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新春インタビュー 与世田兼稔副知事


○玉井理事  あけましておめでとうござい ます。新春をかざって与世田兼稔副知事イン タビューをいたします。副知事就任後問題山 積の県行政に関わっての率直なご意見をお聞 かせ下さい。

○与世田副知事  もともと私は弁護士です。 個別の紛争や相談を処理してきましたが、行政 のダイナミックさや大きな動きについてビック リさせられると同時に良い経験をさせてもらっ ている感じです。

○玉井理事  昨年はオスプレイの問題等様々 ありましたが、やはりかなり苦労されたのでし ょうか。

○与世田副知事  沖縄県の基地問題は根の深 い解決が困難な政治的問題があります。沖縄県 には保革という二つの流れがあって、その中で 知事は自己の政治姿勢や公約に基づいて対処さ れています。副知事は基本的に知事の政策を補 佐する役割ですから個人的意見はないわけで す。基本的に知事が考えられている政策スタン スを理解して、その枠の中できちんとしたお答 えをせざるを得ないとの意味では突然のインタ ビューを受けた場合でも、知事はどういう風に 答えるだろうと考えながらやっています。です からそこは弁護士的な言い方でいいますと自分 の意見で自由な発言が許される立場と、副知事 とはまるで勝手が違うんです。そのような意味 での苦労は多いです。

○玉井理事  自分の考えと行政の考えと整合 性がとれていればいいんですが、ちょっと自分 のニュアンスと違う所をお話しないといけない とか、そういう時、葛藤等はありますか。

○与世田副知事  いいえ、私の基地問題に関 する認識、政治スタンスに関しては知事と基本 的に同じです。日米安全保障条約の評価、普天 間基地の一日も早い危険性の除去、移設返還と いう所は全く同一です。ですが、実際のインタ ビューの時に強い口調で表現するかそれともソ フトな表現にするか、微妙な感じがなかなか難 しいところです。テレビ等で知事のインタビュ ーの答えを見ているのですが、知事はやはり上 手です。私なりに知事なら多分こういう時には こうおっしゃるのだろうと頭の中で考えながら 対応していますが、仲井眞県政の副知事として 枠を外さない対応を心がけています。

○玉井理事  なるほど、とても勉強になりま す。次に業務の縦割り行政をよく批判されると ころですが、そのあたりはどういうご感想をお 持ちですか。

○与世田副知事  確かにそれは率直にいって ありますね。私が一番最初にぶつかったのもそ ういう様な事でした。時間が経ったので問題は ないかなと思いますが、東北の震災があった時 に沖縄県として福島県とか被災された子ども達 を迎え入れようというような議論が出てきた時 がありました。

沖縄県に対して、あるボランティア団体から 福島県の子ども達を送りたいので受け入れてく れるかという要請が来ました。被災児童の受け 入れの問題ですので担当部局が、教育庁の所管 になりますが、ここには予算が無い。しかし、 被災者児童に対する支援という観点からみます とどうにかしなければならない。ですからそれ をどのように予算を組み替えするのかに関して どこの部局が予算を持っているかで進まないん です。最終的には文化観光スポーツ部の予算を 使い、結果としては喜ばれる事業になりました が、この辺の意思疎通がうまくいかないと、も うダメということで担当部局が、すぐに諦める ところは残念だなと思いました。沖縄県は津波 で大変な方々の家族や子ども達に対する支援も やりましょう、そして学校としても受け入れ、 防災として避難対策も色々やっており、ものす ごい有意義な事業であるという事が縦割り行政 の壁でストップしそうになったものですから、 私なりに努力してどうにか事業実施ができまし た。私からすると縦割り行政のもどかしさを痛 感し、今はどういう形で予算がつくのかルール が分かってきました。誰がまず事業を担ぐか、 担ぐにあたっての目的事業それから予算という ことですから結論ありきではないんですよね。 やるという事だけでここに至るプロセスという のを今漸く分かってきましたから、副知事就任 直後は役所って、なんて融通のきかないところ だろうというのが率直な感想でした。

○玉井理事  いろんな力が結集していい仕事 ができそうですけれども、それがなかなかうま くできないというのがもどかしいところですね。

○与世田副知事  そうですね。ただ、例えば 副知事としていくつか所管としているところを またぐのであれば担当として采配できますが、 所管として違うところに行くとまた難しいです ね。副知事間調整をしないといけなくなります。

○玉井理事  県医師会との関わりが深かった 与世田先生が副知事に就任され、医師会会員も 非常に喜んでおります。県行政の中心にいらっ しゃって沖縄県の医療行政の現状はどの様な状 況になっているとお考えでしょうか。

○与世田副知事  医療行政に関しましては沖 縄県の職員、仲井眞後援会の宮城会長、玉城政 策参与もおられますから比較的風通しは良く、 医師会のニーズを汲み取るような形でできるだ け政策として反映できるようになっているんじ ゃないかと思います。ただ、今は個別具体的な 案として何があるかとは言えません。政策参与 からの色々な案件も一緒になって考えながら重 粒子線も含めて医療と観光、医療ツーリズムと 色々と議論はしており、即効的にはどうとは言 えませんが、おそらく玉城政策参与が入って 6 年目ぐらいだと思いますので、県医師会から沖 縄県にあがる情報というのはちゃんと政策課題 に入っています。そして芽をだし、やがて結実 していくんじゃないですか。治験ビジネスや医 療のさまざまな特区の案件やデジタル化、離島 医療圏とか色々議論はしています。私の感想で すが、玉城政策参与を中心として医師会から沖 縄県に求めるテーマというのでしょうか、こう あるべきだというプランを提言して、それに向 けて行政と医師会でタッグを組んで実現してい くというアプローチも必要なのではと思います。

離島医療問題では医師確保の問題があります ね。八重山病院で産婦人科医、宮古病院では内 科医が不足した、こういうような事をどういう 風な形で確保するか、どう離島医療が守れるの かという事を医師会、特に地域の医師会が支え てくれないともたないと思います。私は福祉の 担当で離島に行きますが、宮古地区医師会は比 較的県立病院とうまくいっていますが、八重山 病院はまだまだの感じがしました。

○玉城政策参与  八重山地区医師会は法人化 してまだ期間が短いので歴史が浅く、皆をまと めるタイミングが少し遅くなっていると思いま す。今からだと思います。

○与世田副知事  そうですね、県立八重山病 院の施設問題にしても規模、場所その他の問題 で八重山の医師会の先生方と県立病院の先生方 とで連携が必要ですね。

○玉城政策参与  今、与世田副知事の方から 提案があれば八重山地区の医師会だけで難しけ れば県医師会が一緒になって全体をまとめる事 もできます。問題点や行政から協議依頼があり ましたら県医師会からも参加致します。各々の 地域がしっかりしていくと全体としてもうまく いくと思いますので。

○与世田副知事  特に北部圏域の県立北部病 院と医師会立病院は一体どうするのかとか、本 当は医師会を含めてあり方としてきちんと議論 しないといけない問題もありますね。

○玉城政策参与  現在、北部広域市町村事務 組合が両病院と宮里北部福祉保健所長、県医師 会からも事務をひとりアドバイザーとして派遣 して月に 2 〜 3 回議論をしています。ですから 北部の市町村事務組合が中心となって準備段階 がスタートして北部は良い方向にいくと思って おります。

○与世田副知事  そういった事を含めて行政 と議論する場が意外と少ないですね。一度県医 師会と当事者の北部の先生も含めて北部地区医 師会の医療はどのようにあるべきかを議論した 方がいいですね。

○玉城政策参与  数ヶ月たったばかりです。 もう少ししたら正式な準備委員会もできていま す。今は保健所が中心となっていますが、福祉 保健部にも入っていただいて県の中枢としての 考えもどうするかということで、一緒にやって いかないといけないと思います。

○与世田副知事  私は県立病院長の先生と親 交を暖める機会がありますが、その中でよく聞 いたりします。各先生方そう思っているんです よ。院長先生レベルの問題意識と方向性は私達 も聞いています。北部地域の住民にとってもす ごくいい形でよい医療が提供できるような体制 がつくられればよいと希望します。

○玉井理事  色々なプランがあるようですね。 次に、今保健医療計画の策定中だと思いますが、 保健医療計画で議論が色々ある中で、病床数の 問題とか色々でていると思いますが、医師会に 何か注文をしておきたい事とかありますか。

○与世田副知事  デリケートな問題でなかな か副知事としては答えずらいところです。地域 医療計画としては現場現場で考えてやる事であ ってなかなか私どもが出すぎた発言はなかなか 難しいですね。医療とベットの問題は医療費の 抑制という議論があって、なかなか 1 つの答え がでないようなデリケートな問題ですね。

○玉城政策参与  ベッド数の問題は入口の救 急から出口の在宅医療まで一環して考えなけれ ばいけません。その連携を今度こそやらないと また次の保健医療計画の時に同じことがむし返 されます。沖縄県民は病院に行って最後は自立 してまた自宅に帰れるようなシステムをどのよ うに作れるか、おそらく県医師会と行政と地区 医師会と一緒になって、この地域のエリアでど うするか、この地域で足りないものはなにか、 そこを補強する為には行政と民間とどういうタ ッグを組むことがあるかということを検討す ると他のベットがどうこうとする話はなくなる し、それを行政と共にできればと思います。

○玉井理事  医師会からのお話、要望、陳情 はかなりうるさい方ですか。

○与世田副知事  それはないですよ。玉城政 策参与からそんなに聞いた事ないですからね。

○玉城政策参与  与世田副知事とは沖縄県を 豊かにするような話はしますけれどね。例えば 医療クラウド構想とかですね。

○与世田副知事  電子カルテにおいても各病 院バラバラですよね、今八重山病院で導入しよ うとしているのと宮古で導入しているのは違い ます。調達のコストで考えても、あるいはソフ トの開発で考えても不本意だなと思っても進ん でいるのを止める訳にはいかねいんですよね。 だからこれからは、私は政策参与とも協力して、 やはり健康情報を全部で管理しながら医療費の 最終的な抑制にも無駄な薬の抑制にもまた、な おかつ副作用の問題もやがて解決できるシステ ムというのが構築できるのではないかと思って おります。

○玉井理事  既存する様々なシステムが既 にあるものですから、それぞれのテリトリー 意識がありましてなかなか調和ができないで すよね。

○与世田副知事  今後、システム統合をどう 構築するかですね。那覇市医師会の健診データ が実験的に委託事業で進んでいるそうですか ら、こういったものがもう少し実になってくれ たらステップバイステップで前進し大変いい事 ではないかと思います。

○玉井理事  特定健診等をやると、健診を受 けた方が私は病院で健診を受けたのになぜ行政 から指摘を受けないといけないのかと憤概され る方がいらっしゃるようです。皆さんの健康と いうのは医者だけ又は病院だけで守れるもので はないし、統合してやっていかないといけない 時代になっているんだと県民に理解してもらう というのも大切だと思います。

○与世田副知事  私は、東北の震災後、防災 危機担当副知事として東北に視察に行ってきま した。東北大学の病院で震災対応のレクチャー を受けました。何が一番大切かと言うと投薬デ ータが知りたいとの事でした、ある病院が津波 でデータが全部無くなったそうです。そういう 事を考えるとバックデータの管理システムの構 築をしなければいけないと思いました。しかし、 ただ医療情報を集めればいいという訳でもなく 最低限どんな情報が統合されていくのか選択し ないといけない。東北大学は、今これを踏まえ てデータを作っているとお伺いいたしました。 沖縄県も今後考えていかないといけませんね。

○玉井理事  私も岩手に 10 日間行きました が、投薬履歴を持っていたのが薬局でした、薬 局がハードディスクを持って避難していまし た。それが現地の被災者の医療を救いました、 そういうところを見るとデータの保存は災害医 療に関しましては大きなキーになると思いま す。だからクラウド化にしてすぐに提供できる ような医療情報をどちらかで蓄積されていると 大災害があった時に災害に強い社会の基盤にな るんじゃないかと思います。

○与世田副知事  病診連携と言われて久しい わけですけれども、まあ沖縄県は他府県に比べ て県立病院が多いのですが、時代の流れをみま すと県立病院の時代ではなくて民間における病 院と個々の診療所の連携で医療が成り立ってい くのだろうと思います。救急と在宅と慢性期と いうような分け方をしているわけですから。そ ういう流れの中でやはり医師会が今、問われて いる問題にしても積極的に取り組んで、例えば 県立病院のあり方を含めてリーダー的な役割で こうすべきだと言っていただければ我々も地区 医師会と一緒にしていきたいですね。

○玉井理事  次に何かこだわりの健康法があ れば教えてください。

○与世田副知事  かつてはゴルフでしたが最 近は、土日も公的な仕事が入っている為ゴルフ ができないんですよね、今はできるだけ熟睡す るように努めています。

○玉井理事  よく休めていますか?

○与世田副知事  眠れてないので眠りたい です。

○玉井理事  「よく眠れていますか」は沖縄 県では特に自殺の問題が非常に大きいので外来 で聞きます。

メンタルヘルスはとても大切な課題です。都 道府県別で平均寿命が今度発表されますが、悪 くなるんじゃないかと聞かされています。健康 長寿復活の為に色々と協力させて頂きたいと思 います。

○与世田副知事  沖縄県の 21 世紀ビジョン で沖縄のブランドはやはり健康長寿なんです。 このブランドイメージが相当落ちてきている。 これをどうやって復活させるか私どもの政策課 題にしております。その中でメタボを含めた生 活習慣病対策ですが、それも一つの柱ではある んですけれども、若年者の死亡率が高い。メン タルケアこの辺を含めた対策として県医師会の 深い知識で沖縄県の健康長寿のブランドを回復 するためにどうしたらいいのか、そういった政 策提言をはっきり出していただいて一緒になっ て考えたいですね。

○玉城政策参与  この間乳がん検診学会を開 催した時に、受診率を上げようとしても上がら ないという話がありました。結局そういう問題 じゃなくて言い続ける事も大事ですが、子ども 達の教育、つまり教育行政の健康の問題と大人 の健康がバラバラですよね。小児の生活習慣病 の言葉があって、そこから始まり合体すると子 ども達が健診の大切さや健康診断で自分の体力 その他の大切さを知ると、良くなると思います。 長野県も 30 年以上やっております。沖縄県も そういう教育から進めて 10 年後には 10 歳の 子供が 20 歳になって、20 年後には 30 歳にな る。そういった長い時間で考えないと最終的に はよくならない気がします。鹿児島県では乳が ん健診の話を中学生・高校生に一生懸命指導し ているという話をしていました。これが 10 年 20 年と保健教育の中に入っていくと意識が変 わっていくし、たばこもそれで意識が変わって いくと思います。

○与世田副知事  教育という場面の切り口で 一緒になって子育て教育をしていく。人材育成 は沖縄県の一番の課題ですから、そこを健全な 精神で健康ありきの世界という事で重要な役割 を医師会の方々と沖縄県の未来像をきちんと作 っていければと思います。

○玉井理事  心身すこやかな子供たちが育っ ていくといいですね。

○与世田副知事  そうしないとなかなか長寿 日本一を取り戻すにはハードルがどんどん高く なっていきますからね。

○玉井理事  ありがとうございました。それ では最後に座右の銘を教えて頂けますか?

○与世田副知事  「継続は力なり」「念ずれば 通ず」ある程度目的意識を持って一つずつ努力 をすれば、やがてそれが実になります。最初は 勉強嫌いだったけれど、ある日突然に好きにな るわけではないですが、目標を持ったら努力で きるんです。継続できるんです。ですから学校 教育の中で一番重要なのは目標設定教育じゃな いかと思います。

○玉井理事  本日はご多忙の中、誠に有りが とうございました。本年もよろしくお願い申し 上げます。