨拶があった。

日本医師会が定める医の倫理綱領のうち、医 師は生涯学習の精神を保ち、常に医学の知識と 技術の習得に努めるとともに、その進歩・発展 につくすと記載がある。医師は国民の生命と健 康に深く関与するという点で、その生涯教育は 他の多くの職業の生涯教育とは相違があり、す べての医師が自らを律し、日々研鑽に励んでい くということは言うまでもない。質の良い医療を国民に提供していくため、絶えず最新の医学 知識と医療技術を身につけることは、我々医師 の責務である。

日本医師会では、医師としての姿勢を自ら律 するというプロフェッショナルオートノミーの 理念のもと、医師の生涯教育が幅広く効果的に 行われるように、昭和62 年から生涯教育制度 を発足させ、以来25 年以上に渡って制度を発 展させている。社会的要請に自ら進んで応えて いくことは、国民の生命と健康を預かる医師と しての責務であり、地域住民が安心して受診で きるよう医師が使命感をもって積極的に参加で きる日本医師会生涯教育制度を推進することが 日本医師会の役割である。

また、先般、取り纏めが行われた厚生労働省 の専門医のあり方に関する検討部会報告書にお いて、新しい専門医制度については、国の関与 を認めず、プロフェッショナルオートノミーを 基盤としてこれを行うとされ、さらに専門医の 認定・更新にあたっては、医の倫理や医療安全、医療制度等についても問題意識を持つような医 師を育てる試験が重要であり、日本医師会生涯 教育制度を活用することも考えられると記載さ れている。今後、一層の充実を計りたいと考えている。

日頃、都道府県医師会において、生涯教育に ご尽力いただいている先生方、また、事務局の 皆様のご努力に心から感謝を申し上げるととも に、地域の先生方が生涯教育に対する理解を深 め、更なる自己研鑽に励んでいただく一助とな るよう、引き続きご理解とご協力をお願いす る。本日は是非とも忌憚のないご意見をいただきたい。

議 事

(1)生涯教育制度関連事項報告

日本医師会小森貴常任理事より、概ね次のとおり報告があった。

平成23 年度生涯教育制度集計結果は、単 位取得者総数112,289 人(うち日本医師会会 員100,898 人)、日本医師会会員単位取得者率 61.4%(診療所:66.8%、病院他:54.2%)、平 均取得単位16.2 単位、平均取得カリキュラム コード15.4 カリキュラムコード、取得単位+ カリキュラムコード合計平均は31.6 であった。

取得単位が0.5 単位以上の者に対し、平成 24 年10 月1 日付で平成23 年度日本医師会生 涯教育制度「学習単位取得証」を発行した。

単位取得方法別平均単位数は、講習会等で 13.38 単位、体験学習2.13 単位、日本医師会 雑誌0.49 単位であった。その他ではe- ラーニ ング0.09 単位、研修指導0.09 単位、論文執筆 0.03 単位となっている。

取得者の多かったカリキュラムコードは順 に【2:継続的な学習と臨床能力の保持】の 58,871 人( 取得者率52.4 %)、【13: 地域医 療】の57,384 人(取得者率51.1%)、【1:専 門職としての使命感】の55,817 人(取得者率 49.7%)、【11:予防活動】の55,459 人(取得 者率49.4%)、【9:医療情報】の51,500 人(取 得者率45.9%)となっている。

また、取得者の少なかったカリキュラムコードは順に【41:嗄声】の5,436 人(取得者 率4.8 %)、【58: 褥瘡】の4,819 人( 取得者 率4.3 %)、【48: 誤飲】の4,282 人( 取得者 率3.8%)、【40:鼻出血】の4,189 人(取得者 率3.7%)、【56:熱傷】の3,913 人(取得者率 3.5%)となっている。

平成23 年度生涯教育制度単位取得者分布は、 0.5 〜 9.5 の範囲で58,234 人、10 〜 19.5 の範 囲で27,144 人、20 〜 29.5 の範囲で12,289 人 であった。また、カリキュラムコード取得者分 布は、0 〜 9 の範囲で46,362 人、10 〜 19 の 範囲で33,199 人、20 〜 29 の範囲で17,641 人であった。

単位+カリキュラムコードの取得者分布は、 0.5 〜 9.5 の範囲で28,061 人、10 〜 19.5 の範 囲で24,044 人、20 〜 29.5 の範囲で17,693 人、 30 〜 39.5 の範囲で12,630 人、40 〜 49.5 の範 囲で9,098 人であった。

よりしっかりとした堅固な生涯教育制度を整 備するため、日本医師会認定産業医制度や日本 医師会認定健康スポーツ医制度と同様に、単位 取得証・認定証の交付等、本制度の円滑な運営 をはかることを目的として、平成25 年4 月1 日より「生涯教育制度運営委員会」を設置する ことになった。都道府県医師会のご理解をいただきたい。

平成24 年度の学習単位スケジュールは、1)申告者から郡市医師会への提出期限4月30日(火)、 2)郡市医師会から都道府県医師会への提出期限 5 月31 日(金)、3)都道府県医師会から日本医 師会への提出期限は6 月30 日(日)までとする。 また、都道府県医師会での生涯教育講座実施報 告についての提出期限は4 月30 日(火)まで とする。提出期限の厳守をお願いしたい。

指導医のための教育ワークショップについて は、平成21 年4 月より、研修医5 人に対して、 指導医1 人が必置となっている。日本医師会で は今年度2 回開催し、62 名が修了した。都道 府県医師会においても積極的に開催していただ くようお願いしており、今年度は14 都道府県 医師会で開催され、331 名が修了した。これま での修了者は4,942 名となっている。

日本医師会生涯教育協力講座については、今 年度、1)「地域医療と予防接種〜ワクチンがも たらす恩恵〜」、2)「てんかんの診断から最新 の治療まで」、3)「心房細動と脳梗塞」を開催 した。また、特別講演会として「認知症の診断 から最新の治療まで」を開催した。なお、来年 度は、1)「心房細動と脳梗塞」日本ベーリンガ ーインゲルハイム株式会社との共催、2)家庭血 圧測定の重要性〜仮面高血圧の診療の実際〜第 一三共株式会社との共催、3)「糖尿病患者さん の食習慣を考慮に入れた薬物治療」田辺三菱製 薬株式会社、特別講演会として「認知症の診断 から最新の治療まで」ノバルティスファーマ株 式会社との共催による開催を予定している。

e- ラーニングについては、生涯教育on-line において、e- ラーニング教材を提供しており、 日本医師会雑誌読後回答等で単位を取得でき る。また、カリキュラム、日本医師会雑誌も PDF 形式で全文掲載している。さらに、ビデオ ライブラリーやセミナー開催状況等も情報提供 している。是非、積極的にご活用いただきたい。

(2)生涯教育推進委員会報告

日本医師会生涯教育推進委員会倉元秋委員長より、概ね次のとおり報告があった。

生涯教育推進委員会では、実務的な部分とし て1)都道府県医師会主催「指導員のためのワー クショップ」プログラムの承認、2)日本医師会 生涯教育協力講座セミナーの承認、3)日本医師 会生涯教育協力講座特別講演会の承認、4)インターネット生涯教育講座の企画、5)インターネ ット生涯教育協力講座の承認等を行っている。 また、今期は会長諮問に対し次の点について検討を行った。

医師臨床研修制度の評価に関するWG論点整理

  • 1. 基本理念と到達目標について
  • 2. 基幹型臨床研修病院の指定基準について(研修診療科、年間入院患者3,000 人、募集定員上限、激変緩和処置、地域枠対応)
  • 3. 中断及び再開、修了について(病気療養、再開割合低、女性医師対策)
  • 4. その他(地域医療の安定的確保、研究医養成との関係、医学教育との関連)

生涯教育制度の円滑な運用と環境整備

1)-1「総合診療科」的性格を帯びた「症候診断的カリキュラム」を修正する

1)-2 全ての臨床医にとって必要な基本的な「医療課題」を充実する

2)生涯教育の評価(インセンティブ、専門医更新要件、日本医師会の認定)

(3)専門医の在り方に関する検討会について

田原克志厚生労働省医政局医事課長より、概ね次のとおり説明があった。

当検討会の趣旨は、医師の質の一層の向上及 び医師の偏在の是正を図ることを目的として、 専門医に関して幅広く検討を行うこととしてい る。主な検討項目は、「求められる専門医像に ついて」、「医師の質の一層の向上について」、「地 域医療の安定期的確保について」等である。

専門医の在り方に関する検討会中間まとめの では、新たな専門医の仕組みは、専門医の質を 高め、良質な医療が提供されることを目的とし て構築すべきであるとされている。

専門医については現在、各学会が独自に運用 しており、学会の認定基準の統一性、専門医の 質の担保が懸念されている。また、専門医とし ての能力について医師と患者との間に捉え方の ギャップがある。さらに、医師の地域偏在・診 療科偏在等の課題があげられる。

今後、平成24 年度末までに1)中立的な第三 者機関の具体的な体制、2)現在の専門医と新し い仕組みによる専門医の関係(移行措置)、3) 国の関与の在り方、4)医師不足・地域偏在・診 療科偏在の是正への効果、5)医師養成に関する 他制度(卒前教育、国家試験、臨床研修)との 関係等について議論を行う。

新たな専門医の仕組みは、医療を受ける側の 視点も重視して構築すべきであり、中立的な第 三者機関を設立し、専門医の認定と養成プログ ラムの評価・認定を統一的に行うとしている。 「総合医」、「総合診療医」、「領域別専門医」が どこにいるのかを明らかにし、それぞれの特性 を活かしたネットワークにより、適切な医療を受けられる体制を構築する。また、新たな仕組 みの構築に併せて、広告が可能な医師の専門性 に関する資格名等の見直し行い、専門医の養成 数は、養成プログラムにおける研修体制を勘案 して設定する。

この新たな仕組みの導入により、専門医の質の向上、地域医療の安定的確保が期待される。

広告可能な専門医資格に関する規定について は、医療を受ける者による医療に関する適切な 選択に資する観点から、下記に掲げる研修体制、 試験制度その他の事項に関する基準に適合する ものとして厚生労働大臣に届け出た団体が認定 する専門性資格を広告可能としている。広告 可能な医師の専門医資格は、平成23 年8 月23 日現在で55 である。

  • 1. 学術団休として法人格を有していること
  • 2. 会員数が1,000 人以上であり、かつ、その 8 割以上が当該認定に係る医療従事者であること
  • 3. 一定の活動実績を有し、かつ、その内容を 公表していること
  • 4. 外部からの問い合わせに対応できる体制が整備されていること
  • 5. 当該認定に係る医療従事者の専門性に関す る資格(以下「資格」という。)の取得条件を公表していること
  • 6. 資格の認定に際して、医師、歯科医師、薬 剤師においては5 年以上、看護師その他の 医療従事者においては3 年以上の研修の受講を条件としていること
  • 7. 資格の認定に際して適正な試験を実施していること
  • 8. 資格を定期的に更新する制度を設けていること
  • 9. 会員及び資格を認定した医療従事者の名簿が公表されていること

今後、専門医の質が高まり、良質な医療が提 供されるよう、新たに設置される中立的な第三 者機関が、関係者との連携のもと、新たな専門 医の仕組みを推進することが求められる。また、 このような仕組みを通じて専門医を含めた医師 の偏在が是正されることを期待する。専門医の在り方については、新たな仕組みの導入以降、 プロフェッショナルオートノミーを基盤とした 上で、専門医の質の一層の向上や地域医療の安 定的確保等の観点から、その進捗状況を見極め つつ、適宜、継続的な見直しを行っていくこと が必要である。

日本医師会の基本的な考え方

「専門医制度・かかりつけ医・総合診療医〜 地域包括システム・住民に応える医療連携のために〜」について

・ 総合的な診療能力を有することはすべての 医師が持つべき要件であり、地域医療の大 半を支えている開業医師(かかりつけ医) がこの機能を担っている。

・ 深い専門性を有したうえで、総合的な診療 能力を持ち、幅広い視野で地域を診る医師 (かかりつけ医)こそが、住民のニーズに応えることができる。

・ 日本医師会では、かかりつけ医機能をさら に向上させるため、生涯教育制度を一層推進する。

・ しかし、医師不足等の地域においては、プ ライマリケアを担当する医師が特に必要で あることから、これらの医師の特性を評価 することが妥当である。

新たな専門医に関する仕組みについての検 討会報告書案について

・ 新しく設置される第三者機関は、プロフェ ッショナルオートノミーを基盤として医師 が運営する。

・ 国は専門医の認定・配置には関与しない。

・ 新たな専門医の仕組みは、プロフェッショ ナルオートノミーを基盤として、設計され るべきである。

・ 専門医の認定・更新にあたっては、医の倫 理や医療安全、地域医療、医療制度等につ いても問題意識を持つような医師を育てる 視点が重要であり、日本医師会生涯教育制 度を活用することも考えられる。

・ 総合診療専門医の養成プログラムの基準については、関連諸学会ならびに日本医師会等が協力して、第三者機関において作成す べきである。

・ 総合診療専門医の養成プログラムにおける 研修目標の設定や更新基準の作成について は、日本医師会生涯教育力リキュラムの活 用を考慮しつつ、第三者機関において引き 続き検討することが必要である。

・ 専門医資格取得後も、都道府県や大学、地 域の医師会等の関係者と研修施設などが連 携し、キャリア形成支援を進める。

協 議

小森貴日本医師会常任理事進行のもと、予め 埼玉県、島根県、岡山県医師会より寄せられた 質問・要望について、概ね下記のとおり回答があった。

○埼玉県医師会

平成22 年7 月16 日に開催された都道府 県医師会生涯教育担当理事連維協議会で、当 県より「将来的展望を踏まえ、情報量の多い IC チップ及び磁気カードによる会員証への 構築」、「IC 化により会員の研修会等の参加 履歴が一括管理で可能となる」を質問し、当 日の協議会において、1. 会員証の活用は検討 したが、予算の関係もあり、継続的に検討が 必要。2. 日本医師会IT 化検討委員会でもこ の問題を議論していただく。3. 生涯推進委 員会でも検討していただくと回答をいただい た。その後の進捗状況をお聞きしたい。

また、日本医師会生涯教育制度における単 位数とカリキュラムコード数の合算数の明確 な呼び名について、多くの会員からその合算 された呼び名をどのように呼ぶのかとの質問 が来ているので、ふさわしい名称を考えてもらいたい。

○日本医師会

日本医師会会員証については現在のとこ ろ、会員氏名、生年月日、ID 番号、住所、 有効期限、発行日のみを記載している。一方 で前期の日本医師会IT 化検討委員会答申を 受けて、日本医師会認証局の本格稼働に向け た検討の結果、認証局が現在立ち上がったところである。この認証局を活用するセキュリ ティーを確保した医療IT 基盤の整備事業の 一つとして、生涯教育ポイント管理システム の提供も位置付けられている。この進捗状況 を踏まえ、今後、IC 化による生涯教育の集 計管理を検討している。

また、単位数とカリキュラムコード数の合 算による明確な名称は、現在のところ検討し ていない。今後、生涯教育推進委員会におい て検討いただきたい。

○島根県医師会

新専門医専門制度下での生涯教育単位について

1. 新専門医制度の養成プログラムの審査・認 定を行う第三者機関と日本医師会との間で 単位互換等の合意はなされているのか。

2. 現在、日本医師会生涯教育制度と単位互換 のある27 学会は新専門医制度の下ではど のような取り扱いとなるのか。

3. 現在の専門医の新制度移行時の専門医更新や認定に際しての取り扱いはどうなるのか。

4. 総合医について、日本医師会と厚生労働省 の合意がなされているのか(現在の内科を 主体とする、かかりつけ医は総合医と認め るのか)。

5. 新専門医制度は厚生労働省が関与し、第三 者機関で審査・認定されることは新制度で の専門医は国家資格となるのか。

○日本医師会

1. 第三者機関と日本医師会(生涯教育)との単位互換について

新たな第三者機関は、日本医師会が中心と なって、日本専門医制評価・認定機構、各学 会との緊密な連携のうえに設置されることになる。

単位互換等詳細については、今後、第三者機関で検討されることになる。

なお、兵庫県医師会から日本医師会への要 望、『日本医師会生涯教育制度認定証を学会 認定専門医資格更新の要件とすること』等を 踏まえ、第VI 次生涯教育推進委員会答申に おいて『日本医師会生涯教育の学会認定専門医更新の要件』について検討することが提言 されていることから、「専門医の在り方に関 する検討会」では、新たな専門医制度の設計 にあたっては、日本医師会生涯教育制度を取 り入れるよう主張している。

この結果、「専門医の在り方に関する検討 会報告書(案)」では、『専門医の認定・更新 にあたっては、医の倫理や医療安全、地域医 療、医療制度等についても問題意識を持つよ うな医師を育てる視点が重要であり、日本医 師会生涯教育制度などを活用することも考え られる』、『専門医の認定・更新基準や養成プ ログラムの基準の作成等について、地域包括 ケアの先進例や地域の医療、保健、介護、福 祉等分野の状況も参考にするとともに、日本 医師会生涯教育カリキュラムの活用を考慮し つつ、第三者機関において引き続き検討する ことが必要である』と記載されている。

2. 現在、単位互換のある学会はどのような取り扱いとなるのか

第三者機関により議論されることになる が、現在の基本的な枠組みは継続されること になると考える。

3. 現在の専門医の移行について

報告書(案)では「既存の学会認定の専門 医から新たな第三者機関認定の専門医への移 行については、専門医の質を担保する観点か ら、第三者機関において適切な移行基準を作 成することが必要である」とされている。

詳細は第三者機関において今後検討されることになる。

4. 総合医・総合診療医について

第VI 次生涯教育推進委員会答申では、「総 合医」とは、『日常行っている診療の他に、 学校保健、産業保健、在宅医療、地域の医療 行政と連携した活動などを行い、さらには介 護・福祉などを含むさまざまな保健医療活動 に従事する医師を指す』とされ、「総合診療医」 は、『大学病院、地域の中核病院の「総合診 療部」の医師に見る如く、主として従来の一 般内科を中核として、精神科、皮膚科、小外 科、眼科、耳鼻科、整形外科など周辺領域について広い領域にわたって基本的レベルの診 療を行う医師を指す』、『「総合診療部」とい う新しい概念のもとに創設された診療領域に 属する医師を指し、専門医としての位置づけ も確立されて来ている』また、その『医師が 「総合診療医」と呼ばれるのは当然である』『こ うした専門医は病院勤務医に限定されるもの ではない』とされ、さらに『今後、この概念 が理解され、普及していくよう努めるべきで ある』とされている。

日本医師会としては、同委員会答申を踏 まえ、「総合医」が持つ機能は、従来から日 本医師会が言う「かかりつけ医」機能そのも のであることから、「総合医」という言葉を、 専門医の名称として使用すること、ましてや 医療制度上に位置付けることは認めがたいこ とから、一貫して、この主張をし続け、検討 会として日本医師会の主張が受け入れられた ところである。

「総合診療医」については、第三者機関が 学会との協調によって、医師のプロフェッシ ョナルオートノミーを基盤として認定される 一専門医であり、医療制度となんら関係のな いものであることについては検討会で了承されている。

現在、地域医療を担っている「かかりつけ 医」の役割に変わりはなく、これからも一層 中心的な機能を担い続けていくことになる。

「総合診療専門医」は地域の特性に応じて、 基本的レベルの診療を行う専門医の一領域で あり、医師全体に占める割合は少数に留まり、 医療制度に位置づけられるものではないとい うことで、ご理解を賜りたい。

5. 新専門医制度は国家資格となるのか

新たな専門医制度については、ここに国家 が関与し、専門医の認定・配置等が国家管理 に繋がることは絶対にあってはならない。第 三者機関がプロフェッショナルオートノミー の理念に基づいて運営されることは、検討会 において、繰り返し確認を行ってきた。

報告書(案)においては、「新たな専門医 の仕組みは、プロフェッショナルオートノミー(専門家による自律性)を基盤として、設 計されるべきである」、「第三者機関は、医療 の質の保証を目的として、プロフェッショナ ルオートノミーに基づき医師養成の仕組みを コントロールすることを使命とし、医療を受 ける国民の視点に立って専門医制度を運用す べきである」と謳われている。専門医の新た な仕組みは、医師によって自律的に運用され ることが明記されたことになる。

従って、新たな専門医制度は国家資格とはならない。

○岡山県医師会

日本医師会生涯教育セミナーを開催するに あたり、医師会行事や会場の空き等を考慮し て日程を組むので、来年度はすでに協力講座 を3 回開催しなければならなくなっており、 その場合、県医師会単独で行う生涯教育講座 の回数が少なくなる。せめて生涯教育協力講 座は年度2 回程度を限度として開催回数を少 なくしてはどうか。

また、テーマについても、糖尿病や高血圧 等のありきたりなものはすでに多くの講演会 が開催されているので、協力セミナーでは多 少マイナーな分野のものを取り上げていただきたい。

○日本医師会

セミナーの開催にあたっては、日本医師会 とスポンサー会社との協議により、会員の生 涯教育に資するテーマの選定を行い、取り上 げられるテーマのタイミング、関心事項、疾 患の流行等を勘案し、生涯教育推進委員会に おいて諮ったうえで決定している。テーマ等 について会員の先生方より様々なご意見をいだきたい。

質疑応答

○長野県医師会

専門医の移行について、学会の専門医のう ち、希望者が第三者機関の認める専門医への 移行を行うとしているが、現在の学会の専門 医だけでも続けられることはできるか。

○田原克志厚生労働省医政局医事課長

平成27 年度に医師になり、平成29 年度 から専門医の研修をされる方は、新しい仕組 みのもとで専門医が認定される。現在の学会 の専門医については、希望者が新しい仕組み に移行するが、それぞれの学会が、専門医の 認定をどのように対応していくのかにより変 わってくると考えられる。可能な限り、全て の医師が新しい仕組みに移行していただきた い。強制ではない。学会や第三者機関の判断 になると考えている。

○日本医師会

日本医師会が中心となり、第三者機関を運 営していく中で、このようなことを各学会と丁 寧且つ深い議論をしていかなければならない。

○鹿児島県医師会・鳥取県医師会

「専門医の質の向上に資するよう、各領域 が満たすべき到達目標、経験症例数、指導体 制数等について共通の指針を作成し、この指 針に沿って各領域の認定基準や養成プログラ ムの基準を作成する」とあるが、地方では症 例が少ない。どうしても都会に症例が集まる。 後期研修医の偏在が起こり、地域医療の崩壊 につながるのではないか。厚生労働省ではシ ミュレーションを行っているか。

○田原克志厚生労働省医政局医事課長

ご指摘のとおり、この点については懸念さ れる。特にシミュレーション等は行っていな い。養成プログラムについては、地方と都会 との組み合わせ型を構築いただきたい。

○日本医師会

この制度により、地域医療を担う医師が一 人とも少なくなるということはあってはなら ない。養成プログラム等については、地域医 師会がこれに関与すると明確に記している。 これからの検討会等においても地域医師会の 実情を議論に反映させていきたい。

○群馬県医師会

カリキュラムコードを再検討していただきたい。

○日本医師会

現在、生涯教育推進委員会で検討中である。

○滋賀県医師会

専門医の在り方に関する検討会報告書案で は、「日本医師会生涯教育カリキュラムの活 用を考慮しつつ、第三者機関において引き続 き検討することが必要である」としている。 専門医、総合診療医、かかりつけ医に関する 日本医師会の考え方は、日本医師会生涯教育 制度をもとに、基本領域専門医、サブスペシャリティ専門医という段階を踏んでいる。サ ブスペシャリティ専門医が日本医師会生涯教 育制度を取得していないということのないよ うな制度にしていただきたい。

○日本医師会

多くの都道府県医師会から、そのようなご 意見をいただいている。検討会において、日 本医師会生涯教育制度を活用することが認め られた。今後、制度設計については先生方の ご指導をいただきながら調整していきたい。

印象記

常任理事 宮里 善次

平成25 年3 月14 日、日本医師会館に於いて『平成24 年度都道府県医師会生涯教育担当理事連絡協議会』が開催された。

日本医師会ではプロフェッショナルオートノミーの理念のもと、昭和62 年から生涯教育が幅広く行われている。

日本医師会小森常任理事から平成23 年度の生涯教育制度集計結果が発表されたが、日本医師 会会員の単位取得率が診療所で66.8%、病院他で54.2%であった。その数値が高いか低いかは判 断しかねるが、「総合診療科」を新たな専門医制度に組み入れるのであれば、低すぎると云う印象を受けた。

詳細なデータは本文を参照して頂きたい。

会場からカリキュラムコードを再検討していただきたいと要望があった。

また、演者からよりしっかりした堅固な生涯教育制度を整備するため、平成25 年4 月1 日から生涯教育運営委員会を設置することが発表された。

次に田村克志厚生労働省医政局医事課長から「専門医のあり方に関する検討会について」と題して報告があった。

平成24 年度末までに1)中立的な第三者機関の具体的な体制、2)現在の専門医と新しい仕組み による専門医の関係(以降措置)、3)国の関与のあり方、4)医師不足、地域偏在、診療科偏在の是 正への効果、5)医師養成に関する他制度(卒前教育、国家試験、臨床研修)との関係等について 議論を行う。「総合医」「総合診療医」「領域別専門医」がどこにいるかを明らかにして新たな仕組 みを構築する。

最後に新たな専門医制度について、日本医師会の基本的な考え方が発表されたが、医政局医事 課長が3)に述べた国の関与について、「新しく設置される第三機関はプロフェッショナルオートノ ミーを基盤として医師が運営するものであり、国の関与は絶対認めない。」と云う事が強調された。

現在の専門医制度認定のあり方を全く新たな機関に委ねると云う事は決まったが、前途多難な印象を受けた。