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第1回 地区医師会長会議

真栄田篤彦

常任理事 真栄田 篤彦

去る2 月13 日(水)、県医師会館において標記会議が開催されたのでその概要について報告する。

冒頭、宮城信雄会長から概ね下記のとおり挨拶があった。

挨 拶

沖縄県医師会 宮城信雄会長

宮城信雄会長

昨年、政権交代が起 こり自公政権に戻った が、今後どうなってい くか注視していかなけ ればならない。社会保 障と税の一体改革関連 法案が昨年の8 月に成 立し、消費税増税が決まったが、社会保障をど うするのかについては、社会保障制度改革国民 会議を開いて今年の8 月までに決めていくと いうことであるが、全く話が進んでいない。後 期高齢者医療制度も含めてどうなるのか全く見 えてこない状況である。社会保障の改革というのを理由に消費税を上げたとしか受け取られな い。自公政権に戻ったが、可成り厳しい対応を していかなければならないと考えている。

地区医師会長会議は、各地区医師会で起こっ ている問題、課題等の解決を図っていく、或い は情報を共有して考え方を一つにするというこ とで開催している。今回は提案議題が3 題、報 告が1 題あるので、お互い意見を出し合いなが ら有意義な会議にしたいと思う。

議 題

1. 地区医師会災害医療計画の策定について(沖縄県医師会)
出口災害医療委員会委員長

出口災害医療委員会委員長

現在災害医療委員会 にて検討している「沖 縄県医師会災害医療計 画」の概要を説明する とともに、地区医師会 においては、地区特有 の事項を踏まえて「地区医師会災害医療計画」を策定いただきたいと依頼があった。

説明の概要は下記のとおり。

1)今後30 年以内に予測されている巨大地震の規模と被害想定

2)沖縄県津波被害想定委員会は、今年1 月28 日「沖縄県周辺海域を震源とする海溝型地震 や内陸型地震(活断層)の被害は、20 メー トル津波予測が県内32 箇所、東海岸はほぼ 浸水する」と発表。

3)沖縄県災害医療委員会の検討経過、研修会の開催状況、沖縄県防災訓練への参加等報告

4)沖縄県医師会災害医療計画のポイント→シンプルでわかりやすく・発災時の初動をチャート化・県医師会計画と地区計画(地区特有事 項を掲載)で構成・責任担当の明確化

5)県医師会災害対策本部および地区医師会災害対策本部の業務のリスト化

<意見交換>

○沖縄県医師会:

長嶺代議員会 議長

長嶺代議員会 議長

災害用備品について 再度細かく検討しても らいたい(例えば、針・ メス・滅菌道具など)。

○沖縄県医師会(出口災害医療委員会委員長): 備品の詳細について、再検討します。

○沖縄県医師会(宮城会長):再度細かいチェ ックをお願いします。

○那覇市医師会:

山城副会長

山城副会長

基地内で起こった事 故に関する対応は、中 部地区医師会では検討 されているのか。


○中部地区医師会:

中田会長

中田会長

嘉手納飛行場で爆発 等があっても中に入れな い。ただ、地域住民に対 しては対応することにし ようと考えている。先日、 コンビナートの油もれの 事故があった際、私たち がその情報を知ったのは、消防署からではなく、 職員から臭いがすると言われてわかった。中部 地区では、この事故をシミュレーションとして、 すべての医療機関に与勝方面で事故があった旨 連絡したところ、2/3 は30 分以内に情報を見た とのことであった。伝達はうまくいけたかと思 う。この地域計画を作るだけでなく実際に練習 していきたいと思っている。

中華航空事故の前に嘉手納空港で事故があっ たときの対応をマニュアル化したが、現実に動 けるのかわからない。今回、出口委員長が地区 医師会に説明にきていただけるとのことであ り、災害本会担当理事を中心にできるだけ前向 きに県医師会とともに進めていきたい。

○沖縄県医師会:

玉井理事

玉井理事

沖縄県保健医療計画 にも、沖縄県医師会 JMAT を明記いただく よう要請している。公 けに県にも医師会を認 識していただくことが 必要である。現在、災 害医療委員会では、透析患者や、HOT・レス ピレーターの使用患者の把握について話し合っ ているところである。HOT 業者とも調整をし ているが、果たして災害時に現在の体制で大丈 夫なのか、ボンベは本当に足りるのか、今後さ らに検討していくことにしている。地域の先生 方ならではの情報網があるかと思うので是非把 握いただきたい。

○中部地区医師会:市町村との対応はどうした らいいか。東日本大震災の前のチリ津波の際に、 私の施設も避難したが、消防に電話したら学校 に避難するよう言われ、しばらくしてコザ高校に行けと言われた。障害者はそこに行ってもし ょうがないので結局サンエー(60m)に避難し た。行政に連絡しても担当者がいなかった。

昨年、東日本大震災をきっかけに沖縄市で対 策会議が持たれた(医師会には案内なかったが 介護施設や老人ホームにも連絡があったよう だ)。現実に市町村のどこに連絡したらいいの か。県医師会は県と連絡体制が整備されている のか、これから詰めていくのか。

○沖縄県医師会(玉井理事):情報網はできて いない。東日本大震災のとき岩手では社協が頑 張って隙間を埋めていたようである。

○沖縄県医師会(出口委員長):昨年9 月に防 災訓練が実施された際に、名護市と北部地区医 師会は何度か連絡会議を開いて意見交換を行っ た。お蔭でその後はコミュニケーションがとれ るようになった。3 月12 日の北部地区医師会 での本計画説明会では、この計画が出来上がっ たら地域の防災機関に説明に行って、連携を図 っていきたいとの意見があった。

○沖縄県医師会(宮城会長):那覇市医師会と 浦添市医師会は、1 医師会対1 市だが、中部地 区医師会や南部地区医師会は多くの自治体と連 携をとって行かないといけない。大変ではある が、是非やらないといけないことであり、地区 計画ができたら自治体と調整を図っていただきたい。

○沖縄県医師会(玉井理事):災害時に情報の 正確な伝達ができるかどうかが問題である。災 害時には、携帯はほとんど繋がらない。県医師 会では衛星携帯電話の購入を検討しており、地 区医師会でも配備ができればいいと考えている。

○公務員医師会:

本竹会長

本竹会長

県立病院と扱うもの が違うかと思うが、搬 送が一番問題になると 思われる。台風のとき には、レスピレーター を使用している方は病 院に来るので病室を開 けて対応しているが、全体の動きがわからない。 津波の際、泡瀬にどのくらい患者がいるのか把握できていない。地区医師会から市町村に提案 しない限りなかなか進まない。医師会が積極的 に動かしていくことが必要かと思う。

○中部地区医師会:沖縄市では、災害弱者の対 応は社協がやっているが、個人情報の壁で止 まる。行政には法的根拠を示したほうがいい と思うので、県の防災計画にあると説明してよいのか。

○沖縄県医師会(出口委員長):法的根拠はは っきりしている。災害基本法・国民保護法に基 づく地域防災計画において、県医師会は指定地 方公共機関になっている。市町村防災計画に地 区医師会が明記されるとよい。

○沖縄県医師会(宮城会長):衛星携帯電話の 配備について提案があった。できれば公的資金 が使えれば地区に配布しようと考えており、現 在調べているところである。それが出来なくて も地区医師会で衛星携帯電話の購入を検討して欲しい。

2. 沖縄県医師会定款等諸規定改正(案)について(沖縄県医師会)

真栄田常任理事から、沖縄県医師会定款改正 並びに役員選任規程改正案について、次のとお り一括して提案理由の説明があった。

1)沖縄県医師会定款改正(案)について

本会は、公益法人制度改革に伴い、昨年4 月 1 日に一般社団法人へ移行したところであり、 昨年2 月の代議員会において選出された理事及 び監事の任期は法律に則り、本会定款第35 条 において「理事及び監事の任期は、選任後2 年 以内に終了する事業年度のうち最終のものに関 する定例代議員会の終結時までとする」と定め ていることから、本年6 月開催の定例代議員会 の日までとなっている。

なお、本年6 月に就任する新役員の任期は、 平成27 年6 月の定例代議員の日までとなり、 その場合日本医師会や地区医師会の役員の任期 とズレが生じることになる。

理事及び監事とも日本医師会並びに地区医師 会役員の任期と合わせるため、定款「附則」に 次のとおり特例任期として条文を規定した当該改正案についてお諮りいただきたい。

(役員等の任期)

・平成25 年度に行う代議員会において選任す る理事の任期については、第35 条の規定に かかわらず、選任後1 年以内に終了する事業 年度の最終のものに関する定例代議員会の終 結の時までとする。

・平成25 年度に行う代議員会において選任す る監事の任期については、第35 条の規定に かかわらず、選任後3 年以内に終了する事業 年度の最終のものに関する定例代議員会の終 結の時までとする。

2)沖縄県医師会役員選任規程改正(案)について

当改正案については、地区医師会から代議員 の選挙権について分かりにくいとの指摘を受 け、選挙権を明確に示すと共に、法律により、 役員選挙が議案扱いとなったことによる変更及 び選挙を円滑且つ適切に行うために選挙方法、 投票用紙の様式等を具体的に規定している。

定款及び役員選任規程案については、今後は 3 月1 日(金)に第2 回定款等諸規定検討委員 会で審議する予定になっているので、各地区医 師会に持ち帰ってご検討いただき、ご意見等が あれば定款等諸規定検討委員会委員を通して、 来る2 月26 日(火)までに文書でご提案いた だきたい。

なお、定款等諸規定検討委員会にてご承認い ただけたら理事会の議を経て、3 月28 日(木) 開催予定の臨時代議員会に提出するという段取 りとなっているので、地区医師会長のご理解を 賜り、ご協力をお願い申し上げる。

なお、本件について質疑は以下のとおり。

○宮地区医師会:

池村会長

池村会長

宮古地区医師会は今 年の4 月に新法人へ移 行する予定であるが、 役員改選せずに平成26 年6 月まで役員の任期 を延ばせるのか。

○沖縄県医師会(真栄田常任理事):現在、各 地区医師会において県へ新法人移行の申請を行 っていると思うが、その際に提出する定款改正 案の中に、現役員の氏名を新法人の役員として 記載すれば新法人移行後も現役員の任期が続く ということになると思う。

また、任期については、これから新法人へ移 行申請する地区医師会については、県から移行 時の特例で平成26 年6 月(約2 年3 ヶ月)ま での任期を認めるということを聞いているの で、県とよく調整していただきたい。

3. 離島・へき地地域の医師確保事業について(沖縄県医師会)

<提案趣旨>

北部、宮古、八重山地区における医療課題等 について、予め伺ったところ、各地区医師会(北 部、宮古、八重山)より、下記の医療課題があげられた。

今年度見直しが行われている沖縄県保健医療 計画の中で、研修医から地域医療を担う人材の 確保まで議論できる協議会の発足を提案したい。

当協議会は、恒常的な会として沖縄県、病院 事業局、琉大、群星研修群と沖縄県医師会等で 構成し、3 ヶ月に1 回程度の頻度で開催できる よう、副知事や福祉保健部等に提案したい。

<北部地区医師会より>

医師確保(特に救急医)およびコ・メディカルの不足

<宮古地区医師会より>

県立宮古病院の医師確保およびその他

<八重山地区医師会より>

「石垣市休日夜間診療所がないこと」

石垣市休日夜間診療所は平成17 年3 月31 日付けで閉鎖された。

主たる理由は医師確保の困難さ。当初医師二 人体制で診察を行っていたが一人が止めたこと をきっかけに穴埋めの医師を探すのに苦労して いた。ちょうど石垣島徳洲会病院が開設され 24 時間救急医療体制をとったこともあり、こ れまでの診療所の医師、看護師を県立八重山病院の救急室へ派遣することにして同診療所を閉鎖することに決定した。

しかし平成21 年に新型インフルエンザが発生 したとき、県立病院を中心に発熱患者の対応に 苦慮、医療関係者から休日夜間診療所の再開を 望む声が多数開かれたが結局一時再開もならず。

準夜帯に小児の発熱などの軽症患者も県立病 院を受診し患者側の長時間の診察待ち、当直医 の疲弊など救急診療に支障をきたしている。

県立病院の救急業務を補佐するためにも、ま た患者側のニーズに応えるためにも石垣市休日 夜間診療所の再開を望む。

意見交換の結果、沖縄県全体で適正な医師配 置ができる仕組みとして、協議会等の設置を沖 縄県保健医療計画に提案するとともに、県福祉 保健部等に要望することとした。

<主な意見等>

○沖縄県医師会:

玉城副会長

玉城副会長

琉大医学生の地域枠 が設定されているが、 将来の配置が見えない ので、協議会設置等で 医師配置ができる仕組 みづくりが必要。


○北部地区医師会:

上地副会長

上地副会長

北部地域の急性期2 病院では、診療科が似 通っており、医師不足・ 確保対策には矛盾が生 じている。県立北部病 院には軽症の救急患者 が多く、勤務医は疲弊・ 疲労が重なり次々と辞めていく傾向にあり、数 年後には北部地域の医療が崩壊するのではない かと危惧している。大学にお願いするも中々上 手くいかず、県立北部病院も医師不足で救急医 療が立ち行かない状況となっており、北部地区 医師会病院にも、しわ寄せがきている。県で協 議会が立ち上がり、適正な医師配置が可能にな れば幸いである。

○宮古地区医師会:歴史的な医師不足の中、県 への働きかけは非常によく感謝申し上げる。宮 古地区は独自の取組みで何とか上手くいってい る状況である。以前、内科医が一気に3 名辞 めたり、外科がストップするなど、週2 回紹介 患者のみ受け付けることもあった。また、内科 医が総入れ替えする事態も発生した。4 〜 5 年 単位で常勤していただける医師の配置を希望す る。精神科医は来年度なんとか確保したものの、 今後の目処は付かない。耳鼻科についても同様 である。また、専門医を目指す中堅クラスが宮 古地区でも単位取得できるような仕組みを作っ て欲しい。さらに、新病院は6 月頃に移転する が、救急等の高度医療が20 日程度ストップす るので、その際のご協力をお願いしたい。

○八重山地区医師会:

上原会長

上原会長

県立病院の救急業務 を補佐するためにも、 また患者側のニーズに 応えるためにも石垣市 休日夜間診療所の再開 を望む。


○浦添市医師会:

仲間会長

仲間会長

八重山地区の救急医 療については、那覇市 や南部地区のように開 業医の輪番制を実施し ては如何か。


○沖縄県医師会(玉城副会長):本来、救急医 療は市町村が実施するもので、市町村が救急診 療所を設置・運営した上でないと出来ない。

○宮古地区医師会:宮古地区は、夜間・救急診 療所をなくそうという動きがあったが、医師会 で存続しようと働きかけた。

○宮古地区医師会:現在の夜間・救急診療所は 新病院と離れているが、12 時まで救急患者を 診て、その後は病院で診てもらうという流れに なっている。新病院設立が決まった時に、夜間・ 救急診療所を病院に併設し、フィルタを掛けることで病院勤務医の疲弊負担を軽減しようとい う試みである。診療所には所長1 名いなければ ならないが、医師会輪番で支援を行うこととしている。

○沖縄県医師会(宮城会長):糸満市の救急診 療所は、県立南部病院の患者が殆どで、その担 当医師が診ることになり、救急診療所の役割が 無い上、自治体持ち出しのため、救急診療所を 廃止した経緯がある。

○沖縄県医師会(玉城副会長):本来、救急医 療は市町村の役目である。地域医療に参加する 姿勢がなければ、地域の医療が守れない。そこ に県が支援することになる。

○中部地区医師会:救急医療は地方交付税として配分されるのか。

○沖縄県医師会(宮城会長):自治体が行う救 急医療には、国より、かなりの補助金等が配分 されるはずである。その中で一番の問題は医師確保である。

○沖縄県医師会:

石川理事

石川理事

北部地区はエリアが 広く、村に1 つか2 つ の診療所が点在してい る。名護市に急性期病 院が2 か所あるが、搬 送に時間がかかる。ま た、中・南部圏域への 患者流出が目立ち、中・南部にも負担が掛かっ ている。さらに、産婦人科や小児科は基より、 内科や外科の医師等も減少している現状で、負 のスパイラルが生じており、ここ2 〜 3 年で北 部の医療は成り立たないのではないかと危惧している。

○沖縄県医師会(石川理事):研修医に地域の イベントへの参加を促すことや国試対策等で琉 球大学の学生への支援が出来ないか。

○公務員医師会:宮古地区と八重山地区でかな り性質が違うと思う。若い人達が集まる環境づ くりが大事である。若い人達は、症例がないか ら集まらないので、2 つの急性期病院を合わせ ることで、より効果的な症例集め、ひいては人 を呼ぶ環境づくりが出来るのではないか。

○沖縄県医師会(宮城会長):医師不足・確保 対策には、玉城副会長の提案どおり、医師会主 導で協議会の設置および進行を行っていく必要がある。

報 告

1)平成25 年度九医連関係諸事業について(沖縄県医師会)

真栄田常任理事から資料に基づき次のとおり報告があった。

平成25 年4 月から平成26 年3 月までの1 年間、沖縄県医師会が担当し、資料のとおり九 州医師会連合会関係諸行事を開催する予定にし ている。その中で全県規模として、8 月3 日(土)、 4 日(日)の両日、ANA クラウンプラザホテ ル沖縄ハーバービューに於いて、「健やかな子 どもの未来 ―子どもたちとの絆を求めて―」を メインテーマに第57 回九州ブロック学校保健・ 学校医大会並びに平成25 年度九州学校検診協 議会(年次大会)を開催する。また、11 月16 日(土)、17 日(日)の両日、同ホテル等に於 いて、第113 回九州医師会総会・医学会並び に分科会、記念行事を開催する。医学会では、 特別講演として、東京都健康長寿医療センター 研究所・老化制御研究チームリーダーの田中雅 嗣先生に「ミトコンドリア遺伝子と長寿(案)」 について、琉球大学名誉教授の木村政昭先生に 「沖縄の海底遺跡について(案)」ご講演いただ く予定にしている。多くの会員に参加いただき たく、各地区医師会にご協力をお願いしたい。