会長 宮城 信雄
去る1 月15 日(火)午後2 時20 分より日 本医師会館において標記会長協議会が開催され た。各県から寄せられた質問事項や日本医師会 から提案された議題等について協議・報告等が 行われたので概要について報告する。
冒頭、横倉義武日本医師会長より概ね次のとおり挨拶があった。
「去る12 月16 日に衆議院総選挙が行われ、 ご案内のとおり自由民主党を中心とする与党が 300 議席を超える大きな政治勢力を握った状況 である。新たにスタートした安倍晋三新政権で は経済再生を第一政策に挙げている。デフレか らの脱却、東北大震災からの復興、国境線沿い を含む危機管理対策を大きなテーマとして挙げ ている。経済再生政策における司令塔として経 済財政諮問会議を復活させ経済財政本部をつく り、その下に産業競争力会議を設置して各産業 のレベルアップに努めるにあたって小泉内閣時 の主要メンバーを起用している。先日、首相官 邸に副会長と共に伺った際、「経済財政諮問会 議」、「骨太の方針」については、我々は大変な アレルギーを持っていることを申し上げた。確かに経済の再興は重要であるが、同時に社会保 障の確立にも触れなければ一方に偏するのでは ないかと申し上げている。安倍晋三氏は元々社 会保障を自らの専門分野としていたことを忘れ ないようお願いをしている。デフレからの脱却 については、金融政策、財政政策、成長戦略の 三つを柱として何としてもやり遂げたいと述べ ておられた。また、社会保障については、社会 保障と税の一体改革をしっかり継続していくと も述べておられた。我々としては国民医療を守 っていくこと、公的医療保険による国民皆保険 体制の堅持と持続を常に主張していかなければ ならない。そういう中で、公的医療保険の継続 性については自由民主党の三党合意にもあるが 「自助・自立」が明記されている。「自助・自立」 が中心となると共助や公助はどうなるのかしっ かりと明言してもらわないといけない。ご案内 のように我が国の医療保険の財源は「自助・共 助・公助」の3 本柱で成り立っていることか ら、これらのバランスを大きく歪めることがあ れば、国民が不安を抱くことになる。
日本では貧富の差が拡大をしていることから、その差がこれ以上拡大しないようにしても らうべく、先週の金曜日に官邸に資料を届けた ところである。幸い官邸には私どもと緊密な関 係にある官房副長官はじめ補佐官等がいること から、必要なときには随時資料を届けることに している。」
続いて協議に移る前に、金井埼玉県医師会長 より、近畿医師会連合から要望のある「都道府 県医師会長協議会等のあり方に対する要望につ いて」は、協議事項では無く「その他」として 当協議会に上程されているが、協議として取り 上げ結論を出して貰いたい旨の提案があり、三 上常任理事より下記のとおり答弁があった。
三上常任理事答弁
重要案件がある場合については別途会議を開 催すべきとのご意見について、前回の都道府県 医師会長協議会は正にそうした思いから、例年 は無い11 月に急遽開催したものであり、今後 ともの同様の運営を心がけて参りたい。
都道府県医師会長協議会の時間超過の件に係 るご要望については、近年はほぼ予定時間内に 終えられていると考えているが、今後も予定時 間内に終えられるよう資料を事前に都道府県医 師会に送付し、会議では役員の答弁から行うと いう運営を継続させて頂きたい。
開催通知の中でご案内している通り、時間内 に回答が叶わない質問については、後日書面回 答する対応も継続させて頂きたい。今後とも役 員答弁は簡潔を旨とし、時間内に終了出来るよ う努めて参るが、答弁要旨の事前配付について は開催間際まで答弁準備を行っているためご容 赦願いたい。代議員会の運営に係るご要望につ いては、加藤議長にご検討を頂きたい。
本件について以下のとおり意見があった。
質問1
前回の会長協議会は、別途行われたものとの お話であったが、そういった趣旨で開かれる場 合には事前に明確な趣旨をお知らせ頂きたい。 また、最近の会議は比較的時間通り進んでいる が、やはり伸びる場合がある。それにはやむを 得ず伸びる場合と、検討すれば伸びずに済んだ場合があるが、出席者のために様々な努力をし て伸びないようにして頂きたい。答弁について は、間際まで準備を行っているとのことである が、骨子だけでも事前に送っていただければ更 に深い議論が行えるのではないかと思う。ご検 討頂きたい。
加藤議長答弁
昨年の10 月の代議員会の前に議事運営委員 会において同件について討論がなされ、執行部 は理事の答弁に関しては、3 〜 4 回話し合いを して時間超過しない旨を申し合わせしたとのこ とであったため、ベルを鳴らすという話も出た が、今まで通りの運営を採った。理事者側の回 答は以前より短縮されたと思うが、3 月の代議 員会の前に、議事運営委員会において再度この 問題を取り上げ検討したい。代議員会における 代表質問と個人質問において同様な質問が出る ことについては、前回の代議員会において整理 したが、代表質問は受付の数が多いのではない かとの意見が出されている。
この件も10 月の議事運営委員会で問題にな ったが、これも3 月開催の議事運営委員会にい て再度検討したい。
協 議
<提案要旨(抜粋)>
日医認証局に関して、1)現在、地域医療連携 においてどのような形で使われているのか、2) 今後、一般会員が利用できるようになるまでには、 どれぐらいの時間が掛かる見込みなのか、3)普 及促進を図るためには、認証局の意義(必要性)、 メリット、具体的な利用方法費用などを会員に 理解してもらう必要があると思われるが、今後、 会員へはどのように案内していく予定なのか。
回答:石川広己常任理事
日医認証局のシステムは既に完成している。 具体的には、認証局から発行するIC カードを ご希望の利用者のお手元に届けることが可能と なっている状況である。しかしながら、このIC カードは電子の世界で医師の資格を証明す るものとして活用するため、認証局自体が完成 していても実際に利用する地域のシステムが無 いと使えないのが現状である。従って、現在は 各地域や行政の事業の中でIT を用いた地域医 療連携のプロジェクト単位で活用されている。 現在の使われ方については、1)地域医療連携シ ステムの中で患者の情報を参照する際に医師で あることを確認して患者情報を閲覧したり記載 したりするための認証である通行証のような使 われ方、2)現実世界の署名や押印に相当する電 子署名としての利用(電子的に作成した紹介状 に医師自らが書いたと証明するために付与す る)、これらの仕組みは電子署名法に則ってい るため、電子的に作成された医療関連文書に日 医認証局の電子署名を付与すれば、それが真正 に成り立つことになる。電子文書のため、原本 として取り扱うことが可能となっている。一般 会員の利用については、現在でも申請すれば利 用出来ることになっているが、IC カードの発 行に際しては厳密な本人確認審査と医師資格の 確認を実施していることから、広く一般的に利 用してもらうためには、日本医師会内に事務局 体制の整備が必要になっている。そのため、現 在部局の整備をすべく、会内において検討して おり来年度中の早い時期には広く先生方にご利 用頂けるよう環境を整えたいと考えている。な お、部局整備と併せ、日医認証局の利用者のた めの会員制度も検討を進めており、現在の日医 会員とは別枠の仕組みとして検討を開始する が、これらの制度が完成すれば、各地域の医師 会にもご協力頂くことも出てくる。その際には 会員の先生方へご案内差し上げ、ホームページ や問い合わせ窓口の整備を図り丁寧にご案内し たいと考えている。最終的には、提示すれば医 師資格を証明出来るカードとなるよう、日医が 主導権を握りながら進めていきたいのでご理 解、ご協力をお願いしたい。
質問1
登録が非常に煩雑である。また、費用がどの ぐらい掛かるのか、手続きは県単位で出来ない のか伺いたい。
石川常任理事
一人のカード作成費用は約5,000 円〜 6,000 円を考えている。しかしながら、実際には事務 的な手続き等があるため、日医会員では無い先 生方が申請される場合には上乗せした料金を頂 く仕組みも考えている。しかしながら、これら は会内に部局体制を設置していることからそこ で検討をしたい。また、登録が煩雑であるとい う点については、原本照合が大事であることか ら、各地区医師会、県医師会の事務局のご協力 が必須になってくると考えている。病院単位で は、医局、事務室にご協力頂かなければならな い。可能な限り簡易且つ確実な医師本人の証明 書を作りたいと考えている。その際の事務量の 問題、対価についても検討していきたい。
質問2
現在、認証局を必要としているシステムはど のぐらい動いているのか。また、維持費につい て教えて頂きたい。
石川常任理事
既に実証実験で現実に認証カードが使われて いる。今後については、岡山県、広島県、そし て地域として島根、別府からシステムを作る際 にデフォルトで導入したいとの要求がある。ま た、年間の費用についてはカード数が増えると、 専従の従業員が必要となることから、人件費等 を考えると初年度の持ち出しは1 億〜 2 億円は 掛かるのではないかと考えている。しかしなが ら日医認証局は年間約5,000 万円の予算で動い ている。来年度の予算については、少し上乗せ して対応したい。本件については、厚労省に様々 な形での支援をお願いしている。
質問3
別の組織にも利用してもらえるような活動も必要なのではないか。
石川常任理事
競合相手は、現在「メディス」の1 件のみと なっている。なお、メディスは日医に任せると 言っている状況である。他の業種の利用については、現在は考えていないが、そういったビジ ネスモデルが発生する可能性は大いにあると考 えている。今後、IT の連携等においてこのシ ステムは無くてはならないものになると考えている。
<提案要旨(抜粋)>
日医代議員任期と都道府県医師会役員選任と の時間的整合性が重要なポイントである。これ に対する兵庫県医師会の打開策を紹介するので 解決法の一つとして参考にされたい。
回答:三上裕司常任理事
前回の代議員会でご承認頂いた新制度移行後 の定款施行細則において、新代議員の選出報告 期限を5 月31 日までとした経緯についてご説 明させて頂く。平成23 年8 月、都道府県医師 会に対し、新制度移行後の日医代議員任期の始 期に関する意見調査を実施した。その結果、従 来どおり4 月1 日からとすべきで、この場合日 医への代議員選出報告期限は2 月末日を想定す る意見に賛成が6 県、都道府県医師会役員と日 本医師会代議員を同一の代議員会で選べる運用 も可能となるよう4 月1 日より送らせるべきで、 この場合日医への代議員選出報告期限は遅くと も5 月末日を想定する意見に賛成が23 県、ど ちらでも良いが15 県、回答無し等が3 県とな っている。この結果を踏まえ、前期定款諸規定 改定検討委員会で十分ご議論頂いた結果、都道 府県医師会役員と日本医師会代議員を同一の代 議員会で選べる運用も可能となるよう日本医師 会の定例代議員会の開催を6 月下旬に想定した 上で、報告期限を5 月31 日までとすることに なった。因みに前回の代議員会において、5 月 31 日を過ぎた報告の取扱に関するご質問が出さ れたが、従来からも期限を過ぎた報告は事務的 に受け付けているので移行後も同様の取扱をさ せて頂く。ただし、代議員会開催直前に報告を 受けると当該代議員に事前に資料の送付が叶わ ないことや、資料として配付している代議員名 簿に名前の記載が間に合わない等の事務的な問題の他、選挙運動を行う上で候補者、代議員双 方に不都合が生じるなどの問題が想定される点 について予めご了承頂きたい。同時に期限遵守 に向けたご協力についても重ねてお願いする。
前期定款諸規定改定検討委員会では、新公益 法人制度移行後の都道府県医師会及び郡市区等 医師会の代議員会開催スケジュール並びに都道 府県医師会代議員任期について、具体的モデル 案を資料としながら議論が行われた。その中で 各都道府県で事情がそれぞれ異なるため、日本 医師会としての代議員会開催日程のみを示し、 後は各都道府県医師会の判断に任せるべきとの 意見が多く出されている。移行後の法人運営に ついては、例えば役員の選任、選定について、 法人法通りの手続きの他、兵庫県医師会のよ うに予備選挙を採用することや、代議員会で代 表理事、業務執行理事を直接選定することも可 能である等、様々な選択肢がある。法人法上に 特段の規定を持たない予算や事業計画について も承認機関を理事会とするか、代議員会とする かについては任意であり、代議員任期や代議員 と役員の兼任の可否についてもまたしかりであ る。仮に兵庫県医師会のご提案を採用し、且つ 予算を代議員会承認事項とした場合、最低3 回 代議員会を開催する必要がある。従来は年2 回 開催していた医師会については、多額の開催費 用が1 回分増え、経費上大きな負担となること も考えられる。このように様々な制度設計が可 能な上に各都道府県医師会でそれぞれ事情が異 なっていることから、前期定款諸規定改定検討 委員会での議論と同様、日本医師会から画一的 なモデルを示すことは難しいと考えている。た だし、その代わりとして、都道府県医師会の参 考となるよう、現在新法人へ移行した医師会、 あるいは移行が決まった医師会のご協力の下、 ホームページにおいて移行後の定款並びに定款 施行細則について情報提供を行っているところ である。現在、171 医師会の定款等を掲載して いる。これらを参考にして頂き、各都道府県医 師会が自主的に制度設計されることが最前と考 えているのでご理解をお願いしたい。
小澤兵庫県医師会副会長
当県は役員改正の際、4 月に予算を諮る代議 員会を開催することから、通年で代議員会を余 分に1 回開催することは無い。5 月31 日まで に代議員選出報告を受けたいという日医のスタ ンスには賛成である。そうでなければ6 月の代 議員会をスムーズに運営出来ないと考える。
ただ5 月に都道府県医師会の代議員会を開く 場合、都道府県医師会は決算資料が膨大となるが 5 月上旬には資料を代議員に送らなければならな い。そうすると4 月末には決算処理をしなければ ならなくなることを考えるとそれは不可能と言 える。恐らく都道府県医師会も6 月に代議員会 を開くことになると思う。日医が第4 日曜日と すれば、恐らく都道府県医師会は第3 日曜日に なるかと思う。日医の代議員、執行部を選ぶ場合 は予定者を4 月に決めて、6 月に確定するという 手続きを採らなければ現実的に無理だと考える。
<提案要旨(抜粋)>
都道府県医師会としても地域医療の充実のた めに調査を行っていることを考慮すると、その 規模や対象の抽出などが異なるとはいえ、日本 医師会による調査データが各都道府県医師会で 活用できる仕組みにできないでしょうか。
また、各都道府県で行われている医療機能情 報提供制度がありますが、日本医師会による全 国規模での医療機能のデータベースがあるべき ではないかと思います。
回答:石川広己常任理事
様々な調査データを先生方に使って頂くこと は、大変喜ばしいことだと考えると共に更なる 使い易さを検討していきたい。
調査については、当初から先生方あるいは地 区医師会の先生方と一緒に出来るものがあれば 計画していきたい。日医総研では社会保障制度 論、国民医療費の動向などの中長期的課題と併 せて、短期的な政策課題に対応するための調査 研究を実施している。研究成果を会員の先生方、 国民に還元し、国民医療の向上に努めているところである。調査データを各都道府県医師会が 活用できる仕組みに関するご提案については、 総研では地域医療再構築を重視し、昨年の11 月に「地域の医療提供体制の現状と将来」を都 道府県別二次医療県データ集として纏め、ホー ムページで公表している。また、12 月には地 域の在宅医療の現状を公表しているが、静岡県 在宅医療機能調査をモデルとし、各地域におい て在宅医療の現状把握を進める際に本調査手法 等を参考の一つとして検討して頂けるよう手法 等も材料として用意しているので活用して頂き たい。更に、地域医師会が在宅医療の現状に関 する調査を実施する際の支援の一環として、各 種調査票のひな形、回答結果入力用データベー ス、集計報告のひな形等を作成し、1 月中には 都道府県医師会に提供したいと考えている。会 内の各種委員会においても、会長諮問に答える ため様々な調査を実施しているが、委員の先生 方に企画の段階からご検討頂いているところで ある。医療機能のデータベースについては、現 在日本医師会会員については、診療科目、住所 等データ管理を行っているが、公開されている ものでは無い。これについては検討課題とさせ て頂きたい。
質問1
自分が診ている患者はどこに入院できるか、 どこに掛かれるかということを考えると、今の 医療機能情報提供制度では、限界がある。急性 期で入院していた遠方の病院から地元に帰って くる際に、病診連携が非常にやりにくい。可能 であれば日医で医療施設の情報を把握しそれを 利用できればと思う。
質問2
二次医療圏における医師配置のデータを見さ せて頂いたが、それには医師が各地域で不足であ るとされているが、このデータを医学部を新設す る理由として利用されるのではないかと危惧して いる。ただ、このデータは勤務医のみのデータで あり、診療所のデータは無い。診療科の偏在につ いてのデータも日医が持つべきであると考える。
<提案要旨(抜粋)>
このまま医療機関における「控除対象外消費 税」についての問題が解決できずに実施されれ ば、横倉会長が年頭所感で述べているように社 会保障が充実する前に医療機関の経営に深刻な 影響を及ぼし地域医療の崩壊に繋がることは必 至であります。僅かな増額のために大変なエネ ルギーを注いでおりました診療報酬改定どころ ではありません。
医療における消費税の問題は一刻の猶予もで きない重要課題でありますので、政府税制調査 会の動向を踏まえ、今後日本医師会のとられる 対策について、伺いたい。
回答:三上裕司常任理事
昨年8 月成立の消費税増税法においては、非 課税制度のまま高額投資に係る消費税負担につ いては一定の手当を行うことを検討すると同時 に、厚生労働省が医療機関の消費税負担につい て検証する場を設けることが決まっている。長 い間消費税分は、診療報酬に上乗せしているの で負担問題は無いとされてきたことからする と、非常に大きな前進ではないかと考える。設 置された中医協消費税分科会には日医から今村 副会長と鈴木常任理事が委員として参加し議論 しているところである。現行の非課税制度は診 療側からは勿論のこと、支払側の視点に立って みても非課税と言いながら、患者、保険者、事 業主が消費税負担を負わされ、診療報酬に消費 税を上乗せする現行制度は不透明な仕組みとし て認識されている。中医協消費税分科会では、 この点での両者の意見はほぼ一致しており、患 者負担、被保険者負担、事業主負担を増やすこ となく、透明性を確保する制度としての課税制 度への解決の方向性については十分合意出来る 内容であると考えている。しかしながら、分科 会は税制を検討する場に成り得ないことから、 昨年11 月、横倉会長を筆頭に三師会会長、四 病院団体の幹部が厚生労働大臣と財務大臣に会 い、税調等においても控除対象外消費税問題について検討する場を設置するよう連名での要望 書を提出している。政権交代により、政府税調 出身の仕組みから党税調中心の仕組みへ変更さ れているが、私共としては中医協消費税分科会 での検討と平行し、税制を議論する場で議題と して検討するよう求めて参る。また、三党合意 により、8%段階での複数税率導入の可能性も 出てきており、これを契機として日医は8%段 階で課税制度への抜本的解決を求めて参る。昨 年12 月15 日の国民医療推進協議会での決議 には、消費税問題の解決が盛り込まれている。 控除対象外消費税問題は医療機関の問題である と同時に、国民負担、患者負担の問題でもある。 日医は全ての医療関係者及び労働組合や経済団 体等とも幅広く協力、協働し、関係各方面への 働きかけを一層強化し国民運動を展開したいと 考えている。
質問1
消費税については2 年ごとに薬価が強制的に 下がっている。その結果、現在既に逆ざやにな っているものがある。仕入れよりも薬価の方が 低いという状況にある。もし8%にアップとな れば更にそういった品目は増えることになる。 昨年、厚生労働副大臣に直接この問題について 説明したところ、日医を通して実例を挙げてい ただければ、検討したいと述べておられた。こ の件についてもご検討頂きたい。
今村副会長
現実にそのような問題が起こっている。その ひとつの原因は本来は今の薬価の中に我々が仕 入れの際に業者に払う消費税分を計算上入れて いるが、そのことが分からないで価格交渉にな ってしまっている現状がある。
今回の中医協の分科会において今の薬価の中 でどれが本来の公定の薬の価値である価格であ って、どの部分が我々が卸しに払う消費税分の 補填として入っているか明確に分かるような形 での線引きを、課税の前にすることが我々の大き な方針である。頂いたご意見も参考にさせて頂 き要望していくが、そういうことをしなくても 良いような課税の仕組みに取り組んでいきたい。
質問2
テレビ番組で、来年の4 月の段階においては 様々な事情があって、8%の段階では軽減税率は 行わないと言っていたが、それに対してどのよう な方針を立てているか。
今村副会長
現在は綱引き状態となっている。基本的には 軽減税率については民主党は否定的であった。 自民党の中には一部、低所得者対策、逆進性対 策のために軽減税率を入れざるを得ないだろう とする考えもある。公明党は積極的に8%の段 階から軽減税率を行うことを考えている。現在 与党になって公明と自民の中でどういう方向で 進めるか検討されている。我々も8%の場合、 10%の場合におけるそれぞれの対策について 検討を行っているところである。
今村聡副会長説明
日本医師会は4 月1 日より公益社団法人とし てスタートする予定である。移行後の定款諸規定 については、過去2 期に亘る検討委員会において ご検討頂き、現行の新公益法人制度は非常に縛り が多く、各都道府県医師会、郡市区医師会におか れてはご苦労されたことと思う。日本医師会も公 益認定がスムーズに行えるように現行に近い形 で答申を取り纏めて頂いた経緯がある。昨年10 月に三上常任理事会からもお話があったように 臨時代議員会で定款変更をご承認頂いた後に、直 ちに移行申請を行った。現在、内閣府の担当事務 局と様々な文言等の詰めを行っているところで ある。一方日本医学会は現在112 の分科会があ り、必ずしも医師だけではない様々な職種の方々 が入っていることから、分科会そのものが医師会 と直接関係があるわけではないが、分科会の連合 体である日本医学会が日医の中に置かれている ということになっている。この医学会の分科会か ら連合体である日本医学会に対し、法人化を強く 臨む声が上がっている。これを受けて一昨年の5 月になるが、高久日本医学会長より当時の原中執 行部に対し、日本医学会の法人化についての検討 する意向が示された。日本医学会が内部に立ち上げた法人化の検討委員会の予算については代議 員会において既に承認して頂いているところで ある。これらの経緯をふまえて、今期の定款諸規 定検討委員会において、公益社団法人移行後の日 本医師会が諮問を行う予定である。その中で、日 本医師会と日本医学会が、今までも医学と医療の 車の両輪として進んできているが、より一層我が 国の医学・医療を両者が一緒になって牽引してい ることを外部から明確に分かってもらうための 方策を検討していきたいと考えている。その中で、 医学会の法人化をはじめとして、従来から代議員 会等で要望のあった、理事の勤務医枠や女性医師 枠を設けることの是非等についてご議論頂きた いと考えている。本委員会から答申が提出された 際には、直ちに都道府県医師会並びに代議員にお 送りさせて頂く。同時に定款改正を伴う内容であ れば、その取扱について理事会、代議員会にてご 議論頂くことになるのでご理解ご協力頂きたい。
質問1
公益社団法人が傘下に法人を持つということは、現行の法人法で認められているのか。
今村副会長
大変大事なご指摘である。法人の中に法人を 持つことは原則的に出来ないことになってい る。従って、日本医師会と日本医学会の関係を どうやれば今まで通り今後も続けることができ るのか工夫が必要であり、そのことについて検 討していただく必要がある。
過去に日本法医学会が医師法21 条の解釈を独 自に出したことにより、現在医療現場が非常に 苦労している状況にある。そもそも日本法医学 会は日本医学会の傘下にある団体でありながら、 日本医学会そのものは全くそれに対応出来なか った。そいうこともあり、各分科会としては連 合体である、日本医学会をしっかりとした法人 としての扱いにし、医学会としての取り纏めが できるようにしたいと考えている。それに対し て日本医師会がどのように連携をとることが出 来るか工夫が必要になってくると思っている。
質問2
消費税が導入された際、当時の日医執行部は 窓口で患者から税金をもらうことは絶対許さな いとして、本来医療に関する消費税は非課税に したと思っている。医療費に消費税をかけた場合、 年間の医療費が30 兆円である場合、単純に2 兆 数千億の消費税がかかることになる。医療に消費 税をかけることになった場合、我々が行ってい る判断料や技術料等と、損税となっている材料費、 薬剤、器具などの購入費については、論議の中 でこれらを分けて検討をしているのか伺いたい。 逆に言うと、窓口では判断料、技術料等について は消費税を取らず、薬剤、材料、器具等のみ消費 税を払ってもらう方向で検討をしてはどうか。
今村副会長
過去において、医療は非課税とした経緯があ るが、自分で好んで物を買う消費と違って、病 気になって受ける医療に対して税をかけること はできないとして非課税としたと理解してい る。しかし、我々が仕入れに払う消費税を負担 するということはおかしな話であるため、その 分を診療報酬で補填する扱いとなった。
その際に、医療費の中における課税の割合が出され、その分が補填されることになった。
しかしながらこの20 年間の間に、仕入れに 関わる課税仕入れの割合は変化しているわけで あり、本来であれば定期的にそれを検証して見 直しが行われなければならなかった。
日本医師会は医療に課税せよと言っている が、元々消費税と関係の無い医療行為にまで一 律に消費税をかけるのか、実際に仕入れに消費 税を払っているもののみを対象とするのか、今 後これらについても検討を行っていきたい。因 みにヨーロッパ諸国では、薬や医療材料につい てはゼロ税率か軽減税率で課税している。
しかしながら今の段階では、先ず医療の中に課 税の仕組みを導入するということを最優先で進め ていきたい。それをやらない限り何も始まらない。
質問3
患者の窓口負担が増えた場合、医療機関に来 る患者が減ることも考えられるが、これまで通り非課税で通すことはできないのか。
今村副会長
国民からすると非課税ということで負担が 無いと思われているが、薬は本来の値段よりほ ぼ5%分高い設定になっている。それは我々が 卸に支払う消費税分を、予め薬価の中に組み込 んだ形で現在の薬価が決められているからであ る。従って、課税とした場合に、今の薬価は約5% 下がることになる。国民は医療というものは消 費税負担が無いと思っているだけで、実は負担 をしていることを殆ど認識していない。その負 担を出来るだけ増やさない課税の仕組みにする ことが必要になってくる。一方、消費税率が上 がって行く中で、医療機関だけに負担を更に負 わされることがあっては医療が成り立たなくな る。その点について先生方にご理解頂きたい。
質問4
消費税が導入された89 年の診療報酬改定 0.76%上乗せ分について分析すると、本体が 0.11、薬価が0.65 となっており、本体部分は 僅かとなっている。2 回目では本体が0.32%、 薬価が0.40 %、材料費が0.05 % で、全体で 1.53%となっている。我々は感覚として診療報 酬を真水としてもらったように錯覚している が、実は本体は僅か0.43%のみである。その マジックに引っかかったような感じがしてい る。それも踏まえて頑張って頂きたい。
三上常任理事
1.53%が真水とは考えていないが、現在我々 の調査でも2.2%の消費税負担があることが分 かっていることから、例え1.53%上乗せされ たとしてもまだマイナスであるという結果が出 ている。また、調整幅と消費税の問題について は、平成元年に15%あった調整幅が、短期間 の間に2%まで下げられた。薬価差も殆どない 状況の中で、消費税負担は医療機関にとって非 常に厳しいものとなる。この件についても変え ていく必要があると考えている。