沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 1月号

4 回目の巳年の抱負

崎間  敦

琉球大学保健管理センター  崎間  敦

新年明けましておめでとうございます。沖縄 県医師会の会員のみなさまには、巳年の希望に 満ちた新春をお迎えのことと心よりお慶び申し 上げます。

私にとって今年は 4 回目の干支(巳)年となり ます。今年の抱負を語る前に、まず、前回の干 支年の頃を思い起こしてみることにしました。 12年前の年男の時は念願であったアメリカ留 学という貴重な体験をさせて頂きました。ウェ イク・フォレスト大学の高血圧血管病センター のデボラ・ディズ教授の研究室で加齢に伴う動 脈圧受容体反射機能障害のメカニズムに関する 研究に従事させて頂きました。この動脈圧受容 体反射は 1心拍毎の瞬時の循環調節を行う重要 な生体内のシステムです。動脈圧受容体は頚動 脈洞と大動脈弓にある伸展受容体であり、血圧 が上昇すると動脈圧受容体が伸展され、その情 報(神経インパルス)は求心性神経を介して延髄 の孤束核(NTS)に投射されます。次に、神経 インパルスは NTS から中継核である尾側延髄 腹外側野(CVLM)へ投射されます。CVLM は 血管運動中枢である吻側延髄腹外側野(RVLM) の神経細胞群に抑制をかけ交感神経の出力を抑 制し、上昇した血圧をベースラインのレベル へ戻します。加えて、視床下部や上位中枢か ら RVLM へ興奮性、抑制性入力により最終的 な交感神経の出力が規定されます。逆に、血圧 が低下すると動脈圧受容体の伸展が低下し、神 経インパルスが減り、血圧をベースラインのレ ベルに上昇させる方向へ作用します。レニン・ アンジオテンシン系(RAS)は脳内にも存在し ており、脳内 RAS は動脈圧受容体反射機能に 重要な役割を果たしています。脳内アンジオテ ンシン変換酵素(ACE)/ アンジオテンシンU/ アンジオテンシンU 1 型受容体(AT1)系は交 感神経系を亢進させ、動脈圧受容体反射機能を 悪化させる一方、アンジオテンシン変換酵素 2 (ACE2)/ アンジオテンシン―(1-7)/Mas 受容 体系は ACE/Ang U/AT1 系に拮抗する作用を 有しています。当時は随分と苦労したこともあ りましたが、研究成果を国際誌に掲載できたこ とは大変幸運でした。この経験が現在の私自身 のバックボーンのひとつとなっています。

さて、知人からの受け売りで恐縮なのです が、巳年の「巳」の字は「止む」意味があり、草 木の成長が極限に達した状態を表しているそ うです。4 回目となる巳年は、「一社会人、家 庭人として油の乗り切った充実期の入り口に立 った。」と、私なりに解釈しています。そこで、 これからの人生はこれまでに培った経験・知識・ 技術を活かして、お世話になった地域社会、職 場、そして家族への貢献を第一に行動すること を目標に掲げたいと思っています。ある賢人の 言葉があります。「老人になったときに、見せ るべきものをもっているか。語るべきものをも っているか。伝えるべきものをもっているか。」 このうち、一つでももっていれば良いとありま す。日本の若者が草食男子と揶揄される昨今、 個人的な目標以外に社会に貢献するという目標 を掲げることも若者を教育・指導する中壮年で ある我々の使命ではなかろうかと考えていま す。焦らずしなやかに日々精進し、掲げた目標 を達成できたらと思っています。

最後に、本年度のみなさま方のご健勝とご多 幸を祈念いたしまして、巳年の抱負と新年のあ いさつとさせていただきます。