沖縄県医師会女性医師部会 会長 依光 たみ枝
去る2 月22 日(金)日本医師会館に於いて「女 性医師支援事業連絡協議会」が開催され、本部 会役員2 名、事務局1 名が参加した。協議会で は、昨年9 月から本年2 月にかけて全国6 ブロ ックで開催された「女性医師支援センター事業 ブロック別会議」の議事内容を踏まえて、都道 府県医師会での特徴的・先進的な取り組みを行 っている県を各ブロックの代表として、8 県(1) 北海道、2)群馬県、3)富山県、4)石川県、5)福井県、 6)大阪府、7)徳島県、8)沖縄県)より発 表が行われた。以下に会議の模様を報告する。
挨 拶 女性医師支援センター センター長 羽生田 俊
全国各地において女性医師支援事業が強力に 推進されていることについて非常に心強く思っている。
女性医師支援センター事業の中核をなす女性 医師バンクは、各地区にコーディネーターが配置され求人・求職にかかる間を取り持っている。 医師がそのコーディネートをする運用は全国ひ ろしと云えども本バンク以外にはない。個々の 先生方の要望を医師という立場で相談に乗れる ということは、事業が展開しやすい格好になっ ている。しかしながら、広報が未だ不十分だと 考えており、求人登録件数も延べ約3,800 件、 求職希望件数も700 件に満たない状況である。 少なくとも5 倍の件数があれば再就業も進むと 考えている。
内閣府男女共同参画推進連携会議に委員とし て参加しているが、各団体の取り組み以上に本 会の取り組みは先駆的に進んでいると感じてい る。他団体からも種々照会もあり、誠に嬉しい 限りである。
本日は、各ブロックより特徴ある取り組みに ついて紹介いただく予定にしており、是非各県 でも参考にしていただきたい。
議 事 女性医師支援センター事業 ブロック別会議 開催報告
1)北海道医師会女性医師等支援相談窓口事業について
北海道・東北ブロック
北海道医師会常任理事 藤井美穂
北海道では、女性医師等就労支援事業の補 助金を受けて、平成23 年6 月より相談窓口を 開設している。主な事業として、1)育児サポー ト、2)復職サポート、3)相談窓口の事業を展開 している。一人でも多くの女性医師にこれらの 情報と支援が行き届くよう「広報活動」に力を 入れている。ノベルティグッズ(ペンやメモ用 紙、眼鏡拭き等セット)やチラシ・ポスター等 を作製して、各種医師会の行事や学会、行政関 係、会員施設、大学機関等へ配布している。また、 統一したロゴマークを活用することで認知度を 高めようと、医師会長の名刺や会報誌、抄録集 等へ継続的に掲載している。この他、道民の9 割が購読している北海道新聞に本事業の概要を 紹介する等の周知活動を行った。また、平成24 年度から復職研修支援事業も開始しているが、 より実態に即した現場を作って見ようと、行政 や看護協会と連携し、既存の診療所内の一角に 外来を設けて、復職研修を受講させる計画を平 成26 年度中に実現できるよう検討を始めた。
2)群馬県医師会保育サポーターバンク概要
関東甲信越・東京ブロック
群馬県医師会理事 今泉友一
群馬県では、子育て中の女性医師の離職防止 を支援するため、平成24 年より地域医療再生 基金事業を活用し、医師会独自の就労支援組織 として保育サポーターバンク(3 年総額1,800 万円)を設立した。登録医師数は34 名で、登 録サポーター数は53 名となっている。保育支 援内容は、保育と併せてできる範囲で双方同意 のもと、病児・病後時保育や家事支援等も行っ ている。報酬は双方の話合いで決定する仕組み である(1 時間あたり1,000 円程度)。業務遂 行中の保険は、(財)女性労働協会の子育て支援相互援助活動補償保険を活用し県医師会が加 入している。また、県医師会では、利用した医 師の費用の一部を補助する子育て支援助成制度 (200 円×時間等)を設けている。また、子供 の送迎等に使用したタクシー料金の一部を助成 する制度(タクシーチケット500 円× 50 枚分) も設けている。更に、サポーターには、チャイ ルドシートの貸与やインフルエンザ予防接種料 金の助成、各種研修会の開催等を行っている。 昨年12 月の利用状況は16 名で、約230 時間 の利用があり、うち91 時間が病児保育で利用 があった。
3)女性医師等支援事業の取り組み(当日欠席のため紙面報告)
中部ブロック 富山県医師会理事 渡辺多恵
富山県では、女性医師の占める割合は全国平 均より低いが、年々増加傾向にある。特に20・ 30 代では3 割を超えており、今後も増加が見 込まれる。県医師会での取り組みは、1)女性医 師等相談窓口の設置、2)女性医師支援コーディ ネーターによる「巡回相談」の実施、3)富山県 医師会と医学生・臨床研修医が語る会(H20 年 から4 回開催)、4)講演会live a full life 〜充 実した人生を生きる〜(H17 年から7 回開催) を通じて、女性医師や研修医・医学生との交流を図っている。
富山大学での取り組み
中部ブロック 富山大学医学部小児科 市田蕗子
富山大学では、2007 年より文科省「周産期 医療環境整備事業」を活用して様々な事業を行 っており、とりわけ2009 年9 月から「女性医 師支援室」を設け、育児中の女性医師への各種 支援を行っている。具体的には、1)勤務医継続 支援(短時間労働プログラムの設置)、2)育児 支援(学童保育・乳幼児保育・病児病後児保育、 学会保育の開設)、3)復帰支援(特別研修教育 プログラムの設置予定)等を通じて、産休や育 休により臨床現場を離れる時間を出来る限り短 期間にできるよう環境を整備している。理想的には6 ヶ月以内であれば復帰支援は必要ないと 考えている。この様な環境整備が充実したこと により、ほぼ全員(12 名)が出産後4 〜 12 ヶ 月で職場復帰している。
女性医師が医師としての研鑽を中断すること は、本人にとっても残念なことだけではなく、 国家的な損失でもある。子育てとキャリアアッ プの両立支援を目指し、女性医師が復帰しやす い環境を整備していくことは、男性医師を含め た職場全体の労働環境の改善に繋がると考えている。
4)石川県女性医師支援センター活動報告
(メンター制度・ライフワークバランス教育)
中部ブロック 石川県女性医師支援センター
コーディネーター 魚谷知佳
これまで様々な女性医師支援を行ってきた が、実際には現場との距離感を埋める事が出来 ず、一方的な支援であったことを反省した。こ れ等を踏まえ、女性医師支援センターを設置し た際に、連携を持った実質的な支援を図ること を目標にメンター制度を導入した。具体的には、 県内12 病院に計21 名の女性医師を女性医師 メンター(助言者)として委嘱し、院内での相 談相手役を担っていただいた。また、本センタ ーではコーディネーターによる病院訪問相談の 実施や研修会・講演会等、開催場所を大学に移 す等により以前より参加者数が増加した。以上 のような取り組みを始めて4 年が経過している が、現場の女性医師から連帯感が生まれている。 また、彼女等が主体性を持って職場を変えてい こうという意識の変容が生まれている。(例: 病時保育・夜間保育の設置、診療科の垣根を越 えて考えるようになった等)
この他、ライフワークバランス教育の一環と して、平成24 年から金沢大学医学部6 年生を 対象に「医師のキャリアアップと継続」につい て講義を実施しており、今後も継続していく予 定である。
5)健康長寿の福井
中部ブロック 福井県医師会理事 月岡幹雄
福井県は、女性の就業率が全国2 位(51%)、 共働き世帯の割合が1 位(56.8%)、三世代同 居世帯割合が2 位(20.2%)を占めている。また、 健康や育児等への行政からの支援も比較的充実 した県だと認識している。県医師会の取り組み としては、医学生、研修医等をサポートする会 を平成20 年度から開催しており、ここ数年は 大学とのタイアップにより学生の参加も著しく 増加している。また、女性医師の意見交換の場 として、平成20 年度からママドクターの会を 行っており、少しずつ参加者も増えてきている。
6)近畿各府県医師会の「女性医師支援事業」の取り組み
近畿ブロック 大阪府医師会理事 上田真喜子
近畿各府県医師会の「女性医師支援事業」の 取り組みについては、地域の特性に応じた様々 な育児支援や再就業支援が行われており、また、 次代を担う若手医師や医学生等との交流会を通 して、医師としてのキャリアデザイン等につい て情報交換を行っている。しかしながら各県と も、離職医師の把握に苦慮している現状がある。 20 〜 30 年後には、日本においてもヨーロッパ 並に、若手女性医師の割合が6 〜 7 割となる方 向に進むものと考えている。女性医師支援、男 女共同参画の推進は、近未来の重要なプロジェ クトである。今後とも、近畿ブロック内はもち ろん、全国の医師会、日本医師会と連携し、意 見・情報交換を密にして、女性医師支援事業を 推進していきたい。
7)徳島県医師会のサポートシステムについて
中国四国ブロック
徳島県医師会常任理事 岡田博子
徳島県では、子育てや就業継続支援の一環と して、国・県の女性医師復職研修支援事業を活 用し、相談窓口を県医師会内に開設している。 寄せられた相談内容は、事務担当者から保育支 援委員会や男女共同参画委員会に振り分けられ、各担当委員が必要に応じて相談を行ってい る。また、育児中の医師の学習機会を確保する ことを目的に、徳島県医師会主催による講演会 や研修会にマミールームサービス(会員:無料、 非会員:1 名につき500 円)を併設して、勤務 継続及び復職支援に努めている。また保育支援 では、徳島市内2 ヶ所の私立託児所と県医師会 が契約し、保育料金が通常の25%割引きで利 用ができる。出産年度の翌年度1 年間の会費減 免措置や出産祝い金10 万円の支給が女性医師 限定で設けられている。これら保育支援を受け る目的で医師会に入会した者も7 名いる。
さらに、本県では女性医師の将来のパートナ ーとの出会いを個別にサポートする結婚支援事 業(親の集い型・合コン型・データベース型・ 仲人型)を展開している。男女ともに徳島県医 師会員の3 親等以内の方であれば職業不問でサ ポートしている。これまでの実績は成立が1 組、 お見合いや交際が12 組あった。現在、女性の 登録者数は45 名、男性が19 名と男性の参加 割合が少ないのが課題である。若い世代の医師 や医師家庭を支援していけるよう今後も活動を 続けていきたい。
8)沖縄県女性医師部会 ヒストリー
九州ブロック
沖縄県医師会女性医師部会長 依光たみ枝
本県では、平成19 年8 月、男女共同参画に 関する各種施策に資することを目的に「女性医 師部会」が設立された。具体的な活動内容は、 1)女性医師フォーラムの開催、2)女性医師の勤 務環境整備に関する病院長等との懇談会の開 催、3)出張プチフォーラム等を行い、働く環境 の整備に努めている。また、県医師会内に女性 医師就労支援のための相談窓口が設置されており、ドクターバンク事業も併せて行っている。 とりわけ、2)の病院長等との懇談会では、女性 医師の働きやすい環境を整えていくことが医師 確保の面からも重要な課題であると考え、公・ 民各病院の代表者や事務長等参加のもと、各施 設における女性医師の就労支援体制等につい て、意見交換を行っている。毎年施設側の参加 者も多い。本懇談会で工夫している点は、毎年 各施設における就労環境(院内保育所等の設置 状況・復職支援・休職医師の状況)等につい て、様々なテーマで調査を実施し、それ等をフ ィードバックしていることが挙げられる。参加 者の声として、各病院の取り組みが比較して把 握できることや人事に疎いことを改めて知らさ れた、女性医師の勤務環境改善への取り組みが 底上げに繋がる等の意見が寄せられている。ま た、女性医師の情報共有や伝達の場としてメー リングリストを設けており、現在登録者数は 250 名となっている。様々な場で登録を呼び掛 けていることから登録者数は年々増加してい る。ドクターバンクにおける県内マッチング率 は、平成23 年度が11.4%(4 件成立)、24 年 度が16.2%(7 件成立)、今年度が15%(6 件 成立)となっており、最近では求職者からの件 数も増えつつある。
質疑応答・総合討論
質疑応答・総合討論では、国の女性医師就労 支援事業にかかる代替医師への費用補助の問題 や病児保育に関する環境整備、保育サポーター バンクの啓発活動、地域医療再生基金終了後の 事業運営等について活発な質疑応答が行われ、 最後に、小森貴日本医師会常任理事より「女性 の力が、我が国の力である」と閉会の挨拶があ り、本協議会を終了した。
印象記
沖縄県医師会 女性医師部会会長 依光 たみ枝
平成24 年度女性医師支援事業連絡協議会が、2013 年2 月22 日(金)14 時から16 時30 分に かけて、日本医師会館で開催された。沖縄県からは九州ブロック発表者代表として私と玉城信光 副会長、事務局が参加した。
気温26 度の石垣から、2 週間前の大雪の氷がまだ溶けずに残っている5 度以下の東京はさすが に寒さが身にしみたが、会場は皆の熱気で暑い程であった。
女性医師支援センター事業の中核をなす日本医師会女性医師バンクは、広報が未だ不十分で、 求人登録件数も延べ約3,800 件、求職希望件数も700 件に満たない状況であるとの女性医師支援 センター、羽生田 俊センター長の挨拶で会が始まった。各ブロックの代表として、8 県(1)北海道、 2)群馬県、3)富山県、4)石川県、5)福井県、6)大阪府、7)徳島県、8)沖縄県)より発表が行われた。
印象的だったのは、地域医療再生基金事業を活用した群馬県医師会独自の就労支援組織として の保育サポーターバンクの展開と、徳島県医師会の結婚支援事業についての発表だった。沖縄県 で毎年開催している病院長等との懇談会は、他の都道府県ではほとんど開催されていないようで あり、また質疑応答終了後に徳島県医師会理事より離職防止についてのアンケート結果を知りた いとの要望があった。
それぞれの都道府県で同じ様な問題・課題を抱えてそのサポート等に、医師会が中心的役割を 果たしている事がわかった。しかし次世代を担うべき若い世代が、自分自身の問題として中心と なって活動している姿が見えなかったのは残念であった。「女性医師支援」から「女性」という文 字が消える事を期待したい。