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平成24年度 第2回都道府県医師会長協議会

宮城信雄

会長 宮城 信雄

去る11 月20 日(火)午後3 時より日本医 師会館において標記会長協議会が開催された。 はじめに、司会の三上裕司常任理事より開会の 辞があり、引き続き日医横倉会長より概ね次の とおり挨拶があった。

「今後の社会保障については、社会保障国民会 議で検討が進められている。この会議には日本 医師会を医療界の代表として参加させて頂くた め、強く申し入れをしているところだが、利益 団体ではないかとの批判があり、今のところ社 会保障の学識者だけで当初進めたいとの意見が ある。現場の意見を反映しない机上の空論とな る可能性があることで、強く要望を続けている。

この国民会議の議題では、医療改革、介護改 革、年金改革、少子化対策と、4 つに分類をさ れている。特に、医療改革の検討項目では、健 康の維持・増進や疾病の予防、早期発見を積極 的に促進すると同時に、医療従事者、医療施設 などの確保、有効活用を図ることで国民負担の 増大を抑制する必要な医療を確保したい。

2 点目が、医療保険制度について、財政基盤 の安定化、保険料の国民負担に関する公平の確 保、保険給付の対象となる療養範囲の適正化を 実施する検討課題。

3 点目では、医療のあり方について、個人の 尊重が重んぜられ、患者の意思がより尊重され るような必要な見直しを行って、特に、人生の 最終段階を穏やかに過ごせる環境整備を検討し てもらいたい。

4 点目が、今後の高齢者医療制度改革を検討課題としている。

政治が非常に不安定のなかで医療を取り巻く さまざまな問題がある。日本医師会の政策に誤 りがないように、この各都道府県の会長会議を 通じて各医師会との意見調整を行いながら業務 を遂行していきたいと思っている。」

引き続き協議に移り、各県から寄せられた質 問事項や日本医師会から提案された議題等につ いて協議・報告などが行われたので概要につい て報告する。

協 議

(1)精神科救急問題について「愛媛県」

<提案要旨(抜粋)>

厚生労働省2013 年予算概算要求を見ると、 精神科救急体制の整備については昨年予算と同 額の20 億円の要求となっており、具体的には 新たな施策が盛り込まれているのかどうか明確 ではない。日本医師会として、精神科救急問題 を、どのように捉え、具体的にどのような施策 を国に要望していくのか見解をお伺いしたい。

回答:三上常任理事

平成25 年度の厚生労働省予算概算要求の精 神科救急20 億については、その内訳を確認し ている。具体的には輪番等の体制整備、医師等 の待機料で16 億円と、全体の8 割である。救 急情報センター等のトリアージに関する人件費 が4 億円、約全体の2 割となっている、日医よ り概算要求に対して要望した事項が十分反映さ れていないことで、遺憾な状況だと考えている。

日医からの要望については、精神科救急医療 の充実、継続かつ増額、精神科救急医療センタ ーや精神科救急情報センター機能の整備、精神 科医療機関間、あるいは身体合併症等の受け入 れ可能な一般医療機関、総合病院精神科との連 携強化を図るなど、精神科救急医療体制、自殺 対策等の充実を図ることを目的に、精神科救急 医療体制整備事業の充実強化、さらに精神科救 急医療体制の整備事業交付基準額に増額を行っ ていただきたいと要望をした。さらに、情報シ ステムを含む連携体制の強化と自殺未遂者増の 自殺リスクのある救急患者に対する現状の医師 と精神科医師との連携についての要望をしてい る。さらに、精神科疾患を伴う精神科救急搬送 患者の増加が懸念されるなか、現在の救急医療 を取り巻く問題点として、ご指摘のように2 つ あることを日医として認識している。

1 つは、診療報酬上の評価があってもさまざ まな施設基準によって、実際には算定できない、 もう1 つは一般救急医療体制において救急告示 医療機関のなかに精神科を有している医療機関 が極めて少ない、この2 点である。

精神疾患患者の夜間急変時や、自殺未遂者の ように薬物の多量服用やリストカット等の身体的な症状を有する者の多くは一般救急医療機関 へ搬送されているが、精神科を有していない救 急告示医療機関において身体的な症状への対応 のみならず、同時に精神症状への対応も行う必要 があり、非常に苦慮している。そのために、夜 間急変患者あるいは自殺未遂者への対応として、 一般救急医療において精神科医がかかわれるよ う、身体科と精神科との連携による受け入れ体 制の整備が喫緊の課題であると認識しており、財 政支援を国が行うべきとの要望をしている。

厚生労働省は精神保健医療福祉の充実に関す る取り組みの1 つとして、必要な場合には夜間・ 休日でも適切な医療にかかることができるため の精神科救急医療体制を構築するとうたってお り、救急医療機関との連携強化等により身体疾 患を合併する精神疾患患者の受け入れ体制を確 保することを推進するとしている。

これに対して、厚生労働省にあった精神科救 急医療体制に関する検討会では、一般医療機関 と精神科医療機関との連携の対応モデルとし て、複合的な問題にそれぞれ専門的対応が並行 して同時に行われる並列モデル、優先度の高い 問題からそれぞれ専門的対応が順次行われる縦 列モデルが示されている。今後、精神科医療機 関と一般医療機関との間で患者紹介、あるいは 診療支援、転院等が円滑に行われるための対策 を講じることが必要だと考えている。

現在、各都道府県において、精神科救急医療 体制整備事業では精神科と身体科の連携の推進 のための双方の関係者が参加する協議会の開催 や、情報共有の取り組み、事例検討会等の従事 者の研修会等を実施するとされているが、事業 費については国庫補助率2 分の1、すなわち地 方財政が逼迫している状況下では残りの2 分の 1 を地方自治体が捻出しなければならない、そ れぞれ都道府県の財政状況によっては全く活用 できない状況である。今後、国庫補助率の改善、 すなわち10 分の10 事業にすることだが、こ の事業費のさらなる拡充を粘り強く訴えていき たいと考えている。

そして、このことに加えて、次回の診療報酬 改定において、例えば一般診療科の医療機関の 身体疾患をもつ患者が精神症状の発現・増悪等 により、精神科病院で受け入れた場合等の連携についても、縦列モデルとして点数表上評価す るなどの具体的対応について交渉していきた い。精神疾患が医療計画上5 疾病の1 つとして 位置づけられたことを契機に、国も、積極的な 支援策を展開すべきであることは言うまでもな い。我々もそれを期待するところである。不採 算の象徴とも言える救急医療のなかで、特に精 神科救急、これは施設の整備が十分でないこと に加え、精神疾患の増加で各地域において対応 に苦慮している実情がある。地域医療崩壊が叫 ばれるなかで、これまで地域医療を守るために 努力してきた医療現場のモチベーションを高め る対応が今求められていることを国に認識させ るためにも今後とも強く対応を求めていく所存 である。

(2)医療現場での事務作業量の軽減を「東京都」

<提案要旨(抜粋)>

種々の医療連携を進めている中、担当する医 師、そして医療事務の事務作業量はますます増 加し、しかも煩雑となってきている。医師、看 護師をはじめとするマンパワー不足の医療現場 では、患者さんとそのご家族に相対する時間を 大切にした上で、いかに効率よく事務作業をこ なしていくかが求められている。

日本医師会として、全国で心暖まる医療を展 開するためにも、考慮いただきたい。

回答:藤川常任理事

ご指摘のとおり、医師の医療事務作業量はす べての医療機関において、今後も増加するとと もに煩雑化することが予想される。この医師の 事務作業が増加することにより、医師の本来業 務を阻害し、その結果が患者さんに提供する医 療に悪影響を及ぼすのであれば、その見直しや 改善は絶対に必要である。

特に、医師不足の解消対策の観点からも、本 会としては厚生労働省に対して医師の本来業務 を阻害するような書類等について簡素化するよ うに働きかけを行う。

具体的には、急性期医療機関の厳しい在院日 数の基準を患者さんの病状にふさわしい必要な入院期間に緩和することや、先生方の医療事務 を煩雑にしている書類等を事務方である医療秘 書に担当させ適切な診療報酬を設定するなど、 医師のみならず看護師等を含めた事務作業の削 減対策を練りたい。

また、ご案内のとおり、日本医師会認定医療 秘書の制度は、昭和56 年より診療報酬請求事 務を含む医療事務の知識と最新の情報処理技術 を備え、診療所・病院で質の高い医療秘書とし て働くことができる人材養成を目指してきた。

そして、昨年度までの2 年間にわたる日本医 師会認定医療秘書のあり方に関する検討委員会 の成果を受けて、医療秘書としての能力を高め るため、科目にコミュニケーション論を新設、 また、演習を含む授業などを行うなど、接遇教 育を初めとした全人的教育の充実を図るカリキ ュラム改正を、現在、準備している。

平成20 年度の診療報酬改定においては、病 院の医師事務作業補助体制加算が認められ、こ れは地域の急性期医療を担う医療機関で、医師、 医療関係職員、事務職員の間での業務の役割分 担を推進し、医師の事務作業を補助する医師事 務作業補助者を配置する体制を評価する入院基 本料の加算である。

平成22 年度改定では、医師事務作業補助者 の配置によって一定の勤務医の負担軽減効果が 見られたことから、加算の引き上げを行うとと もに、より多くの医師事務作業補助者を設置し た場合の評価が設けられた。また、平成24 年 度改定では、補助者の人数設置に応じたよりき め細かい評価がなされたところである。

しかしながら、診療所や中小病院の医師にお いても、当然、事務作業に大変な負担を強いら れている状況があり、日本医師会としては今後 とも一貫してこの加算の適用拡大を求めていく。

さらには民間保険等の診断書作成など、医師 の事務作業負担が増加している事実もあり、本 会は診断書の書式統一を要望するなど、診断書 の標準化、電子化の協力を得ている事実もある。

今後は、その他関連業界との連携を図り、医 師の本来業務へ支障を来す事務作業の軽減化を 図っていきたい。

(3)新型インフルエンザ等感染症危機管理体制の強化について「兵庫県」

<提案要旨(抜粋)>

国の「行動計画」改定に対するパブリックコ メントとしての県医意見(2011.8)を発して、 その問題点を1.「新型インフルエンザ」の定義 ととらえ方について、2.「流行規模及び被害の 想定」について、3.「対策の基本方針」につい て指摘したが、改善されないままである。

新型インフルエンザ等感染症への対応につい ては、日医はじめ全国の医師会のより積極的な 関与と準備が求められると思うが、関わってこ られた日医の担当役員より、現状説明と日医と しての取組の方向性をお聞きしたい。

回答:小森常任理事

「(H1N1)2009」においては、兵庫県医師会 を初め、地域の先生方が大変なご活動をされた おかげで、死亡者数199 名で済んだことはご 承知のとおりであり、特に兵庫県医師会が平成 22 年9 月に発行された新型インフルエンザ対 応検証報告書は、私も有識者会議等に参加をす るとき常に携えて出席をしている。まず、ご指 摘の第1 点目、「新型インフルエンザ」の定義 の考え方では、ご承知のように、病原性につい ては病原体側の要因、また重症化率や致死率は ウイルスの病原性に宿主側の要因を加味して表 されるものであり、新型インフルエンザ対策行 動計画においては、感染率につきまして全人口 の最大25%が罹患、致死率についてはアジア・ インフルエンザなどの中程度のものの場合は 0.53%、スペイン・インフルエンザのような重 症のもので2.0%と、仮置きで想定をしている。

また、本年1 月31 日に新型インフルエンザ 専門家会議が公表したガイドラインの見直しに 係る意見書においても同様の表現がされている ほか、感染力については感染拡大防止策は感染 力にかかわらず必要となること、感染力の大き さと対策の効果との関係は複雑であり、感染力 を数値化して対策を区分することは困難である ことから、感染力によって対策を区分せず、個々 の対策の実施の判断において必要な場合に感染 力を考慮することとされている。

一方、今回の新型インフルエンザ等対策特別 措置法成立の際の附帯決議においては、私ども からさまざまな観点で決議をしていただいた。 その1 点としても、被害想定については最新の 科学的知見を踏まえ、いたずらに過大なものと することがないようにすることで、明記をされ たところである。

新型インフルエンザ等対策有識者会議及び分 科会においは、現時点ではH5N1 は伝播力が小 さいが、ブタ等を経由してヒト・ヒト感染する ようになった場合も考慮し、また病原性につい ても専門家に科学的な分析・検証すべきである と議論がされ、その結果、亜型を限定的に明記 することを避け、海外及び国内の臨床例を集積 し、それらに基づき基本的対処方針等を諮問委 員会で検証・判断することになった。

続いて、第2 点目の流行規模及び被害の想 定では、先ほどのように仮置きの前提のうえで 登録事業者の事業計画の策定等について定めて いるところであるが、同会議において、新型イ ンフルエンザの被害想定については、あくまで 全く医療が介入しない場合の致死率を使用して いることから、2009 年のデータ等に基づいて、 医療介入の係数や病原性の高低も考慮しつつ、 被害想定をより精緻化しないと無意味であり、 このままの形での行動計画やガイドラインが策 定されてしまうと各地域での計画も立てられな い。そして予想される入院者数、死亡者数など により数パターンの計画を準備していくことが 必要であることを従来からも主張している。

また、ご指摘のとおり、2009 年の流行の際 には我が国の死亡率が諸外国と比べ低かったこ とは、日本の医療水準、国民皆保険制度、患者・ 医師の信頼関係、抗インフルエンザウイルス薬 の早期投与等、流行時のみならず、日ごろから の医師を初めとした医療関係者の真摯な努力結 果であることを指摘した。

さらに、当会員においては、緊急事態宣言に 基づく緊急措置の発動においては、兵庫県医師 会における取り組みのように、各都道府県の自 律的行動を阻害するものであってはならないこ とを終始一貫して主張していることをご理解い ただきたい。また、感染拡大防止対策について は、ご指摘の兵庫での対策を踏まえ、特措法において、集会の自粛等の規定が盛り込まれ、現 在、その具体的内容について審議が継続してい る状況である。

3 点目の対策の基本方針については、「帰国 者・接触者外来」以外を排除した通知と運用に は問題点が余りにも多いとのご指摘には、全く 見解を同じくするものであり、地域の実情に応 じた弾力的な運用こそが大切であることは今後 も指摘をしていく。

また、特措法においては、医療関係者に対す る罰則規定を伴わない従事要請、あるいは指示 権限が都道府県知事に付与されており、本件に ついても極めて謙抑的に行うよう、再三にわた り主張している。

また、予防接種や診療に必要な医療従事者数 等については、調整されないまま、それぞれ別 途に縦割りで議論されていることを問題点とし て指摘している。そのうえで医療資源には限り があり、例えばインフルエンザ治療を行いなが ら一方で予防接種を全国民に3 カ月で完了する ことは、到底不可能であること。被害想定から のみならず、現実の医療資源からそれぞれの配 分も考慮したうえでの必要な医療従事者数の想 定をすべきであることを主張している。

先般の有識者会議の「医療・公衆衛生分科会」 においては、診療科別重症化別医療体制を計画 している自治体の事例等も紹介されたが、今後、 各自治体が実際に行動計画を立てる際には今回 の兵庫県医師会のご指摘も踏まえ、各地域の医 師会等と連携をして対応することも、国からも 指導・助言するよう求めていく。

いずれにしても、現在、有識者会議の親会議、 あるいは医療・公衆衛生、社会機能それぞれの 分科会において、政省令、告示の制定に関する ものと並行して行動計画、ガイドラインの見直 しについても議論している。年明けの中間的な 取りまとめ、5 月の法施行に向けて、医療体制、 医療関係者への補償等も含め、幅広く議論を進 めるなかで、ご指摘の事項を反映させるべく、 さらに努力をしてまいる所存である。ご理解と ご協力を改めてお願いを申し上げる。

(4)専門医制度のあり方について「日医」

<提案要旨:小森常任理事>

専門医制度のあり方に関する議論について、 その進捗状況のご報告をさせていただき、ご議 論のたたき台とさせていただきたい。

専門医に関する議論については、30 年以上 にわたり日本医師会、厚生労働省等の間で大変 厳しい意見の対立があることはご承知のとおり である。

ただ、平成14 年に厚生労働省より、専門医 広告の告示の通知が示され、会員数が1,000 人 以上であり、8 割以上が医師であることなどの 一定の要件を満たせば、その学会に所属して要 件を満たした方が専門医としての広告を行って よい措置がされた。この平成14 年の厚労省の 告示は学会の外形基準のみを対象とするもの で、専門医の資質については全く問われないた め、さまざまな分野の専門医が乱立し、現在、 その数は医科領域で実に55 事態になっている。 このまま放置すると、設立される学会や認定さ れる専門医の資質が担保されず、国民にも専門 医制度がわかりにくいうえに、医療界のプロフ ェッショナル・オートノミーによる自律機能が 発揮されないことになり、この流れを是正する 必要がある。専門医制度の改革の機運が生まれ てきたのも、1 点の現状だろうと思う。

日本専門医評価認定機構からこの問題を是正 するため、中立的な第三者機関を設置する必要 があるのではないかとの意見が、一昨年5 月に 出された。専認機構の主催の会議として第三者 機関検討委員会が設置され、日本医師会からは 高杉常任理事が出席をしている。

第三者機関の設置については、専門医制度の みならず、医療制度の将来に大きな影響を与え るものであることから、当時の日本医師会執行 部としても緊張感をもってこの対応に当たり、 第三者機関検討委員会は合計6 回開催された が、その都度常任理事会、役員打合会等で協議 を重ねた。平成22 年11 月30 日には専認機構 の池田理事長を日本医師会にお招きし、専門医 制度の将来像について、意見交換をしたほか、 非公式にも議論を重ね、専門医機構設立の理念 をまとめることについて、合意した。

専門医機構(仮称)の件については、設立の理念として、我が国の医学、医療の中核をなす日本 医学会と日本医師会の緊密な協力体制を中心に全 医学会の英知を結集して新たな理念に沿った日本 専門医認定機構を設立することとしている。

これらの動きに対抗して、昨年夏、厚生労働 省は省内に専門医のあり方に関する検討会を設 置したい旨申し出があった。この検討会の設置 につきましては、かじ取りを誤ると専門医制度 の基本設計について国が強く関与することにな りかねないため、日本医師会としては、細心の 注意を払って頻回に議論し、委員の人選に至る まで厚生労働省側に私どもの意見を強く主張し た。検討会の構成員については、日本医師会を 2 名とすることで合意され、当初は三上常任理 事と高杉常任理事、本年4 月から高杉常任理 事と私が担当して出席をしている。また、平成 24 年1 月11 日、第4 回の検討会では、日本医 師会の考え方について意見陳述を行った。

専門医に関する日本医師会の主張は大別して5項目である。

1. 専門医の評価認定については、プロフェッショナル・オートノミーを基盤としてこれを行うこと。
2. 現行の医療制度と整合性のとれた専門医制度とし、現在、地域医療に従事されているかかりつけ医について十分に評価すること。
3. 専門医制度を医師の偏在・是正を目的とすることにより制度自体を歪めないこと。
4. 専門医のインセンティブについては慎重に議論すること。
5. 日本医師会の生涯教育制度を専門医の認定更新に活用することであります。

また、専門医制度は、いわゆる総合医、総合 診療医との議論とも密接に絡みますので、生涯 教育推進委員会の答申を踏まえ、日本医師会の 考え方となっている。

要点としては有床、無床を問わず、現在の開 業医師の先生方が日々の診療のなかで地域住民 の健康と生活を支え、我が国の医療に貢献して いる認識を踏まえて、かかりつけ医という現在 の日本の医療のあり方を評価すべきであること を第一に主張している。

かかりつけ医の先生方はそのほとんどが大学 や中核病院で少なくとも10 年以上勤務・研さんを積まれ、セカンダリーケアはもちろん、救 急、超急性期や重篤な疾患に対応する能力を身 につけられ、それぞれの分野でのしっかりとし た専門性を背骨にもたれたうえで地域で開業す ることによって多くの患者さんを診療所の段階 で治療をしている。このかかりつけ医制度こそ が日本の医療の根幹を支えており、日本の医療 が国際的にも安価で高質で平等な医療提供体制 が保たれていることを繰り返し主張してきた。

一方、総合診療医については、へき地など、 地域によっては総合的な診療能力を有する医師 が必要な状況も考慮したうえで、こういった医 師不足などの地域の医療を担うなどの医師の能 力を専門領域の1 つとして評価することについ て、一定の理解をしているところである。

総合診療医の名称については、総合医(仮称) に関する検討会のなかで議論が行われ、この検 討会は7 月から10 月にかけて3 回開催をされ ている。この検討会は専認機構が主催している が、厚労省の検討会の座長である久日本医学 会長から、専門医のあり方に関する検討会の場 で、名称等については専認機構の当該検討会で 議論し、その結果を厚労省の専門医のあり方に 関する検討会で報告するよう要請を受け設置さ れ、委員長は国の検討会の副座長である金澤一 郎元日本学術会議長であり、厚労省もオブザー バーとして参加をしている。私が委員として参 画しているので、そこでも繰り返しかかりつけ 医の意義についてもご説明を申し上げている。

この結果、10 月1 日に行われた第3 回検討 会において、日本医師会の主張が全面的に受け 入れられ、専門医の認定に当たる呼称について は、総合診療医に統一する見解で意見集約がさ れた。総合診療医はあくまで専門医の1 つとし てへき地などでプライマリ・ケアに当たる医師 を医療的側面から評価するものであり、認定要 件については内科、外科、整形外科等、他科の 専門医の先生方と同様な一定の水準を要求され るものである。この結論については、11 月29 日、 あるいは12 月の国の検討会に報告されるため、 国の検討会においても強い拘束力をもつものと 考えられている。

国の検討会の議論の推移では中間取りまとめ については、検討会での激しい議論を含め、検討会の開催前には必ず厚労省担当課長とも折衝 し、十数回以上にわたり文言の修正に努めてき た。日本医師会としては、検討会で行われた議 論を確認し、再三再四強い主張を繰り返した結 果、当初の原案とは大きく隔たった医療側の主 張を取り入れた中間まとめになっている。

厚労省側の意図は、専門医制度や総合的な診 療能力を有する医師にかかわる諸制度につい て、国がこれに強く関与して管理を行おうとす るものであり、中間まとめからはそれらの関与 をにおわせる文言については徹底して削除する よう努めてきた。

一例を挙げさせていただくと、専門医の地域 偏在、診療科偏在の是正について、国がこれに 関与することについては、全国レベル、都道府 県レベルで各診療領域の専門医の養成数を管 理・調整する。専門医の養成プロセスにおいて も偏在対策につながる取り組みについての強い 要請がある、医療制度上に位置づける必要があ る、などの文言を削除している。

また、総合医を専門医の1 つとして位置づけ、 その育成に当たっては国がこれに関与する点に ついては、いわゆるゲートキーパー制の創設に結 びつきかねないような文言についても丹念に削 除している。当初、総合医と記載していた名称 については、総合医、総合・総合診療医、さら にはすべて「総合医」「総合診療医」と書き分け るように日本医師会より指摘・修正済みであり、 さらに先ほどご紹介したように、選任機構での 検討会の報告を受けて、最終的には総合診療医 の名称となるよう議論を終始リードしている。

総合医・総合診療医が必要とされる背景には、 高齢者の心身を総合的に診る医師の不足や、地 域の中核的病院における医師の不足などの問題 もある。あるいは医療行政的なバックアップも 考える必要があるなどの文言についてもすべて 削除させてきたところである。

したがって、先ほど申し上げた選任機構の検 討会での議論も踏まえ、へき地などにおいてプ ライマリ・ケアを担う医師の専門医としての評 価にかかわる名称は総合診療医となり、現在、 地域医療を担っているかかりつけ医の先生方 は、地域の患者・住民の疾病、健康、生活にか かわる種々の要請に応える存在であり、専門医制度とはなじまないものとして、明確に整理さ れることになると考えている。

これらが検討会の現在までの動きであり、専 門医制度の設計に当たっては、あくまで医療界 のプロフェッショナル・オートノミーによって これを堅持する日本医師会の主張はこの検討会 でも大多数の委員の合意が得られており、検討 会の今後のスケジュールについては、年度内に あと5 回程度の会議が開催を予定されていると ころである。

ここからは、まだ公にされていない情報で、 お心のうちだけにとどめておいていただきたい が、水面下でも種々の議論があった。本年秋、 厚労省は第三者機関に対する財政支援につい て、来年度予算に相当額の概算要求を行いたい と考えを内々に打診をしてきた。本件について は、国が主導権を握り、管理医療への道を意図 することが明確であったため、日本医師会とし ては、第三者機関に対する財政支援そのものが 検討会の議論の結論に反したものであり、全く 容認できないと反論してきたところである。今 後も国の意図する医療にかかわる管理体制のも くろみに対しては徹底的に闘い、粉砕していき たいと思う。

また、専門医にかかわる制度設計については、 細心の注意を払いながら協議に当たっているた め、先生方の一層のご理解とご支援を賜りたく、 改めて心からお願い申し上げる。

(5)診療に関連した予期しない死亡の調査機関設立について「日医」

<提案要旨 高杉常任理事>

23 年の6 月に、医療事故調査制度の創設に 向けた基本的提言について提示をした。

この要点は、ご存じのとおり、きちんと死因 を分析して調査していく、その院内事故調査委 員会が機能した場合には、医療安全調査機構に 依頼する。そして、このようなケースは警察に 届けるのでなく、医療安全調査機構に届けて分 析して予防に役立てる。医療の不確実性、複雑 性、リスク性からは、個人の追及ではなく、病 院を挙げて究明、予防対策につなげる。当然、 対話型のADR、あるいは医療メディエーショ ンの技術が大切になってくるだろう。これらの医療界挙げての真摯な取り組みを続けていくこ とで医師法21 条の改正につなげていく。でき れば、医療無過失救済制度は検討したい内容で あるが、こういう動きを見て、23 年8 月に厚 労省の医療の資質向上に資する無過失補償制度 のあり方に関する検討会が設置された。

そして、平成23 年10 月から11 月に全国の医師会にアンケート調査をした。

24 年の2 月に動きを見て、今度は無過失補償 制度ではだめだと。医療事故に係る調査の仕組 みのあり方に関する検討部会を設置しようと申 し上げ、厚労省で医療事故にかかわる調査に関 しての検討部会が現在まで8 回行われている。

一方で、24 年3 月から医事紛争医療裁判外 紛争処理解決機関連絡調整会議が、すなわち ADR だが、この会議が5 回行われた。その6 回目に日医で私が初めて参加をした。

そして、24 年5 月から医療関係団体と意見 集約に向けて話し合いをしている。四病協や、 全国医学部長病院長会議、日本医師会との担当 役員の意見交換会も行っている。

24 年6 月15 日には死因究明2 法案が決まり 医療関連死はこれから外すようにと意見を述べ、 何とかこれは医療関連死を外すことができた。

本件を受けて、代議員総会も意識したが、24 年9 月21 日に、もし周囲の状況から見て法律 にされるのならこれだけのことは外さないでく れという骨子(案)をお見せした。

そして、24 年10 月16 日に日医理事会、24 年10 月28 日に日本医師会代議員総会におい て、十分な議論がなされていない等の声を受け てもう1 度プロジェクト委員会を設けることに なった。

背景については、医療事故に係る調査の仕組 みのあり方検討会は8 回になった。前回は、捜 査機関のかかわり方の段階に入っている。捜査 機関とのかかわりにおいては、途端に医療界が アレルギーとなって、そのまま進んでいない。

一方、モデル事業を引き継いだ医療安全調査 機構は事業仕分けに遭い、7,000 万円程度の減 額査定を受けた。しかし、関係各学会、そして、日本医師会、病院団体も、これは意義のある事 業のため、何とか医療界の試みとして制度化に 向けて頑張っている。

そして、企画部会、これは日本医師会の提言 を素案にした背景でつくっているが、そこには 意見を十分に述べた。そのたたき台が先般まと まり、骨子(案)を出す段階では、まだこの企 画部会の意見はまとまっていなかった。日医の 提言実現に向けて頑張っているつもりであった。

一方、政権は非常に不安定で、解散となった が、その死因究明法案、あるいは消費者庁の医 療事故に対する視点、あるいは死因究明法案の 成立過程を見たときに、原則、考えだけはまと めてお示ししたつもりである。医療の未来を決 めることであり、早急に事を進めるつもりでは ないが、誤解を招いたことは担当としておわび する。

また、プロジェクト委員会もまとまると思う が、再度確認意見をまとめながら、その過程を 再度ご報告したいと思う。

ただ、私は各地域にお邪魔して直接にいろい ろお話をすると、ご理解いただいている場合が 多く、反対意見よりもむしろ頑張れとの意見を たくさんいただいている。文章ではなかなかわ かりにくく、あるいは書きにくい面があった、 あるいはその文章表現が下手な点も認めるが、 意のあるところをご理解いただきながら、何と かお知恵を借りながら、そう慌てることはない と思うが、頑張りたいと思う。

(6)「都道府県医師会宛て文書管理システム」の郡市区等医師会への開示について「日医」

<提案要旨 三上常任理事>

「都道府県医師会宛て文書管理システム」の郡 市区等医師会への開示について、発信文書が日 医から出ているが、郡市区医師会に届くのが遅 いということで、今は都道府県医師会あての文 書管理システムだが、郡市区医師会へも開示し たいということである。準備が必要となるため、 利用ができるようになればまたお知らせする。