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年頭所感

横倉 義武

日本医師会会長 横倉 義武

明けましておめでとうございます。会員の皆 様におかれましては、健やかに新年をお迎えに なられたこととお慶び申し上げます。

一昨年、3 月 11 日の東日本大震災から、間 もなく 2 年が経過しようとしております。しか し、被災地における復旧・復興は、決して順調 ではありません。日本医師会はいち早く JMAT を組織し、被災地域を除く全都道府県医師会の 先生方のご協力により、強力な医療支援活動を 展開してまいりました。これらの活動を通じ学 びました教訓は多岐に亘りますが、地域社会の 復興にとって地域医療の存在は不可欠であり、 医療のないところでは人々が暮らしていくこと はできないということであります。社会的イン フラとしての医療機関を再建していくための支 援を今後とも継続していくことが必要です。

さて、われわれ執行部は、昨年 4 月に発足し て以来一貫して、国民が安心して生活していく ためには「地域医療の再興」が最重点課題であ ると主張してまいりました。各都道府県医師会 の先生方には、本年 4 月からスタートする新た な「地域医療計画」の策定に向けて、積極的に 行政と協力し、地域の実情に合った計画の策定 にご尽力いただくようお願いしてきたところで あります。地域の医療・介護、福祉を見据え、 急性期のみならず、予防、亜急性期、回復期、 慢性期、在宅医療まで、「切れ目のない医療・ 介護」の提供体制の構築は地域医療の基本であ ることを、今後とも継続して訴えていきたいと 思います。

明るい話題として、昨年10月には日本医師会 の会員である京都大学の山中伸弥教授がノーベ ル医学・生理学賞を受賞されました。再生医療 に道を開く、最先端の研究が、わが国の医師に よって行われていることは、日本の医療人とし ても大きな誇りです。近い将来、これらの研究 の臨床応用が行われ、治療が困難とされている 患者さんに大きな希望がもたらされることを切 に望むところであります。日本医師会といたし ましても、研究環境の充実のために、法整備面・ 倫理面に関しまして全面的にバックアップして まいりたいと思います。

一方、国会では 8月10日に社会保障・税一体 改革関連法が成立いたしました。社会保障の機 能強化と持続可能な安定財源確保のためには、 消費税率の引き上げはやむを得ないものと思い ます。しかし、社会保険診療が非課税となって いることから医療機関が過大に負担している、 いわゆる「控除対象外消費税」の問題や保険給 付の重点化、適用範囲の縮小等が懸念されると ころであります。特に「控除対象外消費税」に ついては、この問題が解決されることなく消費 税が引き上げられることになれば、医療機関の 経営にとって極めて深刻な影響を及ぼすことは 必至です。社会保障の充実を目的に導入された 消費税によって、医業経営が困難になる事態が あってはなりません。そして地域医療を担う医 療機関の経営に悪影響が出て一番困るのは、地 域住民の方々であります。12月21日には、医療 関係40団体で構成する国民医療推進協議会の主 催により「国民医療を守るための総決起大会」 を開催いたしました。国民皆保険の堅持と地域 医療再興を願い、「国民皆保険を崩壊に導く医療 の営利産業化に繋がる政策への反対」および「医 療に係る消費税問題の抜本的解決」を強く要望 する旨の決議を採択したところであります。

こうした中、年末には衆議院の解散総選挙が あり、新たな政権が誕生いたしました。そして、 日本医師会も本年 4 月 1 日、公益社団法人 日 本医師会として新たに生まれ変わる予定であり ます。日本医師会は医師を代表する唯一の団体 であり、医師の利益を追求する団体ではありま せん。「国民と共に歩む専門家集団としての医 師会」を目指し、世界に冠たる国民皆保険の堅 持を主軸に、国民の視点に立った多角的な事業 を展開し、真に国民に求められる医療提供体制 の実現に向けて、これからも政策提言を続けて まいります。

医療界には、他にも医師不足、医師の診療科・ 地域偏在の問題、医学教育・研修制度のあり方、 医療事故調査制度等、喫緊の課題が山積してお ります。こうした課題解決に向けて、執行部一 丸となって対応してまいりますので、会員の皆 様方の深いご理解と格段のご支援を賜りますよ うお願い申し上げます。

新年が皆様にとりまして、希望に満ちた明る い年となりますことをご祈念申し上げ、年頭の ご挨拶といたします。