ハートライフ病院 仲田 操
皆様、新年明けましておめでとうございます。
早いもので 4 回目のトシビーを迎え、もうす ぐ 50 歳です。それなりの年齢になったのです が、振り返ってもこれといって特に懐かしいも のがないのが残念です。忙しい研修医生活があ り、長くはなかったけれどニューヨークでも研 修し、東京の循環器専門病院で働いた時期もあ りましたが。きっと私が傍若無人に自由奔放に 暮らし、今一つ一所懸命に生きてこなかったか らに違いありません。トシビー・干支にちなん で無理に思い出を探してみても仕方がなく、新 年の抱負といっても大したものはありません。 そこで、趣旨と外れたものと知りつつも、歳を 取り、なぜか興味をもつようになった禅と焼き 物のことを書くことで近況報告と致します。そ して、それらに共感できるものがおありの先生 は、どこかでお会いした折に、お声を掛けて頂 ければ幸いです。
初めて禅寺で座禅を組んだのは、学会のつい でに立ち寄った鎌倉五山第二位に列せられる円 覚寺でした。円覚寺は、鎌倉幕府第 8 代執権北 条時宗が元寇の戦没者の菩提を弔い禅道の普及 のために開山した禅寺で、夏目漱石や島崎藤村 も参禅したことでも知られています。何気なく 見ていた観光雑誌で土日に一般の人も座禅会に 参加できることを知り、座禅を組みに行きまし た。座禅の組み方を教えてもらい、約 45 分間 自分の呼吸を数える数息観を行いつつ瞑想しよ うとしたのですが全く駄目でした。さらに 45 分間、閑坐して松風は聴こえても無の境地には 程遠いことが分かりました。警策で肩を打って もらいながら、なるほど、常人は半眼でなくて 閉眼して寝てしまわない限り無にはなれないの だと思いました。それから時々禅の入門書や随 筆などを読むようになり、座禅も組みましたが、 禅語は意味を取り違えることばかりで、悟りも 全く開かれません。もともとが雑念の塊のよう な人間には無理ではと諦めていますが、それで も単純に知足を心がければ何かが開けるような 気がしています。
もうひとつは焼き物で、有田の磁器、特に今 右衛門に魅了されたのを皮切りに、Bone China も気になるようになりました。はじめ陶器は洗 練されていないように思いましたが、壺屋で引 き込まれる赤に出会ってから陶器も大好きにな り、六古窯にも足を運ぶようになりました。磁 器以上に陶器は産地ごとの違いが大きく、歴史 を知るとさらに奥深いものであることが分かり ました。引き込まれ、欲しくなると、結構な値 段だったりすることはしばしばで、そんな時は “足るを知る” と言い聞かせてその場を後にしま す。焼き物なんてと思われる方で、箱根に行く ことがあれば、ポーラ美術館へ立ち寄ってみて 下さい。作品だけを見て、一番好きなものを選 んで、それから作家が誰か見てみるといいです よ。土から悠久の美を生み出す天才の、もし かしたら、魯山人の世界に出会えるかもしれ ません。
恐らくトシビーを迎えるのは後2回で、次回 はいよいよ還暦です。それまでに、少しは足る を知る人間になれればと願っています。そうな ればきっと無理をしないゴルファーとなり、ス コアも格段に良くなっていることと思います。
最後に、長々と取りとめのない稚拙な文章に ご付き合い頂きました皆様のご健康とご多幸を お祈り申し上げます。