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研修医とともに

和氣  稔

沖縄県立中部病院 循環器内科  和氣  稔

新年あけましておめでとうございます。

執筆依頼を受けるまで、今年自分が年男だと 気づきませんでした。

これといって皆様にご披露できるような趣味 や特技もなく、「趣味を見つけるのが今年最大 の目標です!」と書くわけにもいかないので、 医師人生の87%を占める中部病院での自身を 振り返ってみたいと思います。

今でこそ初期研修の各科ローテーションは当 たり前ですが、私が卒業した頃はすぐに専科を 選び入局する時代でした。さほど反骨精神を持 っていたわけではありませんが、自分の将来像 として今でいう家庭医のイメージを抱いていた 私は、専門を決めず一通り何でも診られる医者 になろうと中部病院で医師としての第一歩を刻 みました。

朝から晩まで終わりの見えない仕事に追わ れ、食事も睡眠も隙間時間で済ませ、カンファ レンスではいつも開始早々意識が遠のく毎日で したが、先輩や同僚、後輩にも志の高く熱い輩 が多く、優秀な上級医に少しでも近づこうと「よ く見て」「よく聴き」「一生懸命まねて」適度の 緊張感の中で研修していたように思います。病 院から外に出ることの少ない特殊な環境でし たが不思議と疲れを感じた記憶は少なく、たま に空いた夜は酒も飲めないのに同僚と飲みに行 き、思い起こすと楽しかったような気さえして きます。

研修が進むうちに尊敬する指導医から循環器 内科の醍醐味を教わり、General Cardiologist を目指すようになりました。多くの検査機器 を駆使して診断にあたり、内科でありながら 技術を極めることで外科に近い治療を行える ことに遣り甲斐を感じ、次第に専門医として の Cardiovascular Intervention を 深 め る こ と になりましたが、私の中ではあくまで原点は Generalist でありたいと思っています。

中部病院では昔からローテーション研修が行 われており、一年上の研修医が後輩を指導する 屋根瓦式研修として広く知られる様になりまし た。研修医の成長は著しく、1年目より2年目、 更に後期研修医になるとその伸び代には目を見 張るものがあり、曖昧な知識でごまかすことは できないので指導医も研修制度のおかげで鍛え られているとも言えます。

ただ指導する側としては、忙しい臨床現場の 中でいろいろ教えてようやく戦力になったかと 思えばローテーションし、また新しい研修医に 一から同じことを繰り返さなければならないと いうエンドレスループは、教育へのエネルギー を次第に消耗させてしまいます。

でも、そんなプチ鬱状態から初心に返らせて くれるのも研修医であり、純粋に一生懸命患者 のことを考え、寝る時間を割いて診療を続けて いる直向きな彼らを見ていると、もう少し頑張 ろうという気力が再び沸きあがり、それを繰り 返すうちいつの間にか 5 回目の巳年を迎えてし まいました。

自分が伝えていることは研修医の役に立って いるのだろうか?今の自分は目標としていた指 導医になれているだろうか?と日々自問しなが ら、最近特に思うことは、暗く疲れた顔をして いては幾ら良いことを言っても響かない、自分 自身が余裕を持って “楽しく” していないと研 修医も共感できないということです。理想の指 導医にはなかなか近づけませんが、若い彼らか ら沢山の元気をもらいながら、自分の持ってい るものを一つでも多く伝え、研修医とともに今 年ももう一歩前進していきたいと思います。

恩師、同僚、後輩に恵まれてきたことに感謝 し、CHANGE&FORWARD。