沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 3月号

第43回全国学校保健・学校医大会

宮里善次

常任理事 宮里 善次

去る11 月10 日(土)午前10 時より、ホテ ル日航熊本において、「子どもたちの健やかな 成長を願って」をメインテーマに標記大会が開 催された。

午前の部は5 分科会が開催され、各県医師会 から応募のあった演題について、発表と活発な ディスカッションが行われた。各分科会の内容 は、第1 分科会が「こころ・心臓・腎臓・実態 調査」をテーマとした9 題、第2 分科会が「健 康教育・生活習慣」をテーマとした10 題、第 3 分科会が「運動器検診・スポーツ傷害」をテ ーマとした8 題、第4 分科会が「耳鼻咽喉科」 をテーマとした9 題、第5 分科会が「眼科」を テーマとした10 題となっている。

午後の部は、都道府県医師会連絡会議、第 43 回学校保健・学校医大会開会式、日本医師 会長表彰式(学校医、養護教諭、学校関係栄養 士)、シンポジウム、特別講演が行われた。

シンポジウムでは、『現代の子どもたちの「身 体の二極化」について考える』〜運動器検診と 小児生活習慣病検診への取り組み〜をテーマ に、整形外科専門医、小児生活習慣病専門医、 スポーツ指導者、それぞれの立場からの意見が述べられた。

特別講演では、東京大学大学院教授の姜尚 中先生より、「悩む力- 意味への意思について」 と題した講演が行われた。

シンポジウム並びに特別講演の概要について は、以下のとおり。

シンポジウム

テーマ『現代の子どもたちの「身体の二極化」について考える』
     〜運動器検診と小児生活習慣病検診への取り組み〜

座長 熊本県臨床整形外科医会会長 高橋 洋
    熊本県小児科医会会長 後藤 善隆

基調講演

「子どもの体と運動」
熊本大学大学院生命科学研究部整形外科学
教授 水田 博志

始めに、「今日では運動をほとんどしない子 どもが増加する一方で、甲子園やJ リーグ等 を目指し、過熱したスポーツ環境の中にいる子 どももみられ、運動習慣の二極化が指摘されて いる。戦後、子どもの体格は顕著に向上してき たが、子どもの体力水準は昭和60 年頃をピークとして低下し、近年は少し向上がみられるも のの、走る力、跳ぶ力、投げる力等のほとんど で親の世代に比較してなお低いレベルにある。」 と説明があり、子どもの体力の低下や子どもの スポーツ外傷・障害とその特徴について報告が 行われるとともに、学校運動器検診の必要性等 について下記のとおり講演があった。

講演では、運動・スポーツの実施頻度別に体 力・運動能力の比較を行うと、運動・スポーツ をしない群では週3 日以上する群に比較して体 力水準が低く、また年次的な低下も顕著にみら れており、運動をしない子どもの増加が今日の 体力低下の大きな要因であると説明があった。 また、朝食摂取状況別に体力・運動能力を比較 すると、毎日食べない群では食べる群より体力 水準が低い傾向であり、睡眠時間が6 時間未満 と6 時間以上8 時間未満の比較でも同様な傾向 にあり、生活習慣の乱れが体力低下の要因の一 つと考えられ、体力評価が高いほど学習・活動 意欲も高く、運動習慣、体力・運動能力、生活 習慣、学力の間には密接な関係性が考えられる との報告があった。

また、スポーツの低年齢化が進み、早くから 専門種目を特化してスポーツを行う子どもも少 なくないが、同一動作の繰り返しは特定の部位 に無理な負担をかけ障害を引き起こす危険性を 秘めており、子どもの体に対する指導者の認識 不足や過熱した勝利至上主義、更には保護者の 過度の期待等がスポーツ障害の発生を助長する 要因であると報告された。

成長期にある子どもの骨は靱帯や腱に比べて 強度が劣り、軟骨の部分が多いことが特徴であ り、関節内あるいは筋・腱付着部の骨・軟骨の 傷害が発生しやすく、特に使い過ぎで起こる子 どもの骨・軟骨障害では初期に適切な対応が行 われれば元通りに回復する一方で、対応を誤る と様々な後遺障害を残すことになり、その結果、 スポーツを断念せざるを得ず、子どもの心に深 刻な影響を与えることもあると述べられた。

また、学校における定期健康診断における検 査項目にて、「脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有 無」が義務づけられているが、未だ多くの学校で実効性のある運動器検診が行われていないの が実状となっているが、障害の早期発見という 観点から学校運動器検診の果たす役割は大きい と意見され、また、体の固い運動器機能不全の 子どもは運動やスポーツを行うことで障害を起 こす危険性が高く、このような子どもを検診で 発見し、事前に適切な指導を行うことで障害を 予防することも期待されるとの見解が示された。

最後に、「子どもの運動習慣の二極化とこれ に伴う弊害は、現在の子どもが置かれた社会環 境、生活環境、価値観等によってもたらされた 結果と考えられる。世界に類をみない少子超高 齢化社会の中で、次世代を担う子ども達の健全 な成長・発達は我が国が抱える最重要課題の一 つであり、行政、学校関係者、保護者、学校医、 医療機関をはじめとして子どもを取り巻くすべ ての関係者が緊密に連携して取り組んでいかな ければならない。」と述べられた。

シンポジウム

「熊本県における運動器検診への取り組みと課題」 ― 整形外科専門医の立場から ―
熊本県医師会学校保健委員会委員/
  おぐに整形外科医院院長 梅田 修二

平成20 年度、阿蘇郡市の中学校1 校及び小 学校1 校にて、保護者に運動器の問診票を記入 していただき、回収後、異常を訴えている児童 生徒を中心に学校医が直接検診を実施したとこ ろ、小学生は16 人(12.8%)の児童が、中学 生は85 人(25.3%)の生徒が何らかの異常を 訴えており、要二次検診者は、中学生の37 人 (11%)であったと報告があり、実際に11 人(要 二次検診者の29.7%)の生徒が専門医を受診し、 脛骨疲労骨折、オスグッド病、腰椎側彎症等と 診断されたと説明があった。

また、平成21 年度からは、「運動器の10 年」 日本委員会の「学校における運動器検診体制の 整備・充実モデル事業」に参加し、熊本市内の 中学2 年生853 名を対象に検診事業を行ったと の報告があり、本事業における問診票は、宮崎 県及び大分県で内容を統一するため、宮崎県で 作成された問診票を使用し、大学の整形外科医による一次検診を行い、要二次検診者の抽出は、 問診票と一次検診でどちらか、あるいは両方に 異常が認められた生徒とし、その結果、二次検 診を必要とした生徒は180 名(21%)であった が、二次検診で専門医を受診した生徒は56 名(要 二次検診者の31%)だったとの報告があった。

また、平成22 年度は、八代市の全ての中学 2 年生1,107 名を対象に運動器検診を行ったと ころ、一次検診にて、専門医の二次検診を必要 とした生徒は、227 名(21%)で、二次検診で 専門医を受診した生徒は90 名(要二次検診者 の40%)だったとの報告があった。

これらの結果より、「児童生徒の運動器疾患 の罹患率が高いのにも関わらず、現在のところ 運動器検診体制が確立されていないのが現状と なっているが、現在の学校を取り巻く環境では、 整形外科医が検診の場を設けることは困難とな っている。このような状況を鑑み、内科系学校 医に運動器検診の重要性を認識していただくと ともに、整形外科医が運動器検診マニュアルを 掲示し、効率よくスクリーニング出来る体制を 確立、及び、スクリーニング後の整形外科医に よる要検診者への適切な指導等、治療体制の構 築等をしていく必要がある。」との見解が述べ られた。

「子どもたちの生活習慣病予防〜熊本市小児生活習慣病予防検診の現状」
- 小児生活習慣病専門医の立場から-
熊本県医師会学校検診委員会委員/
  熊本大学医学部附属病院小児科講師 中村 公俊

熊本市では、小学4 年生を対象とした小児生 活習慣病予防検診を行っており、本検診は、4 月の身長及び体重を基に、肥満度20%異常の 児童を抽出していると報告があり、対象者は、 10 月以降に健診センターで行われる精密検査 を受診し、身体測定、並びに、血液検査、医師 の診察等を受け、その結果、血液検査の異常や 高度の肥満が認められた場合、大学附属病院等 の精密検査機関への受診を勧めているとの説明 があった。

また、本検診における血液検査おいて、IIa型の高コレステロール血症は比較的多くみられ る異常の一つであり、小児における動脈硬化 の進展を評価する指標として、日本超音波学 会ガイドラインに基づいてIMT(intima-media thicknes) の測定を試みたところ、IMT は LDL コレステロールと正の相関を認めるとと もに、160mg/dl 以上と未満の群において有意 差を認めたとの報告があった。

また、小児FH ヘテロ患者ではIMT の増加 を認め、プラーク形成がみられたことから、小 児において薬物治療の対象とする高コレステ ロール血症患者を決定することは容易ではない が、少なくともその一部は対象と考えられるこ とが示唆されると述べられるとともに、小児生 活習慣病予防検診等のスクリーニング検査は、 小児肥満とその合併症の予防に有用ではないか との見解が述べられた。

「中学生のこころとからだ」
- スポーツ指導者の立場から-
山鹿市立山鹿中学校主幹教諭
(軟式野球部顧問) 吉野 栄治

近年、子どもを取り巻く環境の変化、家族や 地域社会の教育力の低下等により、自制心や規 範意識の低下、人間関係を形成する力の低下等、 子どもの心の活力が弱っているとともに、子ど もの体力・運動能力についても昭和60 年頃と 比較すると低い水準となっているとの報告があ った。

子どもの体力の低下の原因としては、外遊び やスポーツの重要性を軽視する国民に意識、都 市化・生活の利便化等の生活環境の変化等、様々 な要因が絡み合い、結果として子どもが体を動か す機会が減少していることから生じており、現 代の男の子の遊び場所は室内が最も多くなって おり、空き地や山、川等という遊び場が失われ ているのが現状となっているとの報告があった。

また、運動部活動の現状として、運動部イコ ール勝利志向という従来の一般的な在り方にも 変化が現れており、楽しみを第一と考える生徒 が増加しているとともに、生徒数の減少及び顧 問指導者の高齢化等、運動部活動を支える環境にも変化が出てきているとの報告があった。

最近の部活動指導を通して多い障害は、疲労 骨折である。肘や肩を痛めるケースより、疲労 がたまるほどの練習はしていないつもりにも関 わらず、腰や足の疲労骨折といったケースが増 えており、これも運動不足や食生活の変化等に より、体が弱くなったのではないかと見解が述 べられた。

特別講演

座長 熊本県医師会会長 福田 稠

「悩む力- 意味への意志について」
東京大学大学院教授 姜 尚中

始めに「戦後の日本は、当時の人々のそれま での生き方や政治や社会、文化や価値観等を問 い直すことを強いられ、そうした悩みや苦しみ等から見事に復興を成し遂げた。当時の悩む力 こそが戦後日本をつくった原動力であり、こう した悩む力が新しい価値あるものを生み出す。」 と述べられ、講演が開始された。

本講演では、「去る3 月11 日の東日本大震 災から一年半以上が過ぎたが、復興は進んでお らず、過去の出来事のように忘れ去られつつあ り、そのことを悩んでいただきたい。その悩む 力こそが被災地を復興させるとともに被災者の 心を救うのだ。」と述べられた。

また、「我々は出来るだけ悩みがない世界を作 ろうとするが、我々は悩み無縁で生きていくこと は出来ないのではないか。悩みぬいた結果、その 悩みのもがきの中から生きる意味を確信した人 はどんな過酷な状況に置かれようと生き抜く力 を身につけるであろう。」との見解が述べられた。

印象記

常任理事 宮里 善次

平成24 年11 月10 日、ホテル日航熊本にて「子どもたちの健やかな成長を願って」をメイン テーマとし平成24 年度第43 回全国学校保健・学校医大会が開催された。

午前中は5 つの分科会に分かれて発表が行われ、午後はシンポジウム及び特別講演が行われた。

午前中、筆者は第一分科会を拝聴した。

第一分科会では9 演題が発表された。

その中でも岩手県医師会の斉藤恵子先生が発表された「学校こころの検診に自我構造分析(エ ゴグラム)を取り入れた試み」は興味深いものであった。

1950 年代にエリック・バーンによって始められた交流分析は、「今、ここ」を問題として、今 ここの反応を変えれば、その人を変えたことになる。

これにより悩んでいる問題や対人的なトラブルへの自分の感じ方をはっきり気づかせて、冷静 に観察する態度を保たせ、好ましい人間関係を回復させる方法であり、気づきによって変わる可 能性を教えるものである。

発表者等は学校医として、体の定期健康診断だけではなく、こころの問題にも積極的に取り組み、 生徒にエゴグラムを行い、今の自分と理想の自分のエゴグラムを対比することで、今後伸ばした い部分を指摘し成長を促したとしている。

高校入学時に今の自分と理想の自分のエコグラムを作成し、毎年エゴグラムを行いながら問題 点を指摘してあげることで、三年時には理想の自分に近いエゴグラムに近づいている実態が提示 された。

対人関係がうまく出来ない子供達が多くなっている昨今、古い方法論であるが視覚的に自分の 問題点を理解できる点で、印象に残った発表であった。

午後のシンポジウムは『現代の子どもたちの「身体の二極化」について考える』をテーマとし 熊本大学大学院生命科学研究部整形外科学教授の水田博志先生による基調講演が行われた。

現代の子どもたちは親世代に比べて体格は良くなったが、体力は劣る。しかしながら、その実 態は幼少期からスポーツに打ち込むタイプと、ゲームやテレビに熱中して体を動かさないインド ア・タイプに二極化している。体力の平均値が親世代より劣るのは、インドア・タイプがより平 均点を押し下げている現状がある。講演では運動をしない、あるいはできない子どもたちの問題 点が指摘されたが、やり過ぎの弊害も指摘された。骨や筋肉、関節が完成していない子どもたち にとって過激なトレーニングは取り返しのつかない後遺症を残す。講演では様々な関節障害が提 示されたが、症状が出た時点での対応では必ず後遺症を残すことが強調された。逆に症状発現前 であれば、肘関節に何らかの所見があったとしても、運動を中止させることで回復することが示 された。激しい運動をしている子どもたちの定期的な健診の必要性を痛感した講演であった。

最後に『悩む力- 意味への意志について』と題して、東京大学大学院教授の姜尚中氏の特別講 演があった。

戦後の日本は当時の人々のそれまでの生き方や政治や社会、文化や価値観を根源的に問い直す ことを強いられ、そうしたことを生み出す苦しみの中から出発し、見事に復興を成し遂げた。

当時の悩む力こそが戦後日本をつくった原動力となっており、こうした悩む力が新しい価値あ るものを生み出すのだと述べられていた。しかし、やがてそれは高度経済成長となり、幸せで豊 かさを生み出したが、その結果はどうだろう?

国土の見境のない乱開発や巨大な利益誘導の構造、更にそれに寄生する様々な利害のシステム や会社主義に縛られた人生コース、階層的な序列に基づく教育システムや過度な受験戦争、政治 家の世襲化や強固な官僚制支配等、安心で安全だった豊かな経済大国の深部を蝕みつつあった。

欲望から生み出されるものは、本質的な悩む力から生み出されるものとは異なる。

3.11 東日本大震災から一年半以上が過ぎたが、復興への道のりは遅々として進まないばかりか、 今では過去の出来事のように忘れ去られた感さえ否めない。その事は当事者意識を持たない政治 家が政治に悩んでいないからだと断定されていた。政争という欲望に明け暮れている今の政治家 に失望を禁じ得ない。是非政治のことで悩んで頂きたい。

その悩む力が被災地を復興させ、被災者の心を救うのだと云う発言が印象的であった。

講演の最後に自らの著書『続・悩む力』のあとがきの一部(下記に記載)を述べて講演を終え られた。

『楽観論は力に通じ、悲観論は虚弱に通じる。この格言のような言葉が意味しているのは、幸せ な人生を送りたければ、明るく、楽しく、まともに、壮健に、活動的で晴れやかな毎日。まるで どこかの強壮剤のCM と見まがうような言葉こそ、この数十年に及ぶ私たちの社会のモットーだ った。しかし新しいミレニアムから10 年余り、これまでの幸福論や楽観論の底の浅さが明らか になりつつある時、3.11 の事態が起きたのである。私が言いたかったことは、楽観論的な人生論 を篩にかけ、悲観論を受け入れ、死や不幸、悲しみや苦痛、悲惨な出来事から眼をそらさず、し かしだからこそ、人生を存分に生きる道筋を示すことだった。それは「人間がはかなく死ぬ運命 にあるということを念頭に置いて、あくまでも謙虚に人間的なるものを肯定する」と云うことに ほかならない』

印象記

仲本病院 玉城 清嗣

第43 回全国学校保健・学校医大会が平成24 年11 月10 日午前10 時より熊本県のホテル日航 熊本にて「子どもたちの健やかな成長を願って」をメインテーマに開催された。

午前の部は第1 〜 5 分科会あり、学校医2 年目の私は学校検診の参考になればと思い、日頃の 診療とは異なる第3 分科会【からだ・こころ(3)】運動器検診・スポーツ傷害に参加することにした。

運動器検診・スポーツ傷害では内科検診と同時に行う運動器チェック項目:簡便な7 項目(歩 行以上、しゃがみ込み動作、肩の挙上、肘の曲げ伸ばし、上肢の変形、下肢の変形、脊柱変形) が挙げられていたが、検診では脊柱側弯症検診以外の項目は実施されていないのが現状とのこと。

事実、私自身もそうであった。

運動器検診を実施することで運動器形態異常・機能不全を早期発見することが可能になり、将 来のロコモ(運動過多に伴う四肢及び脊柱のスポーツ傷害)やメタボを予防することで健全な運 動器の発育と発達に繋がると思うと学校医として、反省させられることばかりであった。

また、小児期から若年成人における不規則な食生活、ダイエット志向による過度な食事制限、 一方で糖質過剰摂取、動物蛋白質と脂質の摂取量増加、運動不足、夜型生活習慣等による肥満の 増加、栄養状態の二極化が進み、全体的に低骨密度傾向にあるという報告もあった。

午後の部は基調講演から始まり「子どもの体と運動」というテーマで戦後、子どもの体格は顕 著に向上したが、体力水準は親世代に比較して低いレベルにあり、運動しない子どもの増加が要 因である。また、体力や運動能力の低い子どもでは運動や学習に対する意欲が低く、日常生活習 慣も好ましくない状態にある。

一方、スポーツの低年齢化が進み専門種目を特化してスポーツを行い無理な負担をかけ、障害 を起こす危険性もあり、ここでも運動習慣の二極性が指摘されていた。より運動器検診の必要性 を痛感した。

シンポジウムのテーマは『現代の子どもたちの「身体の二極化」について考える』であった。

子どもの遊びには、「遊び時間」、「遊び空間(場所)」、「遊び仲間」が必要と言われているが、 現代の子どもに一番人気の遊びはテレビゲームで小学生の男子の9 割以上がゲームをし、2 時間 以上する子は半数にも及ぶという。

遊び仲間もなく、遊び場所は自宅で、これは外遊びやスポーツの重要性を軽視する国民の意識、 都市化、生活の利便化等の環境の変化、生活習慣の乱れが影響し、家庭や地域社会の教育力の低 下や体験の減少等に繋がり、結果として、子どもたちが体を動かす機会が減少していると指摘し ている。

喫緊の課題は、「生活習慣の乱れからの脱却」が肝要と思うが、子どもたちの未来を考えると難 題が山積みする。

講演を拝聴し、学校医として私に「今、何ができるか」を試行錯誤しながら前進したいと思った。

印象記

桑江皮膚科医院 桑江朝二郎

私は今年度よりコザ小学校の校医に任命された。

子供達に戯れながら楽しくはやっているが、まだ、経験、知識が乏しい為少しでも参考になれ ばと思い本大会に参加した。今回は熊本で開催された。

初日は沖縄県医師会宮城会長、宮里常任理事と熊本名物の馬刺し等の馬料理で会食し、色々と 有り難いお話をしていただいた。

私は第1 分科会「こころ・心臓・腎臓・実態調査」を聴講。

一番印象に残ったのは岩手医科大学の時の同級生のお母様でもある、西松園内科医院の斉藤恵 子先生の「学校こころの検診に自我構造分析(エコグラム)を取り入れた試み」であった。

高校生に“今の自分” と“理想の自分” のエコグラムを取りその差を比べるというものであり、 1 年生時はA(成人)のモデルの値が“理想の自分” より“今の自分” の方が低いケースが多く、 3 年生時にはその差が縮まる事が多い。これは高校三年間で子どもの自我から大人の自我に変化 していく事が分かる。教育者が交流分析を学ぶ事は、発達の色々な段階にいる生徒と効果良く対 応出来るようになると結んでいた。

また、途中で第3 分科会「運動器検診・スポーツ傷害」へ移動し「柔道における重症頭部外傷 - 中学校の武道必修化をうけて-」を聴講した。

今年度より中学校で武道とダンスが必修化された為、頭部の外傷が増加する事が予想されるの でそれに対する対応が必要になってくる。

事故は中学1 年生及び高校1 年生で多いが、これは受け身の技術が未熟な初心者で多いと予想 され、また、重症頭部外傷では予後が悪い事が多いことから予防が大事である。

練習前の体調チェック、事故発生時の対応・救急搬送、練習の復帰の許可の基準等を周知させ ることが必要であるという事であった。

開業するとなかなか他科の先生と会話する事が減るので、今後も機会があればまた参加し地元 料理をつつきながら有り難いお話をお伺いしたいと思った。




お知らせ

沖縄県医師会医学会総会(平成25年12月)休会のお知らせ

来る平成25年11月16日(土)・17日(日)、沖縄県那覇市に於いて第113回九州医師会総会・医学 会【担当:沖縄県医師会】を開催するため、例年12月に開催している沖縄県医師会医学会総会は休会 となります。