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雑感

石田 眞一

沖縄セントラル病院 内科  石田 眞一

病院で内科医として地域医療の仕事をしてお ります。今回原稿の依頼を受けてもうすぐ 60 歳になるのかと思いました。思う事は、医者と して仕事ができる事は有り難いと言う事です。 職業に貴賤のあるわけではありませんが、自分 でなりたいと思う職業に就けるというのは必ず しも全ての人に与えられる運命ではないと思い ます。それでも、自分はもちろん家族のために 一生懸命働いているというのが普通ではないか と思います。ここまで医師としての自分の人生 が支えられた事に感謝したいと思います。

最近、患者さんを診療させて頂いて感じる事 は、老齢化と貧困です。病気がその人だけでな くその家族を含めて大変大きな負担になるとい うのは当たり前と言えば当たり前ですが、自分 でも、父親をホスピスで看取って頂いたり、母 親が脳梗塞で入院したりという経験をして、そ の事を実感しました。誰しも普通に生きて行く のも大変なのに、さらに大きな負担が加わり ます。外来では、血圧が高かったり血糖値が高 い事を知らないでいたり、知っていてもそのま まにしている方を時々診療しますが、経済的に 苦しい事が背景にある事が多いようです。比較 的に若い方でも安定した仕事に就いていない方 を多く診療します。生活保護を受けている方な どはたくさんいます。生活保護を受けていると 医療費は無料になりますが、その事自体を本人 は心の負担にしています。少なくともなんとも 思っていない人はいないと思います。このよう な人たちは社会から見捨てられつつあると言う 印象が日常診療上感じる事が少なからずありま す。医師としては、少しでも負担を減らすため に病気を軽いうちに診断、治療する事や、合併 症の発症を防ぐ努力をしたいと思います。貧し いからといって社会から見捨てていいものでし ょうか。一つの病棟には寝たきりの患者さんも たくさん入院していますが、人間らしい看取り を意識して対応せざるを得ません。できるだけ 他の病院には迷惑をかけたくないのですが、御 家族が元の紹介されて来た病院への搬送を強く 希望される場合は、紹介せざるを得ない事があ ります。この辺は理屈ではどうにもならない事 があります。患者さんにも関連されている病院 にも大変申し訳ないと思います。

最近は通院する事ができなくなってしまう患 者さんが増えています。医師会は開業されてい る先生が主体ですが、私は勤務医と言うサラリ ーマンなので経営の面からはどうなのか分かり ませんが、このような患者さんの所へは決めら れた回数ではなくて必要なだけでも訪問診療で きるような医療をしたいと思っています。まだ まだ勉強不足でいろいろとインターネットや朝 倉の内科学(学生の時とは判が違います)や今 日の治療学などで確認したり、内科以外の本を 読んだりして、新しく知ったりしながら診療を しています。一般内科なのでいろいろ診療せざ るを得ません。しかし、こういう事も楽しいで す。自分の分からない事や治療できない病気は すぐに紹介させて頂いておりますのでよろしく お願いいたします。