副会長 玉城 信光
平成 24 年10月28日(日)、日本医師会館にお いて標記代議員会が開催されたので、その概要 を報告する。
定刻になり加藤議長から開会の挨拶が述べら れた後、受付された出席代議員の確認が行われ、 定数 357 名中、出席 351 名、欠席 6 名で過半 数以上の出席により、会の成立が確認された。 その後引き続き、議事録署名人として、魚谷純 議員(鳥取県)、畑俊一議員(北海道)が指名 され、代議員会議事運営会委員 8 名の紹介があ り、議事が進行された。
横倉義武会長挨拶
大きな傷跡と深い悲しみを残した東日本大震 災から、1 年7 ケ月が経過した。被災地域の復旧・ 復興が進んでいるが、未だ道半ばと言わざるを 得ない。日本医師会では、発災直後より都道府 県医師会の多大なるご協力の下に JMAT 活動 を行ってきたが、今なお大変なご努力をなされ ている岩手県、宮城県、福島県の先生方に敬意 を表する次第である。
また、先日、日本医師会の会員である京都大 学 ips 細胞研究所長の山中伸弥教授が、日本人 医師として初めてノーベル医学・生理学賞を受 賞された。この度の山中教授の受賞にお祝いを 申し上げるとともに、先生のこれまでの研究に 対する姿勢に敬意を表す。山中教授には平成 22 年に、「日本医師会医学賞」を贈呈し、その 際に記念講演もいただいたところであるが、日 本医師会としても、研究環境が円滑に整えられ るよう、法整備面、倫理面に関して全面的にバ ックアップを行って参りたいと思う。
再生医療や遺伝子治療等の高度先進医療に注 目が集まりがちだが、多くの国民が安心して生 活していくため、国民の社会的共通資本として、 「地域医療の再興」が喫緊の課題である。
より良い医療提供体制の構築に向けて
国は医療機能の分化を推進し、施設から地域 へ、医療から介護へという「将来像に向けての 医療・介護機能再編の方向性イメージ」を描い ている。しかし、我が国ではこれまで、かかり つけ医を中心として、地域の身近な通院先、急 性期から慢性期、回復期、在宅医療と「切れ目 のない医療・介護」が提供され、国民の健康と 安心を支えてきた。地域医療は、それぞれの地 域で必要とされる医療を適切に提供していく仕 組みが重要であり、国の方針を都道府県の医療 政策にいかに落とし込むかではなく、都道府県 や市町村等地域の実態に基づいたものとすべき である。それにより、国民にとっても医療提供 者にとっても、望ましい医療体制の構築が行わ れるべきと常々考えている。そのためには、会 員一人ひとりが、地域の中で担うべき役割を認 識することが重要である。ボトムアップ型とし ての地域医療提供体制の再構築に向けて、「切 れ目のない医療・介護」という視点を持つべき であり、地域の実情や家族のあり方を考慮した 柔軟に活用できる多様な仕組みを提案する必要 がある。
平成 25 年度には、地域医療計画が策定され るが、地域の実情が充分に反映され、地域にと って自由度の高い制度の設計をすべきである。 地域の医療・介護から福祉まで全体を見据えた ニーズを見極め、急性期だけではなく、予防、 亜急性期、回復期、慢性期、在宅医療まで、「切 れ目のない医療・介護」の提供体制を提案でき るのは地域の医師会しかない。住民・患者が医 療へのアクセスを十分に確保できるよう、地 域医師会がこれまで築きあげてきた実績を生か し、かかりつけ医機能をさらに推進し、医療機 能の役割分担と連携を図ることが重要である。
また、在宅医療も重要となってくる。在宅 医療は在院日数の短縮や病床削減のためでは なく、患者の QOL 向上や医療・介護の役割分 担のための在宅医療が求められる。地方や都市 部の違いや在宅だけでなく、「施設も、在宅も」 といった選択肢も含めて、地域全体の関係者が 参加する在宅医療ネットワークづくりが急務で ある。介護施設における終末期患者の救急搬送 のあり方についても今後さらなる検討が必要と なってくる。
併せて、医師、看護職員等の生涯教育や、多 様な関係者・職種間の協力体制が必要で、医師 会は、医療全体をリードする立場から、国民医 療推進協議会や東日本大震災における被災者健 康支援連絡協議会、糖尿病対策推進会議など、 これまでも地域の様々な関係者を取りまとめ、 連携を進めてきた。
さらには行政とも連携し、医療計画において 各地域の糖尿病対策推進会議の活用をもって糖 尿病の医療連携体制の構築を行っている。また、 疾病の予防、患者の QOL 向上のため、保健・ 介護・福祉関係者との協力が求められ、さらに は、IT を利用した地域の医療連携も重要となる。
医師の偏在解消策について
1)地域医療の経験を医師のキャリアアップの 要件とすること、2)医療訴訟につながるケー スを減らすこと、医療事故を刑事訴追の対象 にしないこと、3)医師が勤務しやすい就業環 境の整備、特に急増している女性医師への支 援、4)初期臨床研修のマッチングの見直しの 4 つを提言したい。
山積する課題解消のため、医療・介護の財源 を十分に確保することが必要なのはいうまでも ない。一方で、国の税収は減少し、社会保障関 係費は増加している。そのような中で、社会保 障・税一体改革関連法が、本年 8月10日に成立 した。国が現在進めている社会保障・税一体改 革については、社会保障の機能強化と持続可能 性確保の方向性は我々と同じであると考えてお り、消費税率の引き上げにより社会保障の安定 的財源が確保されたこと、消費税収を年金、医 療、介護、少子化のために充当することが明確 化されたことを評価したいと思う。
しかし、社会保険診療が非課税となっている ために、医療機関で発生している控除対象外消 費税は看過できないほどの金額になっている。
現在のように診療報酬に上乗せをする対応は、 国民からみても医療機関にとっても、不透明か つ不十分であり、抜本的な控除対象外消費税の 解消を求めて行きたい。
環太平洋連携協定(TPP)について
医療における株式会社の参入の要求や、中医 協における薬価決定プロセスへの干渉等を通じ て、公的医療保険制度を揺るがすことが問題と 考えている。
国内でも、医療ツーリズムなど、これまで米 国が要求してきた公的医療保険の営利産業化を 進めようとする動きが見られ、公的医療保険の 営利産業化や混合診療の全面解禁は、国民皆保 険の崩壊につながる。必要な規制改革は行わな ければならないが、過度の規制改革は絶対に受 け入れるわけにはいかない。そのような中で、 本年 7月31日に閣議決定された「日本再生戦略」 は、復興特区を含めた特区の活用を推進し、新 たに機関特区を創設する方針が記されている。 特区の提案内容を見ると、医療への株式会社参 入や混合診療の全面解禁の問題が懸念される。
日本の医療制度は世界に冠たる制度であり、 我が国の公的医療保険制度の基本理念として、 「全ての国民が、同じ医療を受けられる制度」、 「全ての国民が、支払能力に応じて公平な負担 をする制度」、「将来にわたって持続可能性のあ る制度」、の 3 点が必要であり、それを守る決 意で今後も臨んでいく。
日本医師会は、医師を代表する唯一の団体で あり、また、医療関係団体の一つではなく、医 療全体をリードする唯一の団体である。「国民 と共に歩む専門家集団としての医師会」を目指 し、世界に冠たる国民皆保険の堅持を主軸に、 国民の視点に立った多角的な事業を展開し、真 に国民に求められる医療提供体制の実現に向け て、会員と共に役職員一丸となって、より良い 医療を目指して日本医師会の強化を図っていく ので、よろしくご支援のほどお願い申し上げる。
会務報告、議事
横倉会長の挨拶に引き続き、羽生田副会長か ら本年 4 月以降の会務概要の報告があり、議事 に移った。
議事
第 1 号議案 平成 23 年度日本医師会決算の件
1)今村副会長より平成 22 年度より新しい公益 法人会計の採用に伴い決算報告書の様式を変更 し、従来の決算報告書は内部管理資料として引 き続き作成していると前置きがあり、議案書に 基づいて決算の説明が行われた。
2)議長より第 1 号議案の審議に付託する財務委 員 14 名の紹介が行われた。
3)笠原吉孝財務委員長(滋賀県)より、本日の代 議員会に先立って前日(10/27)開催した財務委 員会について、慎重に細部まで審査した結果、 出席者 14 名全員が適正と認め、提案どおり承 認決定した旨の報告があった。
財務委員長の報告を受け、第 1 号議案表決を 行った結果、挙手多数で承認可決された。
第 2 号議案 公益社団法人への移行認定申請及びそれに伴う定款・諸規程変更の件
今村副会長より標記の件について提案理由の 説明があった。
平成20 年12月に施行された「新公益法人制 度」により、既存の社団・財団法人は運営・財 務等に厳しい条件が課せられるものの、従来に も増して厚い税制上の優遇が受けられる公益法 人か、緩やかな行政の監督の下で自由な事業が 行える、また、登記だけで設立が行える一般法 人の何れかに移行しなければならなくなった。 日本医師会では関係法令が公布された平成 18 年頃より公益、または一般へ移行した場合の会 務運営のあり方等について比較・検討を重ねて きた。その結果、我が国の医学・医療を堅持し、 真に公益性ある職能団体として存在感をもち続 けて行くためには、社会的な信用性の高い公益 社団法人を目指すべきとの結論を経ており、平 成 19年 5月15日第 2 回理事会に於いて、当該 方針を決定した次第である。この方針に基づき 移行準備を進めていく中、これまで代議員会に おいて新たな会計基準に基づく予算、決算や特 定保険業の認可申請についてお諮りし、承認を 頂いた。その結果、本年10月19日付けで日本 医師会は特定保険業の認可を受け、医師年金は 医師会の公益法人移行と共に今後は、法律に基 づいて運営される保険制度として生まれ変わる こととなった。
公益社団法人として認定されるためには、18 の公益認定基準を満たすこと、新公益法人制度に 合致した定款が必要となることから、定款・諸規 程の変更について 4 年間に亘る充分な議論を経て 取り纏め、7月17日の理事会で承認されている。
新公益法人制度では、役員任期や理事会、社 員総会の役割が法律に明瞭に規定されているた めに、法人の裁量が許されない箇所が多数ある。 加えて代議員制度を採用する場合の要件や、公 益認定を受けるために必要な条項を追加する必 要があるなど、極めて制約と要求が多い中で定 款変更を強いられている。そのため、委員会で は縛りの多い制度間の中で、まずは公益認定が スムーズに行われるよう現行に近い形で取り纏 めた経緯があることを予めご了解頂きたい。
なお、移行に向けて準備が整ったので、来年 4月1日に移行する予定となっている。その後、 主な変更点について説明をおこなった。
上記の説明を受け、代議員より日医役員選出 並びに都道府県役員と日医代議員、また、郡市 区役員と都道府県医師会代議員のそれぞれの選 出時期と、その整合性に関する質問が相次いだ。
第2号議案について表決を行った結果、挙手 多数により承認可決された。
代表質問・個人質問
その後、ブロック代表質問(8 件)及び個人質 問(16 件)について質疑が行われ、地域医療再 生の支援策や医療界をリードするための日医の 役割、TPP 参加への対応など、日医の見解が 求められた。
地域医療再生への支援策について
九州ブロックからの代表質問で地域医療再生 への支援策について、横倉会長からつぎの通り 回答があった。
ご指摘のとおり地域医療再生には様々な問題 点があり、その一つとして地域の中核となる医 師会病院のあり方についてご質問頂いた。
医師会病院は診療所と病院の連携による地域 医療の拠点であり、極めて公益性の高い医療機 関であることは論をまたないが、地域によって は医師会立病院が公的医療機関ではないことを 理由に行政からの支援が受けられない等、公的 医療機関との差をつけられていると聞いてい る。また、医師会立病院が公的医療機関になる ことについては、公益性の高い事業を担い地域 社会に貢献していることを地域や行政に示すと いうことでのメリットがあるが、反面、規制さ れる面もある。病院開設や病床数の増加、病床 の種別変更の許可にあたっては、公的病院の場 合は許可を与えないことが出来る制限がある。 それぞれ各医師会において公的病院となった方 が良いのか主体的に考えて頂きたい。今後は共 同利用施設検討委員会に検討を委ねると共に、 関係各方面からの情報収集及び検討を重ね、公 的病院を臨む医師会病院については支援すべく 行政に働きかけていきたい。
TPP 参加に反対する再度の表明を
北海道ブロックからの代表質問について、中 川副会長から回答があった。
日本医師会は所得によって受けられる医療に 格差をもたらす TPP への参加は明確に反対で ある。社会保障税一体改革大綱から日本再生戦 略、社会保障制度改革推進法への流れによって 混合診療の全面解禁や株式会社の参入に大きく 道を開く恐れがある。こうした新自由主義的な 考え方は政権が交代しても一貫して官僚主導で 進んでいる。
日医はこうした背景を踏まえて様々な取組を 強くして、今後は更に進化させる。
第一に社会保障・税一体改革、日本再生戦略、 TPP 等を個別ではなく、一体的総合的に分析 する。
第二に関係者との連携を強化する。地域の医 師会の先生方や医療関係者は勿論、厚生労働省 とも一致団結しなければならない。
第三に経済界では TPP の参加や新自由主義 的な構造改革を臨む意見が根強く、日医はこう した関係者とも真摯に協議していきたい。
更に最も重要なことは「国民に理解をしても らうこと」であると述べ、11月15日に国民医 療推進協議会総会に諮った上で 12月に国民集会 を予定しており、粘り強く国民へ発信し続ける 所存であるとの発言があった。
集団的個別指導について
東北ブロックからの代表質問について、中川 副会長から回答があった。
去る、10月19日に櫻井厚生労働副大臣に対 して下記のとおり申し入れを行った。
1)個別指導は数値目標ありきであってはなら ない。
2)高点数を理由にすることは医療が高度化した 現在、医療現場の実態にそぐわなくなっている ことから、集団的個別指導の類型区分の見直し も含めた選定方法の見直し。
3)集団的個別指導の対象医療機関へ類型区分や 平均点数等の情報を開示。
4)施設基準の適時調査について、返還となった 場合、最大 5 年まで溯るため医療機関の経営上 深刻な負担になる。
5)新規指定医療機関が再指導となった場合、一 般の個別指導が実施されることについて、新規 指定については特に教育的効果という観点か ら、別途の指導のあり方を検討してほしい。
以上の要望に対し、櫻井副大臣から真に問題 のある医療機関を指導する仕組みに改めるべき であり、指導のあり方については、自分が矢面 に立ってでも是正し、指導を可視化していきた いとの建設的なご意見も頂いた。
准看護師試験日について
関東甲信越ブロックの代表質問について羽生 田副会長から回答があった。
法律的には看護師国家試験と准看護師試験は 同一日にすることについて根拠は無い。保助看 法において、看護学校を卒業した者は准看護師 試験も受けられるということになっている。ご 指摘のように試験日を別の日にして、翌年の国 家試験まで准看護師として働いて頂くことが現 在の看護師不足対策には大切であり、准看護師 として看護の仕事に従事する方が国家試験のた めにもなるとの考えを示した。
厚労省には以前よりこの話をしているが、国 家試験の日程については、毎年 8 月 1 日の官報 で告示されており、その後に都道府県知事の権 限となっている准看護師の試験日が決まること から、各都道府県医師会から知事に働きかけて 頂きたい。
医療界をリードする日本医師会の役割への期待
近畿ブロックからの代表質問について、横倉 会長から回答があった。
日本医師会と日本医学会が車の両輪として、 国民の医療を守って行かなければならないと改 めて強調した。「日本医師会四病院団体協議会 懇談会」を毎月開催し、様々な意見の統一を図 っている。全国医学部長病院長会議等の各種団 体とも「医療に関する懇談会」を定期的に開催 している。その会議において、特定看護師や入 院基本料のような様々な医療に関する問題につ いて議論を重ね、できるところは協調する体制 を組んでいる。
日本医師会は医師を代表する唯一の団体であ るという誇りを持ち、医療全体をリードするの は日本医師会であるという信念の元に行動して いるところである。関係団体と連携する中で、 改めて地域住民を守る医療活動の重要性を認識 し、「医療が無ければ地域は存在し得ない」と いう主張を国民に理解をしていただく努力をし ていく。
<個人質問>
准看護師養成所廃止議論と柔道整復師等療養費 の適正化等の問題について
藤川常任理事から回答があった。
今回の神奈川県の准看護師問題に乗じて、各 地の看護協会が准看護師の養成停止を主張しだ したことは誠に遺憾であると述べ、厚生労働省の 看護職員需給見通しでは、平成24年末においても 全国で 5万人の不足が見込まれている。このような 状況で准看護師の養成停止を声高に叫ぶのは無責 任と言わざるを得ない。准看護師の重要性につい ては今後とも機会ある毎に発言をしていきたい。
また、大事なのは地域の医療提供体制をどう 確保するかということであり、その原点に立ち 返り、冷静に対応していかねばならないと考え ている。
柔道整復師等の療養費適正化等に関して、社 会保障審議会、医療保険部において二つの専門 委員会を設置して、平成 24年度の療養費改定 と療養費のあり方の見直しに関する議論を具体 的に検討していくことになった。今回ご指摘頂 いた医師の同意書の問題も含め、中長期的な視 点に立った療養費のあり方、特に受療人払いの 問題や審査会の機能強化などについて幅広く検 討が行われるものと理解している。
地域包括ケアシステム実現の課題について
高杉常任理事から回答があった。
平成 24年度の介護報酬改定は、結果的にマ イナス改定となったことに不満であるが、厳し い財源の中で社会保障全体として考慮して頂き たい。しかし、このような中にも地域住民に対 して、医療・介護を切れ目無く提供するという 観点から、在宅生活時の医療機能の強化に向け、 従来から日医が提言していた「地域をひとつの 病棟と捉える視点」に即した内容が多く含まれ ている事を評価したい。
また、地域包括ケアシステムの構築のために は、保険者や地域の医療・介護に関わる全ての 職種がそれぞれ専門性を生かしながら地域づく り・街づくりの視点をもって臨むことが重要で あると考えている。その上で先生方には地元地 域、何があって、何が足りないのか財源論に縛 られるのでは無く、それぞれの地域毎に検討を 深め取り組んで頂きたいと要望した。
その他、「日医代議員選挙制度」、「異状死へ の対応」、「軽減税率」、「特定健診」等について 活発な質疑が交わされた。
印象記
理事 本竹 秀光
平成 24年10月28日、日本医師会館で開催された第127回日本医師会臨時代議員会・第71回日本医師会臨時総会に眞栄田篤彦代議員の代理で出席した。初めての日本医師会館訪問で宮城会長、玉城、安里両副会長の後を鞄持ちのつもりで参加した。全体会議の前に九州ブロック日医代議員連絡会議があった。横倉新会長の第一回目の代議員会とのことで、横倉会長から気合を入れて頑張りたいとの熱のこもった挨拶があった。会長の挨拶の中で印象的なものをいくつか紹介する。
初めに、日本人初のノーベル医学・生理学賞を受賞された京都大学 ips 細胞研究所の山中伸弥教授のこれまでの研究に対する姿勢に敬意の言葉が述べられ、日本医師会として、これからも研究環境が円滑に整えられるよう、全面的にバックアップしていきたいとのことであった。ただ、ノーベル賞受賞で日本全体が再生医療や遺伝子治療の高度医療にのみ関心が向くことにも懸念を示し、多くの国民が安心して医療が受けられる社会資本整備、すなわち地域医療の再考が喫緊の課題であると述べられた。挨拶の主旨は現場の臨床医療レベルの底上げ、地域にあった医療提供体制の整備が重要性であると私なりに解釈した。また、地域医療は国の政策に振りまわされることなく、地域に適合した医療体制を会員一人ひとりが構築し、地域住民に安心・安全の医療を提供することが肝要と述べられた。
会は議事の後、代表質問へと移り、全国 8 ブロックから代表質問がなされた。九州代表は鹿児島県の池田琢哉先生の地域医療再生への支援策についての質問であった。鹿児島には医師会立病院が 12 施設あり、これは全国にある医師会病院の 1/7、九州では 1/3 にあたる数である。昨今の小児科・産婦人科を中心とした医師不足、医療費削減による経営問題など地域の中核となる病院の疲弊が始まり、地域医療連携の機能が低下し始めていると訴えた。これまで行政からの補助がない中で、地域の医療を死守するために医師会病院の統廃合を含めた検討を行っていると述べ、行政の補助を受けるべく厚生連や済生会病院と同様に公的病院にする必要があると述べ、日医の見解をただした。これに対して日医側の答弁は公益法人のメリット、デメリットを述べ、公益性の高い医師会病院への公的補助を行政に訴えていくにとどまり、力強い答弁ではなかった。沖縄県は時代背景が特殊とはいえ、歴史的に県民の医療を行政がバックアップしてきたことには誇りを感じた。
代議員会で約 1 時間超過があり、1 時間遅れで総会は終了した。帰りは思わぬ雨に会い、駅まで濡れるところを事務局の計らいで傘を用意していただいた。感謝です。その後は飛行機に遅れまいと会長に遅れないよう駅の階段を走り、よい運動であった。