沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 1月号

「巳年(へびどし)に因んで」

知念 清

知念 清

私はもともと十干十二支のようなエトには関 心が無く、これまで特に自分の生まれた巳年に 思い入れをしたり、その年に因んで何かを決意 をしたりした事はない。それでもさすがに巳年 と還暦が重なった 60歳の時には、いよいよ自 分も高齢者(老人)の仲間入りをするという思 いがあり、先のみえてきた残り少ない人生に一 抹の侘しさ・はかなさを感じたものである・・・・・ 恥ずかしながらその程度の感慨にとどまり、そ れも日ごろの忙しさにかまけていつの間にか忘 れてしまった。今年の 72歳の「巳年」も、原 稿依頼がなければ特に気にすることも無く過ぎ 去ったはずである。

思い起こせば、70歳にまだ間があった某日、 旧知の先輩にお会いして「相変わらずお若いで すね、お元気そうでなによりです」と話しかけ たら、「そうかい有難う。でも70になったらも ういけないね。君はまだ 60 代だろう。うらや ましいよ」と言われたことがある。聞いてみる と 70を越すと「何をしても体力が続かず、知力・ 集中力・記憶力も衰え、その上月日の経つのが 60 代とくらべものにならないくらい速くなる。 この先どうなるのか自分でも怖いよ」とのこと。 70を過ぎて衰えてきた私の記憶の中にもしっ かりと残った先輩の述懐である。

臨むと望まないにかかわらず、無常・無慈悲 と言うべきか、来るべきものは確実にやって来 る。私ももう今年で 72 歳。先輩のお話のよう に確かに 1 年たつのが年々速くなっていくよう な気がする。知力・集中力・記憶力については 言わずもがなである。

筆のたち上がりと、その後の流れのせいでつ い暗い内容になってしまったが、私も歳を重ね た分それなりにしたたかになってはいる。衰え て行く知力・体力・記憶力など認めるべきもの は認めつつも「落ち込んでばかりではしょうが ない、残りの人生を限られた範囲内ではあるが、 豊かに過ごしたい」という気力は残しているつ もりである。

豊かな QOL を維持する為には精神と肉体の 両面からのバランスのとれた支えが必要なの はいうまでもない。そして、いずれかと言う と、急速に体力が低下していく 70 代以降は、 あくまで私見であるが、体力の衰えを防ぐこ とにまずは努めるべきではないかと考えてい る。身体を健康な状態に保つのは自分だけの ためではなく、自分を取り巻く周囲の人達(特 に家族)に迷惑をかけないためにも大事なこ とであろう。

と、まあそんなわけで、遅まきながら 70 歳 になった頃から、ウォーキング、ダイエットで メタボの解消に励むことにした。これまでなか なか実現できなかった禁煙にも取り組んでい る。それ以外に、歯周病の治療にも専念してい る…歯の管理は見落とされがちだが健康維持に はとても大切なことである。現在のところ、身 体の健康面では自分で言うのもなんだが、とて も良い状態を保っている気がする…時には、60 の頃よりも現在の方が体調は良いのではないか とさえ思う。

72 歳の巳年以降も、あまり気張らず、出来 るだけ長く現状維持に努めて行きたいと考えて いる。